![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 外交政策 > 軍縮・不拡散 |
![]() |
1999年5月3日 マプト |
(序) 大統領、議長、御列席の皆様、 本日、日本政府を代表して第1回対人地雷禁止条約締約国会合において御挨拶する機会を得ましたことは、私にとり大きな喜びであります。この締約国会合の開催に大きな役割を果たされたモザンビーク及びカナダ政府、国連事務局、更にNGOを含むすべての関係者の皆様に対し、深甚なる敬意を表します。 現在、地球上の多くの人々が、多くの武力紛争において使用される対人地雷の非人道性により、多大な苦しみに直面しております。他方、現在程、国際社会の構成員即ち、政府のみならず、国際機関、NGO更には一般市民が、国際社会が抱える共通の問題につき協力しあい、解決の方途を共に考え、実行に移せる時代は無かったと思います。対人地雷が引き起こす悲惨な人道上の問題に対し、NGOが立ち上がり、関心国政府とともに、対人地雷禁止に向けた大きな国際的潮流を形成し、世界の多くの国々が参加する画期的な条約の作成を成し遂げたことには、政策立案の場において日本からその動きを起こすことに関与した者の1人として、大きな感動を覚えます。 昨日、我が国代表団がここからも近い地雷除去現場を視察する機会を頂きましたことにつき、モザンビーク政府に対し謝意を表します。対人地雷による犠牲者ゼロの目標に向けた取り組みが如何に困難であるかを改めて痛感するとともに、この問題に対し、国際社会が一丸となって持続的に取り組まなければならないとの思いを一層強くした次第であります。 他方、最近のコソヴォ紛争において、この会議の開催中にも無辜の市民が地雷により死傷しているやもしれぬことについて、深い遺憾の意を表せざるを得ません。私はすべての紛争当事者に対し、対人地雷の不使用を求め、対人地雷による新たな犠牲者が生まれないこと、また、復興努力が大きく損なわれないことを確保するよう呼びかけます。 (普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止) 議長、 我が国は、97年12月のオタワでの署名式において、対人地雷による犠牲者ゼロを目標として掲げ、普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止と、地雷除去及び犠牲者支援への協力という2つの柱から成る「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱しました。 普遍的かつ実効的な対人地雷禁止のためには、まず、世界の多くの国がこの条約を締結することが重要です。この条約が署名開放からわずか1年余りの内に発効し、既に70を超える国の締結を得ていることは誠に喜ばしいことであります。今後とも締約国として、署名済みの60を超える国を含む非締約国に対し、機会ある毎に本条約への参加を強く促していく必要があります。 しかし、専ら安全保障上の理由から、対人地雷の使用・生産禁止に直ちにコミットできず、近い将来においては、条約締結を見込めない国が相当数存在することも事実です。これらの国の中には、「特定通常兵器使用禁止制限条約の地雷等に関する改正議定書」を締結している国があり、また、対人地雷の輸出禁止を一方的な措置として実施している国があることには、大変勇気付けられます。更に、今後ジュネーブ軍縮会議において、対人地雷の国際的移譲を禁止するための条約交渉に向けた議論が熱心におこなわれていくことを期待いたします。 (地雷除去及び犠牲者支援) 議長、 対人地雷は、それが埋設されている国にとっては復興と開発の大きな障害であります。また、一般市民に無差別な被害を与え得るというその非人道的な性格に鑑みるならば、人間の生命、生存、尊厳に対する脅威として、小渕総理の提唱する「人間の安全保障」の観点から、この問題への取組を強化していく必要があると考えます。 我が国は、これまで10年以上にわたり地雷分野の支援を行っております。97年には地雷除去活動や地雷による犠牲者の支援を初めて包括的に取り扱う形で「対人地雷に関する東京会議」を開催しました。これまで、国際機関、NGO、二国間援助等を通じた支援の総額は約4000万ドルにのぼります。また、この分野の取組を更に拡大、強化すべく、97年12月のオタワ条約署名式の際には、当時の外務大臣であった小渕総理より「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱するとともに、98年から5年間を目途に100億円程度の支援を行うことを表明し、現在その具体化に努めております。最近では、本年3月、カンボディアの地雷除去活動の作業効率を向上させることを目的とする「地雷除去活動機材計画」に対し、4.7億円(約400万ドル)の供与を決定しております。また、このモザンビークについては、UNDPが実施するマシンジール地区の地雷除去活動を支援するため、98年10月に100万ドルの供与を決定しましたが、その他二国間援助の可能性をも念頭におきつつ、今年度中にプロジェクト形成調査団を派遣することとしました。 この「犠牲者ゼロ」の目標に向けた我が国の支援は、次の3つの点に立脚しています。 第1は「オーナーシップ」の原則です。これは、地雷の被埋設国が対人地雷問題に主体的に取り組むべきことを指します。このためには、人材の育成(キャパシティ・ビルディング)に重点を置いて、地雷除去体制の構築等国内体制の整備を支援していくことが重要です。我が国は、これまで、カンボディア、ボスニア、クロアチアにおける地雷対策センターの立ち上げを支援したところです。今般、チャードとタイにおけるUNDPの地雷センター立ち上げを支援することとしました。今後とも、支援対象国を拡大していきます。 第2は「パートナーシップ」の原則です。この点で、国連を中心とした調整の下、ドナー、国際機関、NGOの間の活動を調整していくことが重要です。また、被埋設国間の南南協力、ドナー国を含めた三角協力を推進していくことが重要です。こうした観点から、我が国は、昨年開催された被埋設国間の経験の共有を目的とするプノンペン国際フォーラムを支援したところです。 第3は、先程申し上げた人間の安全保障の視点です。 この観点からは、まず、対人地雷問題に貧困緩和の視点から取り組む必要があります。この概念は人間の生存、福祉そして自由を確保しようというものであります。対人地雷は、住民の生活を圧迫するものであり、地雷除去活動が復興と開発に繋がるよう、地雷除去後の土地利用も含め、地雷除去機関と開発担当機関が密接に協力しつつプランニングを行っていくことが重要です。我が国は、この関連で、アフガニスタンにおいて、地雷除去・難民支援を含む形で「アズラ・テジン」地域への総合復興計画を国際機関と協力して支援していますが、こうした例は一つのモデル・プロジェクトとなると考えています。 また、社会的弱者を保護するとの観点から、職業訓練及び雇用機会の提供も含めた社会的統合に重点を置いて犠牲者に対する支援を行っていくことが重要です。我が国は、従来よりNGOと協力しつつ、犠牲者支援に取り組んできたところですが、更に、カンボディア、ラオス、ニカラグア、グァテマラにおいてUNICEFやNGOが行う地雷プロジェクトを支援することと致しました。 我が国は、以上3つの原則に基づき、平成11年(99年)度において、「犠牲者ゼロ・プログラム」の更なる具体化として、地雷関連分野において、被埋設国、国際機関、NGO等からの支援要請を踏まえつつ、総額2000万ドル程度の支援を実施していく方針であります。我が国は特に、地雷除去活動を実施している地雷被埋設国において、オーナーシップの原則に基づき、また、パートナーシップの精神により、地雷除去、犠牲者支援、地雷回避教育といった一連の地雷対策活動に対する支援の拡大に努めて参ります。 (結び) 議長、 「人間の安全保障」の考え方は、21世紀の国際社会を考える際に一つの視点を提供するものであると考えます。こうした視点から、国際社会が引き続きその英知とエネルギーを結集し、「犠牲者ゼロ」の目標に向けてこの問題に取り組んでいくべきであります。 我が国としても、この国際社会共通の難題の克服のために積極的に貢献していきたいと考えております。 御静聴ありがとうございました。 |
目次 |
| ||||||||||
![]() |