|
【普遍的価値としての人権及び民主主義の重要性】
21世紀を迎えた国際社会において、日本が理念としている自由、民主主義、基本的人権という価値は2度にわたる世界大戦と冷戦を経て、国際社会の普遍的価値となっており、一層広く共有されるようになってきている。
民主主義を推進し、自由及び基本的人権の尊重を強化することは国際社会の重要課題となっている。2000年においては、アジアでは、台湾で自由選挙を通じて、初めて平和的に国民党以外の党から指導者を選出した。欧州では、ユーゴでミロシェヴィッチ政権が倒れ、コシュトゥーニツァ政権が誕生して、平和的政権交替が実現した。中南米ではチリにおいて、8月、ピノチェト元大統領が軍政時代の人権侵害問題で、チリ国内での議員特権剥奪の上、起訴された。
この課題への取組に当たっては、各国政府、国連を始めとする国際機関のみならず、非政府組織(NGO)等市民社会による協力もますます重要となっている。
【人権の擁護・促進】
<国連人権委員会>
3月から4月に開催された国連人権委員会は、様々な人権問題の早期改善を訴えた。10月にはイスラエル・パレスチナ間の武力衝突等の諸情勢に鑑み、パレスチナに関する国連人権委特別会期が開催され、人権調査委員会の設置等を含む決議が採択された。これらの場において、日本は、アジア諸国やアフリカ諸国と他の地域諸国の各々との間で橋渡しの役割を果たし、議論に貢献している。99年に引き続き「カンボディアの人権状況」決議の主提案国となり、決議案の作成及び各国意見の調整を行うなど積極的な役割を果たした。
また、日本は、国連人権高等弁務官(UNHCHR)事務所等国連による人権分野での活動を支援してきており、財政面では、各国による人権状況改善努力を支援するための諮問サービス基金を始め同事務所の運営する各種基金に対し、約80万ドルを拠出した。
<人権対話>
日本は、このようなグローバルな取組とともに、人権問題に対処するに当たっては、対話を通じて相互理解を図ることも重要との考えから、1月に第3回日中人権対話、10月に第1回日・イラン人権対話を行った。そのほかにも二国間会談等の機会を利用して、諸外国との間で人権に関する意見交換を行っている。
【民主主義の強化】
日本は従来より「民主的発展のためのパートナーシップ(Partnership for Democratic Development: PDD)」という考えに基づき、途上国における民主主義の強化及び人権の擁護・促進のための協力として、法制度や選挙制度の整備のための支援、司法官・行政官・警察官の研修等を行っている。また、このような民主化支援に加え、民主化促進を目的とした以下の2つの国際会議に対して、国連開発計画(UNDP)の人造り基金を通じて財政支援を行った。
<ワルシャワ2000年民主主義閣僚級会合>
6月26日及び27日、ポーランドのワルシャワにおいて、ワルシャワ2000年民主主義閣僚級会合が開催された。本会合には、日本を含む107か国が参加し、米国国務長官、ドイツ外相等約6割の国が閣僚レベルで参加したほか、国連事務総長を始めとして国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界銀行、欧州評議会(CE)等、14の国際機関が参加し、ワルシャワ宣言が採択された。日本からは有馬政府代表が外務大臣特使として出席し、閣僚級パネル等において世界の民主化に向けた日本の積極的な取組を示した。民主主義をテーマとした世界レベルでの閣僚級会合が開催されたのは初めてのことであり、本会合の歴史的意義は大きいと言える。
<第4回新生復興民主主義国際会議>
12月4日から6日にかけて、アフリカのベナンにおいて、第4回新生復興民主主義国際会議が開催された。本会議は、新興民主主義国のイニシアチブにより開催され、脆弱な民主主義国自身が民主化プロセスの経験を交換することで、問題点の克服に寄与し、より強固な民主主義基盤を確立することを目的としている。103か国が参加し、日本代表も民主化支援における日本の活動等についてスピーチを行った。
|
|
【国際社会による地球環境問題への取組】
近年、地球温暖化、オゾン層破壊等の地球環境問題が顕在化しているが、これらは人類の生存に対する脅威になり得る問題であり、一国のみでは対応が困難で、本質的に国際社会が共同で解決に向け取り組むべき課題である。さらに環境問題への取組は従来の経済発展パターンに変更を求め、その結果、経済発展にブレーキをかけ得る要素があるとともに、新しいタイプの経済活動のチャンスを産む点もあるなど、経済問題と極めて密接に関連している。そのため、異なる発展段階や経済状況にある国や地域が協調行動をとることは容易ではなく、先進国と途上国が鋭く対立するような問題(例えば新規資金メカニズムの設立や先進国と途上国間の義務の程度)も多く見られる。また、先進国内においても、取組の内容や程度をめぐって意見が異なる場合が少なくない。したがって、地球環境問題を解決していく上で、このような立場の相違を調整し、交渉の積み重ねを通じて合意を図っていくための外交交渉が重要な役割を果たす。他方、こうした地球環境外交を進めていくに当たっては、長期的な地球全体の環境という視点も考慮することや、人間の安全保障の観点から人間一人一人の生存や健康を重視することも求められる。
2000年においては、4月から5月にかけてニュー・ヨークで「持続可能な開発委員会」第8回会合が開催された。農業、貿易、投資等の分野に焦点を絞ったレビューがなされたほか、地球サミット(注)から10年後の2002年に「アジェンダ21」の包括的見直しを行う「リオ+10」会議についても議論された。「リオ+10」会議については、国連総会で引き続き協議され「持続可能な開発のための世界サミット」として首脳レベルで南アフリカで開催されることが12月に決定された。
(注) |
国際社会の地球環境問題への取組は、92年6月にリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED、いわゆる「地球サミット」)を契機として大きく前進した。同会議の成果として「アジェンダ21」等において包括的な取組内容が規定された。
|
国際社会の具体的な取組は、主として分野ごとの多国間条約の策定や推進を通じて行われてきている。
地球温暖化問題に関しては、11月に開催された第6回締約国会議(COP6)において京都議定書(注)の早期発効を目指し、同議定書の実施に必要な「京都メカニズム」(排出量取引、クリーン開発メカニズム及び共同実施)の詳細や遵守制度の具体化及び途上国問題等についての決定を目指して議論が行われた。日本も議論の前進のために貢献を行ったが、結局、各国の意見は収斂せず会議は中断した。COP6の再開会合は2001年7月に開催される予定である。
(注) |
97年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された議定書で、先進国、市場経済移行国に対し、具体的な数値目標をあげ、温室効果ガスの削減を義務づけた。
|
生物多様性については、バイオテクノロジーにより改変された生物(LMO)のうち、生物の多様性に悪影響を及ぼす可能性のあるものについて、その安全な移送や取扱い等に関する手続を具体的に定めるための国際交渉が行われた結果、1月「バイオセイフティに関するカルタへナ議定書」が採択された。このほか、PCB、DDT、ダイオキシン等12種類の化学物質の製造及び使用の禁止、並びに排出の削減等を規定した条約案について、12月の政府間交渉委員会第5回会合において合意に達し、2001年5月に採択される見通しとなった。
【日本の協力】
このような国際的な取組が進展する中で、日本は、地球環境問題への取組を引き続き外交の重要課題の一つと位置づけ、以下のような協力を実施してきている。
第1に、条約等国際約束の策定・実施における取組である。気候変動については、97年の京都会議の議長国として京都議定書の早期発効を目指し、交渉を進展させるためにアジアで開催された専門家会合へ財政支援を行うなど、積極的に取組を続けている。オゾン層保護の分野では、途上国のオゾン層保護対策の実施を支援するために設立されたオゾン層保護基金に対し、日本は米国に次ぐ大口拠出国として年約3300万ドルを拠出している。残留性有機汚染物質については、日本は、農薬や化学物質についての情報・技術に関する知見を積極的に提供してきた。
第2に、環境分野での途上国支援である。日本の政府開発援助(ODA)は、ODA大綱の原則の一つとして環境と開発の両立を謳うなど、環境分野への協力を重点課題の一つとしている。99年8月に策定した「政府開発援助に関する中期政策」においても「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」等に基づき積極的に取り組むこととされており、協力分野は大気汚染、地球温暖化、自然環境保全など多岐にわたる。
第3に、環境関連国際機関との協力関係を重視している。日本は、国連環境計画(UNEP)の主要拠出国として大きな役割を果たすと同時に、日本が誘致した「UNEP国際環境技術センター」(大阪及び滋賀)に対しては、大気汚染、廃棄物、騒音等大都市の環境問題及び淡水湖沼流域の管理に関するプロジェクトへの経費支援などを行っている。また、黄海及び日本海の海洋環境の保全を目的とする「北西太平洋地域海行動計画」について、事務局機能を務める地域調整ユニットの誘致に努めた結果、右ユニットを富山及び釜山に設けることで12月の第6回政府間会合において原則的に一致した。
さらに、酸性雨問題についての地域的な取組を強化するために、共通の方法による酸性雨モニタリングの実施及びそのネットワーク化を目的とした「東アジア酸性雨モニタリング・ネットワーク」を東アジア主要国の参加を得て98年4月より試行稼動しており、10月の第2回政府間会合において2001年1月より本格始動することで一致した。
|
|
【国際組織犯罪】
近年、グローバリゼーションが進む中でその負の側面として生じてきた国際組織犯罪は、国際社会にとってますます大きな問題となっており、各国間の協力体制の強化及び国際的な法的枠組みの整備が焦眉の急となっている。現在この問題への国際的な取組は主として国連とG8の場を通じて行われている。
国連においては、G8の主導の下、98年以来、国際組織犯罪と戦うための法的枠組みを包括的に規定する初めての普遍的条約である国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約及び不法移民、人の密輸、銃器に関する議定書の策定作業が進められてきた。このうち、本体条約及び不法移民・人の密輸議定書については、2000年11月に第55回国連総会において採択された。また、2000年12月にイタリアのパレルモで開催された本条約のハイレベル署名会議において、荒木外務総括政務次官が日本を代表して本体条約に署名した。
このほか、5月には、ウィーンにおいて第10回国連犯罪防止会議が開催され、国際組織犯罪に対抗するための網羅的な政治的宣言(ウィーン宣言)が採択された。
また、95年のハリファックス・サミットにおいて設置が決定されたG8国際組織犯罪上級専門家会合(通称リヨングループ)は、司法協力、法執行プロジェクト、ハイテク犯罪、銃器、人の密輸など、様々な国際組織犯罪への対策を議論してきた。日本は、2000年には、リヨングループの議長国として3度の会合を主催し、議論をリードしたほか、5月にパリにおいて開催されたハイテク犯罪対策官民合同ハイレベル会合においてもフランスと共に共同議長を務めるなど、G8諸国間の共同作業に積極的に取り組んできた。7月の九州・沖縄サミットにおいては、先述の国連条約及び関連議定書の2000年末までの採択の支持が再確認された。
【薬物】
世界的に深刻化してきている麻薬等薬物問題への国際的な取組は国連薬物統制計画(UNDCP)を中心に行われている。90年の国連麻薬特別総会、93年の国連総会麻薬特別会合を経て、98年6月に、薬物乱用の低年齢化や覚せい剤の乱用の増加等薬物乱用の現状を踏まえて、国連麻薬特別総会が開催され、新たな国際的薬物対策の指針となる「政治宣言」を含む七つの文書が採択された。
このような国際的な麻薬に対する取組を踏まえ、日本はUNDCPの活動を積極的に支援してきており、厳しい国内財政事情にもかかわらず、91年のUNDCP設立以降、毎年数百万ドルの拠出を実施してきている。
1月には東京でアジア太平洋地域を中心とした37か国・地域の薬物対策機関及び国際機関から約130人の参加を得て「2000年薬物対策東京会合」を開催し、薬物関係機関間の国際協力の推進のための意見交換、セミナーを行った。2月には、ワシントンDCで「国際麻薬統制サミット」が開催され、日本からは橋本総理大臣外交最高顧問が出席し、会議への積極的貢献を行った。会議では薬物対策における国際協力の重要性で一致した。
また、12月には宮崎でG8各国及びUNDCPを招き「G8薬物専門家宮崎会合」を開催し、薬物問題に対処するため国際的な協力を強化していくことで一致した。また、UNDCP以外の薬物対策に関係する各種国際機関に対しても資金拠出を通じてその活動を支援している。
二国間援助においても、薬物不正取引取締りのための技術協力、麻薬原料の代替作物等の導入・普及や啓蒙活動のための資金協力や技術協力を行っている。例えば、ミャンマーにおいてはケシ代替作物としてソバを栽培・普及するため、専門家派遣等の協力を行っている。
また、日本は、薬物に関する先進国の協議機関であるダブリン・グループのメンバーであり、同グループの会合において積極的な情報交換や協議を行っている。
|
|
【海賊問題】
近年、海賊事件の報告件数は増加の一途をたどっており、91年には107件であった海賊事件は2000年には469件と4倍以上(注)に増加している。海賊事件は、特に東南アジア海域において多発しており、2000年においては全体の50%にあたる242件が同海域において発生している(注)。また、銃やナイフで武装した海賊は年々増加しており、船舶自体を奪取してその積み荷や船舶を売りさばく船舶のハイジャック事件も発生しており、日本に関係する船舶もこのような船舶のハイジャック事件の被害にあっている(「グローバル・マーズ号」事件(2000年2月)等)。
(注) |
出典:国際海事局(IMB)海賊報告センター報告書2001年1月版 このような船舶のハイジャック事件においては、短期間に、奪取した積み荷を売りさばき、船体を偽装することが必要であること、多国間の海域にわたってその活動が行われていることなどから、背後に大がかりな国際犯罪組織が存在するのではないかと疑われている。
|
【日本の協力】
海賊事件が頻発し、その被害が深刻化することは、石油等のエネルギー源を輸入に依存し、また貿易立国として発展してきた日本の輸送ルートへの大きな脅威となっているだけでなく、アジア地域並びに世界全体の秩序の安定と経済の発展にも影響を与えている。海賊問題を解決していくため、日本は、国際海事機関(IMO)、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びASEAN地域フォーラム(ARF)等の枠組みにおける国際的な協力のほか、日本のイニシアチブによる国際的な協力にも積極的に取り組んでいる。
99年11月の日・ASEAN首脳会議における小渕総理大臣の提案を受けて、日本は、2000年4月に東京においてアジアの17の国と地域からなる「海賊対策国際会議」を開催した。「海賊対策国際会議」においては、海上警備機関責任者が協力を強化する意思を表明した「アジア海賊対策チャレンジ2000」や、海事政策当局等機関間の情報連絡窓口の設定や船の自主警備策強化を含む海賊対策のための国別行動計画の策定等を呼びかけた「東京アピール」、そして「東京アピール」に基づき具体的対策を記した「モデル・アクション・プラン」を採択した。
9月には、海賊対策調査ミッションをフィリピン、マレイシア、シンガポール及びインドネシアに派遣し、海賊対策に関する具体的な協議を実施した。また、11月には海上保安庁の巡視船がインドとマレイシアを訪問し、海賊対策を目的とした連携訓練をそれぞれ実施した。さらに、日本は、11月にマレイシアにおいて開催された「海賊対策に関する緊急の連絡会議(専門家会合)」に参加した。
日本としては、今後とも海賊事件の撲滅に向けて、関係国との連携や協力の強化を図るとともに、海賊対策のために必要な技術支援や人材育成を積極的に行っていく方針である。
|
|
【女性】
2000年6月、第4回世界女性会議のフォローアップとして国連特別総会「女性2000年会議」がニュー・ヨーク国連本部において開催された。日本からは岩男壽美子男女共同参画審議会会長を首席代表とする代表団が参加し、「政治宣言」及び「更なる行動とイニシアチブに関する文書」の採択のために積極的に貢献した。
また、日本は、途上国の女性の能力向上への支援等のため、国連開発計画(UNDP)による途上国の女性支援(WID)基金、国連婦人開発基金(UNIFEM)等国際機関に対して支援を行っている。
【児童】
日本は児童の権利保護や福祉の向上のため、国連児童基金(UNICEF)を通じた協力等を行っており、2000年には同基金へ約2660万ドルを拠出した。
また、日本は、2000年5月、第54回国連総会において採択された児童売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利条約選択議定書(仮称)及び児童の武力紛争への参加に関する児童の権利条約選択議定書(仮称)の作成のための作業に積極的に参加し、国際社会における児童の権利の更なる保護・促進に努めた。
|
|
【原子力の平和利用】
<国際原子力機関(IAEA)による保障措置の強化・効率化>
IAEAは、原子力平和利用活動における核物質が軍事転用されないことを確保するために査察を含む保障措置制度を設けており、97年には、これまでの保障措置制度を強化するためのモデル追加議定書が採択され、2000年12月現在、53か国がこの追加議定書に署名し、日本を含め18か国で発効している。また、2000年、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の結論を受け、日本は同議定書の締約国拡大のための「行動計画」の具体策を提案するなどの取組を行っている。
<チェルノブイリ原発閉鎖>
86年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所4号炉は、事故直後の応急手当てとしてコンクリート等で塞がれ、「石棺」化された。この石棺の老朽化に伴い策定されたチェルノブイリ石棺計画については、実施に必要な資金を手当てすることが急務であり、7月、ベルリンにて第2回プレッジング会合が開催された。
日本は、ドイツと共同で各国に拠出を働きかけた。その結果、G7、欧州共同体(EC)、その他13か国から、計約3億2000万ドルの拠出の表明があり、これまでに拠出表明された額と合わせ、総額約7億1500万ドルが手当てされた。これは、石棺計画の総額(約7億6000万ドル)の90%以上に相当する。
ウクライナは、このような国際社会の協力を受けて、12月15日にチェルノブイリ原発を最終的に閉鎖した。代替電源の確保や失業者対策等、閉鎖に伴う課題も少なくないが、日本は、引き続き、他のG7諸国とも協調しつつ、解決に向けて支援していく考えである。
【科学技術分野の国際協力】
科学技術は、国の安全保障、経済・産業活動を支える基盤的要素の一つであり、また、科学技術は、地球環境問題、エネルギー問題、及び保健衛生問題等、国際社会が共通して取り組むべき問題の解決に重要な役割を果たしている。特に、最近の科学技術は、国際宇宙基地計画など、その規模の大きさから国際協力が有益なものも多い。
科学技術創造立国を目指す日本として、国際的な交流を通じて日本の科学技術の発展を図ることは、重要であり、日本は科学技術に関する国際協力を積極的に推進している。
具体的には、日本は、関係国との間で定期的に、または重要な問題が生じた場合に会合し、科学技術政策に関する情報交換や協議を行うとともに、具体的な研究協力を進めている。こうした二国間協力の取組として、日本は、現在、約30か国との間に科学技術協力協定を締結し、合同委員会等の会合を行っている。2000年においては、5月には米国と、また英国、韓国、フランス、カナダ、欧州連合(EU)、スウェーデンともそれぞれ会合を行った。
<宇宙>
宇宙は、科学技術に関する国際的な協力が最も進んでいる分野の一つである。日本は、米国、カナダ、欧州諸国、ロシアと共に、宇宙基地協力協定の下、2006年までの宇宙基地完成を目指して国際宇宙基地計画を推進している。2000年7月にロシア提供の居住棟「ズヴェズタ」が打ち上げられ、12月より搭乗員の常駐が開始された。日本の担当部分である日本実験棟の建設は、2004年から開始される予定である。 日米間では、地球観測、天体観測、日本人宇宙飛行士のスペースシャトル搭乗等の協力を実施している。2月には毛利衛宇宙飛行士がスペースシャトル「エンデバー」で2回目の宇宙飛行を行い、10月には若田光一宇宙飛行士がスペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗し、国際宇宙基地組立にも参加した。日本はまたロシア、欧州、アジア諸国とも地球観測や宇宙通信の分野での協力を進めている。ロシアとの間では、日露宇宙協力協定にのっとり、1月に第2回日露宇宙協力合同委員会がモスクワで行われた。
また、科学技術が適切に利用され、国際社会に脅威を及ぼさないこともまた、日本と国際社会の安全保障の観点から重要である。特に冷戦終結後、旧ソ連下で大量破壊兵器の研究に従事していた科学者・技術者の国外流出は継続して国際社会の懸念となっている。このため、日本は、これらの科学者・研究者が民生用の研究プロジェクトに従事する機会を提供し、軍民転換を促進するために、94年に日本、米国、欧州連合(EU)、ロシアにより設立された国際科学技術センター(ISTC)に対し積極的な支援を行っている。これまでに約1150件、総計約3億1600万ドルのプロジェクトで延べ3万3000人以上の科学者・技術者が支援された。
また、日本は、アジア太平洋経済協力(APEC)、アジア欧州会合(ASEM)等様々な枠組みで、多国間の国際科学技術協力を推進している。
|