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第2章 > 第4節 > 5 原子力の平和利用及び科学技術分野での国際協力

5 原子力の平和利用及び科学技術分野での国際協力



【国際原子力機関(IAEA)による保障措置の強化・効率化】
 国際原子力機関(IAEA)は、原子力の平和利用活動における核物質が軍事転用されないことを確保するため、査察を含む保障措置制度を設けている。1997年には、これまでの保障措置制度を強化するための追加議定書が採択され、2001年10月現在、57か国がこの追加議定書に署名し、日本を含め22か国が締結している。
 2001年6月には、日本は、IAEAとの共催により、アジア太平洋地域の15か国の軍縮・核不拡散担当部署の政府関係者を招いて、アジア太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議を開催した。この会議において、アジア太平洋地域における核の拡散防止が地域の安定にとって重要であり、核の拡散防止を維持するためにIAEA保障措置の強化が必要との認識が共有された。また、このような会議が、多くの国や地域に対して、追加議定書を締結することがIAEAの保障措置を強化させるために重要であることを認識させる有効な機会となるとの見解を共有し、同様の会議が他の地域でも開催されることが望ましいとの考えで一致した。
 IAEAは、今後、中央アジアやアフリカ地域で同様の会合を開催することを検討しており、核不拡散強化を国是とする日本は、引き続きこうした活動を支援していく考えである。

【科学技術分野の国際協力】
 科学技術は、経済・産業や国の安全保障活動を支える基盤的要素である。日本は、「科学技術のための外交(外交を通じ、国際科学技術協力を促進する)」及び「外交のための科学技術(日本の重要な資産である科学技術を外交の場で積極的に活用する)」の両面にわたり、様々な取組を進めている。一国では実施できない大規模な国際プロジェクトは、国際協力が不可欠である。例えば、宇宙協力の分野において、日本は、米国、カナダ、欧州諸国、ロシアとともに、2006年までの国際宇宙ステーション完成を目指している。このステーションでは、2000年12月より搭乗員の常駐が開始され、日本の担当部分である日本実験棟の建設は、2004年から開始される予定である。また、国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの実現可能性を実証するための国際共同プロジェクトである。さらに、海洋観測(ARGO)、深海掘削(IODP)等のプロジェクトを行っている。
 「科学技術のための外交」は、一国では解決できない問題にも取り組んでいる。例えば、生命科学の分野において、近年のバイオテクノロジーの急速な進歩が医療の発達をもたらすことが期待される一方で、ヒトクローン問題など、人間の尊厳にかかわる重大な問題の発生を引き起こしている。日本は、生命倫理や人権の尊重と科学技術の発展が調和のとれたものとなるよう、国連、G8等の場を通じて国際社会に働きかけている。
 科学技術推進のため、日本は、定期的に二国間合同委員会等の会合を開催し、科学技術政策に関する情報交換、具体的な研究協力について協議を行っており、約30か国との間で科学技術協力協定を締結している。2001年には、オーストラリア、ロシア、韓国、オランダ、フィンランド等と会合を行った。さらに、日本は、経済協力開発機構(OECD)等様々な多国間の取組も推進している。
 また、軍縮、ODA、地球環境、人道支援、安全保障等多くの外交目的に科学技術が活用されている。一例として、軍縮・不拡散問題に取り組むために科学技術を活用している国際科学技術センター(ISTC)が挙げられる。ISTCは、日本、米国、EU、ロシアが中心となり、1994年にモスクワに設立され、旧ソ連諸国の大量破壊兵器関連研究者・技術者の民生転換のための支援を行っている。2001年10月のISTC運営理事会で、米国同時多発テロも踏まえ、不拡散問題への取組が一層重要とする声明が発出された。


 国際宇宙ステーション想像図(提供:米国航空宇宙局(NASA))

国際宇宙ステーション想像図(提供:米国航空宇宙局(NASA))



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