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(3) アジア太平洋経済協力(APEC)


 アジア太平洋経済協力(APEC)は、アジア、大洋州、北米、中南米、ロシアといったアジア太平洋地域の21のメンバーからなり、経済規模の面から見て世界最大の地域協力である。APECは、貿易・投資の自由化及び円滑化、そして経済・技術協力という3本の柱に基づく活動を進めることにより、域内の持続可能な発展を実現することを目的としている。開かれた地域協力や各メンバーの協調的自主的な行動の尊重はAPEC特有の原則・特色であり、この地域における共同体意識の醸成に大きく貢献してきた。また、多様なメンバーによる共同活動は、APECとしての一体性を高めてきた。
 日本は日本経済の長期的な発展の確保、アジア地域内の信頼関係の一層の強化、域内の政治的安定への環境醸成等への視点からAPECをアジア太平洋地域の経済面での協力の基本的枠組みとして重視し、APECにおける協力に積極的に取り組んでいる。
 2001年10月に上海で開催されたAPEC首脳・閣僚会議は、こうしたAPECの貢献や役割を改めて認識し、新世紀におけるAPECのあり方を追求する良い機会となった。従来、APECにおいては、経済問題を中心に協議が行われてきたが、今回の会議では直前に発生した米国同時多発テロの重大性に鑑み、テロにいかに対処していくかに大きな関心が集まり、真剣な協議が行われた。その結果、宗教的・文化的にも多様なメンバーからなるAPEC首脳の間で、テロを強く非難し、反テロのための国際協力を強調する声明が発出されたことは、国際社会の連帯を示す上で極めて有意義であった。
 世界経済が同時減速の様相を示していることを踏まえ、今回の会議ではAPEC域内における経済の早期回復に向け意見交換が行われた。その結果、首脳宣言において、域内の中長期的な成長見通しに対して揺るぎない自信が表明されたほか、経済成長を向上させるため適切な政策・措置を採用し、マクロ経済政策対話を強化していくとの決意が表明された。日本は、「構造改革なくして成長なし」との決意の下、民需主導による自律的な経済成長の達成を目指して進めてきた構造改革の進展状況につき説明した。構造改革については、1997年から1998年にかけて発生したアジア通貨・金融危機以降、APECにおいて健全な国内・国際市場の形成を目指して市場機能の強化が図られてきたことから、各メンバーにおいても構造改革を実施することが必要であるとの認識が浸透しており、こうした努力を加速させていくことで一致した。
 グローバル化の進展に伴う諸課題に関する協議では、グローバル化が経済成長を促進させ、人々の生活水準を向上させる推進力であるという認識が示された一方で、グローバル化による利益を得るための機会がメンバー間、そしてメンバー内部においても等しく共有されていないことが指摘された。そうした格差を埋めるための手段として、人材養成や能力向上支援の重要性が強調された。また、日本の発案で進められた人材養成分野での経済・技術協力に関する行動計画の策定、9月に熊本で開催された第4回APEC人材養成大臣会合の成果が歓迎された。
 今後のAPECの活動方針に関しては、1994年に合意された「アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易と投資」を実現するというボゴール目標が改めて確認されたほか、ボゴール目標を達成するための道筋を示すものとして1995年に策定された大阪行動指針が、その実施状況や経済構造の変化を踏まえて改訂された。さらに、APECプロセスの活性化、グローバル化及びニュー・エコノミー(経済のIT化等)への対応を目指して上海アコードが採択されるなど、今後APECとしての活動を進める上での指針が示された。

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