【世界経済の動向と持続可能な開発に向けた取組】
<世界経済の動向>
2003年の世界経済は、上半期こそ回復に弱さが見られたが、下半期には米国の強い景気の回復に主導されて世界的に景気回復が進んだ。
上半期は、イラク情勢の緊迫化が世界的に不透明感を高め、またSARSの感染拡大が一部アジア経済に悪影響を及ぼした。しかし、米国、英国によるイラクへの武力行使が早期に終結した後は、米国経済が力強い回復を見せ、SARSの影響を脱した中国も高い成長率をもってアジア地域の成長を牽引した。ユーロ圏の経済にも明るい兆しが出つつあり、日本経済も回復を示しているなど、世界経済は全体として着実な回復基調を見せている。
9月にメキシコのカンクンで行われた世界貿易機関(WTO)第5回閣僚会議は、先進国と開発途上国の調整がつかず、先進国間の足並みも乱れた結果として合意には至らなかった。このようにWTOラウンド交渉が難航する一方、多角的自由貿易体制を補完・強化するための取組として、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結への動きが活発化している。北米と中南米では米州自由貿易地域(FTAA)創設のための交渉が行われており、アジアにおいても日本、韓国、中国、インド及びASEANといった主要国・地域の間で自由貿易協定や経済連携協定に向けた取組が活発に進められている。
<持続可能な開発に向けた取組>
グローバル化の負の側面として貧富の格差が増大し、その影響が国際社会に拡散しつつある昨今、国際社会が協力して開発問題に取り組むべきであるとの認識は広く共有されている。現在、2000年に設定されたミレニアム開発目標(MDGs)や2002年に開催された国連開発資金会議、G8カナナスキス・サミット及び持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の成果文書などにより開発目標の共有が進められている。こうした流れを受けて、2003年も貧困削減をはじめとする開発課題への取組について国際社会の努力が続けられた。地球環境分野では、12月にミラノにおいて気候変動枠組条約第9回締約国会議(COP9)が開催され、京都議定書の運用面での準備が概ね整うこととなった。今後、京都議定書の早期発効に向け未批准国に対し、一層の働きかけを行っていく必要がある。