(3)日本の取組
【国際協調体制の構築に向けた取組】
日本は、イラク問題には、国際社会が国連等の十分な関与を得つつ一致団結して対応することが極めて重要であるとの観点から、米国の立場を支持しつつ国際社会と緊密に連携をとってきた。
対イラク武力行使以前には、イラクが国際社会に協力し、即時・無条件・無制限の査察を受け入れ、大量破壊兵器等の廃棄をはじめとする関連安保理決議を履行し、国際社会の懸念を払拭することが重要であるとの考えの下、外交努力を払ってきた。
その一環として3月には茂木外務副大臣を総理大臣特使としてイラクに派遣し、イラクが安保理決議1441によって与えられた最後の機会に即時に応えるべきであるとして、関連安保理決議を履行することを改めて強く求め、最後の翻意を促した。それ以前にも日本は、イラクに大きな影響力を有する周辺諸国とも緊密に連携し、問題の解決に向けて積極的に取り組んできた。2002年には、中山元外務大臣をイランに(12月)、高村元外務大臣をフランス、エジプト、サウジアラビアに(11月から12月)、及び茂木外務副大臣をヨルダン、シリア、トルコ(11月)、さらに2003年3月には再び中山元外務大臣をシリア、トルコに、高村元外務大臣をエジプト、サウジアラビアにそれぞれ総理大臣特使として派遣し、周辺諸国によるイラクへの働きかけが継続されることが重要であるとの考え方を伝えるとともに、中東地域の平和と安定に向けた取組につき意見交換を行ってきた。
武力行使開始以降も、日本は様々な外交努力を継続してきた。小泉総理大臣は米国によるイラクに対する最後通告後、いち早く米国の方針への支持を表明し、武力行使開始直後に、日米同盟と国際協調の重要性を両立させる努力を続けていくとした上で、米国の行動への支持を表明した。また、4月14日の米軍による全土掌握以前にも川口外務大臣は、ドイツ、フランス、英国(4月9日から13日)を訪問し、イラク復興にできるだけ多くの国が関与して国際協調を実現するべく働きかけた。これに続き、小泉総理大臣は4月26日から5月2日まで、安保理メンバーである英国、スペイン、フランス、ドイツの4か国及びギリシャ(EU議長国)を訪問し、国際協調の再構築と復興過程における国連の関与が重要であることを働きかけた。一方、川口外務大臣は、4月26日から5月3日までヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区及びシリアを訪問し、イラクの復興と中東地域の平和と安定に向けて、日本が中東諸国と密接に協力していく意向を伝えた。国連を通じた国際協調の実現に向けては、特にイラクの復興と安定に重要な意義を有する国連安保理決議1483(5月)及び同1511(10月)に関連し、決議の採択に向けて米国、英国ほかと連携しつつ様々な外交的働きかけを行った。さらに、12月、イラク復興支援に向けた国際協調の一層の強化を働きかけるとともに、自衛隊の派遣を含む人道・復興支援につき説明を行うために、総理大臣特使として橋本元総理大臣を英国、フランス、ドイツに、中山元外務大臣を国連に、高村元外務大臣をエジプト、サウジアラビアに、逢沢外務副大臣をヨルダン、シリア、クウェートに派遣した。また、川口外務大臣がイラン、アラブ首長国連邦を訪問し働きかけを行った(2004年1月)。そうした働きかけもあり、2004年3月には、ドビルパン外務大臣が訪日した際、文化やスポーツ、医療の分野等においてイラク復興のために日本とフランスが協力を行うことで合意した。