国連職員になったのは、国連開発計画(UNDP)人事部にいたフレッチャー大学院時代の友人から、日本人職員が少ないので応募するように薦められたことがきっかけであった。民間企業で課長までやってからの転職である。その後30年以上も国連職員として勤務している。特別に憧れて目指した国連ではなかったが、仕事を始めてみると刺激的で充実感あふれるものであった。毎日が新しい挑戦、目標に向けての勉強の連続で、多文化、多言語、多国籍の環境の中で様々な人々と仕事ができるのが楽しい。自分のかかわった国連活動が具体的な成果につながり、これを確認できるのも嬉しい。日本人の特質とされる「根回し」、気配り、チームワークへの配慮などは、国際公務員としても必要要件だ。国連での長年の経験から、能力、信念、勤勉に加え、人間関係を上手くやっていけること及び臨機応変の対応ができることが成功への鍵だと言える。もちろん英語力とコミュニケーション能力は前提条件となる。自助努力に加え、自国政府からの支援も、幹部職員になるにつれて重要になってくる。日本政府の国際公務員支援体制は、私が最初に国連職員になった頃は皆無であったが、現在は充実してきており、外務省国際機関人事センターや国連代表部などが日本人職員の支援を積極的に行っている。過去30年間を振り返ると、国際公務員の仕事は人間として実にやり甲斐のあるものであったと思う。
執筆:国際連合管理局事務次長補 丹羽 敏之