私は国連で、どちらかというとスペシャリストとして、環境と国際法の分野で仕事をしてきました。専門といっても仕事の内容は、海洋の汚染防止、オゾン層破壊物資の規制、移動性動物の保護、特権免除交渉、国際テロ行為の抑制と処罰、PKO、国連憲章の適用解釈、国際刑事裁判所の設立準備、国際環境法の体系化など多岐にわたり、職種も、条約の草案の作成、交渉、政策、行政、財政といった実務的なことから研究、技術援助、プロジェクトの作成、モニタリング、施行、評価等、様々な仕事に携わることができました。その中で多くの人々と言語や国籍、文化、社会的な違いを超えて共通の目標に向かって協力する機会に恵まれたことが貴重な経験となっています。今までの仕事の中で印象に残るものは、南極での環境保護の作業、カンボジア新政府樹立のための国連暫定機構で明石事務総長代表の下で行った平和維持活動、そして現在取り組んでいる有害廃棄物の国際規制の仕事が挙げられます。
国連で働く日本人職員の数は望ましい職員数を大きく下回り、大きな増加を短期間に実現することがなかなか難しいのが現状ですが、日本政府の支援の下に、国連や専門機関において、幹部職員のみならず、中堅、若手職員、AE/JPO(*)の増員等、活躍が著しいことも喜ばしい事実です。
国連のキャリアの長所としては、
男女の差別なく均等な条件と機会を与えられて仕事ができること、
国連の仕事は非常に広範囲な分野に及んでいて、スペシャリストとしてもジェネラリストとしても活躍できる場が多くあること、
職場において、社会、文化、人種の多様性を尊重することが仕事の基礎となっていること、
世界の様々な国々、特に開発途上国で具体的な現場の問題に取り組む機会が多くあること等が挙げられます。グローバル化が進む中、国連その他の国際機関において、個々の才能をいかし、信念、目標を実現できる職場として選択する日本人が多くなることを期待しています。
(*)機関によりAE(Associate Expert)、JPO(Junior Professional Officer)などと称されているもので、国際機関職員志望者を日本政府の経費負担で原則2年間国際機関に派遣し、職務経験を積むことにより正規職員への道を開くことを目的とした制度であり、現在は毎年65人を派遣している。