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(3) 日韓関係



【総論】
 民主主義、自由主義、市場経済などの基本的価値を共有し、日本にとって政治、経済上、極めて重要な隣国である韓国との関係では、1998年の金大中(キム・デジュン)大統領の日本訪問及び1999年の小渕総理大臣の韓国訪問を通じ、両国間の過去の問題に一区切りがつけられ、21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップの構築が合意された。それ以来、日韓関係は大幅に改善されてきたが、2001年には、歴史教科書問題、小泉総理大臣の靖国神社参拝や北方四島周辺水域における韓国漁船の操業問題等が政治問題化した。

【日韓間の諸課題】
 歴史教科書問題については、4月に発表された日本の中学校歴史教科書の検定結果に対し、韓国が再修正を要求してきた。日本で精査した結果、2か所については訂正する必要があると判断し、7月、検討結果を韓国に伝達した。しかし、韓国は、これを不十分とし、日本文化開放の追加措置を中断する等の措置を公表した。靖国神社参拝問題については、8月13日に小泉総理大臣が参拝したことに対し、韓国から遺憾の意の表明があった。北方四島周辺水域における韓国漁船の操業問題については、度重なる日本の申し入れにもかかわらず、韓国漁船は、ロシアからの漁獲割当に基づき、8月に北方四島周辺水域に入域した。
 こうした日韓間の諸課題を乗り越え、首脳間の個人的信頼関係を築くことを目指し、10月15日、小泉総理大臣が韓国を訪問したほか、20日の上海でのAPEC首脳会議の際にも首脳会談を実施した。この中で、両首脳は、未来志向の友好関係を発展させるべく、具体的かつ積極的な協力を行っていくことが重要であるとの点で一致した。その後、首脳会談で協議された諸事項につき、両国間で協議を重ねた結果、以下のとおり、大きな進展が見られた。
 まず、歴史教科書問題については、10月の首脳会談において、両国政府が歴史専門家の共同研究会を早期に立ち上げるために協力し、同研究会の円滑な運営を支援していくことで意見の一致を見た。靖国神社参拝問題については、10月の首脳会談において、小泉総理大臣から、内外の人々がわだかまりなく平和の祈りを捧げられる場についての検討会を年内にも立ち上げたい旨表明し、12月には、「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」第1回会合が開催された。また、北方四島周辺水域における韓国漁船の操業問題については、協議を継続した結果、年末に妥結し、韓国漁船は同水域において操業しないことになった。さらに、3月の小泉総理大臣の訪韓では、首脳会談において、種々の具体的な協力を着実に実施していくことを再確認した。
 2002年は、5月末から6月末までの1か月間、サッカーのワールドカップが日韓両国により共催される年であり、また、日韓国民交流年として、多彩な文化・国民交流事業が行われる年でもある。両国の政府と国民が、手を携えてこれらを成功させ、両国間の交流と相互理解を一層堅固にすることを通じて、2002年を日韓の協力関係にとって歴史的な年とすることが極めて重要である。このような観点に基づき、日本は、2002年1月1日から、韓国国民に対する査証を大幅に緩和した。
 なお、竹島をめぐる領有権問題が日韓関係の諸課題の一つとして挙げられるが、竹島は、歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土であり、このような日本の立場は一貫している。今後とも両国で粘り強く話し合いを積み重ねていく方針である。

【日韓経済関係】
 日韓経済関係については、1999年3月の小渕総理大臣の韓国訪問の際に発表された日韓経済アジェンダ21に基づいて、両国間の貿易投資等を促進し、日韓経済パートナーシップを更に確固たるものとすることを目指して、各種協議が行われている。投資協定については1999年9月から交渉を開始し、9回の本協議が行われ、2001年12月に基本合意に達し、2002年3月の小泉総理大臣の訪韓の際に署名が行われた。自由貿易協定(FTA)については、2000年9月の日韓首脳会談で日韓双方の民間人で構成するビジネス・フォーラムの設置が合意された。同フォーラムは、2002年1月に包括的な経済連携協定を目指して両国政府による協議を求める共同宣言文を発出し、政府に報告書を提出した。この提言を受け、3月の首脳会談では、日韓FTAに関する産官学研究会を設置することで一致した。航空問題については、ワールドカップ共催を控え、航空輸送力の増強が図られている。

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