第3章 分野別に見た外交 

 非核化協力事業:「希望の星」】
 日本は核軍縮・不拡散及び日本海周辺の環境汚染を防止する観点から(注14)、ロシアへの非核化協力として、ロシア極東地域に残された退役原子力潜水艦を安全かつ迅速に解体するための支援を実施している。ロシア退役原潜の解体は、第一義的にはロシアが責任をもって行うべきものであるが、ロシアだけですべての退役原潜を解体するには時間がかかりすぎるため、日本をはじめとする諸国が協力しているものである。本事業は「希望の星」と命名されており、2003年6月末に川口外務大臣が解体現場のズヴェズダ造船所を視察し、「希望の星」の第1号となるヴィクターIII級原潜解体プロジェクトの実施取決めが締結された後、12月、解体に必要な契約が締結され、解体に対する協力が開始された。本事業は、「G8グローバル・パートナーシップ」の一環としても位置付けられるものである。

 

 極東ロシアの退役原潜解体協力事業「希望の星」


 冷戦終了後、ロシアの核戦力は大幅に削減され、多くの原子力潜水艦が退役しました。しかし、ロシア国内の様々な問題から、退役原潜の解体は思うように進んでいません。日本に隣接するロシア極東地域でも、40隻以上の退役原潜が解体されないまま、日本海や太平洋の沿岸に係留されています。その多くは船体の腐食が進んでおり、このまま放置すれば深刻な放射能汚染を引き起こす危険性があります。また、艦内に残された核物質が不法に持ち出され、テロリストの手に渡る可能性も排除できません。これらの事態を防ぐため、退役原潜の迅速な解体が必要となっています。これは第一義的にはロシアの責任ですが、ロシアだけですべての原潜を解体するには時間がかかるため、諸外国からの協力を必要としています。日本も、核軍縮の観点に加え、日本海の環境保全と核物質の拡散防止という観点から、1993年以来、G7諸国とともに、国際的な枠組みの中でロシア極東における非核化協力を進めています。
 2003年1月、小泉総理大臣の訪露時に、極東における原潜解体協力事業の着実な実施が盛り込まれた「日露行動計画」が採択されました。このとき、本事業は「希望の星」と命名されましたが、これは解体現場となるウラジオストク郊外の造船所の名「ズヴェズダ(ロシア語で「星」)」にちなんだものです。同年2月、日本は「希望の星」の最初の事業として、ヴィクターIII級退役原潜1隻の解体に協力することを決定し、6月の新藤政務官及び川口外務大臣のウラジオストク訪問を経て、12月に日本の協力による解体作業が開始されました。作業は、使用済核燃料の搬出、艦体の切断、艦首・艦尾部分の解体、原子炉区画の保管施設への移送、という手順で進められ、2004年中に完了する予定です。

 
退役原子力潜水艦解体プロジェクトの実施取決め署名式を執り行う川口外務大臣(6月)

▼退役原子力潜水艦解体プロジェクトの実施取決め署名式を執り行う川口外務大臣(6月)


 

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