第1章 概観


【日本外交の今後の課題】
(日本らしい国際貢献の推進)
 今日、日本の国際貢献は、21世紀の国際社会の現実に直面し、真剣に再検討する必要に迫られている。例えば、近年、中国が、アフリカに展開しているすべてのPKOに要員を派遣していることや、韓国がイラクの復興支援のために相当規模(約3,600名)の部隊を派遣し、またテロとの闘いにも参加していることに示されているとおり、日本以外のアジア諸国も各方面での国際貢献を活発化させており、徐々にその国際的な地位を高めてきている。そのような中で、日本がこれまで以上に国際貢献に指導力を発揮し、これまでに築いてきた国際的地位を維持し、さらに高めていくためには、日本に比較優位があって、かつ時代に即した国際貢献のあり方を柔軟に検討し、日本らしい貢献をより一層積極的に行っていくことが必要である。例えば、2003年に改定されたODA大綱においては、国際社会共通の課題である「貧困削減」や日本が積極的に取り組む平和の構築、人間の安全保障の視点等を重要な柱として位置づけODAを一層戦略的・効率的に活用していくこととしている。昨今の厳しい財政状況においても、ODAは依然として日本外交における重要な手段の一つであり、これを国際貢献のために有効に活用していくことはこれまで以上に重要となる。現在、イラクの復興支援のために日本が自衛隊による人的貢献と並んで「車の両輪」として積極的に進めているODAによる経済・文化等の面での幅広い支援は、まさにその一つの好例と言えよう。また、特にアジア地域におけるテロ活動も看過できない大きな問題であるとの観点から、日本は、アジア諸国のテロ対処能力の向上のための人材育成等キャパシティ・ビルディング支援に力を入れているが、こうした貢献も被支援国側から高い評価を受けている。

(日本の国連安保理常任理事国入りに向けた取組)
 また、冷戦後の新たな脅威に有効に対処するため、近年、国連の機能強化の必要性が叫ばれている中、国連創設60周年の佳節である2005年は、国連改革、特に安保理改革の実現に向けた機運がかつてないほど高まっている。敗戦を経験し、国際社会における唯一の被爆国から戦後の復興を果たした日本国民は、特に平和を希求する思いが強く、国際社会の平和と安定のために国連が果たす役割に対して常に大きな期待を抱いてきた。政府は、そうした国民の支持と期待に応えるべく、国連加盟以来、一貫して外交における国連との関わりを重視し、国連への財政的な支援を行いつつ、平和と安定のための協力に限らず、NPT体制の強化、CTBTの早期発効や小型武器問題への対応における努力等の軍備管理・軍縮分野をはじめ、開発、貧困といった経済社会分野など幅広い分野でグローバルな観点から国連の場を通じて積極的に取り組んできている。日本は、国連改革の気運が高まっているこの機を捉えて、安保理常任理事国入りを果たし、これまで積み重ねてきた経験を活かして、国内外から高い期待を寄せられている日本らしい国際貢献を行っていく必要があると考えている。

(外交基盤の強化)
 上記のような日本外交を推進するにあたっては、外務省を含む政府全体が一体となって総合的かつ機敏な対応をとることが必要である。法執行当局や輸出管理・出入国管理、テロ資金規制といった管理・規制当局の機能、さらにはこれらの活動の前提となる対外情報収集・分析体制が強化されて初めて、外務省が中心となって行う日本外交の総合力を高めることができる。外務省は、2004年8月に行った機構改革によって組織改編し、総合外交政策局の政策調整機能を強化するとともに、国際情報局を国際情報統括官組織に改編・拡充して情報収集・分析能力の向上を図るなど、外交実施体制を一層強化した。また、領事移住部の領事局への改編、領事サービス本部や危機管理担当参事官の設置を通じ、海外の日本人の安全確保をはじめ領事機能危機管理の強化を図ったほか、広報文化交流部を発足させ官民が海外広報と文化交流の有機的な連携を図れる体制を確立した。外務省としては、国民への説明責任を果たし、その理解と支持を得るよう努めながら、国際的にも高く評価されるようなプロフェッショナリズムと高い志をもって外交を展開していく考えである。




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