「緊急支援」、特に紛争地での活動が多い難民支援の現場では、先を確実に予測することは大変難しいものです。限られた情報の中で最善のプランと最悪のプラン、その中間など、様々なシナリオを用意し、状況に応じ判断して事業を進めていきます。
世界中を揺るがした米国同時多発テロは、当時アフガニスタンでの支援活動の開始を控えていたジャパン・プラットフォーム(JPF)にも大きな衝撃を与えました。当時のアフガニスタンは、過去20年間続いた紛争と近年の深刻な干ばつ被害により周辺国に難民が流出し続けており、国際社会からの大規模支援もほとんどなければ報道されることも滅多にない忘れられた国でした。2001年8月、JPFは当時タリバン政権下であった現地で調査を行い、日本のNGO複数団体で国内避難民キャンプを共同運営するという方針を打ち出したのです。
しかし、その直後に米国同時多発テロが発生し、国連機関等はアフガニスタンから一時撤退、JPFも最初のプラン変更を余儀なくされました。そこで同年10月、いつ終わるとも分からない空爆が続く中、さらに大規模に発生するであろう難民を受け入れるキャンプを隣国パキスタンで運営するという計画を立てたのです。
しかし実際は、国際社会で予測されていたほど難民は周辺国に流出してきませんでした。疲弊した人々は国外脱出を図ることもできず国内にとどまっていたのです。そこでJPFは11月、アフガニスタンに入国し各NGOそれぞれの得意分野をいかした支援活動を実施することを最終決定しました。緊急事態から復興への流れの中、NGOは今もアフガニスタンで活動を続けています。
一方、干ばつや雪害などの自然災害においては、緩やかな緊急状態が発生することもあります。2002年9月から、JPFが取り組んでいる南部アフリカ飢餓対策事業がこれにあたります。南部アフリカでは干ばつ等災害が数年間続いており、農村部では栄養失調の子どもを目にします。これ以上干ばつが進んだ場合、深刻な事態に陥ることが予測されています。「緊急支援」というと突発的な地震災害や難民発生を連想しがちですが、このように継続している状態の中で起こり得る緊急事態への対応も重要であると、私たちは考えています。
いずれにしても「緊急支援」の現場では、情勢に応じ的確に行動することがとても大切です。必要不可欠なプラン変更にその都度柔軟に対応することが、支援活動の成否を分ける重要な鍵〔かぎ〕になるのです。
執筆:ジャパン・プラットフォーム