第2章 地域別に見た外交


【対外関係】
 ブッシュ大統領は、2004年1月の一般教書演説において、外交の重要課題としてテロとの闘い、大量破壊兵器などの拡散防止、イラク、北朝鮮、中東和平等を挙げ、2003年に引き続きこれらへの取組を推進した。
 大量破壊兵器等不拡散の分野では、「拡散に対する安全保障構想(PSI)」の参加国の拡大を推進した。また大量破壊兵器不拡散に関する国連安保理決議1540の採択を通じ、大量破壊兵器拡散を各国において犯罪とする上で指導力を発揮した。米国はまた、英国とともにリビアの大量破壊兵器計画廃棄に主要な役割を果たしたほか、同盟国・友好国とともにイラン及び北朝鮮の核開発プログラムに積極的に対処してきている。
 イラクについては、米国は、武力行使及びフセイン政権崩壊後の治安活動の中核をなしてきただけでなく、安保理における関連決議の交渉、イラクにおける政治プロセスへの関与、復興支援における主要な役割などを通じ、国際社会を主導する役割を果たしてきた。2004年6月に統治権限の移譲が完了し、2005年1月の移行国民議会選挙に向けた準備が進められる中、米国は同選挙のために兵員を約15万人に増員するなど治安の確保に努めている。またイラク軍・警察・治安部隊の訓練にも力を入れている。
 また、イラクの復興支援においても、最大の貢献を行ってきており、特にインフラ再建の面においては、電力・水・衛生・通信・交通等の面において大きな成果を上げている。また、2004年12月には41億ドル以上の対米債務につきパリ・クラブの合意を超える100%の債務削減に合意する協定に署名した。
 北朝鮮をめぐる問題についても、米国は引き続き、日本及び韓国をはじめとする関係国と緊密に協力しつつ、北朝鮮の核問題の平和的解決を目指し外交努力を継続した。ブッシュ政権は、北朝鮮との二国間協議に応じず、日本、韓国、中国、ロシアを含めた六者会合の枠組みにおける交渉で対処するとの立場を堅持しつつ、外交的なプロセスを通じ、国際的な検証の下で北朝鮮が完全に核兵器プログラムを廃棄することを追求している。また2004年4月に発出された「2003年国際テロ活動に関する国務省年次報告」では、北朝鮮を「テロ支援国家」として再指定した上で、拉致問題を初めて明記した。
 中東和平についてはイスラエル、パレスチナの二国家の平和共存への道筋を示す「ロードマップ」に基づく和平策を堅持してきた。2004年11月にはブレア英首相とともに、アラファト・パレスチナ解放機構(PLO)議長の死を受け中東和平への取組を新たにすることを宣言した。
 さらに中東における政治、経済及び教育面についての抜本的な改革を推進し、2004年6月のG8シーアイランド・サミットにおいては、米・中東パートナーシップ・イニシアティブを発展させた「拡大中東・北アフリカとの前進と共通の未来に向けたパートナーシップ」(139ページの図表参照)を打ち出した。
 米国は、タリバーン及びアル・カーイダの掃討作戦を継続すると同時にアフガニスタンにおいて復興・民主化支援を継続した。また、インド・パキスタン間の関係改善を支援すると共に、インドについては戦略的なパートナーシップを継続かつ強化することに合意し、パキスタンについては主要非NATO同盟国として指定するなど、両国との関係強化を推進した。
 東アジアにおいては、日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピンとの同盟関係及びシンガポールとの安全保障パートナーシップを引き続き強化した。また中国についても北朝鮮に関する六者会合、アフガニスタン及びイラクの復興、テロとの闘い、麻薬等の問題において協力関係を拡大した。
 欧州との関係では、これまでアフガニスタン復興について継続的に大きな役割を果たしてきたNATOが、2004年11月にイラク軍・警察の訓練要員の派遣の大幅な増加に合意したこともあって、イラクへの武力行使の是非をめぐって対立が目立った欧米との関係に一部改善の兆しも見られるようになった。ロシアについてはG8シーアイランド・サミットにおける米ロ首脳会談において、米ロの強固なパートナーシップの重要性、民主主義の根幹的価値観としての法の支配、報道の自由、透明かつ公正な司法手続きなどの重要性が強調された。また米国はグルジア及びウクライナの新政府を支援し早期の安定に貢献した。
 アフリカについては、スーダン西部・ダルフールにおける状況を虐殺ととらえ(注5) 、国際社会と協力しつつスーダンの内戦終結に向けて尽力している(138ページ参照)。また、リベリア復興支援についても国際的なイニシアティブをとり積極的に推進した。さらに、2004年7月には対象国からの免税輸入品目を拡大し、対象国の経済成長を促すアフリカ成長機会法(AGOA)の延長を決定した。
 経済協力分野においては、米国は引き続き世界最大の援助国であり、2004年5月に16か国をミレニアム挑戦会計(注6)対象国に認定した。またHIV/AIDSについては、5年間で150億ドルをコミットした「大統領エイズ救済緊急計画」に基づき援助の実施を開始した。

 



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