国連小型武器中間会合
(天野軍備管理・科学審議官のスピーチ)
- 我が国は、小型武器問題は、紛争の再発予防、紛争直後の人道支援、復興開発の前提として解決すべき課題として取り組んできている。具体的には、95年にガリ国連事務総長(当時)より、小型武器問題が国際社会に提起されて以来、ほぼ毎年、国連総会に小型武器決議を提出、採択し、この問題の重要性を喚起してきた。また、国連政府専門家パネルおよびグループの議長を務め、更に、国連小型武器トレーシングスタディーにも積極的に参加している。
- 2001年には、国連小型武器会議が開催され、堂之脇外務省参与が副議長を務めた。同会議では、激しい議論および困難な交渉の結果、「小型武器非合法取引防止のための行動計画」が採択された。この「行動計画」は、小型武器非合法取引撲滅に向けた国際社会の政治的意志を結集したものである。我が国は、行動計画を小型武器問題の多面性を踏まえた包括的なアプローチを有する指針として評価している。今後は、行動計画をいかに実施していくかが課題であり、中間会合は、加盟国、国際機関、地域機関、NGO等の行動計画を実施状況の報告及び意見交換を最初に行う機会として、また、今後の小型武器非合法取引の防止に向けた英知を結集するものとして重要であると考える。特に、会合の後半に予定されているテーマ別討論は、かかる目的に資するものである。
- 我が国は、行動計画の実施として、2002年1月、「東京フォローアップ会合」、2003年1月、「太平洋諸国小型武器セミナー」、同年2月、「インドネシア小型武器セミナー」等の地域セミナーを開催してきた。これらのセミナーでは、市民の武装化、児童兵、治安回復、DDR等、小型武器問題の多面的な側面に取り組むことができた。我が国は、今後、具体的な措置を検討する必要があると考えている。
- 将来的な措置の一つとして、トレーシングシステムの構築が有効な手段であると考える。これは、予め小型武器に刻印し、刻印内容を記録保管し、非合法に流通した場合に国際協力の下、流通原因、流通場所等が捕捉できるようにするものであり、予防措置として有効である。また、非合法取引のルートを探知した場合には、それを根絶することも可能となる。既に、トレーシングについては、国連の枠組みにおいて、国連小型武器トレーシングスタディーが開催され、同スタディーの報告書では、国連事務総長に「国際文書の交渉」開始することが勧告される予定である。我が国は、早期にこの勧告が実現されることを期待している。加えて、厳格な輸出規制、国連安保理武器禁輸措置がある地域への武器の輸出を行わない等の措置が必要である。我が国は、武器を輸出しないことを国是としており、武器は輸出していない。
- 次に、毎年、50万人といわれる小型武器による被害者をなくすための取り組みである。小型武器問題は、第一義的には、被害国自身の取り組みが重要であるが、そのためには、国境管理、関連法案の整備、治安の回復等武器保有原因の除去のための国際的な協力、支援も必要である。
- 平和を定着させることは、我が国の外交の主要な柱である。そのためにも、武器回収などの小型武器問題への取り組みが重要である。その一例として、20年以上にわたり、内戦に苦しんだアフガニスタンについては、我が国がホストした「復興支援会議」において、国際社会からの多額の支援の表明があったが、アフガニスタンの復興の成否は、平和の定着如何にかかっているとも言い得る。我が国は、アフガニスタンのリード国として、この課題に取り組んでいる。更に、カンボディア政府の小型武器回収プロジェクトへの支援として「武器回収の対価としての開発の提供、武器破壊式典、啓蒙活動、登録制度」を柱とした小型武器回収プロジェクトに着手した。このプロジェクトは、これまでのパイロット・プロジェクトを拡大化するものであり、武器の回収にも着手した。今後、回収と並行して、コミュニティーのニーズを踏まえて、総合的な開発を図り、小型武器回収プロジェクトの成功例となることを目指したい。
- 我が国は、平和の文化を唱道し、平和国家として歩んでいる国であり、これまで以上に、小型武器の非合法取引の撲滅に向けて取り組む所存である。中間会合の議長国を契機に小型武器問題により強く取り組んでいきたい。
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