第1章 > 3 > (2) インド・パキスタン情勢
【インド・パキスタン関係の緊張の高まり】
インド・パキスタン関係については、1999年のカシミール地方のカルギルでの戦闘(注1)以降緊張関係が継続していたが、7月、約2年半振りの首脳会談が実現した。同会談においては両国関係の改善に大幅な進展こそ見られなかったが、首脳レベルでの対話の継続が合意された。しかし、9月以降の国際社会のテロに対する闘いが継続する中、10月、インド側カシミールの州議会議事堂に対する襲撃事件が発生し(注2)、さらに、12月、インド国会議事堂に対する襲撃事件が発生した(注3)。民主主義の象徴である国会議事堂への襲撃にインドは激しく反発した。インドは、この事件をカシミール過激派(注4)による犯行と断定し、パキスタンに対して、厳しい対応をとるよう要求し、在インドのパキスタン大使の召還などの外交的措置を実施した。さらに、インドはカシミール管理ライン及びパキスタンとの国境方面に軍隊の大規模な展開を行い、パキスタン軍もこれに応じて高度の警戒体勢をとるなど、両国関係は著しく緊張した。南アジア地域における緊張の高まりは、国際社会の大きな懸念であり、日本や米国、英国等の主要国は、インド・パキスタン両国への要人訪問や両国首脳への電話等により緊張緩和を働きかけている。
9月11日以降のインド・パキスタン関係

【日本の取組】
日本は、インド・パキスタン間の緊張が武力衝突に至ることは南アジア地域の安定を大きく損ないかねないとの観点から、米国、英国等と協調しつつ、両国間の緊張緩和のため継続的な外交努力を行っている。パキスタンに対しては、国際社会によるテロとの闘いへ協力を確保し、また、パキスタンが国際社会と協調した形で中長期的に発展することができるよう、日本は、米国同時多発テロ後にパキスタンがとってきた国内過激派の銀行口座の凍結などの措置を歓迎するとともに、引き続きテロに対する国際的な取組への積極的な協力を行うよう働きかけている。一方、インドに対しては、日印共同宣言でも述べられているように、テロに対し日本はインドと共通の立場にあることを伝えるとともに、インドが外交的努力を引き続き追求するよう働きかけている(注5)。