第3章 > 1 > （5）大洋州
アジア及び大洋州
【総論】
2001年、大洋州では、オーストラリアにおいて連邦議会選挙が行われ、与党保守連合が勝利し、ニュージーランドでは、クラーク首相による安定した政権運営が行われた。また、太平洋諸島地域では、引き続き注視する必要はあるものの、安定化に向けた動きが見られた。日本は、太平洋諸島各国の国連等の国際的枠組みにおける存在感の高まりやグローバル化の進展に伴う諸課題に共に取り組んでいくことの必要性を認識しており、2001年もこれらの国々との関係の強化に積極的に取り組んできた。
【大洋州情勢】
2001年に連邦制成立100周年を迎えたオーストラリアにとって最大の出来事は、11月に実施された連邦議会選挙であった。当初の予想では、労働党が勝利するものと考えられていたが、国外での事件が選挙に大きく影響し、与党保守連合が勝利した。
８月末に難民433名を乗せたインドネシアの船がオーストラリア付近の公海でノルウェー船籍のタンパ号に救助される事件が発生したが、不法移民問題を抱えているオーストラリア政府は、タンパ号が領海内に入ることを拒否し、ニュージーランド、ナウル等において庇護希望者が難民審査を受けることになった。また、オーストラリア政府は、９月に起こった米国同時多発テロに対し、米・オーストラリア・ニュージーランド間の安全保障条約を適用し、集団的自衛権の行使として積極的な対米軍事支援を行い、テロと対決する姿勢を明確にした。このような政府の対応が国民の支持を得た結果、11月10日に実施された連邦議会選挙では、ハワード首相の率いる与党保守連合が下院議席の過半数を確保し、11月26日に第３次ハワード内閣が成立した。
ニュージーランドでは、クラーク首相が安定した政権運営を行い、高い支持率を維持した。国防面では、国防支出計画に基づき陸軍の近代化を優先するとともに、空軍と海軍については、輸送や巡視等の非戦闘機能を重視し、空軍攻撃部隊を廃止した。米国同時多発テロに関しては、アフガニスタンに対する食糧支援を行ったほか、特殊部隊派遣等の支援を決定した。経済面では、2000年後半以降の通貨安による輸出関連産業の好況もあって、経済成長率がプラスに転じ、失業率も12年振りの低水準（5.6％）となった。また、１月にシンガポールとの間で経済緊密化パートナーシップ協定が発効した。
2000年にフィジーとソロモンで政治的混乱が相次ぎ発生した太平洋諸島地域では、2001年には安定化に向けた動きが見られたものの、引き続き注視していく必要がある。フィジーでは９月に総選挙が実施され、民主主義に復帰した。しかし、ガラセ新首相がチョードリー前首相率いる労働党を排除した形で組閣したため、その合憲性について司法判断が待たれているところである。ソロモンでは、12月に総選挙が平和裡に実施された。しかし、2000年10月にガダルカナル人とマライタ人の両武装勢力間で締結された和平協定に定められた武器回収等の履行については、期待どおりの進展を見せていない。また、パプアニューギニアでは、８月に、ブーゲンビル紛争に関して、武器回収計画、自治政府の創設、ブーゲンビルの最終的な地位に関する国民投票の権利の三つを柱とする和平合意が成立した。
【日本との関係】
オーストラリアとの関係においては、二国間関係の更なる強化のための積極的な動きが見られた。４月、21世紀における日本とオーストラリアの関係のあり方を検討するため、両国の政府・民間の有識者が参加して日豪21世紀会議がシドニーで開催され、政治・安全保障、経済、社会・文化・科学技術の各分野における協力関係を一層緊密化するための提言を盛り込んだ日豪の創造的パートナーシップのためのシドニー宣言が採択された。
フィジー及びソロモンとの関係については、公正かつ民主的な総選挙の実施を支援するため、日本は９月のフィジー総選挙では10名、12月のソロモン総選挙では５名の選挙監視要員を派遣した。
８月には、小島外務大臣政務官がナウルで開催された太平洋諸島フォーラム（PIF）域外国対話に参加し、2000年の太平洋・島サミットにおいて日本が提唱した太平洋フロンティア外交を一層推進していくとの姿勢を明確に示した。
９月には、森前総理大臣がミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国及びフィジー諸島共和国を訪問した。森前総理大臣は、フィジーにおいて、太平洋・島サミットのフォローアップの一環として、国際協力事業団（JICA）、日本貿易振興会（JETRO）及びPIFの共催によって開催された国際シンポジウムに出席した。
トンガ国王トゥポウ４世と会談する小島外務大臣政務官（８月）
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