[国際交流の重要性]
グローバリゼーションが急速に進展する今日の国際社会では、文化、政治、経済など様々な面において地理的な隔たりを越えた国際交流が活発化し、相互依存関係がますます深まっている。その一方で、イデオロギーに基づく対立に代わり、民族や文化の違いに根ざした様々な問題が顕在化している。
こうした社会においては、民族、文化の多様性を再認識し、異なる文化を理解・尊重することが国家間の信頼を醸成し、真の友好関係を築く上で重要であり、国際交流はその有効な手段として位置づけられる。このような認識の下、日本は、日本文化の海外への紹介や外国文化の日本への紹介、知的対話を始めとする人的交流など二国間・多国間の国際交流を積極的に展開している。国連においては、文化の多様性、対話といった考えの重要性が改めて認識され、2000年を「平和の文化国際年」に、2001年を「文明間の対話国連年」に指定する旨決議された。
[最近の動向]
二国間交流については、欧州で、1月から始まった「ドイツにおける日本年」の中で、ケルン東大寺展などの大型文化事業が実施された。また、中華人民共和国建国50周年及び日中文化交流協定締結20周年を記念し99年を「日中文化友好年」と定め、両国において大型公演など様々な文化行事が開催された。さらに、99年はペルー、ボリヴィア日本人移住100周年、アマゾン移住70周年に当たり、これを記念して種々の文化行事が行われた。
特に、韓国との間では、3月に小渕総理大臣が韓国を訪問した際の日韓首脳会談において、日韓間の文化交流の拡充策を検討するために民間有識者による日韓文化交流会議を設置することで一致し、6月に同会議が発足し、その第1回会議は9月にソウルで開催された。日韓文化交流会議は、日韓間での文化交流促進のための12項目の提言を出すなど両国間の文化交流促進に積極的な役割を果たしている。また、10月に韓国の済州島で開催された日韓閣僚懇談会において、日韓共催のサッカーW杯が開催される2002年を「日韓国民交流年」とし、文化、スポーツ、青少年、地域、観光等の各分野における交流を促進していくことで意見が一致した。
また、近年、多国間の枠組みによる文化交流、文化協力が重要性を増しており、教育、科学及び文化を通じて諸国民の協力を促進することによって世界の平和と安全に貢献している国連教育科学文化機関(UNESCO)は、その役割の重要性が再認識されてきている。11月、松浦晃一郎駐仏大使がアジア出身者として初めてUNESCO事務局長に就任したことは、これら諸分野における日本のこれまでの活動に対する諸外国の評価の一つの現れと考えられる。
アジア地域では、98年に小渕外務大臣(当時)の提案で始まった多国間での知的交流「アジアの明日を創る知的対話」の第2回会合が、7月にシンガポールにおいて開催された。
次世代を担う青少年の交流については、まず、「留学生受入れ10万人計画」の下、受入れ体制の整備等に努めている。また、JETプログラム(Japan Exchange and Teaching Programme)により日本を訪れ地方自治体で外国語指導や国際交流活動に従事している海外青年の数は、96年度に5000人に達した後も順調に増加し、地域レベルの国際交流の活発化を裏付けている。さらに、98年11月の小渕総理大臣のロシア訪問の際に設立が提唱された日露青年交流センターは、99年7月から本格的な招聘事業を開始した。
日本語学習は対日理解を深める上で有効な手段であり、日本は日本語教育専門家の派遣や教材寄贈など様々な形で海外の日本語教育振興に努めており、98年の調査によれば海外での日本語学習者数は全世界で200万人に達した。
文化協力の分野では、開発途上国において、経済的な発展ばかりでなく文化の維持・振興に対する関心が高まっており、こうした国造りへの努力に対し、日本は従来より積極的に協力を行ってきている。その重要な柱の一つは文化無償協力による機材の提供であり、1975年の制度発足以来99年末までに1000件を超す案件が実施された。また、文化遺産の保存協力については、99年には、日本国政府アンコール遺跡救済チームの手によって、カンボディアのアンコール遺跡のうちでも最も重要な建築物の一つであるバイヨン寺院の北経蔵修復工事が完了した。12月にモロッコのマラケシュで開かれた第23回世界遺産委員会では、日本で10番目の世界遺産となった「日光の社寺」を含む48件について、新たに世界遺産一覧表への記載が決定された。
[今後の方向性]
各国の特性や日本との関係を十分に踏まえたきめ細かな二国間文化交流に加え、今後、従来の枠組みを越えた多国間の枠組みによる文化交流の重要性もますます高まると考えられる。日本としては、こうした動きに応じ、多国間の文化交流・協力を積極的に推進するとともに、ユネスコなどの国際機関に対して更なる協力を行っていく考えである。
2000年に開催される九州・沖縄サミットは、日本の豊かで多様な文化を国外の人々に紹介する重要な機会ともなる。これを一つの契機として、日本の国際交流を更に発展させる努力を引き続き行っていくことが重要である。
また、地方自治体、民間団体、企業、非政府組織(NGO)など、国民各層での日本の国際化がめざましく進展する中で、国の情報提供機能を高めるとともに、これら団体との連携を深めることにより、国際交流をより効果的に実施していくことが極めて重要である。
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