【日本外交の目的と役割】
以上のような国際環境の中で、日本国内でも、近年、国民の安全保障に対する意識が変わってきている。これを踏まえ、日本は、国際社会全体の共通利益を確保するために必要な努力をしつつ、日本らしい、かつ時宜に適った貢献のあり方を追求しながら外交政策を推進している。その際の根幹にあるものが、日本の国益の確保、すなわち日本及び日本国民の平和と繁栄を追求することであり、これはいつの時代にあっても何ら変わることはない。
戦後、日本は大きな政治的危機に直面することなく世界第二位の経済大国となり、現在の安定的な地位を築いたが、この間、決して軍事大国とはならず、平和主義を貫きながら、資金面でも人的貢献の面でも、世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしてきた。
具体的には、例えば、アフリカの貧困撲滅・開発のために行っているODAや、PKO活動等の人的・物的・財政的貢献のように、実際に現場で目に見える形で直接的に脅威の除去・軽減を図ってきたほか、各国との対話の幅を拡げて信頼関係を構築・維持・発展させてきた。また、我々は、常日頃より、在京大使館員あるいは在外公館先の相手国の政府関係者と様々なレベルで意見交換や接触を絶え間なく積み重ね、信頼関係に基づいた予見可能な二国間及び多国間関係を維持してきている。さらに、経済的相互依存関係の深化を進めることや、日本の政策や文化、価値観等の日本の魅力を積極的かつ効果的に対外発信することを通じて、日本に対する理解を促進させてきている。
グローバル化の進む今日の国際環境の下で、非軍事的手段として外交が担う役割は一層重要なものとなっており、日本政府としては、その時々に最適と判断される手段を選び、それらを組み合わせて、タイムリーかつ効果的に意思決定できるよう最善を尽くしている。