第3章 分野別に見た外交 

【在日米軍の駐留に関する諸問題】
 日米安保体制の円滑かつ効果的な運用のためには、在日米軍の活動が施設・区域周辺の住民に与える負担を軽減し、米軍の駐留に関する住民の理解と支持を得ていくことが重要である。米国もこの点を十分に認識しており、例えば、2002年12月の「2+2」会合においても、米軍と地域社会との間の「良き隣人」関係を促進するための努力を含め、在日米軍の駐留に関する諸課題の解決のために真剣な努力を継続する必要があるとの日米両国の認識が明らかにされている。
 特に、在日米軍施設・区域の約75%が存在する沖縄県の県民の負担軽減の重要性については、2003年5月及び10月の日米首脳会談や、11月のラムズフェルド米国防長官の訪日の機会にも確認されている。日本政府は、1996年12月にとりまとめた沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施に取り組んでおり、2003年3月には、土地の返還に関し、キャンプ桑江の北側部分(約38ha)が返還された。その他に、米軍の訓練及び運用の方法の調整、騒音軽減イニシアティブの実施、日米地位協定の運用の改善などの項目が既に実施されている。
 普天間飛行場の移設・返還問題については、日本政府は、1999年末の閣議決定「普天間飛行場の移設にかかわる政府方針」に基づき取り組んできており、2003年には代替建設協議会が設立された。このように、普天間飛行場の移設・返還に向けた作業は、地元との緊密な調整を踏まえつつ、着実に進められている。
 日米地位協定の運用の改善に関しては、国民の目に見える形で、一つ一つ成果を上げていくことが重要である。例えば、在日米軍施設・区域にかかわる環境問題については、2002年8月に発表された、在日米軍施設・区域内にあるポリ塩化ビフェニル(PCB)含有物資を米本土に搬出するとの米国防省の方針に基づき、2003年8月までに、その時点で使用済となっていたものがすべて米国に向け搬出された。今後とも、この分野においては2000年9月の「2+2」会合において発表された「環境原則に関する共同発表」を踏まえ、日米間で協力の強化に取り組んでいく。
 2003年7月から8月にかけ、日米地位協定の下での刑事裁判手続に関する日米交渉が行われ、4回の協議を行った。一連の協議を通じ、日本の刑事裁判手続における米軍人等の被疑者の取扱いなどについて議論が行われ、各々の立場についての理解を深めることができたことを確認したが、双方の立場の隔たりが埋まるには至らなかった。11月には、ラムズフェルド国防長官と川口外務大臣との間で交渉の早期解決の重要性につき改めて認識が一致したことも受け、政府は引き続き本件交渉の早期解決に向けて努力している。

 

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