第3章 分野別に見た外交 

紛争予防
 近年、国連やG8をはじめとする国際社会においては、紛争を終結させる「紛争解決」だけでなく、紛争の原因を事前に摘み取り、紛争が発生した場合にはその拡大を防ぎ、さらに、紛争の早期終結を促進し、和平合意が成立した場合には社会の安定・復興を通じ、紛争の再発を防止するという包括的な「紛争予防(conflict prevention)」の重要性が広く認識されるようになった。
 国連でも、紛争予防に向けて様々な取組が行われている。アナン国連事務総長は、2001年に武力紛争の予防のための包括的な事務総長報告を発出した。2003年には、国連総会において、事務総長報告に関する検討が本格化し、日本はこの議論を進めるリーダー国グループの一員として、国連加盟国間や事務局における検討の促進に貢献した。その結果、国連の紛争予防能力の強化を目的とする決議が7月に採択された。これは紛争予防を包括的に扱った国連総会決議としては初めてのものである。
 ダイヤモンド原石が不法に採取・取引され、その資金が反政府勢力の資金源に充てられる、いわゆる「紛争ダイヤモンド」は、2000年の「紛争予防のためのG8宮崎イニシアティブ」で特定された分野の一つである。約2年間にわたる設立交渉を経て、2003年1月、紛争ダイヤモンドを規制するための国際的枠組みであるキンバリー・プロセス証明制度が正式に発足し、参加国数の拡大による制度の普遍化、紛争ダイヤモンドの取締りをより実効的に行うための制度の強化が図られてきている。
 また、G8における紛争予防の取組を二国間で具体化した初めての例として、日本は英国と協調してシエラレオネにおける武装解除、動員解除及び元兵士の社会復帰(DDR)(注9)を支援するために、紛争予防・平和構築無償を通じて支援を実施した。シエラレオネでは、2003年に武装解除及び動員解除が終了し、元兵士の社会復帰が順調に実施されてきている。

 

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