第3章 > 第6節 > 2 国内世論と広報及び諸外国の日本についての理解の増進
【総論】
国民から理解され、支持される外交を行っていくためには、外交政策について国民に情報を分かりやすく発信・提供し、また、日本外交のあり方について国民と幅広く意見交換を行い、国民とともに外交を展開していくことが不可欠である。
近年の国際関係の緊密化に伴い、外交問題として扱われる事柄が国民の生活に直接影響を及ぼすことが多くなり、国民の外交問題に関する関心は一層高まっている。外務省としては、このような高まりゆく国民の関心に的確にこたえ、説明責任を十分に果たすことが必要である。
また、外交政策は、刻々と変化する内外情勢、多様な関係者の利害等を総合的に勘案しながら進められる。このため、国民が外交政策の内容や背景を正確に把握するためには、外交当局が、必要な情報を適時に、分かり易い形で提供することが極めて重要である。また、めまぐるしく変化する国際社会の中で、日本の国益を最大化し、より良い国際秩序を構築していくためには、政府が、先見性をもって新たな考え方を国民に提示することも重要であり、そのための情報発信についても積極的に取り組んでいく必要がある。
さらに、諸外国に対する広報においても、諸外国の人々が、日本の一般事情や日本政府の政策を正しく理解し、信頼と好感を抱くことは、日本の外交政策の展開を容易にしていく上で欠くことのできない要素である。そのため、在外公館等を通じた広報事業や報道関係者への情報提供、有識者や報道関係者の訪日招待、インターネット等マルチメディアの活用により、日本の政策を公表し、説明するとともに、日本の行動の背景への理解を深めるため、日本社会の実情を多面的に紹介している。
【国内世論と広報】
国民に対する情報発信のため、外務省は、次のような改革及び活動を行っている。まず、2002年には、川口外務大臣自らの発意により、国民と外務大臣が直接対話を行う「外務省タウンミーティング」を開始した。4月に東京で第1回目のミーティングを開催して以降、大阪、札幌、名古屋、福岡において2002年度内に計5回実施した。今後も、外務省タウンミーティングを通じ、国民との対話を促進していく考えである。また、国民の声を外交政策形成過程により適切に反映させるために、広聴室を設置し、広聴活動を一層強化した。
外務省ホームページは、外交政策や国際情勢について、日々最新の情報を提供しており、今後、更に充実させていく考えである。同ホームページには、各国・地域情勢など、身近で有益な情報も掲載されており、開設以来多数の方が利用している。2002年4月からは、渡航関連情報等を「海外安全ホームページ」という独立したコーナーに編成し、更に詳しく、利用し易いものに改善した。ホームページ上の「外交政策Q&A」というコーナーでは、国民からの質問・意見等を受け付けており、多く寄せられた質問については、外務省の考え方をホームページに掲載するようにしている。また、若者による外務省員へのインタビューである「聞きたい!知りたい!外務省」を新しく始めたほか、省員のエッセイ等を掲載した「省員近思録」等の充実にも努めている。
特に国民の関心が高いと思われる重要な外交問題については、その背景を含め国民により詳細な情報を提供するため、定期刊行物への編集協力やパンフレットの作成、テレビの広報番組の制作などを通じて、分かり易い広報に努めている。さらに、外務省員と国民をつなぐ「外交の窓」、「外交クラブ」、「国際フォーラム」などの講演会やシンポジウムを全国各地で開催しているほか、若い世代の国際理解を促進するため、大学や高校での講演会も行っている。
外務省ホームページ
【諸外国の対日理解】
海外において広報活動を展開するにあたっては、日本は、各地域の対日関心の程度、関心の対象等を把握し、広報する内容や効果的な媒体を検討し、きめ細かい広報活動を展開している。対日認識をより正確に把握するために、対日世論の調査・分析も実施している。
在外公館では、講演会、シンポジウム等の広報事業を開催し、政治、経済、外交に加え、文化、芸術等の紹介も行っている。特に、対日理解を増進させるためには、知的交流が重要であるとの観点から、日本の有識者等を派遣し、講演を行う講師派遣事業を重視している。また、青少年層に対する広報や日本への外国人観光客誘致に関連した広報も重点分野としている。
外国の報道関係者への情報提供や働きかけについては、在京の特派員に対して随時行っているほか、政府要人の外国訪問や外国要人の日本訪問等の機会にも、幅広く行っている。また、日本に関する誤解や偏見に基づく海外の報道については速やかに反論を行っている。さらに、海外のテレビ局関係者を日本に招待し、日本に関連する番組の取材や放映を支援しているほか、世論の形成に大きな影響力を有する有識者(オピニオン・リーダー)や報道関係者を訪日招待し、日本の実情を紹介している。
近年急速に普及しているインターネットを通じた日本紹介も海外広報の重点分野の一つである。日本の外交政策に関する情報を発信する「外務省ホームページ」については、英語版に加え、2000年より一部情報について、韓国語、中国語等多言語による情報提供を行っている。また、日本の一般事情を紹介する「Japan Information Network」(注)により対日理解の増進に努めている。また、多くの在外公館でも独自のホームページを開設して、現地に密接した情報を現地の言語もしくは英語で発信している。
印刷物資料及び映像資料を利用した特色ある広報活動も欠かせない事業となっている。2002年は、ワールドカップ・サッカー大会の日韓共催を契機に、日本紹介広報の一環として、日本における試合開催地を紹介した映像資料を作成し、日本を発着する国際線機内や各国テレビ局での放映用に提供した。また、アフガニスタンの復興支援や日本海呼称問題に関して、日本の取組、立場を紹介した印刷物資料を作成し、国際会議での配布や報道機関への提供を行っている。さらに、日本への観光誘致促進を目的とした広報番組を作成し、衛星を通じアジア太平洋地域に向けて放映を行う予定である。
【諸外国における日本についての論調】
2002年8月、米国紙に、世界の報道機関は日本にある支局を次々に閉鎖しているという趣旨の記事が掲載された。この記事については、事実関係にいくつかの誤りがあり、その点について日本政府から同紙に対し指摘を行った。だが、同記事の指摘にもあったように、日本に対する世界の報道機関の関心が低下しているとの警鐘〔けいしょう〕は、日本国内でも関心を呼び、いくつかの主要紙や雑誌に同記事の内容が紹介された。
しかし、9月の小泉総理大臣による初めての北朝鮮訪問は、国際社会から高い評価を受け、日本外交に対する関心が高まった。その後も、拉致問題の展開、さらに北朝鮮の核兵器開発計画が明らかになったことによる北東アジア地域の緊張の高まりを受け、日本がこれら諸課題にどのように対応するかにつき、世界の大きな関心を集めた。また、日本経済に関しても、小泉総理大臣による構造改革努力に関心が集まり、日本経済が抱える問題点、現在の改革努力及び改革への障害に着目した報道が盛んに行われた。
2003年においても、北東アジア地域の緊張緩和に向けた取組、テロとの闘いや大量破壊兵器等の拡散問題に対する取組、アフガニスタン、スリランカ、インドネシアのアチェ、フィリピンのミンダナオ等での「平和の定着」に向けた日本の外交努力や、世界経済の先行きが不透明な中で、今後日本はどのように経済を立て直し、また、周辺諸国との経済・貿易関係を進めていくかといった点等に、海外の報道機関の関心が寄せられると思われる。