3. 日本政府が関与した重要共同コミュニケ及びその他の外交文書

(条約,協定類は除く)

(1) 2国間関係

(イ)  R・D・マルドゥーン・ニュー・ジーランド首相夫妻訪日に際しての日本・ニュー・ジーランド共同新聞発表(仮訳)
(1976年4月28日,東京において)
  1.  R・D・マルドゥーン・ニュー・ジーランド首相夫妻は,日本国政府の招待により,1976年4月22日から28日までの日程で日本国を公式訪問中である。同夫妻には,D・マッキンタイア農漁業大臣夫妻及び数名のニュー・ジーランド政府関係者が随員として同行している。マルドゥーン首相夫妻は,東京滞在中,天皇・皇后両陛下に謁見を賜わった。マルドゥーン首相は,三木武夫日本国総理大臣及びその他の閣僚と会談を行った。また,マルドゥーン首相夫妻は,日光及び北海道を訪問した。
  2.  両国首相は,近年緊密で双方に有益な関係が日本国とニュー・ジーランドとの間に発展してきたことに満足の意を表明した。両者は,日本国とニュー・ジーランドが,あらゆるレベルでの対話を通じ両国の協力関係を深めかつ多様化するための努力を一層強化すべきであることに合意した。
  3.  両国首相は,相互に関心のある広範囲な問題について討議した。両者は,アジア・太平洋地域における発展について検討した。両国首相は,東南アジア諸国連合が初の政府首脳会議を開催し,地域的連帯及び協力を強化する意図を再確認したことを歓迎し,両国が同連合のイニシャテイブに応えて同連合との一層の協力を発展させる方策を積極的に探求することに合意した。両者は,また,インドシナ諸国との平和的協力を築くことに対するASEAN諸国の前向きの態度を歓迎した。インドシナにおける情勢に関し,両者は,武力紛争後の復興のために同地域諸国が払っている努力を評価した。両者は,東南アジアのすべての国の積極的な努力に基づいて,これらの国の間に平和的かつ建設的な関係が確立されるよう希望を表明した。この点に関連し,両者は,メコン委員会,アジア開発銀行,コロンボ計画,東南アジア経済開発閣僚会議等の既存地域機構の意義を再確認した。
  4.  両国首相は,すべての核実験に対する反対を再確認し,核兵器保有国にならないとの両国政府の決意を確認した。両者は,包括的な核実験禁止をもたらすために協力することに合意し,また,すべての国が効果的な国際管理の下における軍縮,とくに核軍縮を促進し,かつ,核拡散を防止する努力を強化すべきであるとの信念を再確認した。
  5.  両国首相は,現下の世界経済情勢を検討し,その改善のためにはすべての国の間の緊密な協力が必要であることを再確認した。両者は,また,日本国及びニュー・ジーランドが,世界貿易の拡大と一層の自由化を達成するため,多角的貿易交渉において,引き続き積極的役割を果すことを確認した。
  6.  2国間経済問題に関し,両国首相は,近年両国間の貿易が倍増し,また,それに応じて両国間の金融その他の経済関係が発展してきたことに満足の意をもって留意した。両者は,両国経済の補完的かつ相互依存的な性格に留意しつつ,両国間の貿易を一層促進する方策を検討し,また,そのために一層緊密に協議すべきことに合意した。両者は,短期的問題を克服し,その経済関係を確たる長期的基礎に置くため相互に努力する必要性を認識した。
  7.   両国首相は,現在提案されている日本国と二ュー・ジーランドとの間の直通の航空業務関係について討議した。両者は,この関係が両国にとって有益なものになるであろうことに合意し,かつ,両国の航空企業間で既に意見交換が行われていることに留意した。両者は,航空協定のための政府間交渉が早期に開始されるよう希望を表明した。
  8.  両国首相は,対話および接触を一層拡大することが,両国間の相互理解の増進および協力関係の基礎の強化に寄与するであろうとの信念を再確認した。これとの関連において,両者は,1974年10月に両国間で合意された交流計画が順調に開始されたことを満足の意をもって留意し,両国政府が,同計画の下で文化および教育の面での交流を促進する努力を継続すべきことに合意した。
  9.  二ュー・ジーランド首相は,日本国総理大臣に対し,近い将来ニュー・ジーランドを訪問するようにとの二ュ一・ジーランド政府の招待を行った。三木総理大臣は,右招待を喜んで受諾した。
  10.  ニュー・ジーランド首相は,日本滞在中に同首相およびその一行に寄せられた暖かい歓迎ともてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。
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(ロ) アブドルアジーズ殿下訪日に際しての日本・カタル国共同コミュニケ(仮訳)
(1976年5月17日,東京において)
  1.  カタル国の財政石油大臣アブドルアジーズ殿下は,1973年12月,三木特使がカタル国を訪問した際,訪日招待したことに基づき,日本国政府の賓客として1976年5月10日より日本を訪問し,16日までの公式日程を了した。同殿下には財政,石油,工業,及び貿易の各分野における同国の高級実務者よりなる代表団が同行した。
  2.  同殿下は,5月11日,皇居において天皇陛下に謁見した。謁見は暖かく,且つ誠意あふれる雰囲気の下で進められた。
  3.  同殿下は,また,三木総理大臣及び福田副総理を表敬訪問し,2国間友好親善関係を中心に懇談した。
 三木総理大臣は,1973年12月カタル国を訪問した際,ハリーファ首長殿下はじめ同国官民から暖かい歓迎を受けたことに対し改めて感謝の意を表明し,同国がハリーファ首長殿下の英明なる指導の下に近代化に邁進していることに敬意を表した。
 福田副総理よりは,特に,日本の経済情勢,世界の経済環境等が説明された。これに対し,殿下は,日本の急速な経済成長,経済政策運営は,経済発展の範である旨表明した。
  4.  更に,同殿下は,宮澤外務大臣,大平大蔵大臣,及び河本通商産業大臣と相互に関心ある諸問題について有益な意見交換を行った。
 これら会談においては,広く貿易,エネルギー,開発協力,投資等の分野における両国関係の一層の緊密化の可能性を含め,両国間友好・親善関係及び現下の国際経済情勢が主要な話題であった。
 カタル側は,同国の経済開発,工業化の現状及び見通しを説明し,多くの日本企業が,カタル国の主要な諸プロジェクトに参画する等活発な活動を行っており,日本の協力,高度の工業技術を高く評価している旨表明し,今後更にかかる活動,協力が推進されることを期待している旨表明した。
 これに対し,日本側は,わが国の諸経済制度,経済情勢,及び同国におけるわが国の経済活動を説明し,カタル国におけるかかる日本の活動が,更に進展し,同国の発展に貢献することを期待している旨表明した。日本側は,カタル国の軽工業育成の分野における日本の技術協力の可能性を検討する用意がある旨表明した。
 双方は,液化天然ガスの分野における将来の協力に関心を示し,カタルと日本の液化天然ガス貿易の開発に関する技術的問題を更に検討することに合意した。
  5.  宮澤外務大臣とアブドルアジーズ殿下との会談においては,中東問題を中心に現下の国際情勢についても意見交換が行われた。
 同殿下は,中東問題の公正なる解決に対する同国の関心を説明した。更に同殿下は,日本国政府が中東問題について深い理解を有していることを高く評価した。宮澤大臣は,中東問題が世界の平和に対し有する重要性を認識し,1967年11月22日の安保理決議242号及び国連憲章に基づくパレスチナ人の正当なる権利を考慮し,中東地域に1日も早く公正且つ永続的な和平が達成されることに対するわが国の希望を確認した。
  6.  これとは別途,実務者レベルの合同会議が外務省において開催され,両国の経済情勢,石油需給問題,一層の両国間工業・技術協力の可能性等相互に関心のある事項につき一般的な意見交換がなされた。また,エネルギー及び工業問題に関する更に技術的詳細につき,通商産業省において実務者レベルの会合が持たれた。
  7.  アブドルアジーズ殿下は,公式日程期間中,同殿下及び随行代表団に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,三木総理大臣,日本国政府及び国民への深い感謝の意を表明した。
  8.  同殿下の訪日は,日本国とカタル国の相互理解と協力の精神に基づく友好・親善関係の促進に大いに貢献した。
  9.  なお,5月17日以降の非公式日程期間中,同殿下は,財界関係者との会談,及び工場視察等を行う予定である。
 また,5月19日には,同殿下の訪日を機会に,日本・カタル友好協会の設立総会が開催され,同殿下は,同協会の名誉総裁に推戴される予定である。

 

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(ハ) 米国独立200年に際しての米国民への祝詞(1976年6月30日,ワシントンにおいて)

GREETINGS TO THE AMERICAN PEOPLE

on the Occasion of the Bicentennial

of Their Independence

 Conveyed by the Prime Minister of Japan on Behalf of the Government and People of Japan to the President of the United States of America

Washington, D.C., June 30,1976

 The inspiration of the successfui American experiment-the first modern nation-state to be founded on democratic principles-has never been more necessary to the world than in this, the Bicentennial year of the Independence of the United States of America.

 Democracy is said to be on trial, and its future in doubt.

 Questions are being raised whether highly advanced, technological societies are "governable″under principles of individual liberty, free exchange of ideas, and reliance on private initiative.

 Both the American experience and the more recent but also successful Japanese experience refute these doubts.

 America, a nation of immigrants from all corners of the earth, has-through trial and error, experiment and reform-steadily enlarged the freedom and equality of its citizens, while building a great and powerful nation. And that nation, even in its deepest domestic and foreign trials, has never lost confidence in free institutions and the capacity of a democratic society for continuing self-renewal.

 In Japan, where the roots of free enterprise reach back for centuries, parliamentary democracy acquired full force and meaning, with American encouragement, in the aftermath of the Pacific War. Through three decades of vigorous testing, the Japanese People have also confirmed that democracy may not be tidy, because it thrives on diversity; but that it is the most creative and rewarding of political systems precisely because it relies on individual initiative and citizen responsibiiity.

 The meaning of America's two hundred years, and of Japan's own experience, is that freedom with equality is both the goal and the means for human fulfillment in all its diversity and richness.

 As the United States begins its third century, the Government and People of Japan warmly reaffirm our tight bonds of friendship, woven of shared values, our hardearned mutual trust, and our profound common commitment to the flourishing of our own freedoms and to the preservation of freedom in an open and peaceful world order.

 The People of Japan greet The American People on the occasion of their Bicentennial with respect, affection, and full confidence in the future of democracy.

Takeo Miki

Prime Minister of Japan

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(ニ) 外務省情報文化局発表
  日米安全保障協議委員会第16回会合について (1976年7月8日)
  1.  安全保障協議委員会の第16回会合は,昭和51年7月8日外務省で開かれた。
 日本側からは宮澤外務大臣と坂田防衛庁長官,米側からはホッドソン駐日米国大使とガイラー太平洋軍司令官が出席し,また補佐のため両国の関係者が列席した。
  2.  委員会は,日本と米国が共に関心を有する極東の国際情勢について意見を交換した。
  3.  委員会は,昭和50年8月,三木総理大臣がフォード大統領と会談した際の日米共同新聞発表第4項の趣旨に基づき,また同月の坂田長官とシュレシンジャー前国防長官との会談の経緯に鑑み日米安全保障条約及びその関連取極の目的を効果的に達成するため,軍事面を含めて日米間の協力のあり方について,研究・協議することが必要であることを認め,その下部機構として防衛協力小委員会を設置した。防衛協力小委員会は,日本側においては外務省アメリカ局長,防衛庁防衛局長及び統合幕僚会議事務局長により,また米側においては在京米大使館公使及び在日米軍参謀長により構成される。同小委員会は必要と認めるときは,適当な両国政府関係者の出席を認めることができる。同小委員会は,緊急時における自衛隊と米軍との間の整合のとれた共同対処行動を確保するために取るべき措置に関する指針を含め,日米間の協力のあり方に関する研究・協議を行い,その結論を本委員会に報告する。
 防衛協力小委員会は,必要と認めるときは,その補助機関として部会を設置することができる。これに関連して,昭和43年12月23日に開催された本委員会の第9回会合において設立された自衛隊と在日米軍との間の研究会合は廃止される。
  4. 双方は,昭和48年1月に設置された安保運用協議会が円滑に機能していることに満足の意をもって留意するとともに,引き続き同協議会を通ずる協議を積極的に進める意向を表明した。
  5. 委員会は,安全保障協議委員会の第15回会合で了承された沖縄県における施設・区域の整理・統合計画を検討した。その結果,双方は,同計画における「移転を要せず返還される施設・区域」とされていた施設・区域の返還が相当程度に実現されたこと及び「返還につき引き続き検討される施設・区域」とされていた施設・区域の大部分が移設を要せずに返還されたことに満足の意をもって留意するとともに,今後の同計画の円滑な実施のため引き続き努力することを確認した。
なお,委員会は,同計画について,「移設措置とその実施に係る合意の成立後返還される施設・区域」とされていた(1)キャンプ・プーン,(2)瑞慶覧通信所,(3)キャンプ・マーシーが移設を要せずに返還されたほか,カシジ陸軍補助施設について,米側が無条件で日本側に返還することに同意したことを歓迎した。
  6. さらに,委員会は,沖縄県民の要望に沿い,過去数カ月にわたる日米関係当局者間の協議を通じて取りまとめられた沖縄県における施設・区域の整理・統合に関する別表の計画を検討し,これを了承した。
  7. 委員会は,在日米軍に係る最近の労務問題について討議した。双方は,当面の労務問題,なかんずく,給与,その他の労働条件に関する諸問題の解決のために,相互理解の精神に立って引き続き協力を進める必要があることに意見の一致をみた。
  8. 委員会は,米軍施設・区域に係る環境保全は,双方にとって共通の関心を有する重要な事項であることを確認し,今後とも環境保全のため最善を尽すことの必要性につき意見の一致を見た。
別 表
沖縄県における米軍施設・区域の整理・統合計画
1. 移設を要せず返還される施設・区域
 (1) 北部訓練場 (県道名護国頭線以南の一部)
 (2) キャンプ・シュワブ (国道329号沿いの一部)
 (3) キャンプ・ハンセン (東支那海側斜面部分の一部)
 (4) 陸軍貯油施設 (嘉手納町・読谷村間の大部分)
2. 移設措置とその実施に係る合意の成立後返還される施設・区域
 (1) 伊江島補助飛行場 (全部)
 (2) 八重岳通信所 (南側部分)
 (3) キャンプ・シュワブ (辺野古川からの進入路及びその西側部分の一部)
 (4) 嘉手納弾薬庫地区 (南西隅部分)
 (5) 読谷補助飛行場 (滑走路東側部分)
 (6) トリイ通信施設 (既返還地に残存する中継所地区)
 (7) キャンプ瑞慶覧 (国道58号東側沿い部分)
 (8) 陸軍貯油施設 (那覇市・宜野湾市間の大部分及び北谷村・具志川市間の送
油管区域の大部分)
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(ホ) ジャック・シラック・フランス共和国首相夫妻訪日に際しての日本・フランス共同新聞発表 
(1976年7月31日,東京において)
   1.  ジャック・シラック・フランス共和国首相夫妻は,日本国政府の招待により,ジャン・ソーヴァニャルグ外務大臣,レイモン・バール貿易大臣とともに,1976年7月29日から8月1日までの日程で日本を公式訪問した。天皇・皇后両陛下は,シラック首相夫妻に謁見を賜わった。またシラック首相は,三木武夫日本国総理大臣と会談した。ソーヴァニャルグ外務大臣は,宮澤外務大臣と第13回日仏定期協議を行い,バール貿易大臣は,福田副総理兼経済企画庁長官及び河本通商産業大臣とそれぞれ会談した。
   2.  フランス共和国首相と日本国総理大臣との会談は,極めて親密かつ相互信頼にあふれた雰囲気の中で行われ,国際問題,日仏関係及び双方の共通の関心事項について意見交換が行われた。
 この会談においては,主要国際問題,特にアジア,ヨーロッパ,中東及びアフリカ情勢が検討され,双方の見解の広範な一致があきらかとなった。双方は,日仏両国があらゆるレベルでのより緊密な対話を通じ,相互理解と協力を深め,政治,経済,文化及び科学技術の諸分野における両国関係の基礎をより堅固なものとしつつ,その強化と拡大のための努力を継続する決意を表明した。経済分野における双方の共通の目標は,経済関係の均衡的発展を図ることにある。この関連で双方は,両国産業間の協力強化に新たな展望を開きつつあるいくつかの先端的テクノロジーの諸分野,とくに原子力の分野ですでに達成された両国関係の進展に満足の意を表した。
 双方は2国聞及び多数国間の場において,経済分野の協力の強化が重要である旨強調した。
 また双方は,両国が関係諸国との協力の下に,インフレなき持続的経済成長を通じ,世界経済の繁栄に貢献するとともに,パートナー間の経済関係の均衡的発展を確保する諸政策をとる決意を再確認した。また先進国と開発途上国との間で行われている対話に積極的に参加し,衡平かつ調和のとれた経済秩序を樹立するとともにこれらの諸国の間に建設的な協力関係を確立する意思を確認した。
 双方は,世界の安定,繁栄及び平和にかかわる諸問題の解決には,すべての国が協調の精神をもってこれにあたる必要があることを強調した。とりわけ日仏両国は共通の責任に基づき,両国間の協力を発展させ,これらの諸問題の解決により一層貢献する決意である。
   3.  両国首相は今回の会談が日仏間の友好関係の一層の強化に多大の貢献をした事に満足の意を表明した。
 フランス共和国首相は,日本国総理大臣に対し,フランスを公式訪問するよう招待し,三木総理大臣はこの招待を喜んで受諾した。
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(ヘ) 外務省情報文化局発表 民主力ンボディアとの外交関係回復について
(1976年8月2日)
   1.  政府は,民主カンボディア政府との間にそれぞれの在中国大使館及び在ヴィエトナム大使館を通じて,両国間の外交関係回復について交渉を行った結果,このたび合意に達し,8月2日付をもって外交関係を設定することとし,7月31日北京においてわが方小川大使と先方ピック・チャン臨時代理大使との間で別紙の共同コミュニケが署名された。
   2.  政府は今回の合意成立により,今後わが国と民主カンボディアとの間の関係が一層発展するものと期待している。
              共同コミュニケ(仮訳)
 日本国政府と民主カンボディア政府は,平等・独立・主権・領土保全の相互尊重及び相手国に対する内政不干渉の諸原則に基づき相互の関係を発展させることを希望して,1976年8月2日付をもって,大使レベルで外交関係を設定することを決定した。
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   (ト) エルネスト・ガイゼル・ブラジル連邦共和国大統領夫妻の訪日に際しての共同コミュニケ
                    (1976年9月18日,東京において)
   1.  ブラジル連邦共和国大統領エルネスト・ガイゼル閣下及びルシイ・マルクス・ガイゼル夫人は,日本国政府の国賓として1976年9月15日より20日までの日程で日本を公式訪問した。
 大統領には,アントニオ・F・アゼレド・ダ・シルヴェイラ外務大臣,セヴェロ・ファグンデス・ゴメス商工大臣,シゲアキ・ウエキ鉱山・動力大臣,ジョアン・パウロ・ドス・レイス・ヴェロ-ゾ企画庁長官,ウーゴ・デ・アンドラーデ・アブレウ国務大臣(陸軍中将,大統領府武官長)ほか政府の高官が随行した。大統領には,また,ビルジリオ・タボラ上院外交副委員及びジョアキン・コウティンニョ下院外交委員長が随行した。
   2.  ブラジル連邦共和国ガイゼル大統領夫妻は,9月16日日本国天皇・皇后両陛下と会見した。
   3.  ガイゼル大統領と三木総理大臣は,9月17日及び18日の両日率直で友好的な雰囲気の中で会談した。大統領と総理大臣は両国関係の現状と国際情勢に関する日伯両国の立場を検討し,特に米州及びアジアの両大陸における情勢について特別な関心を払った。
 両首脳は,この会議が非常に有益かつ時宜を得たものと考えた。両首脳は,ガイゼル大統領の訪日が両国間の協力関係を強化することとなろうと確信した。
   4.  大統領と総理大臣は,世界の諸問題に対する両国政府の基本的な関心事について広範に亘り見解の一致を示したことに満足をもって留意した。両国首脳は,ともに地域的かつ世界的な分野における日伯両国の増大する責任を認識した。この意味において両国は,最も広範な国際的連帯に役立つような開放的かつ建設的な対話を基本として,それぞれの外交政策を実施する。
   5.  大統領と総理大臣は,両国政府が平和主義に徹しており,その平和主義は全ての国家間の政治的経済的関係において正義の下に追求されるべきことを再確認した。両首脳は,国民の福祉が経済成長の終局的目標であり,国際社会は,真に安定した世界秩序のため永続的な基礎として,相互依存の考え方へより一層向うべきであるとの共通した見解を表明した。このため日伯両国は,可能な範囲内で先進諸国と開発途上国間の現在の対話に自ら積極的に参加することを再確認した。諸国家間の協調が人類の生存のための必須の条件となっている現在の歴史的時点において,日伯両国政府は,国連等国際機関における協力を含めて国際政治,経済,文化面において両国の協力を緊密化してゆくとの決意を新たにした。
   6.  大統領と総理大臣は,両国が伝統的友好に従ってその関係を拡大しつつある事実に満足の意を表明した。この増大しつつある関係は,平等の原則と互恵的協力に基礎をおくものである。両国政府は,相互に国家主権と独立を尊重しつつ,両国間の紐帯を一層強化すべきことを決意した。
   7.  大統領と総理大臣は,大統領訪日の機会に両国の第1回閣僚協議会が開催されたことに満足の意を表するとともに,両国間の全般的関係の増大しつつある重要性に調和して,更に両国関係を強化しようとする意図を再確認した。
 総理大臣は,このような意図の具体的表現として,閣僚協議会において取挙げられた諸協力案件をはじめ,各種案件を推進するため,今後対伯輸出信用供与の総額はかなり増加するであろうと述べたのに対し,大統領はこれを歓迎し,同信用はブラジル工業が未だ供給するに至っていない設備及び資本財の購入に充当することでブラジル産業を発展させるのに貢献するであろうと述べた。他方,大統領は,ブラジルはきたる数年間にかなりの量のブラジル産品の対日輸出を期待すると述べた。
 更に,両首脳は日伯間の貿易が量的に著しい水準に達したが,両国経済の補完性を考慮し,産品の実情をふまえつつ,長期的かつ安定的な基礎の上に更に一層調和して拡大されるべきことに意見の一致をみた。
   8.  大統領と総理大臣は,第1回閣僚協議会において,特にブラジルの第2次経済社会開発に関連して,日本側とブラジル側双方が経済・通商金融及び工業技術に関し明確な見解の一致をみたことを高く評価し,このことが21世紀に至る日伯間の協力関係を飛躍的に発展させる上で大きく貢献するであろうとの認識で一致した。

(8-1) 日本側とブラジル側の双方は,1977年着工予定のパラ州ベレン地区におけるアルミニュウム工場の建設に協力し,また,経済性の高いプロジェクトとして成功裡に実施されるために協力することで意見の一致をみた。更に双方は,当事者間の取決めに従い,アルミ生産物の一部が長期安定的に対日輸出されることを確認した。

(8-2) 双方は,両国官民の協調の下に,ブラジルのセラード地帯における農業開発推進計画の検討が着実に進捗しつつあり,この度両国政府の代表は,試験的事業(Pilot Project)に関する具体的枠組に関し共通の立場に到達したことに満足をもって留意した。

 両国に設立される投資会社を通じ,農業生産活動の支援及び推進を図るため,前記枠組を推進する中核的機関たる農業開発会社が近々ブラジルにおいて設立されることが期待される。

 また,双方は,セラード地帯における日伯農業研究協カプロジェクトに関する取極が近く両国政府間で締結される運びとなったことを歓迎した。

 かくして,今後セラード地帯の農業開発をめぐって日伯間の協力が今後とも進展するであろうとの期待が表明された。

(8-3) 双方は,ツバロン製鉄所の第1期工事の建設に協力し,また経済性の高いプロジェクトとして成功裡に実施されるため協力することで意見の一致をみた。

 更に,双方は当事者間の取決めに従い,生産物のスラブの一部が長期安定的に対日輸出されることを確認した。

(8-4) ブラジル側は,日伯相互の関心である若干の合弁事業計画をも裨益するであろうプライアモーレ港建設計画の実施のため,日本国政府の協力を要請した。日本側は,ブラジル大統領の日本への公式訪問という前例のない機会に特別の考慮を払いつつ,日本国の関係法令に従って,資金協力及び技術協力を行なう用意のある旨表明した。

(8-5) 双方は,森林・パルプ資源の開発に関連した合弁事業の進展状況を討議した。この分野における最初のプロジェクトたるCENIBRAが,本年末操業開始の運びとなったことを満足をもって留意した。

 他方,双方はバイア,エスピリオ・サント及びミナス・ジェライスの各州にまたがって実施の緒についたFLONIBRAのプロジェクトが一層の成果を挙げるために,CENIBRAの場合と同様に引続き当事者間において最善の努力が払われるべきことに留意した。

 更に双方は当事者間の取決めに従い,パルプ及びチップの年産量の中の一部が長期安定的に対日輸出されることを確認した。

(8-6) 双方は,従来日伯間の協力のシンボルとなってきたウジミナスの第2期拡張工事に関する増資に対する日本資本の参加が決定したことに留意した。双方は,ウジミナスの第3期拡張計画についても討議したが,この点について日本側は,日本からの機材購入のための輸出信用が供与されるであろう旨を表明した。

(8-7) 双方は,日本鉄鋼業に対するブラジル鉄鉱石の安定供給の拡大を図ることが両国の利益になるという認識で一致した。

 双方は,カパネマ等のブラジル鉄鉱山開発計画に関し,両国の当事者間で協力が進展していることを認めた。

(8-8) 双方は,1977年後半に操業開始予定となっており,現在両国の当事者間の協力により順調に進展しているニブラスコ合弁事業が当事者間の取決めに従い長期安定的にペレットを対日輸出する見通しであることを認めた。

(8-9) 双方は,工業技術協力の分野における協力を強化することに合意し,最近東京において日本の関係当局とブラジル側ミッションとの間でかかる協力の分野と目的について実りある討議が行われたことに満足をもって留意した。

 双方は,この協力が,両国政府間の全般的経済協力の下に調和されて,実施されることに合意し,工業技術協力が両国間に現存する友好的かつ協力的な関係に新時代を画するものであるよう希望を表明した。

(8-10) ブラジル側は,ブラジル農産品の対日輸出が,ブラジル経済にとって大きな意義を有するものであることを強調し,主要な農産物について安定的な対日輸出を確保するため,両国民間ベースによる長期契約を推進したいとの希望を表明した。

 日本側は,ブラジル側の発言に留意しつつ,今後ブラジル農産品の日本への輸入が増大し,ブラジルが日本に対する農産品の重要な供給国の1つとなる可能性がある旨述べた。

(8-11) 双方は,両国間の投資分野における協力が進展していることを歓迎し,かかる協力を一層促進する環境を醸成するために共同で必要な措置について検討を開始することに合意した。

 この点について,両首脳は,両国間の情報交換を促進する措置が両国間の全般的な協力の一環として検討されるであろうことを認めた。

(8-12) 双方は,現在東京市場における円建ブラジル国債発行のための交渉が行われていることに言及し,最近日本の資本市場に対するアクセスの機会がブラジルにとって増大しつつあることに留意し,この点についてブラジル側は満足の意を表明した。

(8-13) 双方は,海運同盟が安定輸送に果たす役割を高く評価するとともに,その運営に当っては互恵平等の考え方が漸進的に受入れられる方向に向うべきであることを確認した。

(8-14) 日本側は,現在ブラジル経済開発銀行(BNDE)に供与中の日本輸出入銀行による現行借款に基づく契約承認が完了した段階でブラジル民間業界が日本製機械,施設,役務を購入できるようBNDEに対する借款を検討すること,また,ブラジル銀行に対しても借款供与を検討する用意がある旨を示唆した。

(8-15) 双方は,ブラジル企業の優先プロジェクトを実施するため,日本市場において資本調達を目的とした日本の銀行借款団を組成する話合いが進められていることに留意した。この点について日本側は,民間銀行の意向を尊重しつつ本件を好意的態度をもって検討する用意がある旨述べた。

(8-16) 双方は,ともに日伯間の航空業務の秩序ある発展が奨励されるべきことを認めた。

 9.  大統領と総理大臣は,文化交流が日伯両国民間の相互理解の上で重要な役割を果しつつあることに満足の意を表明した。両首脳は,両国が今後とも各般の分野における両国間の文化及び学術交流を増進すべき旨を再確認した。
 10.  大統領と総理大臣は,一方の国民の他国への入国及び滞在を容易にすることの有用性を認め,両国政府が右を目的として適当な措置をとる可能性を検討することを決定した。
 11.  大統領は,ブラジルが多くの日本人移住者を歓迎してきた国であり,これら移住者がブラジルの発展に重要な貢献をなしてきたことを想起した。総理大臣は,この発言を深い満足をもって受けとめ,両国間の人的交流が今後更に増大することを希望した。
 12.  ガイゼル大統領閣下及びガイゼル夫人は,日本国官民より受けた厚遇に謝意を表明するとともに天皇・皇后両陛下並びに皇室の御多幸と日本国民の繁栄を衷心より祈念する旨述べた。

  

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(チ) マルティネス・デ・オス・アルゼンティン国経済大臣の訪日に際しての日本・アルゼ
   ンティン共同新聞発表              (1976年10月14日,東京において)
1.  マルティネス・デ・オス・アルゼンティン国経済大臣は,日本国政府の招待により,外務省賓客として1976年10月9日より14日まで日本国を公式訪問した。
 同経済大臣には,カンバ運輸・公共事業庁長官,ディス中央銀行総裁,パソス外国貿易庁貿易担当次官,ゲルサ海洋庁漁業担当次官等が随行した。
2.  マルティネス・デ・オス経済大臣夫妻は,日本滞在中,東宮御所において皇太子,同妃両殿下から謁見を賜わった。
3.  マルティネス・デ・オス経済大臣は,福田副総理,小坂外務大臣,大平大蔵大臣,大石農林大臣,河本通産大臣と会談した。会談は,両国間の伝統的親善関係を反映して,率直かつ友好的な雰囲気の下に行われ,次の様な話合いが行われた。
(1)  アルゼンティン側は,同国の経済回復に関し,かかる回復は,アルゼンティン政府によって定められた指針に基づき,市場経済のもとで,インフレーション率を徹底的に引下げ,生産と投資を促進させる現実的な経済計画の結果によることを強調した。アルゼンティン側は,さらに同計画が,確固たる方針の下に実施され,現在までの6カ月間に同国経済は明らかに回復しており,今後安定的に発展していく基礎となっている旨説明した。
 双方は,両国がその経済政策において,共に自由開放体制を志向していることに留意し,日本側は,本年第2四半期以降のアルゼンティン経済が着実な回復ぶりを示している事実に関するアルゼンティン側説明を歓迎した。
 右に述べた如く,両国が相互に共通点を有していることに鑑み,双方は,アルゼンティン経済が今後実質的に発展することを心から希望する旨表明した。また,双方は,両国間の経済協力を強化する可能性につき友好的に分析した。
(2)  アルゼンティン側は,特に1976年末までの対外短期債務返済の処理に関し,アルゼンティンの金融ポジションを強化するため,日本の民間銀行が日本市場において協力的精神をもって行っている協調融資による金融協力をうけることに関心を表明した。これに対し,日本側は,民間銀行の意向を尊重しつつ,好意的態度で検討する旨述べた。
(3)  アルゼンティン側は,穀物輸出が同国経済に占める重要性を説明し,小麦と飼料穀物の対日輸出を安定的に拡大したいとの強い希望を表明した。これに対し,日本側は,飼料穀物については従来から両国間で行われている安定的取引が今後も円滑に発展していくことを希望するとともに,アルゼンティン産小麦については,その品質が日本において要求される品質規格に合致し,かつ,輸出供給力が安定すれば日本への輸入が可能になる旨述べた。また,双方は,両国間における穀物取引の安定化と発展に資するため,穀物に関する継続的な情報・意見の交換が重要であることを認識した。これに関連し,アルゼンティン側は,本年末までに関係の専門家を日本に派遣することを提案し,日本側は,この提案を受け入れた。
(4)  双方は,2国間の技術協力を一層推進する努力を行うことにつき意見の一致をみた。また,双方は,2国間の技術協力協定を締結する可能性を検討することにつき意見の一致をみた。
(5)  アルゼンティン側は,日本海洋水産資源開発センターによる調査船派遣を歓迎し,双方は,アルゼンティンの漁業開発の分野における協力が今後一層推進されるであろうとの希望を表明した。
(6)  アルゼンティン側は,日本側に対して,アルゼンティンの中小企業による日本の機械設備の買付につき援助するため,日本輸出入銀行とアルゼンティン国立開発銀行との間の新たなクレジット取極を締結することを要請した。これに対し,日本側は,このような取極の締結を検討する用意がある旨述べた。
(7)  アルゼンティン側は,外国よりの投資に対する公正な条件を創り出すために適切な措置をとりつつあり,これは,最近承認されたアルゼンティン経済の健全な発展を基本的目的とする新外資法によって確認されている旨説明した。また,アルゼンティン側は,同法は投資者に対し,配当金,特許料,技術ノウ・ハウ料,役務の対価の送金を含む公正かつ安定した待遇を保証する旨表明した。日本側はこれを歓迎した。
(8)  アルゼンティン側は,日本の工業と技術が,アルゼンティンの公的及び私的部門の重要なプロジェクトの実施に参加し,それにより,設備投資などを含めアルゼンティン経済の強化に参加することになるであろうとの希望を表明した。
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(リ) 三木武夫内閣総理大臣とピエール・エリオット・トルドー・カナダ首相との間の共同声明
                           (1976年10月26日)
 1.  ピエール・エリオット・トルドー・カナダ首相夫妻は,日本国政府の招待により,10月20日から26日までの間,日本を公式に訪問した。トルドー首相夫妻は,10月21日,皇居において天皇・皇后両陛下に謁見を賜わった,
 2.  三木総理大臣とトルドー首相は,10月21日及び26日に,友好的で建設的な雰囲気の下に会談した。トルドー首相は,また,滞在中,副総理兼経済企画庁長官,外務大臣,大蔵大臣,農林大臣,通商産業大臣及び経済界の主要な代表と会見した。両国首相は,日本及びカナダが政治,経済及び文化の各分野で,近年急速に,緊密で広範な結びつきを強めていることに満足の意を表明した。両国首相は,トルドー首相訪日の機会に,両者により,日加間の貿易経済関係に関する経済協力大綱が署名されたことを歓迎した。両者は,また,文化協定の交渉が妥結し,同協定の署名が行われたことに欣快の意を表明した。両者は,この結果,両国民の間の相互理解を一層増進し,もって日加関係がより豊かで拡大されたものとなることを希望した。両者は,日加両国の国会議員間の交流が深まりつつあることを強く歓迎した。両者は,本年3月に,東京で日加議員連盟が設立されたこと及び本年4月に上下両院議長を団長とするカナダ国会議員団の日本訪問が大きな成果をあげたことを特に評価した。両者は,1977年に日本議員団のカナダ訪問が実現することを期待した。
 3.  両国首相は,日加間の友好協力の増進が,単に両国のみならず,国際社会にとっても重要であるとの見解をともにした。両者は,両国政府が各々の政策目的及び目標に関する情報の交換を続けることの意義を再確認し,共に関心を有する多国間及び2国間の問題について両国政府間で協議と協力関係を強化することを約した。両者は,各層における協議を緊密化し,かつ,制度化する努力が報いられてきたことを認めた。この関連で,両者は,日加閣僚委員会の意義を強調するとともに,次回の会合を,双方にとって都合のよい早い時期に,カナダで開催することに合意した。両者は,また,両国の外務大臣が,過去数年にわたり,その頻度を増してきた緊密な協議の慣行を維持し,強化することに合意した。
 4.  両国首相は,今日の国際社会の当面する諸問題について意見を交換するとともに,先進工業民主主義国として,世界の平和と繁栄という人類共通の目標にむかって,より緊密かつ幅広い協力を発展させていくとの両国の揺ぎない決意を確認した。
 両者は,なかんずく太平洋に面する両国が特別の関心を有するアジア・太平洋地域における動向について討議するとともに,両国が同地域の平和と発展のために,引続き積極的かつ建設的な役割を果していくとの両国の決意を確認した。両者は,東南アジア諸国連合及びその加盟国が,この地域の安定と開発のため自主性と相互協力を強化するよう引続き努力していることを歓迎するとともに,東南アジアのすべての国の間に安定し,かつ,協力的な関係が発展することを期待した。両者は,アジア開発銀行が行っている地域開発問題に対処するための活動を支持するとの日加両国の強い誓約を確認した。両者は,朝鮮半島において,いまだ不安定な要因が存在していることに留意するとともに,同半島の緊張の緩和を推進するため,南北両朝鮮が,1972年7月4日の南北共同声明の精神に沿って,対話の再開に努力することが必要であると強調した。両者は,南北両朝鮮の関係改善を助長するような国際環境をつくるため,国際的な努力が継続されることを強く希望した。
 5.  両国首相は,軍備競争を抑制し,すべての核兵器の貯蔵を制限・削減し,あらゆる核実験を停止する効果的な取り決めを締結するために,一層緊急かつ具体的な措置が,特に核兵器国によって,とられることの必要性を強調した。両者は,武力の行使または武力による威嚇を抑制し,緊張を緩和するとともに,資源を生産的な,社会的・経済的目的のために解放するような,軍備管理・軍縮に関する取り決めに到達せんとの両国政府の誓約を再確認した。トルドー首相は,本年6月日本国政府が核兵器不拡散条約を批准したことを歓迎した。両国首相は,核拡散を防止し,原子力が平和目的にのみ使用されることを確保するための国際的な努力に貢献するとの両国政府の決意を強調した。
 6.  両国首相は,国際連合及びその専門機関が,世界の平和と進歩のために大きく寄与しうる国際的な場を提供していることを認識し,日加両国がこれらの機構を,その実効性を一層高めるために,発展させるよう建設的な方法で協力していくべきことを確認した。この関連で,両者は,従来から行われている日加国連協議の役割を高く評価し,今後とも両国が引き続き緊密に協議していくことを確認した。
 7.  両国首相は,世界各国間の経済的相互依存関係がますます深まりつつあることに鑑み,世界経済が直面する諸問題に対処するためには各国間の一層緊密な協力と建設的対話が必要であるとの確信を表明した。両者は,日加両国が緊密な協議を通じ世界経済の一般情勢,貿易,国際投資,国際金融,資源及びエネルギー並びに先進国と開発途上国との間の協力に関する諸問題をすべての国の利益となるような方法で解決するため,積極的な役割を果すことに合意した。
 8.  両国首相は,本年6月プエルト・リコにおいて開催された工業国7カ国首脳会議が,世界経済の諸問題の解決のための国際協力の重要性を確認する上で成果をあげたことを想起した。両者は,同会議の共同宣言で示された経済運営,貿易,国際投資,国際金融等に関する諸原則を遵守していくことが重要であることに意見の一致をみた。両者は,また,本年ジャマイカ及びフィリピンで開催された国際通貨基金の会合を想起し,それらの会合が今日とられつつある通貨上及び金融上の指針に実体を与えたものであることに合意した。この関連で,両国首相は,昨年来景気回復が進行しつつあることを歓迎した。両者は,生産の回復並びに高水準の雇用及び物価の安定の達成を確保するための努力を追求する公約を再確認した。両者は,特に,経済の健全な回復を確保するための不可欠な要因として,インフレと闘う努力を継続することが必要であることを強調した。
 9.  両国首相は,現在ジュネーブにおいて関税及び貿易に関する一般協定の枠内で進められている多角的貿易交渉を1977年末までに完結するとの目標を再確認した。両者は,東京宣言に規定された諸原則に従い,就中,貿易障害の漸進的な撤廃及び世界貿易を律するための国際的な枠組の改善を通じて,世界貿易の拡大とより一層の自由化を達成するとの目的を実現するにあたり,両国が積極的かつ建設的役割を果すことに合意した。
 10.  両国首相は,中期及び長期にわたるエネルギー情勢にはなお不安定要因が多く,また,世界経済の回復に伴うエネルギー需要の増大により近い将来この不安定要因が顕在化するおそれがあることに留意し,これまで進められて来た国際エネルギー機関を中心とする消費国間の協力をさらに促進する必要性につき意見の一致をみた。両者は,同時に国際エネルギー問題の解決のためには,全ての関係国間,就中,産油国との間の相互理解と国際協調が必要であることにつき意見の一致をみ,今後とも産油国と消費国との間の調和ある関係の進展とエネルギーの価格と供給の安定化が達成されるよう努力することに合意した。
 両者は,また,国際協力とともに,エネルギー分野における2国間協力も奨励されるべきことであることに意見の一致をみた。
 11.  両国首相は,開発途上国が自国の経済的及び社会的発展の度合いを改善するために行っている努力を助長することの重要性を強調し,両国が,国際経済体制の発展と先進国と発展途上国との間の経済格差の減少に関する諸問題の解決を見出すことを目的とする緊密な協議を維持するとの決意を表明した。
 12.  両国首相は,上記の第10項及び第11項に言及されている諸問題に関して,国際経済協力会議が有意義な役割を果たしていることを認識して,12月中旬に予定される国際経済協力会議の閣僚会議が国際経済協力における顕著な進展を達成し,また有意義な結果をもたらすよう引続き努力することに合意した。この関連で,三木総理大臣は,カナダが国際経済協力会議の共同議長国として建設的役割を果していることを高く評価した。
 13.  両国首相は,両国間の貿易が継続的かつ急速に増大しており,日本はカナダの第2の貿易相手国であり,カナダは日本の第7の貿易相手国であることに満足の意をもって留意した。両者は,この2国間関係が強化され,さらに貿易が調和ある方法で拡大し続けることを希望する旨表明した。
 両者は,特に,石炭,非鉄金属,木材及びその製品及び紙製品,穀類並びに油糧種子の両国間貿易の重要性に言及しつつ,両国それぞれの経済における鉱物及びエネルギー資源並びに農林産品の重要性を再確認した。これらの主要貿易品目に関する討議に際し,トルドー首相は,カナダの主要な輸出品目として豚肉に言及した。両者は,原材料の加工度の向上に関するカナダの政策につき討議し,この政策が互恵的な方法で実施されうることに意見の一致をみた。両者は,また,加工品,工業製品及び高度技術製品のカナダよりの輸入の増大に関する事項につき協議した。
 14.  両国首相は,日本とカナダの経済において,経済面での協力の増大と互恵にとって最も有望な分野を確認するために,双方により行われた努力に満足の意をもって留意した。両者は,現在までの具体的分野における進展,特に経済面の協力から得られる互恵的な結果を示す住宅及び計算機の分野における進展を再検討した。
 両者は,タール・サンドの開発及びウラニウムの探鉱及び開発の分野における日本の調査団,並びに燃料炭,製鉄用炭,住宅,ベニア板及び自動車部品に関する同様の調査団がカナダへ派遣されたことに留意した。両者は,また,カナダが石炭及びパルプ及び紙に関する技術的調査団,並びに航空機分野における長期的な産業協力の可能性を探究するためのSTOL(短距離離着陸機)調査団を日本に派遣したことに留意した。両者は,かかる調査団が,経済面における一層の協力の重要な契機を提供するために寄与することを確認した。この関連で,両者は,日本のハイレベルの経済使節団が現在カナダを訪問していることを歓迎し,双方の経済界の間の接触が引続き拡大することを希望する旨表明した。
 15.  両国首相は,両国間の貿易経済関係の長期的発展に確固たる基礎を提供する経済協力大綱を両者が署名したことにつき,特に満足の意を表明した。両者は,本文書が,両国政府として商業交流の進展と多様化を促進し,かつ両国産業間の協力を奨励し容易ならしめるものであることを述べていることに留意した。両者は,また,本大綱が経済協力を推進するために合同委員会の設立を規定していることに留意するとともに,その最初の会合が来年双方にとって都合の良い時期にカナダにおいて開催されることに合意した。両者は,さらに,合同委員会が既に設置されている協議機構を補完し,かつ強化するものであることに意見の一致をみた。
 16.  両国首相は,両国間の資本交流の一層の増大が両国間の経済関係をより緊密且つ高度のものとしうることに留意し,両国のそれぞれの外資政策が両国にとって顕著な利益をもたらす投資を容易ならしめる方法で運用されるべきであることに意見の一致をみた。
 17.  両国首相は,海洋法会議における進展を検討するとともに,より一層の努力を集中することにより,本交渉が大洋の新たな基本秩序に関する協定にすみやかに到達することを希望する旨表明した。
 18.  両国首相は,水産品の分野において,経済協力の可能性を含めた両国間の協力措置を促進することに関し,意見交換を行った。両者は,来るべき2国間漁業協議において,漁業管轄権を200海里に拡大するとのカナダの決定により生ずる新たな情況の下における日本の漁船団の操業のための取決めを含めた将来の漁業関係に関し話し合いが行われることに留意した。
 19.  両国首相は,原子力の平和利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定の一般的な枠組の中で,原子力の分野のあらゆる平和的側面(ウラニウム,原子力発電に関するものを含む技術交流等)における一層の協力を探求することに意見の一致をみた。
 20.  両国首相は,科学技術の分野における両国間の協力が進展しつつあることに留意するとともに,両国が,今後も引続きこの分野における協力の拡大に努力することに合意した。
 21.  両国首相は,経済交流及び人的交流の促進に寄与し,ひいては日加間の総合的な友好関係の一層の増進に貢献することとなるような,健全で相互に利益のある民間航空関係を拡大することに合意した。
 22.  両国首相は,2国間の観光面の交流が着実に増加していることを歓迎し,この傾向が持続するよう希望を表明した。両者は,観光が日加間の経済関係において意義深い分野であり,かつ,相互の理解の増進のため優れた手段であると指摘した。
 23.  両国首相は,両国の豊かな文化遺産に留意し,両国間の各層の,特に文化の分野における,交流を促進することが両国民の間の相互理解を深めるのに肝要であると合意した。この点で,両国首相は,文化協定の実施に伴い,両国間のより広範な文化的交流と接触が展開することを希望した。両国首相は,また,両国国民間の相互理解を増進するため両国の報道機関を通ずる情報の相互伝達が一層増大するよう希望した。
 両国首相は,日本におけるカナダ研究及びカナダにおける日本研究の促進並びに両国間の学術交流の面で進歩があったことに満足の意を表明し,これらの努力が続けられ,一層発展されるべきことに同意した。この関連で,三木総理大臣は,トルドー首相が日本訪問の機会に日本におけるカナダ研究計画を正式に発足させたという事実を歓迎した。
 24.  カナダ首相は,日本国総理大臣に対し,将来互いに都合のよい時期に,カナダを公式に訪問するよう招待した。三木総理大臣は,この招待を喜んで受諾した。
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(ヌ) ミグ25型機の機体引渡しについての外務省情報文化局長談話 (11月15日)

ミグ25型機の機体引渡しについて

 1976年9月6日に函館空港に強行着したソ連国土防空軍所属のミグ25型機の機体については,11月14日,茨城県日立港においてソ連側への引渡しが行われた。

 今回の事件に際して,航空機及びその飛行士についてわが国政府がとった措置は,類似の事件についての国際的な前例にも合致しており,国際法上主権国家として当然認められるものである。

 日本国政府は,ソ連邦政府がこのはからざる事件の基本的性格を正しくかつ冷静に理解していると信じており,近年発展しつつある日ソ両国間の友好関係が本件によって影響を受けるものでないと確信する。

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(ル) バンダラナイケ・スリ・ランカ共和国首相訪日に際しての日本・スリ・ランカ共同コ
  ミュニケ(仮訳)                  (1976年11月17日,東京において)
 1.  スリ・ランカ共和国首相スィリマヴォ・R・D・バンダラナイケ閣下は,日本国政府の招待により1976年11月12日から18日まで日本を公式訪問した。
 2.  バンダラナイケ首相は,天皇・皇后両陛下に謁見を賜わった。
 3.  バンダラナイケ首相は,三木日本国総理大臣と11月15日及び17日に会談を行った。
 4.  また,バンダラナイケ首相は,鳥羽及び京都を訪問した。
 5.  両国首相の会談は,親密かつ友好的な雰囲気の中で行われた。両者は国際的,地域的及び2国間の関心を有する問題について意見を交換した。
 6.  両国首相は,相互依存関係がますます深まりつつある今日の世界において,世界平和と進歩を促進するためには,各国がたゆまぬ対話を通じ,相互に平和的かつ協調的な関係を発展させることが肝要である旨重ねて表明した。
 7.  両国首相は,先進国と開発途上国間の格差拡大が今日の世界の直面する最も緊要かつ重要な問題の1つであることを再確認した。
 両者は,建設的な南北間の対話をそれぞれ促進するためにあらゆる努力を行うとの決意を表明した。
 8.  バンダラナイケ首相は,1976年8月にコロンボにおいて開催された第5回非同盟諸国首脳会議の成果に言及し,非同盟運動の意義及び役割を説明した。
 三木総理大臣は,同会議においてスリ・ランカが果した重要な役割に賛辞を呈するとともに非同盟諸国の国際問題における重要性に鑑み,日本としてはこれら諸国との相互理解を一層増進したいとの願望を表明した。
 9.  両国首相は,最近のアジア情勢について討議した。両者は,アジアにおける平和,安定及び発展が世界平和の維持にとって最も重要であることを再確認した。
 両者は,この関連で,同地域における関係改善への最近の積極的な動きを歓迎した。
 三木総理大臣は,ASEAN諸国が自立と相互協力の強化のために努力している旨述べるとともに,かかる努力は東南アジア地域全体の平和と繁栄の確保に貢献するであろうとの確信を表明した。
 バンダラナイケ首相は,東南アジア地域の永続的平和と安定に貢献するいかなる進展をも歓迎する旨述べた。
 10.  バンダラナイケ首相は,国連におけるインド洋平和地帯提案に言及し,日本国政府の支持に対し謝意を表明した。
 三木総理大臣は,バンダラナイケ首相が本問題のために払っている努力を評価する旨表明した。
 11.  両国首相は,両国の関係を討議した。両者は,両国が従来より友好的な関係にあることに満足の意をもって留意するとともに,かかる結びつきを一層強化することに合意した。
 12.  バンダラナイケ首相は,スリ・ランカの経済発展に向けての努力を支援するためこれまで日本から与えられた協力につき謝意を表明した。
 三木総理大臣は,スリ・ランカ政府及び国民が経済発展のために払っている真剣な努力に対して深甚な敬意を表明するとともに,かかる努力を支援するため,日本国政府としては,今後とも対スリ・ランカ援助国グループの一員として応分の援助を行ない,もって両国間の経済協力を推進したい旨述べた。
 バンダラナイケ首相は,三木総理大臣に対し,インギニミチャ貯水池計画,コロンボ郊外電話網拡充計画及び漁網工場計画の3案件に対する日本からの資金供与についての願望を表明した。三木総理大臣は,日本国政府としては,早急に調査団を派遣する等の適当な方法で実施可能性が確認されればこれらの案件に対する借款の供与のために措置をとる用意がある旨述べた。
 13.  バンダラナイケ首相は,食糧援助規約に基づく1976年度分の援助として,日本国政府からスリ・ランカ政府に対し,200万米ドル相当の肥料と米を無償供与するための公文が近く両国政府代表により交換される運びとなっていることを感謝の念をもって留意した。
 14.  両国首相は,両国間の貿易と投資の一層の拡大が両国の利益に沿うものであること,また,そのために両国は一層の努力と協力を続けていくことに合意した。バンダラナイケ首相は,民間資本の投資を通じて日本がスリ・ランカの経済開発に参加していることに対し感謝するとともに,スリ・ランカにおける投資の増大のために日本の投資家に対し必要な便宜と保証が与えられるであろうと述べた。
 15.  両国首相は,両国国民の間の相互訪問が近年増大していることを歓迎した。両者は,相互理解を深め,伝統的に緊密で友好的な両国間の結びつきを強化するため,このような交流の幅を広げることの必要性を再確認した。両者は,両国間の文化交流を促進するために引続き努力を払うことに合意した。
 16.  両国首相は,バンダラナイケ首相の今回の訪問が,日本とスリ・ランカの間に既に存在する友好関係の促進に大きく寄与したことを満足の意をもって確認した。
 バンダラナイケ首相は,同首相及びその一行が日本滞在中に受けた心からの歓迎と暖かいもてなしにつき,日本国政府及び国民に対して深甚な謝意を表明した。
 17.  バンダラナイケ首相は,三木総理大臣夫妻に対しスリ・ランカ共和国を公式訪問するよう心からの招請を行った。三木総理大臣は,この招請を喜んで受諾した。
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(ヲ) 吉野外務審議官発グンデラックEC委員宛書簡(骨子) (11月25日)
  1.  先般の土光ミッションの訪欧の際あるいは日・EC定期協議の際EC側より提起された日・EC間の貿易上の諸問題について左記の通り日本政府の見解をお伝えする。
(1)  日・EC貿易不均衡問題については,我方としては(イ)2国間でなくグローバルなベースを目標とすべきであると考える。(ロ)貿易収支のみでなく貿易外収支の要素も,また幅広い経済交流も考慮に入れる必要がある。
(2)  日・EC貿易経済関係のバランスのとれた発展のためには縮小均衡ではなく,あくまでも拡大均衡によって実現することが重要である。
(3)  わが国としては,ECの一部の諸国が困難な経済情勢に直面していることは承知しており,そのために起る問題については,双方の政府関係者及び関係業界が間断なき対話を維持することにより,自由貿易の原則に沿うよう具体的な解決策を拡充することが重要である。例えばわが国は自動車ならびに医薬品の検査制度面についてEC側の希望に沿ってできるだけの協力措置を講じてきている。
  2. EC側から提起された特定の問題に関するわが国のコメントは次のとおりである。
(1)  自動車については日英の業界は友好的な接触により相互理解を深めており,またわが国の業界は英国自動車業界の困難な立場を十分理解しており各社の自主的判断に基づき,節度ある輸出を行ってきているが,本年の英国向け乗用車船積台数は1975年の水準を大きく上回らない見込みである。他方,最近英国市場における日本車以外の輸入車のシェアが高まっていることを指摘するとともに近日中予定されていると聞いている日英業界会談が円満に行われることを期待する。
(2)  造船問題については,従来よりOECDにおける協議や関係業界同士の接触を通じ,相互理解が図られてきており,マルチの問題については今後ともかかる協議や接触を続けることが有益であるが,これと並行して特に双方の関心のある問題について,ECとのバイラテラルな会合を行うことについて同意する。
(3)  農産加工品の輸入割当拡大の問題については,(イ)飼料用脱脂粉乳の今年度下期の割当を56,000トン(上期の2.8倍)とするための手続をとったところである。なお,更に必要に応じて追加割当を考慮したい。(ロ)一般用バターについては前年度8,600トンに対し,今年度上期に既に9,500トンの輸入契約(内ECから4,000トン)を行ったが,下期においても必要に応じ輸入契約を進めたいと考える。このほかフランス産加工肉の輸入解禁については動物検疫官を現地に派遣し調査の上,日本の基準に合致すれば輸入を認める考えである。
 以上の結果,EC産品の競争力にもよるが,ECからの輸入量も増加する可能性があると考える。煙草については,輸入手続を簡素化(輸入貿易管理令に基づいて割当品目からの除外)し,またボンド輸入方式による銘柄数の増加に努力する。いずれにせよ需要が増大すれば輸入量も増加させる考えであり,これに応じ輸入タバコ取扱店数も増加することとなろう。
  3.  関税及び非関税障壁の軽減撤廃の問題については,MTNにおいて相互主義に立ってこれを実現することが適当である。
 なお,先般のハイレベル協議において協議した相互の関心品目については,今後とも意見交換をすすめたい。
  4.  日・EC貿易の今後の発展にとっては,官民を問わず双方が絶えず接触し相互理解を深めることが肝要であり,誤解及び意見の対立が生ずる前に問題を解決する努力が不可欠である。政府としては,業界同士の接触が緊密になることを歓迎するとともに,政府間においても,あらゆるレベルにおける相互の接触が増大することについてEC側に全面的に協力する用意があり,ECから具体的な提案があれば,前向きに取組みたい。
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(ワ) EC首脳会議(欧州理事会)ステートメント(対日貿易関係) (11月30日,ハーグ)

 欧州理事会は,EC・日本間の良好な関係を維持することの重要性を強調し,この関係が双方の利益となるよう発展することを強く望む。

 欧州理事会は,EC・日本間の貿易情勢の急速な悪化,ならびに一定の重要産業分野で発生した問題とともに,これまでの日本の輸出入慣行のもたらす影響に懸念をもって留意する。

 双方の利益となる貿易関係の発展を図るという見地から,日本のECからの急速な輸入拡大の必要性に特別の注意を払いつつ,こうした状況の改善のため確固たる努力が求められる。

 従って,欧州理事会は責任あるEC諸機関に対し,これらの問題に対しさらに緊急な検討を与え,日本との討議に際し,共通通商政策のこの重要な側面を強力に追求するよう勧告する。

 欧州理事会は,ECの諸目標実現のため緊急に必要とされる解決策について,実質的進展が次回首脳会議までに達成されることを期待する。

 欧州理事会は,日本政府が現在発生している諸問題の解決に当たり,相互理解に基づいてECと協力する意向であることを満足の意をもって留意する。

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(カ) マルーフ・イラク共和国副大統領訪日に際しての日本・イラク共同コミュニケ(仮訳)

(1977年1月24日,東京において)

1.  タハ・ムヒディン・マルーフ・イラク共和国副大統領は,日本国政府の公賓として,1977年1月19日より24日まで日本を訪問した。
2.  マルーフ副大統領は,1月20日,皇居において天皇陛下に謁見し,陛下から午餐を賜った。
3.  同副大統領は,1月20日,福田赳夫内閣総理大臣と心からなるかつ友好的な零囲気の中で会談し,2国間関係及び現在の国際問題にわたる両国が共通の関心を有する諸問題につき有益な意見交換を行った。
 同会談には,イラク側よりサドゥン・ハマディ外務大臣,ヒクマット・イブラヒム外国貿易大臣,ファクリ・カドリ中央銀行総裁及びアブドル・メリク・アルヤシン外務次官が,また,日本側より鳩山威一郎外務大臣及び園田直内閣官房長官が同席した。
4.  同副大統領及び総理大臣は,現存する両国間協力を含む2国間関係を検討した。双方は,1974年の日本・イラク共和国両国政府間経済技術協力協定の署名以降,これら2国間関係の展開において達成された相互に有益な進展に満足の意をもって言及した。双方は,両国間のより強固な関係を確保するよう,種々の分野,特に経済,科学,技術,工業技術及び文化の分野における協力範囲の拡大につき希望を表明した。
5.  両者は,文化交流,人的交流を含め,両国間関係について検討を行い,両国の友好,協力関係が近年良好に進展していることを満足の意をもって言及した。マルーフ副大統領は,両国間の人的交流及び文化交流の促進に対する希望を表明しつつ,両国間の民間航空及び文化協力に関する各協定を締結することを提案した。日本側は,この問題を鋭意検討する旨答えた。
6.  マルーフ副大統領は,アジアの安定と発展のために果している日本の役割を高く評価し,アジア諸国と歴史的遺産を共有するイラクとしても,アジアの安定と安寧に多大の関心を有していることを強調した。双方は,インド洋及びその自然的外延における平和と安定の維持の重要性を認識した。
7.  副大統領及び総理大臣は,中東情勢に関しても意見を交換した。
 双方は,中東問題が世界の平和に対して有する重要性を認識し,同地域に1日も早く公正且つ永続的な平和が達成されることについての希望を表明した。イラク側は,かかる平和はアラブの全占領地域よりのイスラエル兵力の無条件撤退なくしては達成できない旨述べ,また,問題の実質,すなわち,アラブのパレスチナ人が祖国の地に復帰する権利を無視するいかなる計画あるいは決議をもイラクは拒否する旨強調した。日本側は,安保理決議242号が速やかに且つ完全に実施されるべきであり,また,国連憲章に基づくパレスチナ人の正当な権利が尊重されるべきであるとの日本国政府の立場を再確認した。
8.  また,副大統領及び総理大臣は,エネルギー情勢及び両国間の貿易関係についても意見を交換した。
 双方は,エネルギー資源の安定的供給を含め,これらの問題について両国間の相互理解と協力関係を一層深める必要のあることに同意した。双方は,両国間の貿易が健全な趨勢を示しつつあることに留意するとともに,両国間の貿易関係の強化に関し意見を交換した。双方は,また,国際経済情勢の進展につき検討した。
 双方は,種々の国際的文書,就中,第7回国連特別総会の決議に於て双方が支持した諸原則の実施は,国際経済協力の発展と伸長,及び全ての国家と国家の利益のため,貿易障害の除去に資することの確信を表明した。双方は平等と正義に立脚すべき経済関係に対する発展途上国と先進諸国との間の相互理解の重要性を強調した。
9.  同副大統領の今次訪日の機会に,1月20日外務省において,両国政府間経済技術協力協定に基づき第1回合同委員会が開催された。
 同会合は,鳩山外務大臣を議長として行われ,日本側より田中通商産業大臣及び倉成経済企画庁長官が,また,イラク側よりハマディ外務大臣,イブラヒム外国貿易大臣及びカドリ中央銀行総裁が出席し,また,双方より,その他政府関係者が出席した。
 第1回合同委員会会合においては,両国間の経済技術協力の実績及び進展を検討した。双方は,この分野におけるこれまでの進展,すなわち,1974年に合意された借款及び信用供与に加え,今回更に相当規模の信用供与について両国政府間において書簡が交換されたことを評価するとともに,現在建設中の肥料プロジェクト,今回実施が合意されたハルサ火力発電所プロジェクト等の工業プロジェクトの具体化及び他の合意された諸開発プロジェクトの実施に参加することを通じて両国間の経済協力を促進することに合意した。
10.  また,日本側,イラク側双方より,それぞれ,日本の経済情勢並びにイラクの開発及び工業化の達成状況と今後の見通し,特に国家開発新5カ年計画につき説明がなされた。イラク側は新5カ年計画中の諸プロジェクトに対する日本の継続的協力についての願望を表明し,日本側は,日本の協力がイラクの経済・社会開発に貢献することを希望する旨表明した。
11.  第1回合同委員会に引き続き,ハマディ外務大臣及びイブラヒム外国貿易大臣は,それぞれ鳩山外務大臣及び田中通商産業大臣と個別に会談し,相互に関心を有する事項につき更に詳細かつ有意義な意見交換を行った。
12.  マルーフ副大統領は,同副大統領及び随員一行が日本滞在中に受けた暖かい歓迎と厚遇に対し,福田総理大臣,日本国政府及び国民への深い感謝の意を表明した。
13.  マルーフ副大統領は,福田総理大臣に対し,イラクを訪問するよう公式に招待を行った。同総理大臣は,この招待を感謝の念をもって受諾した。
14.  マルーフ副大統領の訪日は,日本国とイラク共和国の友好関係の促進に大いに貢献した。
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(ヨ) 200海里漁業水域の暫定措置の実施に関するソ連邦大臣会議の決定についての日本国政府の立場表明(官房長官談話) (1977年2月25日)

 タス通信によれば,2月24日,ソ連邦大臣会議は客年12月10日付ソ連邦最高会議幹部会令第6条に基づく暫定措置を一定の対象水域において3月1日より実施する旨決定した。

 右対象水域には,わが国固有の領土であり,政府が日ソ平和条約交渉においてその一括返還を求めている北方4島の周辺水域が含まれている。

 今般,ソ連側が,これら北方4島の周辺水域を一方的にソ連邦の漁業規制対象水域に含めたことは極めて遺憾であり,わが国としてはこれを認めることができない。

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(夕) 福田赳夫内閣総理大臣とジミー・カーター米大統領との間の共同声明

(1977年3月22日,ワシントンにおいて)

 1.  福田総理大臣とカーター大統領は,3月21日及び22日の両日,ワシントンにおいて会談し,共通の関心を有する諸問題について包括的かつ充実した意見の交換を行った。
 両者は,会議を通じ,日米両国政府の新しい首脳の間に自由かつ率直な対話と相互信頼の関係が築かれたことに満足の意を表した。両者は,両国政府が,共通の関心を有するすべての事項につき今後とも密接な連絡と協議を行うことに意見の一致を見た。
 2.  総理大臣と大統領は,日米両国が,先進工業民主主義国家として,それぞれの責任を認識しつつ,一層平和で繁栄した国際社会を実現するために努力するとの決意を表明した。この目的のために,両者は,先進工業民主主義諸国が,密接な協議を通じて,主要な経済問題に対して調和した立場を醸成することが緊要であることについて意見の一致をみた。さらに,両者は,政治体制,経済的発展段階を異にする諸国との対話と協調を維持し,発展させることが重要であることについて意見の一致をみた。
 3.  総理大臣と大統領は,日米両国の友好協力関係が,単に経済及び政治の交流のみならず,科学技術,医学,教育及び文化等両国民の生活のさまざまな分野で拡大を続けていることに満足の意をもって留意した。両者は,これらのすべての分野について民間及び政府間双方における一層の協調を期待した。総理大臣と大統領は,民主主義の共通の価値観及び個人の自由と基本的人権の深い尊重に基礎を置く両国の提携関係を一層強化して行くとの共通の決意を確認した。
 4.  総理大臣と大統領は,諸国間の相互依存関係のゆえに,工業諸国が開発途上国を含む世界経済全体の必要を十分考慮しつつ,その経済運営に当ることが必要であるとの共通の認識を確認した。両者は,国際経済の安定的発展のためには,先進工業民主主義諸国の景気回復が不可欠であり,日米両国を含む経済規模の大きい諸国が,インフレの再発防止を図りつつ,それぞれの国の実情に見あった形で,世界経済の浮揚に貢献して行くべきことに意見の一致をみた。両者は,両国政府が,この目的のために,引続き緊密に協議することに意見の一致をみた。
 両者は,世界経済の健全な発展のためには自由な世界貿易体制が緊要であることにつき意見の一致をみ,この関連において,多角的貿易交渉東京ラウンドの早期かつ重要な進展を図り,同交渉をできるだけ速やかに成功裡に妥結せしめるとの決意を表明した。
 両者は,日米両国を含む関係諸国が,南北関係において提起されている諸問題に建設的に取組む必要を再確認した。両者は,世界のエネルギー問題が引続き重大であることに留意し,エネルギーの節約並びに新規及び代替エネルギー源の開発のために,一層の措置をとることが重要であることを再確認した。両者は,国際エネルギー機関における消費国間の協力を強化する必要があること及び石油輸入国と産油国との間の協力を引続き促進する必要があることにつぎ意見の一致をみた。両者は,両国政府が,これらの諸問題に対する積極的な解決を見出し,促進するために引続き努力し,国際経済協力会議閣僚会議を成功裡に終了せしめるよう,努力することに意見の一致をみた。
 総理大臣と大統領は,主要国首脳会議が,5月にロンドンにおいて開催されることを歓迎した。両者は,同会議が,協調と連帯の精神に基づいて,世界経済が直面する諸問題についての建設的かつ創造的な意見交換の場となることへの期待を表明した。
 5.  総理大臣と大統領は,現下の国際情勢を検討し,アジア・太平洋地域における永続的平和の維持が,世界の平和と安全のために必要であるとの認識を再確認した。
 両者は,友好と信頼の絆で結ばれた日米両国の緊密な協調関係が,アジア・太平洋地域における安定した国際政治構造にとって不可欠であることにつき意見の一致を見た。両者は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約は極東の平和と安全の維持に大きく寄与してきていることに留意し,同条約を堅持することが両国の長期的利益に資するものであるとの確信を表明した。
 大統領は,米国が,太平洋国家として,今後ともアジア・太平洋地域に強い関心をもち,同地域において積極的かつ建設的役割を引続き果すことを再確認した。大統領は,米国がその安全保障上の約束を遵守し,西太平洋において,均衡がとれ,かつ,柔軟な軍事的存在を維持する意向である旨付言した。総理大臣は,米国のかかる確認を歓迎し,日本がこの地域の安定と発展のため,経済開発を含む諸分野において,一層の貢献を行うとの意向を表明した。
 総理大臣と大統領は,東南アジア諸国連合の活動に注目し,自らの自主性と当該地域の強靭性を高めようとする同連合加盟諸国の努力を高く評価した。両者は,また,東南アジア諸国連合加盟国による地域的結束と発展への努力に対しては,両国が引続き協力と援助を行う用意があることを再確認した。
 両者は,インドシナ地域における事態に注目し,今後同地域が平和で安定した地域として発展して行くことが東南アジア全体の将来にとって望ましいとの見解を表明した。
 総理大臣と大統領は,日本及び東アジア全体の安全のために,朝鮮半島における平和と安定の維持が引続き重要であることに留意した。両者は,朝鮮半島における緊張を緩和するため,引続き努力することが望ましいことにつき意見の一致をみるとともに,南北間の対話の速やかな再開を強く希望した。大統領は,米国の意図する在韓米地上軍の撤退に関連して,米国が韓国とまた日本とも協議の後に同半島の平和を損わないような仕方でこれを進めて行くこととなろう旨述べた。大統領は,米国が韓国の防衛についての約束を引続き守ることを確認した。
 6.  総理大臣と大統領は,最も緊急な課題である核軍縮への第一歩として,あらゆる環境における核実験が早急に禁止されなければならないことを強調した。通常兵器の国際的移転につき,両者は,国際社会により,かかる移転を抑制する措置が緊急の課題として検討されるべきことを強調した。また,大統領は,核拡散防止に関連して,日本が昨年核兵器不拡散条約を批准したことを歓迎した。
 7.  総理大臣と大統領は,今日の世界において国際連合が果たしている重要な役割を認識し,同機構を強化するために日米両国が協力すべきことに意見の一致をみた。これに関連して,大統領は,日本が国際連合安全保障理事会の常任理事国となる資格を十分充たしているとの信念を表明し,かつ,この目的に対する米国の支持を言明した。総理大臣は,大統領のこの発言に謝意を表明した。
 8.  総理大臣と大統領は,原子力の平和利用が核拡散につながるべきではないことを再確認した。これに関連して,大統領は,一層効果的な核拡散防止体制を支援するような米国の政策を策定する決意を表明した。総理大臣は,核不拡散条約の締約国であり,かつ輸入エネルギーに大幅に依存する高度な工業国である日本にとってその原子力開発利用計画の実現に向って進むことが緊要である旨述べた。大統領は,米国の新原子力政策の立案に関連して,エネルギーの必要に関する日本の立場に対して十分考慮を払うことに同意した。総理大臣と大統領は,日本の関心にかない,かつ一層効果的な核拡散防止体制に寄与するような実効的政策を策定するために日米両国が緊密な協力を行うことが必要であることにつき意見の一致をみた。
 9.  総理大臣と大統領は,両国間の貿易,漁業及び航空問題を討議した。両者は,日米両国間で懸案となっている事項につき相互に受け入れうる公正な解決がえられるよう,両国政府間で今後とも緊密な協議と協力を行うことが重要であることに意見の一致をみた。
10.  総理大臣は,カーター大統領夫妻の訪日こ関する日本国政府よりの招待を伝達した。
 大統領は,この招待を深甚なる謝意をもって受諾するとともに,日米双方の都合の良い時期に訪日することを楽しみにしていると述べた。

Joint Communique

between

Prime Minister Takeo Fukuda

and

President Jimmy Carter

March 22, 1977

 1.  Prime Minister Fukuda and President Carter met in Washington March 21 and 22 for a comprehensive and fruitful exchange of views on matters of mutual interest.
 They expressed satisfaction that through the meetings, a relationship of free and candid dialogue and mutual trust was established between the new leaders of the governments of Japan and the United States. They agreed that the two Governments would maintain close contact and consultation on all matters of common concern.
 2.  The Prime Minister and the President expressed their determination that the two countries, recognizing their respective responsibilities as industrialized democracies, endeavor to bring about a more peaceful and prosperous international community. To this end, they agreed that it is essential for the industrialized democracies to develop harmonized positions toward major economic issues through close consultation. They agreed further that it is important to sustain and develop dialogue and cooperation with countries whose political systems differ and which are in varying stages of economic development.
 3.  The Prime Minister and the President noted with satisfaction that the friendly and cooperative relations between Japan and the United States have continued to expand throughout diverse areas in the lives of the two peoples-not only in economic and political interchange, but in such varied fields as science and technology, medicine, education and culture.They looked forward to further collaboration on both private and governmental levels in all these areas. The Prime Minister and the President confirmed their common determination to further strengthen the partnership between their two countries, based on shared democratic values and a deep respect for individual freedom and fundamental human rights.
 4.  The Prime Minister and the President confirmed their common recognition that the interdependence of nations requires that the industrial countries manage their economies with due consideration for global economic needs, including those of the developing nations. They agreed that economic recovery of the industrialized democracies is indispensable to the stable growth of the international economy, and that nations with large-scale economies, including Japan and the United States, while seeking to avoid recrudescent inflation, should contribute to the stimulation of the world economy in a manner commensurate wjth their respective situations. They agreed that both Governments would continue to consult closely to this end.
 They agreed that a liberal world trading system is essential for the sound development of the world economy, and in this connection expressed their determination to seek significant early progress in the Tokyo Round of the Multilateral Trade Negotiations and to bring those negotiations to a successful conclusion as soon as possible.
 They reconfirmed the need for the nations concerned, including Japan and the United States, to address constructively the issues posed in the North-South relationship. They noted the continuing seriousness of the global energy problem and reconfirmed the importance of taking further steps to conserve energy and to develop new and alternative energy sources. They agreed on the necessity of intensified consumer country cooperation in the International Energy Agency and of continued promotion of cooperation between the oil-importing and oil-producing countries. They agreed that both Governments would continue their efforts to identify and promote positive solutions to these issues, and would endeavor to bring the Ministerial Meeting of the Conference on International Economic Cooperation to a successful conclusion.
 The Prime Minister and the President welcomed the convening in London in May of the summit conference of the major industrial countries. They expressed their expectation that the conference, in a spirit of cooperation and solidarity, would serve as a forum for a constructive and creative exchange of views on problems confronting the world economy.
 5.  The Prime Ministre and the President reviewed the current international situation, and reaffirmed their recognition that the maintenance of a durable peace in the Asian-Pacific region is necessary for world peace and security.
 They agreed that the close cooperative relationship between Japan and the United States, joined by bonds of friendship and trust, is indispensable to a stable international political structure in the Asian-Pacific region. They noted that the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States has greatly contributed to the maintenance of peace and security in the Far East, and expressed their conviction that the firm maintenance of the Treaty serves the long-term interests of both countries.
 The President reaffirmed that the United States as a Pacific nation, maintains a strong interest in the Asian-Pacific region, and will continue to play an active and constructive role there. He added that the United States wiil honor its security commitments and intends to retain a balanced and flexible military presence in the Western Pacific. The Prime Minister welcomed this affirmation by the United States and expressed his intention that Japan would further contribute to the stability and development of that region in various fields, including economic development.
 Noting the activities of the Association of Southeast Asian Nations, the Prime Minister and the President valued highly the efforts of its member countries to strengthen their self-reliance and the resilience of the region. They also reaffirmed that the two countries are prepared to continue cooperation and assistance in support of the efforts of the ASEAN countries toward regional cohesion and development.
 Taking note of the situation in Indochina, they expressed the view that the peaceful and stable development of this area would be desirable for the future of Southeast Asia as a whole.
 The Prime Minister and the President noted the continuing importance of the maintenance of peace and stability on the Korean Peninsula for the security of Japan and East Asia as a whole. They agreed on the desirability of continued efforts to reduce tension on the Korean Peninsula and strongly hoped for an early resumption of the dialogue between the South and the North. In connection with the intended withdrawal of the United States ground forces in the Republic of Korea, the President stated that the United States, after consultations with the Republic of Korea and also with Japan, would proceed in ways which would not endanger the peace on the Peninsula. He affirmed that the United States remains committed to the defense of the Republic of Korea.
 6.  The Prime Minister and the President emphasized that, as a first step toward the most urgent task of nuclear disarmament, nuclear testing in aii environments should be banned promptly. With respect to the international transfer of conventional weapons, they emphasized that measures to restrain such transfers should be considered by the international community as a matter of priority. In connection with the prevention of nuclear proliferation, the President welcomed the ratification by Japan last year of the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons.
 7.  The Prime Minister and the President, recognizing the important role the United Nations is playing in the contemporary world, agreed that Japan and the United States should cooperate for the strengthening of that organization. In this connection, the President expressed his belief that Japan is fully qualified to become a permanent member of the Security Council of the United Nations, and stated American support for that objective. The Prime Minister expressed his appreciation for the President's statement.
 8.  The Prime Minister and the President reaffirmed that the use of nuclear energy for peaceful purposes should not lead to nuclear proliferation. In this connection, the President expressed his determination to develop United States policies which would support a more effective non-proliferation regime. The Prime Minister stated that for Japan, a party to the Non-Proliferation Treaty and a highly industrialized state heavily dependent on imported energy resources, it is essential to progress toward implementation of its program for the development and utilization of nuclear energy. The President agreed to give full consideration to Japan's position regarding its energy needs in connection with the formulation of a new nuclear policy by the United States. The Prime Minister and the President agreed on the necessity for close cooperation between Japan and the United States in developing a workable policy which will meet Japan's concerns and contribute to a more effective non-proliferation regime.
 9.  The Prime Minister and the President discussed matters concerning bilateral trade, fisheries, and civil aviation. They agreed on the importance of continued close consultation and cooperation between the two Governments to attain mutually acceptable and equitable solutions to problems pending between Japan and the Unjted States.
10.  The Prime Minister conveyed an invitation from the Government of Japan to President and Mrs. Carter to visit Japan. The President accepted this invitation with deep appreciation and stated that he looked forward to visiting Japan at a mutually convenient time.

 

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(2) 多数国間関係

(イ) 核兵器の不拡散に関する条約の批准書の寄託の際の政府声明

(1976年6月8日)

 本日,日本国政府は,核兵器の不拡散に関する条約の批准書を英国,ソ連及び米国の政府に寄託し,日本国は,この条約の締約国となる。

 日本国は,従来より,唯一の被爆国として,核武装を排するとの基本政策を堅持し,平和憲法の下に平和国家としての外交に徹してきた。日本国政府は,この条約の批准書の寄託に当たり,この基本政策をあらためて世界に向けて表明するものである。日本国政府は,日本国のこの条約への参加が国際関係の安定,特に,アジアの平和と安定に寄与するものと確信する。

 日本国は,この条約の締約国として,核兵器の拡散を防止し原子力の平和利用に関する国際協力に貢献するため,今後一層努力を払っていくことを決意するものである。この条約は,「核兵器国」に対してのみ核兵器の保有を認め,核兵器国に特別の地位を与えている。日本国政府は,このような差別は,将来,核兵器国が核兵器を廃絶することによって是正されなければならないと信ずる。このため,日本国政府は,核軍縮の促進に特段の努力を払っていく決意である。

 日本国政府は,このような基本的な考え方に基づき,特に次の諸点を強調するものである。

 1.  日本国政府は,この条約を真に実効あるものとするため,核爆発能力を有すると否とを問わず,できるだけ多くの国がこの条約に参加することを希望するものである。特に,核兵器を保有しながらこの条約に参加していないフランス共和国及び中華人民共和国がこの条約に参加することを強く希望する。
 2.  日本国政府は,核軍縮について特別の責任を有する核兵器国が,この条約の第6条に従い,核軍備の削減,包括的核実験禁止等の具体的な核軍縮措置をとっていくことを強く要請する。また,この条約の締約国でない核兵器国も核軍縮措置をとることを強く要請する。
 3.  日本国政府は,非核兵器国の安全保障に関する1968年6月の英国,ソ連及び米国の宣言並びに安全保障理事会の決議255(1968)に注目するとともに,核兵器国が非核兵器国の安全保障のための実効ある措置につき更に努力を重ねることを希望する。また,日本国政府は,核兵器国,非核兵器国を問わず,すべての国に対し,国際連合憲章に従い,その国際関係において,核兵器,非核兵器のいずれを伴うものであれ,武力による威嚇又は武力の行使を慎むことを強く要請する。
 4.  日本国政府は,全人類の福祉のために,原子力の平和利用及び核爆発の平和的応用に関する国際協力がこの条約の規定に従い,強力に推進されるべきであると確信する。
 日本国政府は,この条約によって,締約国である非核兵器国の原子力平和利用活動がいかなる意味においても妨げられてはならず,また,日本国がかかる活動のいかなる面においても他の締約国と差別されてはならないと考える。
 5.  日本国政府は,核兵器国である英国及び米国がその原子力平和利用活動に国際原子力機関の保障措置の適用を受諾すると表明したことを高く評価し,他の核兵器国も同様の措置をとることを強く要請する。
 6.  日本国政府は,この条約の適正なる運用を確保するため,この条約に規定されている再検討会議が引き続き定期的に開催されることを希望する。
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(ロ) 第15回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳) (1976年6月22日,パリにおいて)
 1.  経済協力開発機構閣僚理事会は,6月21日及び22日の両日,パリにおいてパナイス・パパリグラス・ギリシャ共和国調整計画大臣を議長として開催された。閣僚は,国際投資及び多国籍企業並びに貿易の分野において幾つかの決定を行った。閣僚は,世界の相互依存,開発協力及び開発途上国との対話について討議を行った。閣僚は,現下の経済情勢について意見交換を行い,各国それぞれの政策を通じ遂行される持続的な経済拡大のための戦略の主要要素につき合意した。
I OECD加盟国間の相互依存及び協力
 2.  OECD加盟国政府は,社会的進歩,開発協力の拡充並びに個人の自由が確保され得る市場指向的開放経済制度に基礎をおいており,各国間の経済的相互依存の増大が,平和的かつ安定的な世界の維持に寄与し,また全ての人々の生活条件の改善をもたらす力と効率の源泉であることにつき合意をみている。かかる状況のもとで,加盟国政府は,加盟国間においてのみでなく世界全体のために,インフレなき経済成長,雇用及び社会的進歩を促進するための大きな責任を有している。
 3.  加盟国政府は,各国間での高度な相互依存,連帯の精神で相互に相手国の問題を認識すること,及び共通の基本原則への信奉が,各国の経済政策を策定し実施する上で,各国間の緊密な協議及び協力を必要とするものであることに合意した。適切な場合には,かかる協力は貿易,環境,エネルギー,国際投資及び多国籍企業などの特定分野にみられた如く,各国政府の行動について,規則又は行動指針を採択することにまで及ぶこともあり得よう。
エネルギー
 4.  閣僚は,エネルギー協力の分野において,OECDで既に達成されている進展に留意した。閣僚は国際エネルギー機関の過去1年間の業績に関する報告書を同機関理事会議長より受領した。
 5.  エネルギー資源の合理的利用を促進するための重要な政策が既に採用されてきている。更に閣僚は,かかる政策の効果発現までの期間が長いことに鑑み,長期的には枯渇するエネルギー資源に対する依存度を減少する必要性に対応しもって全世界各国のエネルギー供給に対する長期的必要を満たすために早期に効率的な行動をとる必要のあること,また短期的には石油を中心とする利用可能なエネルギー資源の合理的な利用及び適正な供給を図る手段を探求する必要があることを認識した。
 従って閣僚は,これらの問題について協調的なアプロ-チな確立することを目指して,産油国及び他の開発途上国との有益な対話を継続すると共に,これらの目標に対応して策定された政策を引続き追究する決意を確認した。
国際投資及び多国籍企業
 6.  閣僚は,加盟国間による協力が,外国投資環境を改善し,経済的,社会的進歩に対する多国籍企業の積極的な寄与を促進し,又多国籍企業の各種の活動から生じ得る困難を最小にしかつ解決することが出来るとのことにつき合意をみている。閣僚は従って国際投資及び多国籍企業に関する協力及び協議を強化することに合意した。閣僚は各国の政府* を代表して,多国籍企業の行動指針,内国民待遇,国際投資の促進要因及び抑制要因,これらの事項に関する協議手続及び再検討についての宣言を採択した。閣僚理事会は,これら分野における政府間協議に関する必要な手続を設定する3つの決定を行った(PLESS/A(76)20参照)。OECDにおける継続的な努力によりこの分野においては,新たな国際的な措置及び取極がもたらされる可能性がある。
貿易
 7.  加盟国政府** は,連鎖反応を引き起し景気回復の過程を危機に陥れるおそれのある貿易及びその他の経常勘定取引における制限措置をとることを回避することを目的とした1974年の「貿易に関する宣言」を更に1年間更新することを決定した。本「宣言」は,その時の例外的な経済上の問題に対処するための暫定的措置として意図されたものであり,また経済情勢が引続き改善される見通しであり,このため正常状態に戻ると思われることに留意しつつ,閣僚は,OECDに対し1977年における宣言の期限満了の十分事前に情勢を検討し,適当な行動計画を吟味することに合意した。更に閣僚は輸出信用の分野におけるOECDの活動を強化することに合意した。
 8.  国際貿易が世界の経済成長に対し重要な寄与をなしてきたことに留意し,閣僚は,すべての分野における保護主義的圧力に抗するのみでなく,貿易の一層の自由化及び国際貿易体制の強化の努力を継続する必要があることを認識した。かかる観点から閣僚は,多角的貿易交渉が有用な成果を挙げることを強く支持する旨表明した。
II 世界の相互依存,開発協力及び対話
 9.  OECD加盟国政府は,経済交流を強化することが,開発途上国を含む世界各国の経済的進歩及び繁栄を実質的に増進するものであると信じている。閣僚は,相互依存が高まることは,各国が他国における措置及び動きに影響されるところが大きくなることを意味するとの認識を有している。従って閣僚は,適切な政策及び制度を通じ,国際収支,一次産品,エネルギー及び食糧などの分野で,一層世界経済の安全に寄与することを決意するものである。
 10.  閣僚は,目下多くの工業国でみられる強い景気回復が,開発途上国の経済及び国際収支事情の改善をもたらすものであることに留意した。同時に閣僚は,先進国と開発途上国との間でより均衡のとれた衡平な経済関係を目指して前進することが,世界経済改善のための本質的な要素であることを強調した。閣僚は,貿易,投資及び技術における開発途上国のための機会を確実に増大させるための政策措置の必要性を,かかる措置が開発途上国自身の努力を支援することを企画するものであることに留意しつつ,認識した。閣僚はまた,条件の緩和された開発援助を増大することが特に最も援助を必要とする国のために要請されていることを強調した。加盟国政府は,OECDの枠内でかかる目的に即した政策を強化する努力を強めることにつき合意した。
   11.  閣僚は,開発途上国との関係改善を追求するためのOECD内部における工業国間の協力が,工業国と開発途上国との進展する経済関係について一貫したアプローチに到達し,もって実際的な措置について合意を得るために重要であることを再確認した。閣僚は,1975年9月の第7回国連特別総会での建設的な成果に続いて,最近閉会した国連貿易開発会議が目下追求されている数多くの問題について進展を遂げたことに留意した。また閣僚は,国際経済協力会議において首尾よく対話が開始されており,本年後半に具体的な成果を得るための土台が築かれていることに留意した。閣僚は,同会議が有用な成果をあげることに価値を認めることを強調した。
 12.  閣僚は,開発途上国との協力の強化を可能にし,かつ開発途上国の開発需要によりよく合致し得る具体的な成果に早急に到達するために,全ての適切なフォーラムにおいて開発途上国との対話を追求するとの,1975年の閣僚理事会で採択された「開発途上国との関係に関する宣言」に表明されている各国政府の決意を再確認した。閣僚は,各国政府が対話を継続し,工業国と開発途上国間の関係を進展させるという挑戦に積極的に対応する用意のあることにつき合意し,この目的を追求するにあたり工業国間での緊密な協調及び強化された調整の必要性を強調した。
III 持続的経済拡大のための戦略
 13.  現在の失業及びインフレ水準の継続は受入れ難いということを認識し,閣僚は,それぞれの政策を通じて実施される持続的経済拡大のための戦略の主要な要素につき合意した。この戦略が依拠する基本的な前提は,完全雇用を回復しかつ増大する経済的及び社会的要求を充足させるために必要な着実な経済成長は,すべての加盟国がインフレの根絶に向かって更に前進することなくしては持続的なものとはならないであろうということである。拡大的政策の追求に際しては,慎重さを必要とすることを指し示していると思われる現在の情勢の特徴に対しても,しかるべき重要性が与えられなければならない。第1に,多くの国における回復のかなり緊密な同時化の故に,作用している拡大力の強さが過小評価されるかも知れない危険性がある。第2に,最近のインフレ経験が極めて悪性であったが故に,もし回復の歩調があまりに速ければ,インフレ期待感が相当強く再燃するという危険がある。第3に,幾つかの国及び一部の基幹産業において,過去数年間における投資不足の故に,回復の比較的初期の段階で供給隘路が生ずる危険性がある。
 14.  これらの考慮を念頭において閣僚は,それによって政府がその政策を緩やかなかつ持続的な経済拡大の達成を通じて物価の安定と完全雇用を達成する方向に向けるであろう戦略につき合意した。このことはOECD地域における完全雇用と通常の水準の稼働率の回復は漸進的であり,かつ数年を要するということを意味する。閣僚は,以上の線に沿った戦略を採用することによりOECD諸国が世界全体としての経済的安定と福祉に対して本質的な貢献を果たすであろうということを確信する。
 15.  この戦略により意味される成長率は,国によって異なるであろう。現在の遊休資源が吸収されるにつれてインフレ圧力の再燃を回避し,より長期の潜在成長力に沿って需要を鈍化させるために注意が必要であろうが,最近の景気後退の深さの故に,完全雇用を回復するためには一定期間平均成長率を幾分上回る成長が可能でありかつ必要であろう。閣僚は,この回復要因を考慮すると,もし正しい政策がとられインフレ率が一層低下すれば,1976年から80年までの5年間にわたりOECD全体としてのGNP成長率は平均5%又はこれよりやや高めを示すとともに,約8%又はこれよりやや高めの世界貿易の拡大を伴う余地があると考える。
 16.  緩やかではあるが持続的な拡大というこの一般的な戦略を支える各国の経済政策は以下の原則により導かれるべきである。
(a)  政府は自国の経済においてインフレなき成長が必要とする一般的安定を達成するため財政及び金融政策を堅実に活用すべきである。このことは,需要の短期的変動を抑えるためとられる行動は中期的な政策の一層の着実性と予測可能性の必要性に照らして策定されなければならないことを意味する。
(b)  多くの国において経済政策の目的に関するよりよい社会的合意を醸成するための継続的努力が必要とされることとなろうが,このことは各種の形態の物価及び所得政策を含むかもしれない。かかる政策はいずれにしても肝要な健全な需要管理政策を補完し得るが,しかしその代替はなし得ない。
(c)  雇用情勢の不満足な側面に対処するために,1976年3月4日及び5日における労働大臣会議により入念に作成された「一般雇用及び労働力政策に関するOECD理事会の1976年の勧告」に従って情勢に適した行動がなされるべきである。かかる行動は特に厳しい雇用問題を抱える部門及び地域に対処するため選択的政策を含み得よう。
(d)  大部分の国において政策は消費よりも投資をより促進させる方向に向けられるべきである。多くの場合このことは,最近数年間の低水準から利潤の適当な回復を必要とするであろう。それはまた投資を刺激し中期にわたる貯蓄を促進し,公共支出の増大を抑制する行動を必要とするかも知れない。
 17.  閣僚は,この戦略を追求する各国の政策は自国の国際的責任の明確な認識に基づくべきであるということに合意している。閣僚は,一部の主要加盟国及び多くのより小さな加盟国で許容できないほどの大幅な経常収支赤字が継続していることに留意した。OECD地域がOPEC諸国に対して大幅な経常赤字を継続する限り,対外的に強い立場にある加盟国は,インフレ抑制策を追求する一方,自国の経常収支を赤字に転じさせんとする市場の力に逆らうべきではない。対外的により弱い立場にある国において優先されるべき課題は,インフレ率を引下げるための効果的な政策でなければならない。国内政策,インフレ率及び為替レートの間の相互作用の故に,一部の国において他の国よりも大幅に強いインフレが継続することは,成長と国際通貨安定に対し悪影響を及ぼし得る。閣僚は,国内安定化政策を支持するための政府間の協議及び協力の重要性を認識した。「OECD金融支援基金設立協定」の批准に向かってなされた進展が留意され,速やかにこの過程を完了する必要性につき合意があった。
 18.  閣僚は,過去において移民が重要な要因であった欧州加盟諸国の雇用問題を討議した。閣僚は,当該国国内の雇用機会の創出により重点が置かれるべきであり,またこれはこれらの国への資本の流れを増加させ,これらの国から輸入を増大させることに役立つ条件を創り出すことにより促進され得るということに合意した。一部欧州加盟国間の移民の流れが大きく変化することは,調整の負担を衡平に分かち得るために,移民受入国と移民本国との間の協力の強化が必要となる。
 19.  閣僚は,現在の経済情勢を検討し,殆んど全ての加盟国において今や明らかになっている回復が持続的拡大の達成と両立して進行しているという結論を得た。閣僚は,多くの国において失業の増大が止まるか,又は減少し始めたこと,及び労働コストの見通しによればインフレが一層低下する望みがあるという事実を歓迎した。しかし確実に回復を管理下にとどめるため,又前回の同様の上昇局面を特徴づけた不適当な財政的緩和及び過度の通貨の拡大を回避するために注意が必要であろう。この目的のために緊密な国際的な協議と協調が肝要であろう。
 20.  閣僚はOECDに対し,遂行中の政策が合意された中期的戦略に合致する程度を定期的に検討するよう指示した。閣僚は,OECDの枠内でOECD地域の拡大の歩調の変化を早期に探知し,不適当な財政的緩和及び過度の通貨の拡大を回避し,潜在的な隘路を識別するための分析と協議の重要性を特に強調した。閣僚は,また事務総長に対し,加盟国の経済的実績における最近の格差の問題に関し,OECDの適当な機関により,慎重な注意が払われることを確実にするよう要請した。
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(ハ) 国際投資及び多国籍企業に関する宣言(仮訳) (1976年6月22日,パリにおいて)

経済協力開発機構の加盟国政府(注) は,

 国際投資が,世界経済において重要性を増大してきたこと及び加盟国の発展に大きく寄与してきたこと,

 多国籍企業が,この投資の過程において重要な役割を果たしていること,

 加盟国による協力が,外国投資環境を改善し,経済的及び社会的発展に対する多国籍企業の積極的寄与を促進し,並びに多国籍企業の各種の活動から生ずる困難を最小にしかつ解決することを可能にすること,

 経済協力開発機構における継続的な努力によりこの分野において新たな国際的な措置及び国際取極がもたらされる可能性があるが,この段階においては,それぞれ問題の異なった側面を取り扱いかつ全体としては経済協力開発機構が国際投資及び多国籍企業に関連する問題について検討する際の枠組を制定することとなるような相互に関連した文書によって,これらの問題についての加盟国の協力及び協議を強化することが適当であると考えられること,

を考慮して

 次のとおり宣言する。

〔多国籍企業の行動指針〕

I  加盟国は,自国の領域内で事業活動を行っている多国籍企業に対し,附属書に定める行動指針の背景となり,かつその不可分の一部をなす考慮及び了解に留意しつつこの行動指針を遵守するよう共同して勧告する。

〔内国民待遇〕

II 1  加盟国は,公の秩序を維持し,自国の重大な安全保障上の利益を保護し並びに国際の平和及び安全に関する約束を履行する必要に即しつつ,自国の領域内で事業活動を行いかつ池の加盟国の国民によって直接又は間接に所有又は支配されている企業(以下「外国人に支配されている企業」という。)に対し,自国の法律,規則及び行政上の慣行の下で,国際法に合致した待遇であって同様な状況下で国内企業に与えられる待遇よりも不利でないものを与えるべきである。(以下「内国民待遇」という。)
2  加盟国は,加盟国以外の国について「内国民待遇」を適用することを検討する。
3  加盟国は,自国の領域内の行政区画が「内国民待遇」を適用することを確保するよう努力する。
4  この宣言は,外国からの進出を規制すること又は外国企業の設立の条件を規定することについての加盟国の権利を取り扱うものではない。

〔国際投資の促進要因及び抑制要因〕

III 1  加盟国は,国際直接投資の分野における協力を強化する必要性を認識する。
2  加盟国は,国際直接投資に対する公的な促進要因及び抑制要因となっているこの分野における特定の法律,規則及び行政上の慣行(以下「措置」という。)によって影響を受ける加盟国の利益を十分考慮に入れる必要性を認識する。
3  加盟国は,かかる措置を可能な限り透明なものとし,これにより措置の重要性及び目的が確認され得るようかつ措置に関する情報が容易に入手できるよう努力する。

 〔協議手続〕

 IV  加盟国は,多国籍企業の行動指針,内国民待遇並びに国際投資の促進要因及び抑制要因に関する政府間協議の手続についての理事会の決定に従い,上記事項に関し相互に協議する用意がある。

 〔再検討〕

 V  加盟国は,国際投資及び多国籍企業に関する問題についての加盟国の間の国際経済協力の実効性を改善するため,3年以内に前記の事項を再検討する。

(仮訳)

国際投資及び多国籍企業に関する経済協力開発機構の加盟国政府による1976年6月21日の宣言の附属書

多国籍企業の行動指針

 1  多国籍企業は,今や加盟国の経済及び国際経済関係において重要な役割を果たしており,この役割について各国政府の関心が増大している。多国籍企業は,国際直接投資を通じ,資本,技術及び人的資源の国家間における効率的な利用に寄与することにより多国籍企業の本国及び受入国に実質的な利益をもたらすことができ,また,このようにして,経済及び社会的福祉の増進のために重要な役割を果たすことができる。しかしながら多国籍企業による国家の枠組を超えた事業活動の組織化の進展は,経済力の集中の濫用及び国の政策目標との衝突をもたらす可能性がある。更に,これらの多国籍企業の有する複雑性並びにその多様な組織,事業活動及び方針を明確に認識することの困難性は,時として懸念を生じさせる。
 2  加盟国の共通の目標は,経済的及び社会的発展に対する多国籍企業の積極的な寄与を促進すること並びにその各種の事業活動がもたらす困難を最小にしかつ解決することにある。この目標は,多国籍企業の国際的な構造に鑑み,大部分の多国籍企業の本部が設置されており,かつその事業活動の実質的部分が行われている経済協力開発機構の加盟国の間の協力によって推進される。次に掲げる行動指針は,この共通の目標の達成を助けること及び外国投資環境の改善に寄与することを目的としている。
 3  多国籍企業の事業活動が,機構の非加盟国をも含めて世界中に及んでいるため,この分野における国際協力は,すべての国家に及ぶべきである。加盟国は,多国籍企業による積極的な寄与を促進すること及び多国籍企業の活動に関連して生じ得る問題を最小にしかつ解決することによりすべての国民の福祉及び生活水準を向上させるという観点から,非加盟国及び特に開発途上国と協力して行われる努力に十分な支持を与える。
 4  これらの目標を達成するための協力計画は,機構内において,継続的に,実際的にかつ均衡のとれたものとして実施される。その協力計画は,経済協力開発機構条約の一般目的に合致するものであり,また,特に国際貿易及び支払,競争,租税,労働力,産業開発,科学並びに技術の事項における多国籍企業の役割の多くの側面を既に付託事項の対象としている機構の各種の専門的機関を十分に活用するものである。これらの機関は,問題の識別,質的及び統計的な関連情報の改善並びに政府間の協力を強化することを目的とした行動提案の作成に関する作業を行っている。これらの分野のうち一部の分野においては,多国籍企業の事業活動に関連した問題が検討される手続が既に存在している。この作業によっては,新たなかつ補足的な政府間の取極の締結及び措置の採用に至ることもあろう。
 5  この協力計画の当初の段階は,多国籍企業の行動指針,外国人により支配されている企業に対する内国民待遇並びに国際投資の促進要因及び抑制要因に関し相互に補完的でかつ関連しているものとして同時に公表される一の宣言及び三の決定より成る。
 6  次に掲げる行動指針は,加盟国の領域内で事業活動を行っている多国籍企業に対して加盟国が共同して行う勧告である。この行動指針は,多国籍企業の国際的な構造から生ずる問題を考慮して,これらの企業の2以上の加盟国における活動の基準を規定している。行動指針の遵守は,自発的なものであり,法的に強制し得るものではない。しかしながらこの行動指針は,これらの企業の事業活動と当該事業活動が行われる国の政策との間の調和を確保すること及び企業と国家との間の相互信頼の基礎を強化することの助けとなろう。
 7  いずれの国も,国際法及び自国が締結している国際取極に従い,多国籍企業が自国の管轄内において事業活動を行う場合の条件を定める権利を有する。2以上の国に所在する多国籍企業の構成体は所在地国の法律に従う。
 8  多国籍企業の厳密な法的な定義は,行動指針の適用上必要ではない。多国籍企業は,通常2以上の国において設立され,民間若しくは国家により又はその双方により共同して所有されている会社又は他の構成体からなり,かつ,当該会社又は構成体の1又は2以上のものが,他の構成体の活動に対して重要な影響力を行使しうるほどに並びに特に他の構成体と知識及び資源を共有しあうほどに結びついているものである。他の構成体との関係におけるそれぞれの構成体の自主性の程度は,当該構成体間の結びつきの性質及び関係する活動分野によって,多国籍企業ごとに大きく異なっている。これらの理由から,行動指針は,その遵守を容易にするため各種の構成体が互いに必要な協力及び援助を行うであろうという了解の下に,当該構成体間における現実の責任の配分に応じて,多国籍企業(親会社及び(又は)現地の構成体)内の各種の構成体を対象としている。行動指針において使用されている「企業」とは,それぞれの責任に応じ,これらの各種の構成体をいう。
 9  この行動指針は,多国籍企業と国内企業との間に異なった取扱いを導入することを目的としたものではなく,関連ある場合には,すべての企業に対して好ましい慣行を示している。従って,多国籍企業及び国内企業は,行動指針が双方に関連ある場合には,同様の行動をとることを期待される。
 10  仲裁を含む適当な国際紛争解決制度の利用は,企業と加盟国との間で生じる問題の解決を容易にする手段として奨励されるべきである。
 11  加盟国は,行動指針に関連して生ずる問題について適当な検討及び協議の手続を設定することを合意した。多国籍企業が2以上の加盟国による相反する要請に従うことを求められた場合には,関係政府は,1975年1月21日に経済協力開発機構の理事会により設立された国際投資・多国籍企業委員会において又は相互に受入れ可能な他の措置を通じて,かかる問題を解決するために誠実に協力する。
 加盟国は,前記の考慮に留意して,企業を衡平にかつ自国が受諾した契約上の義務並びに国際法及び国際取極に従って取り扱うという責任を果すという了解の下に,多国籍企業の行動指針を次のとおり制定する。
一般方針
 企業は,
(1)  事業活動が行われる加盟国の確立した一般政策目標を十分に考慮すべきである。
(2)  特に,産業開発,地域開発,環境の保護,雇用機会の創出,技術革新の促進及び技術移転を含め,それらの国の経済的及び社会的発展に関する目標及び優先度に対して妥当な考慮を払うべきである。
(3)  情報に関する法的な義務を遵守し,また,事業上の機密についての正当な要請に考慮を払いつつ,構成体が所在している国の当局によるそれらの構成体の活動に関連する情報提供の要請に応えるため,構成体が必要とする追加的情報を構成体に提供するべきである。
(4)  現地の社会及び事業関係者との密接な協調に努めるべきである。
(5)  専門化の必要性と健全な商慣行に即しつつ,国内及び国外市場においてその活動を拡大し,かつ,競争上の利益を追及する自由を構成体に認めるべきである。
(6)  事業活動が行われるそれぞれの国において責任ある地位に就くべき者の任命を行うに当たっては,これに関し当該国によって課される特定の要件に従いつつ,国籍による差別をすることなく,個人の資質に妥当な考慮を払うべきである。
(7)  いかなる公務員又は公職にある者に対しても,直接又は間接に,いかなる賄賂又は他の適正でない利益をも提供すべきではなく,また,これらを提供することを求められ又は期待されるべきではない。
(8)  法律上認められない限り,公職に就こうとする候補者又は政党若しくは他の政治団体に対して献金を行うべきではなはい。
(9)  現地の政治活動に対しては適正でないいかなる関与をも差し控えるべきである。
情報公開
 企業は,その事業活動の経済的な性格及び相対的規模,事業機密上の要請並びに費用に対し妥当な考慮を払いつつ,事業活動が行われるそれぞれの国の国内法に基づいて公開される情報に追加して,公衆の理解を向上させるために適した形式により,この目的に必要とされる限度において,企業全体としての組織,活動及び方針について十分な量の事実に関する情報を公表すべきである。企業は,この目的のために,特に次の事項に関する情報を含め,企業全体に関係する財務諸表及び他の関連情報を合理的な期間内に定期的に(少なくとも毎年1回)公表すべきである。
(i)  親会社の名称及び所在地,その主要関連会社並びに当該関連会社間の株式持合いを含む直接及び間接の当該関連会社における株式保有比率を示す企業の組織,
(ii)  事業活動が行われる地域(注) 並びに親会社及び主要関連会社により当該地域において行われる主たる活動,
(iii)  地域ごとの事業活動の実績及び販売高並びに企業全体の主要業務における販売高,
(iv)  地域ごとの重要な新規投資及び,実行可能な限り,企業全体の主要業務ごとの重要な新規投資,
  (v)  企業全体の資金の源泉及び使途の計算書,
 (vi)  それぞれの地域ごとの平均従業員数,
(vii)  企業全体の研究開発費用,
(viii)  企業構成体間の価格設定に関する方針,
(ix)  連結決算に関する会計上の方針を含め,公表される情報を作成するに当って遵守される会計上の方針。
競争
 企業は,
 事業活動が行われる国の公の競争法規及び確立した政策に従うとともに,
(1)  例えば次に掲げる方法で市場支配力の優越的地位を濫用することにより,関連市場における競争を妨げることとなるような行為を差し控えるべきである。
(a) 反競争的企業取得,
(b) 競争者に対する略奪的な行為,
(c) 不当な取引拒否,
(d) 工業所有権の反競争的な濫用,
(e) 差別的な(すなわち不当に異なる)価格設定,及び関連企業の外部の競争を妨げる手段としての関連企業間におけるそのような価格操作の利用
(2)  購入事業者,販売事業者及び特許実施権者に対し,法律,取引条件,専門化の必要性及び健全な商慣行に従い,再販売し,輸出し,購入し及び事業活動を拡大する自由を認めるべきである。
(3)  競争を妨げ若しくは排除し及び関係国内法若しくは国際法の下において一般に若しくは特別に認められていない国際的な若しくは国内的な企業連合若しくは制限的な合意に参加し,又はそれらの競争制限的効果を故意に強化することを差し控えるべきである。
(4)  競争上の問題又は調査に関し,自国の利益が直接に影響を受ける国の権限ある当局と,情報の提供を含め,協議及び協力すべきである。情報の提供は,この分野において通常適用される保障措置に従って行うべきである。
財務
 企業は,その活動のうちで財務及び営業活動の管理並びに特に流動性対外資産及び流動性対外負債の管理において,その事業活動が行われる国の国際収支政策及び信用政策に関する確立した目標を十分考慮に入れるべきである。
課税
企業は,
 (1)  事業活動が行われる国の税務当局の要請がある場合には,その国の国内法の保障措置及び関連手続に従い,その事業活動に関して賦課される租税を正確に決定するために必要な情報(他の国における事業活動についての関連情報を含む。)を提供すべきである。
 (2)  企業集団の構成員が賦課の基礎となる課税標準を国内法に反する方法によって修正するために,企業が利用可能な特別な手段(例えば独立企業の原則に合致しない移転価格)を使用することを差し控えるべきである。
雇用及び労使関係
企業は,
 事業活動が行われるそれぞれの国における法律,規則並びに一般的な労働関係及び雇用慣行の枠内において,
 (1)  労働組合及び他の誠実な従業員団体により代表される従業員の権利を尊重し,また,雇用条件に関する協約(当該協約の解釈について生ずる紛争を取り扱う規定並びに権利及び責任を相互に尊重することを確保する規定を含むものとする。)を締結することを目的として,当該従業員団体と個別的に又は使用者の団体を通じ建設的な交渉を行うべきである。
 (2) (a)  従業員の代表に対し,有効な労働協約の作成を助けるために必要な便宜を供与すべきである。
(b)  従業員の代表に対し,雇用の条件に関する有意義な交渉に必要な情報を提供すべきである。
 (3)  従業員の代表に対し,現地の法律及び慣行に合致する場合には,当該代表が構成体の又は適当な場合には企業全体の業績に関する真正かつ公正な見解をもち得るような情報を提供すべきである。
 (4)  受入国において類似の使用者が遵守している雇用及び労使関係の基準よりも低くない基準を遵守すべきである。
 (5)  事業活動を行うに当たっては,従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局と協力しつつ,最大限に実行可能な限度において,現地労働力を活用し,訓練し,及びその昇進を図るべきである。
 (6)  特に集団的な解雇(一時解雇を含む。)を伴う構成体の閉鎖の場合のように,従業員の生活に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当たっては,従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局に対し,かかる変更に関して合理的な予告を行い,また,最大限に実行可能な限度において悪影響を緩和するため従業員代表及び適当な政府当局と協力すべきである。
 (7)  従業員をその特質に従って選択的に取扱うことが雇用機会の一層の均等化を特に推進しようとする政府の確立した政策をさらに促進することとなる場合を除き,雇用,解雇,給与,昇進及び訓練を含む企業の雇用方針を,差別を設けることなく実施すべきである。
 (8)  雇用条件に関し従業員の代表と誠実な交渉(注) を行うに当たり又は従業員が団結権を行使している間は,交渉に不当な影響を与え又は団結権の行使を妨げるために関係国から事業活動の単位の全部又は一部を移転する能力を利用するとの威嚇を行うべきではない。
 (9)  従業員の代表として認められた者が,交渉中の事項について決定する権限を有する経営者側の代表と団体交渉又は労使関係の問題につき交渉を行うことを可能にすべきである。
科学及び技術
企業は,
 (1)  その活動が,事業活動が行われる国の科学及び技術に関する政策及び計画に十分に適合することを確保するよう努力し,また,適当である限り受入国においてその技術革新能力を創設し及び改善することを含め,国内の科学及び技術能力の開発に貢献すべきである。
 (2)  最大限に実行可能な限度において,工業所有権及び知的所有権の保護に十分留意しつつ,その事業上の活動の過程において技術の急速な普及を可能にする慣行を採用すべきである。
 (3)  工業所有権の実施許諾を与え又はその他の方法により技術移転を行う場合には,合理的な条件でこれを行うべきである。

(仮訳)

多国籍企業の行動指針に関する政府間協議手続についての理事会決定

理事会は,

 1960年12月14日の経済協力開発機構条約並びに特にその第2条(d),第3条及び第5条(a)に留意し,

 国際投資・多国籍企業委員会を設立する1975年1月21日の理事会決議〔C(74)247(最終版)〕及び特にその第2項に留意し,

 経済協力開発機構の加盟国政府が,多国籍企業に対して,多国籍企業の行動指針の遵守を共同で勧告した1976年6月21日の加盟国政府による宣言を留意し,

 これらの行動指針に関連する事項について行われる協議のための手続を設定することが望ましいことを認識して,

 国際投資・多国籍企業委員会の提案に関し,

 次のとおり決定する。

(注) トルコは棄権した。

 1  国際投資・多国籍企業委員会(以下「委員会という」。)は,定期的に又は加盟国の要請により,行動方針に関連する事項及びその適用において得られた経験について意見交換を行う。
 委員会は,これらの事項に関し,理事会に対して定期的に報告する。
 2  委員会は,経済産業諮問委員会及び労働組合諮問委員会に対し,行動指針に関連する事項についての意見を表明することを定期的に要請し,かつ,理事会に対する報告においてかかる意見に考慮を払う。
 3  委員会は,加盟国の提案に基づき,企業が希望すれば当該企業に対して行動指針の適用に関して意見を表明する機会を与えることが望ましいか否かについて決定することができる。委員会は,個々の企業の行動に対して結論を下してはならない。
 4  加盟国は,多国籍企業が相反する要請に従うことを求められるという事実から生ずるいかなる問題に関しても,委員会において協議を行うことを要請することができる。関係政府は,委員会において又は他の相互に受け入れ可能な措置を通じて,かかる問題を解決するために誠実に協力する。
 5  この決定は,3年以内に再検討される。委員会は,このため適当な提案を行う。

 (仮訳)

内国民待遇に関する理事会決定

理事会は,

 1960年12月14日の経済協力開発機構条約並びに特にその第2条(c),第2条(d),第3条及び第5条(a)に留意し,

 国際投資・多国籍企業委員会を設立する1975年1月21日の理事会決議〔C(74)247(最終版)〕及び特にその第2項に留意し,

 内国民待遇に関する1976年6月21日の経済協力開発機構の加盟国政府による宣言を留意し,

 「内国民待遇」から逸脱している法律,規則及び行政上の慣行(以下「措置」という。)の検討のための適当な手続を機構内に設定することが適当であることを考慮して,

 国際投資・多国籍企業委員会の提案に関し,

 次のとおり決定する。

(注) トルコは棄権した。

1  加盟国によりとられた「内国民待遇」に対する例外を構成する措置(その領域内に既に設立された「外国人に支配されている企業」による新規の投資を制限する措置を含む。)であってこの決定の日において有効であるものは,この決定の日の後60日以内に機構に対して通報される。
2  加盟国によりとられた「内国民待遇」に対する新規の例外を構成する措置(その領域内に既に設立された「外国人に支配されている企業」による新規の投資を制限する措置を含む。)であってこの決定の日の後にとられたものは,その具体的な理由及びその存続期間を付して,その導入の後30日以内に機構に対して通報される。
3  独立の権限に基づき加盟国の領域内の行政区画により導入された措置で「内国民待遇」に対する例外を構成するものは,当該加盟国がこれを知りうる限度において,加盟国の責任ある当局がそれを知った後30日以内に当該加盟国により機構に対して通報される。
4  国際投資・多国籍企業委員会(以下「委員会」という。)は,「内国民待遇」の適用を拡大するために,「内国民待遇」(その例外を含む。)の適用を定期的に検討する。委員会は,これに関連して,必要な場合には,提案を行う。
5  委員会は,「内国民待遇」に対する例外及びその適用を含めこの文書及びその実施に関連するいかなる事項についても加盟国の要請に基づき,協議の場となる。
6  加盟国は,委員会の要請に基づき,「内国民待遇」の適用及びその例外に関連した措置に関するすべての関連情報を委員会に対して提供する。
7  この決定は3年以内に再検討されるものとする。委員会は,このため適当な提案を行う。

(仮訳)

国際投資の促進要因及び抑制要因に関する理事会決定

理事会は,

 1960年12月14日の経済協力開発機構条約並びに特にその第2条(c),第2条(d),第2条(e),第3条及び第5条(a)に留意し,

 国際投資・多国籍企業委員会を設立する1975年1月21日の理事会決議〔c(74)247(最終版)〕及び特にその第2項に留意し,

 国際投資の促進要因及び抑制要因に関する1976年6月21日の経済協力開発機構の加盟国政府による宣言に留意して,

 国際投資・多国籍企業委員会の提案に関し,

 次のとおり決定する。

(注) トルコは棄権した。

1  加盟国が,国際直接投資の促進又は抑制を特に目的として他の加盟国がとった措置により自国の国際直接投資の流れが影響を受けその利益が損われる可能性があると考える場合には,その要請により,国際投資・多国籍企業委員会の枠内で協議が行われる。協議の目的は,その措置の国民経済上の目的を十分に考慮しつつ,かつ,地域的な不均衡の是正を目的とする政策を害することなく,その影響を最小限に減少させる可能性を検討することにある。
2  加盟国は,協議手続の下においては,協議事項とされているいかなる措置についても,差しつかえない限りすべての情報を提供するものとする。
3  この決定は,3年以内に再検討されるものとする。国際投資・多国籍企業委員会は,このため適当な提案を行うものとする。

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(ニ) プエルト・リコ共同宣言(仮訳)

 (1976年6月27,28日,プエルト・リコにおいて)

 カナダ,フランス,ドイツ連邦共和国,イタリア,日本国,グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国並びにアメリカ合衆国の元首及び首相は,1976年6月27日及び28日にプエルト・リコのドラード・ビーチに集い,下記の宣言に合意した。

 われわれの運命の相互依存関係は,われわれが共通の目的意識をもって共通の経済問題に対処すること及び一層の協力を通じて相互に調和した経済戦略に向けて作業することを必要としている。

 われわれは,他の国の利益に考慮を払うことが緊要であると考える。そしてこれは世界開発途上国との関係において特に妥当である。

 われわれは,これらの目的のために,広い範囲の問題について広汎かつ実り多い意見交換を行った。この会合は,われわれの相互理解を増進し,いくつかの分野における協力を強化するための好機であった。われわれのうち欧州共同体の加盟国である国は,その枠組の中において努力を行う意図を有する。

 ランブイエにおいて,経済の回復が第一義的な目標として設定され,また,われわれの求める安定は,そのそれぞれの国の経済金融上の基礎的な状況に依存していることについて意見の一致をみた。

 ランブイエ以来著しい前進がなされた。景気後退の際,今後経済が長期的に活力を保持していけるかどうかについて広く懸念がもたれたが,今やこのような懸念は根拠のないものであることが証明されるにいたった。経済及び金融面の先行きに対する懸念は,将来に対する自信の回復によってとって代られた。経済の回復は順調に進行しており,われわれの多くの国においてインフレ克服及び失業の低減について実質的な進捗がみられた。このことによって依然として経済の回復が比較的弱い諸国の状況が改善されてきた。

 経済に対する過度の刺激並びに貿易及び資本移動に対する新たな阻害要因を回避しようとする最近のわれわれの決意は,この回復を健全かつ広範なものとすることに貢献した。この結果,均衡のとれた成長への復帰は今や目前にある。われわれは,この機会を逃さない決意である。

 今やわれわれの目的は,持続的拡大への移行を効果的に管理することであり,これによって多くの国において存続している失業の高水準が低減され,かつインフレの再来を回避するというわれわれの共通目標が脅かされないこととなろう。このためには,生産的投資の増大と,われわれの社会の各層間の協調を必要とする。このためわれわれの個別の必要性及び事情に沿って,財政の一層の均衡回復並びに財政・金融政策の分野での節度ある措置及び場合によっては,所得政策を含む補完的な政策をとることもあり得よう。増大しつつある相互依存関係のもとに,以上の政策を策定するに当たっては,他国における経済活動の方向に対する配慮を必要とする。諸政策を正しく組合せることにより,われわれは,秩序ある持続的な経済の拡大,並びにより低い失業及びインフレ問題を除去しようとするわれわれの共通目標への新たな前進という諸目的を達成し得ると確信する。持続的な経済拡大及びこれに伴う個人の福祉の増大は,高いインフレ率の下では達成し得ない。

 昨年11月の会合において,われわれは,国際通貨制度の構造的改革に関する意見の相違を解決し,安定的為替相場制度をすみやかに決定すべきことに合意した。これは,経済金融情勢の基礎的な安定をつくりだすために不可欠な前提となるものである。

 これらの諸目的を念頭において,われわれは,具体的な了解に達し,これはジャマイカにおける国際通貨基金の会議に大きく貢献した。われわれは,関係国すべてによるこれらの合意に対する立法府による早期の承認が望ましいと考える。われわれは無秩序な市場状態に対処するわれわれの能力を増進し,かつ,経済上の諸問題及びその解決に必要な是正策に関する理解を深めるべく一層協力することに合意した。われわれは,この協議の枠組の上にわれわれの努力をさらに積み重ねて行くであろう。

 11月以降,米ドルと殆どの主要通貨との間の関係は著しく安定している。しかし,いくつかの通貨には大きな変動がみられた。

 経済金融上の基礎的な状況に必要な安定性は,明らかに未だ回復していない。慎重な秩序ある持続的な経済拡大及びそのために不可欠なインフレの制圧という諸目標を達成しようとするわれわれの決意は,より一層の安定の基礎を提供するものである。

 通貨安定というわれわれの目的は,国際収支の不均衡をファイナンスするための金融的圧力によって損われてはならない。従ってわれわれは,各国が慢性的又は構造的な国際収支不均衡を是正し又は回避すべく,それぞれの経済と国際通貨を管理することの重要性を認識する。よってわれわれ各自は,適当な国内及び対外政策の適用を通じ,一層安定的かつ永続性のある国際収支構造に向けて努力を傾ける意図を確認する。

 世界の国際収支不均衡は,今後とも続くものとみられる。われわれは,国内の経済的安定を回復するにいたらず,かつ,大幅な国際収支赤字に直面しており特殊の問題を抱えるいくつかの先進国にとって問題が生じ得ることを認識する。われわれは,これらの諸問題の解決という観点から,これらの問題についての一層の分析を行うため,適切な機関において引続き他国と協力する事に同意する。もし経済成長における一般的な攪乱を回避するために一時的な国際収支赤字をファイナンスする援助が必要となれば,かかる援助は基礎的な均衡を回復するための確固たる計画を前提としたかつ多角的な手段を通じて提供される事が最も適当であろう。

 貿易の分野においては,最近の景気後退にもかかわらず,われわれは開放された貿易体制を維持する事に概ね成功してきた。OECDにおいてわれわれは新たな貿易障害の導入を回避するとの誓いを再確認した。

 通商上の保護主義への誘惑に屈する国々は,ゆくゆくその競争上の地位が低下するという事態に直面することとなろう。即ちそれらの国々の経済の活力は悪影響を受け,同時に連鎖反応が生じ,世界の貿易量は縮少し,すべての国々に被害を及ぼすこととなろう。最近更新されたOECD貿易プレッジが定める政策からの逸脱が見られる場合には,その制限を除去することが不可欠かつ緊要となる。また,貿易に重大な歪曲をもたらし,保護主義の復活を招来するような意図的な為替相場政策を回避することが重要である。

 われわれは,多角的貿易交渉を1977年末までに完結するとの目的を設定している。われわれは,ここに,この目的を再確認し,東京宣言に従い適当な機関を通じこれを達成するためあらゆる努力を傾けることを約束する。

 貿易交渉完結の上は,われわれは貿易の最大限の拡大という長期的目標に向かって,主要貿易地域間の関係を緊密化しかつ強化することが望ましいことを認める。

 われわれは,東西経済関係について討議した。われわれは,この関連において東西貿易の着実な発展を歓迎し,東西間の経済関係が健全な金融上及び互恵的通商上の基礎の上にたって,その潜在的可能性が十分進展するよう希望を表明した。かかる経済的結びつきが全般的な東西関係を強化することを確保するために,われわれは,注意深く配慮を払うとともにわれわれの努力を行うことがこの関係からみて適当であることに意見の一致をみた。

 われわれは,参加諸国による輸出信用に関する調整のとれたガイドラインの採用を歓迎する。われわれは,これらのガイドラインが可及的速やかにかつできるだけ多数の国により採用されることを希望する。

 持続的拡大というわれわれの目標を追求するにあたって,資本の流れは,資源の効率的配分を促進し,かつこれによりわれわれの経済的福祉を増進させる。従ってわれわれは,国際投資の流れに対する自由な環境が重要であることに合意する。これに関連しわれわれは,先週OECD閣僚理事会が開催された際発表された宣言を建設的な発展と考える。

 エネルギーの分野においては,われわれは,各種のエネルギー資源を開発し,節約し,かつ合理的に利用するため及び開発途上国のエネルギーに関する開発目的を支援するため,努力する意向である。

 われわれは,国民の生活を改善せんとする開発途上国の願望を支持する。先進工業民主主義国は,開発途上国の努力について決定的な役割をになっている。両者間の協力は,相互の尊重に基づくものでなければならず,また全ての関係者の利益も考慮に入れ,非生産的な対決をしりぞけ開発の問題の建設的解決を見出すための持続的かつ協調的な努力に基づくものでなければならない。

 先進工業民主主義国は国際経済の効率的な運用を高める開発途上国の問題の健全な解決に同意しかつその実施に協力することにより,開発途上国がその願望をみたすことを最も有効に助けうる。密接な協力とよりよき協調が先進工業民主主義国間において必要である。われわれの努力は,相互に支援的たるべきであって,競争的なものであってはならない。国際経済協力のためのわれわれの努力は,開発途上国自身の持続的経済成長と生活水準の向上を志向する政策を補完するものと考えられるべきである。

 ランブイエにおいて先進国と開発途上国との間の協力関係の重要性が確認された。第7回国連特別総会において到達された合意についての作業の継続,就中いくつかの開発途上国の国際収支問題を取り上げることについて特別の関心が払われた。その後実質的な進展が見られている。われわれは,国際経済協力会議の枠組の中で進められている作業に広くみられる建設的な精神並びにナイロビの第4回国連貿易開発会議におけるいくつかの分野で達成された成果を歓迎する。国際通貨基金においてとられた新たな措置は,開発途上国の輸出所得の安定及びそれら諸国の赤字の是正に大きく貢献した。

 われわれは,先進国と開発途上国との対話が相互に利益のある分野において具体的な成果をもたらすことを期待しつつこれを最も重視するものである。また,われわれは,成功を確保する政治的意思のもとに適当な場合には交渉を行うことをも含め,適切な機関におけるこの過程に参加するとのわれわれの決意を再確認する。われわれの共通の目標は全ての国民の間の衡平かつ生産的な関係に寄与する実際的な解決を見出すことにある。

JOINT DECLARATION

INTERNATIONAL CONFERENCE

Puerto Rico, June 27/28, 1976

 The heads of state and government of Canada, France, the Federal Republic of Germany, Italy, Japan, the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and the United States of America met at Dorado Beach, Puerto Rico, on the 27th and 28th of June, 1976, and agreed to the following declaration.

 The interdependence of our destinies makes it necessary for us to approach common economic problems with a sense of common purpose and to work toward mutually consistent economic strategies through better cooperation.

 We consider it essential to take into account the interests of other nations. And this is most particularly true with respect to the developing countries of the world.

 It was for these purposes that we held a broad and productive exchange of views on a wide range of issues. This meeting provided a welcome opportunity to improve our mutual understanding and to intensify our cooperation in a number of areas. Those among us whose countries are members of the European Economic Community intend to make their efforts within its framework.

 At Rambouillet, economic recovery was established as a primary goal and it was agreed that the desired stability depends upon the underlying economic and financial conditions in each of our countries.

 Significant progress has been achieved since Rambouillet. During the recession there was widespread concern regarding the longer-run vitality of our economies. These concerns have proved to be unwarranted. Renewed confidence in the future has replaced doubts about the economic and financial outlook. Economic recovery is well under way and in many of our countries there hes been substantial progress in combatting inflation and reducing unemployment. This hes improved the situation in those countries where economic recovery is still relatively weak.

 Our determination in recent months to avoid excessive stimulation of our economies and new impediments to trade and capital movements has contributed to the soundness and breadth of this recovery. As a result, restoration of balanced growth is within our grasp. We do not intend to lose this opportunity.

 Our objective now is to manage effectively a transition expansion which will be sustainable, which will reduce the high level of unemployment which persists in many countries and will not jeopardize our common aim of avoiding a new wave of inflation. That will call for an increase in productive investment and for partnership among all groups within our societies. This will involve acceptance, in accordance with our individual needs and circumstances, of a restoration of better balance in public finance, as well as of disciplined measures in the fiscal area and in the field of monetary policy and in some cases supplementary policies, including incomes policy. The formulation of such policies, in the context of growing interdependece, is not possible without taking into account the course of economic activity in other countries. With the right combination of policies we believe that we can achieve our objectives of orderly and sustained expansion, reducing unemployment and renewed progress toward our common goal of eliminating the problem of inflation. Sustained economic expansion and the resultant increase in individual well-being cannot be achieved in the context of high rates of inflation.

 At the meeting last November, we resolved differences on structural reform of the international monetary system and agreed to promote a stable system of exchange rates which emphasized the prerequisite of developing stable underlying economic and financial conditions.

 With those objectives in mind, we reached specific understandings, which made a substantial contribution to the IMF meeting in Jamaica. Early legislative ratification of these agreements by all concerned is desirable. We agreed to improve cooperation in order to further our ability to counter disorderly market conditions and increase our understanding of economic problems and the corrective policies that are needed. We will continue to build on this structure of consultations.

 Since November the relationship between the dollar and most of the main currencies has been remarkably stable. However, some currencies have suffered substantial fluctuations.

 The needed stability in underlying economic and financial conditions clearly has not yet been restored.Our commitment to deliberate, orderly and sustained expansion, and to the indispensable companion goal of defeating inflation provides the basis for increased stability.

 Our objectjve of monetary stability must not be undermined by the strains of financing international payments imbalances. We thus recognize the importance of each nation managing its economy and its international monetary affairs so as to correct or avoid persistent or structural international payments imbalances. Accordingly, each of us affirms his intention to work toward a more stable and durable payments structure through the application of appropriate internal and external policies.

 Imbalances in world payments may continue in the period ahead. We recognize that problems may arise for a few developed countries which have special needs, which have not yet restored domestic economic stability, and which face major payments deficits. We agree to continue to cooperate with others in the appropriate bodies on further analysis of these problems with a view to their resolution. If assistance in financing transitory balance of payments deficits is necessary to avoid general disruptions in economic growth, then it can best be provided by multilateral means coupled with a firm program for restoring underlying equilibrium .

 In the trade area, despite the recent recession, we have been generally successful in maintaining an open trading system. At the OECD we reaffirmed our pledge to avoid the imposition of new trade barriers.

 Countries yielding to the temptation to resort to commercial protectionism would leave themselves open to a subsequent deterioration in their competitive standing, the vigor of their economies would be affected while at the same time chain reactions would be set in motion and the volume of world trade would shrink, hurting all countries. Wherever departures from the policy set forth in the recently renewed OECD trade pledge occur, elimination of the restrictions involved is essential and urgent. Also, it is important to avoid deliberate exchange rate policies which would create severe distortions in trade and lead to a resurgence of protectionism.

 We have all set ourselves the objective of completing the Multilateral Trade Negotiations by the end of 1977. We hereby reaffirm that objective and commit ourselves to make every effort through the appropriate bodies to achieve it in accordance with the Tokyo Declaration.

 Beyond the conclusion of the trade negotiations we recognize the desirability of intensifying and strengthening relationships among the major trading areas wjth a view to the long-term goal of a maximum expansion of trade.

 We discussed East/West economic relations. We welcomed in this context the steady growth of East/West trade, and expressed the hope that economjc relations between East and West would develop their full potential on a sound financial and reciprocal commercial basis. We agreed that this process warrants our careful examination, as well as efforts on our part to ensure that these economic ties enhance overall East/West relationships.

 We welcome the adoption, by the participating countries, of converging guidelines with regard to export credits. We hope that these guidelines will be adopted as soon as possible by as many countries as possible.

 In the pursuit of our goa1 of sustained expansion; the flow of capital facilitates the efficient allocation of resources and thereby enhances our eccnomic well-being. We therefore, agree on the importance of a liberal climate for international investment flows. In this regard, we view as a constructive development the delcaration which was announced last week when the OECD Council met at the Ministerial level.

 In the field of energy, we intend to make efforts to develop, conscrve and use rationally the various energy resources and to assist the energy development objectives of developing countries.

 We support the aspirations of the developing nations to improve the lives of their peoples. The role of the industrialized-democracies is crucial to the success of their efforts. Cooperation between the two groups must be based on mutual respect, take into consideration the interests of all parties and reject unproductive confrontation in favor of sustained and concerted efforts to find constructive solutions to the problems of development.

 The industrialized democracies can be most successful in helping the developing countries meet thejr aspirations by agreeing on, and cooperating to implement, sound solutions to their problems which enhance the efficient operation of the international economy. Close collaboration and better coordination are necessary among the industrialized democracies; our efforts must be mutually supportive, not competitive. Our efforts for international economic cooperation must be considered as complementary to the policies of the developing countries themselves to achieve sustainable growth and rising standards of living.

 At Rambouillet, the importance of a cooperative relationship between the developed and developing nations was affirmed; particular attention was directed to following up the results of the Seventh Special Session of the UN General Assembly, and especially to addressing the balance of payments problems of some developing countries. Since then, substantial progress has been made. We welcome the constructive spirit which prevails in the work carried out in the framework of the Conference on Internationai Economic Cooperation, and also by the positive results achieved in some areas at UNC TAD IV in Nairobi. New measures taken in the IMF have made a substantial contribution to stabilizing the export earnings of the developing countries and to helping them finance their deficits.

 We attach the greatest importance to the dialogue between developed and developing nations in the expectation that it will achieve concrete results in areas of mutual interest. And we reaffirm our countries' determination to participate in this process in the competent bodies, with s political wiil to succeed, looking toward negotiations, in appropriate cases. Our common goal is to find practical solutions which contribute to an eqruitable and productive relationship among all peoples.

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(ホ) IMFの国際通貨制度に関する総務会暫定委員会プレス・コミュニケ(仮訳)

(10月2日,マニラ)

1.  国際通貨基金総務会の暫定委員会は,1976年10月2日,フィリピンのマニラにおいて,ウィリー・ド・クレルク・ベルギー大蔵大臣を議長として,第6回会合を開いた。ヨハネス・ウィテフェーンIMF専務理事がこの会合に参加した。この委員会の討議には以下のオブザーバーが出席した。G・D・アルセニスUNCTADニュー・ヨーク支所長,アンリー・コナン・ベディエ開発委員会議長,ウィルヘルム・ハーフェルカンプEC委員会経済財政問題担当副委員長,ルネ・ラールBIS総支配人,E・ヴァン・レネップOECD事務総長,F・ルートウィラー・スイス国立銀行総裁,オリビエ・ロングGATT事務局長及びロバート・S・マクナマラ世銀総裁。
2.  委員会は,世界経済の見通し及び国際的調整過程の機能について討議した。
 委員会は,過去1年間にわたる経済的回復を歓迎しつつも,今なお多くの国において高い失業率とインフレ率が見られることに対し引続き関心を表明した。委員会は,現状においては,適度な物価の安定が持続的な経済成長及び失業削減の基盤を確立するために必要であると信ずる。したがって,委員会は,工業国の政策が現在のところ物価及びコスト・インフレーションの引下げを優先させるべきであるとの意見である。このためには,これら諸国において,たとえ物価及び所得政策がとられている場合においても,この目的と両立する方法で総需要の拡大を効果的にコントロ一ルする財政金融政策がとられる必要があろう。
 委員会は,さらに,工業国において需要管理政策がとられる上での制約にかんがみ,現在行われている交渉における貿易障壁の削減を含め,開発途上国の輸出の市場へのアクセスの改善及び開発援助の増大のための格段の努力が望まれることに合意した。
 国際的調整過程に関しては,委員会は,次のような結論に到達した。
(a)  世界経済の回復の結果多くの国において輸出が増大しつつあり,国際的環境が対外支払いポジションの調整により良い状況となっている。委員会は,赤字国と黒字国との間で均衡のとれたこのような調整が今日緊急でありかつ時機を得たものと信ずる。
(b)  そのため赤字国は,経常収支の赤字を持続的な資本流入及び援助と調和させるために必要な程度まで,国内需要を抑制し,資源を対外セクターに振り向けうるような国内政策をとるべきである。
(c)  国際収支ポジションの強い工業国は,効果的な対インフレ政策の許す範囲内で国内需要の適切な拡大の持続を図るべきである。
(d)  為替相場は,調整過程における適切な役割を果せるようにすべきである。
(e)  IMF資金の利用の面では,赤字国による調整は,クレジット・トランシュ及び拡大信用供与措置の一層の利用により促進することができる。
3.  委員会は,第2次改正の規定に盛り込まれたIMF協定に従い,IMFが加盟国の為替相場政策の確実な監視を実施する義務を有することに留意した。理事会は,この機能がどのように発揮されるべきであるかを検討し,この問題につき委員会に報告すべきである。
4.  委員会は,理事会年次報告の国際流動性の推移に関する部分に留意した。委員会は,その付託条項に従い,理事会に対し,国際流動性のすべての面につき検討を続け,委員会の将来の会合に報告するよう要請した。
5.  委員会は,理事会報告に基づき,IMF資金の利用に関するIMFの政策の変遷及びIMFの流動性の推移を含め,IMFの金融活動につき検討を行った。委員会は,加盟国がその国際収支の赤字をファイナンスするためにIMF資金を従来見られない程広く利用している点に留意するとともに,調整のための適切な努力がなされるとしても,近い将来においては依然としてIMF資金を広く利用する必要が存在しうることについて合意した。委員会は,加盟国による国際収支ポジションの不均衡の調整が一層強調されなければならず,また,IMF資金の利用は全体の利益に資するような調整措置の加盟国による採用を促進する機会をIMFに提供するとの理事会の見解に同意した。委員会は,信託基金に関して理事会がとった行動に留意し,輸出所得変動補償融資制度及び緩衝在庫融資制度につき今後とも検討を続けるとの理事会の意図を歓迎した。
6.  委員会は,IMFの流動性の状況に関する理事会の結論を確認した。委員会は,さる3月総務会により採択された増資決議に従い,IMFの政策に従ってその操作及び取引における自国通貨の使用につき必要な措置をいまだ採っていないすべての加盟国に対し,そのような措置を採るよう要請した。IMFの流動性については,今後とも緊密な検討が続けられるべきことが合意された。委員会は,IMF協定の第2次改正の早急な採択及びそれに続く第6次一般的検討に基づく増資に必要な手続の完了がIMFの流動性を改善する最も効果的な手段を提供するとの事実を強調した。
7.  委員会は,1978年2月に割当額の第7次一般的検討の結論が予定どおり出されるよう,理事会が近い将来その検討を開発することに留意した。
8.  委員会は,加盟国によるIMF協定の第2次改正の受諾の進捗に関する理事会報告に留意した。改正協定の効力発生が国際通貨制度の機能に果たす重要性にかんがみ,委員会は,第2次改正の受諾をいまだIMFに通告していないすべての加盟国に対し,そのような行動をとりうるための措置を可及的すみやかに完了するよう要請した。
9.  委員会は,1977年4月18及び19の両日,ワシントンにおいて,第8回会合を開催することに合意した。

 

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* トルコを除く。
** ポルトガル政府は現段階では「宣言」を更新する立場にはない。
(注) トルコ政府はこの宣言に参加する立場になかった。
(注) この行動指針の適用上,「地域」とは,各企業が特定の状況下で適当であると判断するところに従い,2以上の国の集合又は個々の国を意味する。いかなる単一の集合方法も,全ての企業又は全ての目的に対して適当なものではないが,企業により考慮される要素としては,その競争力についての影響,地理的近接性,経済的類似性,事業環境の類似性並びに各国における企業の事業活動の性質,規模及び相互関係の程度のほか,それぞれの国又は地区で行われる事業活動の重要性も含まれる。
(注) 誠実な交渉は,交渉の過程の一部としての労働争議を含む。労働争議がそのような形で含まれているか否かは,それぞれの国の法律及び一般的な雇用慣行によって決定される。