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(9)日・南ア共同コミュニケ「新世紀の日本と南アフリカのパートナーシップ」(仮訳)


 (2001年10月2日、於:東京)

 1.タボ・ムヴイェルワ・ムベキ南アフリカ共和国大統領夫妻は、日本国政府招待により、ズマ外務大臣、ヌグバネ芸術・文化・科学技術大臣、アーウィン通商産業大臣、バリ・ムーサ環境・観光大臣、ディディザ農業・土地大臣、チャバララ=ムシマング保健大臣の6名の閣僚等と共に、2001年10月1日から3日まで日本国を国賓として訪問した。訪問中、同大統領夫妻は、10月1日、皇居において天皇・皇后両陛下と会見した。
 2.ムベキ大統領は、10月1日、小泉総理大臣と会談し、二国間問題、アフリカの諸問題及びその他の多国間関係につき幅広く意見交換を行った。この中で、ムベキ大統領より、天皇皇后両陛下に対する南アフリカへの御訪問の招請があらためてなされた。また、同大統領より小泉総理に対しても公式訪問の招請があった。小泉総理より、森前総理が本年1月のアフリカ訪問において表明した対アフリカ政策を継承し、「アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄はなし」、「アフリカ問題への取り組みこそ、我が国グローバル外交の最重要課題のひとつである」との認識に基づき、開発支援と紛争予防・難民支援を車の両輪として対アフリカ協力に取り組むとの立場を再確認した。
 3.意見交換を通じて、両国は、平和、民主主義、公正及び平等に基づく共通の世界秩序に向けた追求において、両国が重要なパートナーであることを相互に認識するとともに、既に存在する両国の包括的な政治的、経済的関係を更に深化させ、強化し、また、より幅広いものとする必要性を認識した。
 4.小泉総理大臣及びムベキ大統領は、9月11日に米国で発生したテロ事件が、自由、平和、民主主義に対する重大な挑戦であり、決して忘れられるものではないと強く非難した。また、両首脳は同事件により命を落としたすべての方々のご家族及び友人の方々に対して哀悼の意を表明した。両国は国際社会がテロに対して一致結束して立ち向かう必要性があると強調し、両国がそのために可能な限りの措置をとっていくことを確認した。
 5.両国は、21世紀の国際社会が直面する諸課題の多くについて立場を共有することを確認し、国際社会の平和と繁栄の達成に向けて南北間の協力関係を一層強化するとの決意を表明した。日本側は、これまで南アフリカが非同盟諸国運動及び英連邦諸国会議といった国際的なフォーラムの議長国として果たした指導力を賞賛すると同時に人種主義に反対する世界会議等の国際会議における貢献を評価した。
 6.両国は、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」の成功に向けて一致協力することとした。また、両国は環境問題に関し、本年10月から11月にかけて行われる気候変動枠組み条約締約国会議(COP7)や、2003年3月に京都で開催される「第3回世界水フォーラム」を念頭に置き、地球温暖化対策や水資源を巡る問題を含む様々な地球規模の環境問題への国際的な取組みを進める上での協力を強化することとした。
 7.両国は、途上国の正当な関心に耳を傾けつつ、本年11月に予定されるカタルでのWTO閣僚会議において、WTOルールの強化、改善等を含む十分に広範な交渉議題の下での新ラウンド立ち上げを目指し、それぞれ協力しつつ積極的な役割を演ずることを確認した。
 8.両国は、国連が世界の平和、安定、及び繁栄のために果たす役割の重要性に留意し、常任理事国及び非常任理事国双方の議席拡大を伴う安保理改革を含む国連改革を早期に実現するために共に取り組むことを確認した。この関連で、ムベキ大統領は、日本の常任理事国入りに対する南ア政府の支持を再び表明した。同様に、日本は、アフリカを含む開発途上国の改革された安保理における代表性に対する支持を表明した。
 9.両国は、日本のイニシアティヴにより、昨年7月の九州・沖縄サミットで初めてG8と開発途上国の首脳の対話が実現し、更に、このような対話が本年7月のジェノヴァ・サミットへと引き継がれたことは、南北協力の象徴的な成功例であったと認識した。日本側は、IT分野における南アフリカとの協力を重視し、アフリカへのIT普及に向け協力を推進することを表明した。また、日本側は、5年間で30億ドルの「沖縄感染症対策イニシアティヴ」を世界で最も感染症の影響を受けるアフリカ諸国に対しても積極的に活用していくことを再度表明すると同時に、国際社会が期待を寄せる世界エイズ保健基金構想に2億ドルの資金提供を行う意図をあらためて伝えた。 南アフリカ側は、本年、日本よりアフリカ各地に対し、ITミッション及び感染症ミッションが派遣されたことを歓迎した。
 10.両国は、アフリカの開発が、アフリカによる「問題解決のためのオーナーシップ(主体性と自助努力)」と「国際社会とのパートナーシップ」の原則に基づいて行われるべきことを確認した。両国はアフリカ統一機構(OAU)首脳会議によって2001年7月に採択された「ミレニアム・アフリカ復興計画/新アフリカ・イニシアティヴ(MAP/NAI)が、民主化、良き統治、持続的開発の原則を強調していることを歓迎した。日本側は、「アフリカ開発会議(TICAD)」プロセスを通じ、また、他のG8諸国とも協力しながら同イニシアティヴを積極的に支援して行く方針を表明するとともに、本年12月に予定されるTICAD閣僚レベル会合でもMAP/NAIを中心的な議題の一つとして取り上げることを提案した。南アフリカ側はTICADプロセスやサミット・プロセスを通じてアフリカ問題に対する国際社会の関心を喚起するために果たした日本の指導的役割を評価した。両国は、国際社会がアフリカの開発への貢献に関する呼びかけに対し、注意を払うことを確信している旨表明した。
 11.両国は、両国間の対話が活発化している例として、今般、両国経済界の間で日・南ア・ビジネス・フォーラムが設置され、10月3日に第一回会合が行われることを歓迎した。また、両国は、近年日本から南部アフリカ地域への技術移転や雇用創出に繋がる優良な投資案件が続いていることを歓迎した。日本側は、南部アフリカを含むアフリカ諸国に対する更なる民間投資を奨励することを表明し、南アフリカ側は、自国における投資環境改善努力の重要性を認識した。両国は、両国経済間における貿易、投資、合弁企業の増進への期待を示した。
 12.更に、日本側は、南部アフリカ開発共同体(SADC)の改革及びアフリカ統一機構(OAU)のアフリカ連合(AU)への移行に関する顕著な進展を歓迎した。日本側はこれらの機関の強化を支援して行く旨表明した。
 13.両国は、紛争予防と解決に関するアフリカ諸国の指導者達による努力を歓迎し、特にコンゴー民主共和国における国内勢力間の対話の開始に向けての進展は、同紛争解決と同国の国民和解にとり極めて重要である点を認識するとともに、ブルンディにおける国民和解の進展とジンバブエにおける土地問題の解決に向けての進展を認識した。
 14.日本側は、国民和解の精神の下に国造りを追求している南アフリカの努力を高く評価し、貧困撲滅削減と社会格差の解消を目指した経済・社会改革の推進努力を支援して行くことを表明した。
 15.小泉総理大臣及びムベキ大統領は、平和、民主主義、公正及び平等に基づく共通の世界秩序に向けた追求において、両国がお互いに重要なパートナーであることを認識した98年4月9日の日・南ア共同コミュニケ「21世紀への日・南ア・パートナーシップ」の内容を再確認した。また同コミュニケに基づき両国の関係が着実に強化されていることを歓迎するとともに、幅広い分野における均衡のとれた協力関係を築くべく努力していく決意を新たにした。両国は、これまで4回行われている「日・南ア・パートナーシップ・フォーラム」が様々な分野における両国関係を強化していると指摘し、幅広い分野における具体的提案の実施を促進するために有効であることを確認した。更に、両国は同フォーラムの枠組みの中で、国連改革、環境問題、軍縮・不拡散、食糧安全保障、人間の安全保障等のグローバルな問題及び紛争、難民等のアフリカが直面する問題に関する高官級年次定期協議を行うことで一致した。
 16.両政府は、科学技術分野における協力の進展を歓迎しつつ、科学技術協力協定締結に向けた交渉を開始することを決定した。また、両政府は、平等及び相互利益の原則に基づく科学技術協力協定を、アフリカ大陸の国との間ではじめて締結することは大きな意義があるとの点で一致した。
 17.農業・農村開発分野に関し、南ア側は国際協力事業団(JICA)を通じた日本の人材育成に関する協力を認識し、両国はこれらの分野において現在行われている協力の重要性を再確認した。
 18.両国は、二国間関係における観光、文化・スポーツ交流の重要性を強調し、全てのレベルで心と心が通い合った相互理解と友情を育む必要があると認識した。両国は、日本から南アフリカへの観光客の増加について留意し、また、両国は、JETプログラムによる南アフリカの青年の招聘や青年海外協力隊の派遣を通じた青少年交流を促進していくことで一致した。

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