第1章 > 3 > (6) アフリカ
【総論】
2001年には、アフリカ諸国が、国際社会においてより大きな発言力を持つために、政治的な統合に向けた動きを見せた。また、経済開発面でも、アフリカとして統一された計画が策定されるなど、政治・経済面における統合に向けたダイナミックな動きが見られた。
【アフリカ連合(AU)への移行とアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)の策定】
政治面では、アフリカの統一と団結の促進、アフリカ諸国民の生活向上のための協力・努力の強化等を目的として1963年に設立されたアフリカ統一機構(OAU)が、2001年のOAU首脳会議において、2002年の首脳会議までの1年間を移行期間として、アフリカ連合(AU)に移行することを決定した。AUは、欧州連合(EU)をモデルとしており、OAUで設置されていた首脳会議、閣僚会議に加え、全アフリカ議会や裁判所といった新たな機構の設置を予定している。また、将来のアフリカ域内の経済統合を視野に入れ、アフリカ中央銀行等の地域金融機関の創設を予定している。AU事務局が欧州委員会に該当するような強力な政策執行機関となるかどうかはいまだ明らかではないが、AUの将来像を占う上で重要な点として注視していく必要がある。また、AUとして決定した政策を実施しない国に対してはAUにおける発言権を停止するなどの条項を憲章に設け、OAUに比べ、より強力な意思統一のメカニズムを有し、アフリカのより強力な結束を目指すものとなっている。
経済開発面においては、アフリカ開発の青写真としていくつかの国が考案したアフリカ開発計画を統合し、包括的なアフリカ開発戦略として「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」が策定された。この計画は、グローバル化の中でアフリカの周縁化を防ぎ、貧困削減、持続可能な成長と開発、世界経済への統合を目指すものとして、アフリカ諸国自身による主導の下、決定されたものである。アフリカ諸国自身によって包括的なアフリカ開発計画が策定されたのは初めてのことであり、日本としては、アフリカ諸国の自助努力の現れとしてこうした動きを支援していくことにしている。NEPADは、これまで、南アフリカ、ナイジェリア、セネガル、アルジェリア、エジプトといったアフリカ主要国の首脳レベル主導で推進されており、アフリカのすべての国及び市民のレベルまで浸透することが重要である。また、OAUからAUへの移行に伴う制度面での結束強化が、NEPADの円滑な実施を容易にするかが注目される。
アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)誕生の背景

日本のアフリカ開発問題に関する取組 TICADプロセス

【アフリカをめぐる国際社会の関心の高まり】
このようなアフリカにおける動きは、国際社会においても注目を集めており、主要先進国は、アフリカへの関与を強化しつつある。G8では、ジェノバ・サミットにおいて、アフリカ問題の解決に向けてアフリカ自身が努力していることを支持し、NEPADを歓迎する旨を述べた「アフリカのためのジェノバ・プラン」が策定された。さらに、同プランに基づき、2002年のカナナスキス・サミットに向けて、アフリカの主体的な開発努力を支援するためのG8の行動計画が策定される予定である。EUは、2000年のアフリカ・ヨーロッパ首脳会議のフォローアップとして、10月にアフリカ・ヨーロッパ閣僚会議を開催し、アフリカ・EU間の協力強化を確認した。米国も、アフリカ諸国との貿易促進を目的としたアフリカ成長機会法に基づき、10月に米・サブサハラ貿易・経済協力フォーラムを開催し、アフリカとの協力関係を深化させている。
【日本の取組】
アフリカ問題は国際社会が取り組むべき課題の一つであり、国際社会の主要な一員として然るべき役割を果たしたいと考える日本としては、アフリカ問題にも積極的に取り組む必要がある。アフリカでの前向きな動きを踏まえ、日本は、2001年12月、国連、アフリカのためのグローバル連合(GCA)のほか、新たに共催者に加わった世界銀行と共に、アフリカ開発会議(TICAD)閣僚レベル会合を開催した。閣僚レベル会合には、アフリカから52か国のほか、開発パートナーとしてアジア、欧米、国際機関、地域機関なども含め400名にのぼる代表が出席した。同会合においては、1998年に開催したTICADIIのレビューを行うとともに、アフリカ自身の手による開発の取組であるNEPADについて重点的な意見交換を行った。また、重点課題(開発の基盤整備、人への投資、経済成長を通じた貧困削減)及び重点アプローチ(南南協力、地域協力、開発のためのIT)について幅広い議論が行われた。
TICAD閣僚レベル会合は、国際社会がテロ対策に直面している中、アフリカ問題への取組の重要性を改めて喚起する上で時宜を得たものであるとの評価を得た。また、同会合は、国際社会が一堂に会してNEPADについて意見交換を行う初めての機会となった。NEPADの精神と目標は、自助努力とパートナーシップというTICADの基本原則と軌を一にしており、開発パートナーがTICADプロセスの強化を通じNEPADを支援する必要があるとの認識が広範に共有された。さらに、アフリカ開発に関する東京宣言及び東京行動計画の妥当性が確認されるとともに、TICADプロセスの有用性が改めて確認された。今後は、開発パートナー及びアフリカの双方がTICADのフォローアップを継続するとともに、2003年後半に開催予定のTICADIIIに向けた準備が進められることになっている。