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第2章 地域別外交


第1節 アジア大洋州


総論

 日本のアジア大洋州外交を考えるとき、次の四つの基礎的背景を念頭に置くことが重要である。

 第一に、アジア大洋州地域は、世界の人口の約5割強(約33億4,500万人)(注1)を占め、域内の国内総生産(GDP)総額も世界の約3割弱を占める(8兆6,425億米ドル)(注2)など、経済力を始めとする総合的な潜在力が一層高まる可能性を持っている一方で、金融危機や紛争等の不安定要因を抱えており、その政治・経済システムがいまだ脆弱〔ぜいじゃく〕な面を有している。第二に、この地域において、中国の影響力が急速に伸長し、また、インドの存在感も徐々に高まっている。第三に、朝鮮半島、台湾海峡、インド・パキスタン関係等の国家・地域間の緊張及び東南アジアにおけるテロ事件の続発や海賊行為といったいわゆる「国境を越える問題」の深刻化など、地域の平和と安定を妨げる不安定要素が存在している。第四に、世界各地で地域協力の強化に向けた動きが高まっている中で、この地域においても東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)、日中韓協力や自由貿易協定・経済連携協定(FTA/EPA)の推進といった形で、幅広い分野における地域協力が実現してきている。

 このような現状の中で、アジア大洋州地域に民主的な統治制度や先進的な経済システムを徐々に根づかせていくため、地域の諸国を支援し、これら諸国と連携して地域の平和・安定と繁栄を実現していくことが、日本の安全と繁栄を確保するために不可欠であり、国際社会全体の平和・安定と繁栄の実現にも貢献していくものと考えている。

 このため、日本は以下の三つを基本方針として、アジア大洋州外交に取り組んでいる。第一に、この地域に安定した国際関係を構築するため、不安定化の動きに対する抑止力を引き続き確保しつつ、対話を中心に問題の解決を図っていくこと、第二に、域内の諸国との間で、経済分野を始めとする様々な分野での地域協力を積極的に推進し、この地域全体の近代化を主導すること、第三に、こうした外交活動と並行して、必要に応じ、域外の主要国との間で対話・協力を継続し強化していくことである。

 このような基本方針に基づき、2002年、日本は、9月の日朝首脳会談や11月のASEAN+3首脳会議を始めとする各国・地域の首脳・閣僚との二国間会談、多国間会議を通じた対話を進めてきた。また、日・ASEAN包括的経済連携構想の実現に向けたタイ、フィリピンとの二国間の作業部会や日本とASEAN全体との委員会の設置に向けた検討を行っているほか、日中経済パートナーシップ協議、日韓FTA共同研究会、日中韓協力等の経済分野を始めとする様々な分野での地域協力を積極的に推進してきた。さらには、アジア太平洋経済協力(APEC)、アジア欧州会合(ASEM)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)等の多国間の枠組みを始め、域外の主要な諸国との首脳・閣僚会談を通じ、域外諸国との連携も強化してきた。


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