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アジア太平洋経済協力(APEC)】
アジア太平洋地域の多様な21メンバーから構成されるアジア太平洋経済協力(APEC)は、域内の持続可能な発展を実現するため、貿易・投資の自由化、貿易・投資の円滑化、経済・技術協力を3つの柱として活動し、「開かれた地域協力」と「協調的・自主的な行動」を基本原則として、アジア太平洋地域における共同体意識の醸成、一体性の確保に貢献してきた。
日本経済の長期的発展・安定を確保する上で、日本の貿易量の約7割、直接投資の約4割を占めるAPEC域内での経済面での協力を深め、APECメンバーとの信頼関係を強化していくことが極めて重要である。また、毎年開催されているAPEC首脳・閣僚会議は、近年経済問題にとどまらず、テロ問題をはじめとする国際社会の主要な関心事項につき、首脳・閣僚間で率直な意見交換を行う有意義な場となっている。
2003年はタイが議長を務め、各種の関連会合がタイで開催された。特に6月に開催されたSARSに関するAPEC保健大臣会合は、APECの枠組みにおいて初めて開催される保健担当閣僚会合であった。中国、香港、台湾、カナダ等SARSの被害・影響が深刻な国・地域が参加するAPECにおいていかなるSARS拡大防止策がとられるかが注目された中、APECとしてSARSに関する取組をまとめた「SARSに関するAPEC行動計画」の着実な実施を要請するとともに、海外旅行者の健康検査・管理に関する指導原則を含むAPEC保健大臣声明を発出した。
10月にタイのバンコクで開催された首脳会議においては、WTOに関し、今後の交渉プロセス進展と再活性化について前向きなメッセージを発出したほか、日本が提案した「APEC構造改革イニシアティブ」に関し、小泉総理大臣が、従来の国境措置のみならず国内経済政策に焦点を向けた構造改革への取組が経済成長の実現にとって重要であり、各国・地域内において構造改革に取り組むことを首脳間で確約することを提案し、各首脳の支持を得た。
また、2001年以降実施されているテロ対策について、携帯式地対空防衛システム(MANPADS)の規制強化が決定されたほか、テロリストの撲滅や大量破壊兵器の拡散防止等の安全保障上の課題に対し、APECとして必要な措置をとることが首脳レベルで確約され、今後のAPEC首脳会議でこれらの課題につき議論することに合意した。さらに、SARSや生物テロ等の問題に対応するための協力について「健康安全保障に関するAPEC首脳声明」を採択した。このほか、北朝鮮の核開発問題についての議長サマリーが議長により読み上げられたほか、多くの首脳からAPECが新たな課題に対応していくことが求められているとの発言があったことを受け、今後のAPECの活動の方向性や効率性に関する議論を行うことに合意した。