第1章 総括:2003年の国際情勢と日本外交 

第一回六者会合
 8月27日から29日にかけ、北京において第一回六者会合が開催された。日本は、〔1〕北朝鮮は、全ての核計画を完全、検証可能かつ後戻りのできない形で廃棄する必要がある、〔2〕北朝鮮が核計画の廃棄を然るべく行うことを前提に、六者会合のプロセスにおいて、北朝鮮の安全保障上の懸念への対応やエネルギー支援について議論を深めていくことができる、〔3〕日朝平壌宣言に基づき諸懸案を解決し、北東アジア地域の平和と安定に資する形で正常化を行うという基本方針に変更はないといった日本の立場を明らかにした(拉致問題に関するやり取りについては3 拉致問題)。米国及び韓国からも、日本の立場に近い形でそれぞれの基本的立場が表明されたほか、中国及びロシアもそれぞれの立場を表明した。
 これに対し、北朝鮮側は、非核化は北朝鮮の最終目的であり、北朝鮮の目標は核保有ではないとしつつも、米国の北朝鮮に対する敵視政策ゆえに核抑止力を持たざるを得なくなった、かかる敵視政策が放棄されたと判断するためには、米朝間に不可侵条約が締結される必要がある等の主張を展開した。
 このように、問題解決に向けた実質的な進展は殆ど見られなかったが、閉会に当たり、中国の王毅外交部副部長は議長限りの総括として以下の6点を口頭で読み上げ、各代表団から拍手をもって受け入れられた。

-対話を通じて核問題を平和的に解決し、朝鮮半島の平和と安定を維持し、恒久的な平和を切り開くことに同意した。
-六者会合の参加者は、朝鮮半島の非核化を目標とし、北朝鮮側の安全に対する合理的な関心を考慮して、問題を解決していく必要があることに同意した。
-六者会合の参加者は、段階を追い、同時的又は並行的に、公正かつ現実的な解決を求めていくことに同意した。
-六者会合の参加者は、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらないことに同意した。
-六者会合の参加者は、ともに対話を通じ相互信頼を確立し、意見の相違を減じ、共通認識を拡大することに同意した。
-六者会合の参加者は、協議のプロセスを継続し、可能な限り早期に外交経路を通じ、次回会合の場所及び日時を決定することに同意した。

 

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