対人地雷に関するオタワ会議
(概要と成果)
平成9年12月
1.概要
- (1)12月3日及び4日、オタワにおいて「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(以下「対人地雷全面禁止条約」)の署名式が行われ、4日17時の閉会式の時点で、我が国を含む計121の国が署名を行った。また、署名式と併行して12月2日から4日まで条約の普遍化、地雷除去及び被害者支援等の論点について検討する計20の円卓会議が開催された。
- (2)開会式においては、アナン国連事務総長、クレティエン加首相、ソマルガ赤十字国際委員会委員長、ジョディ・ウィリアムズ国際地雷廃絶キャンペーン(ICBL)・コーディネーター(97年ノーベル平和賞受賞者)が冒頭演説を行い、最初に、加、ノールウェー、南アが署名を行った。この他、米、中、露等、今回対人地雷全面禁止条約に署名しない旨明らかにしていた国もオブザーバー参加し、演説、円卓会議の場等において自国の立場を表明した。
- (3)我が国からは、小渕外務大臣が出席し、対人地雷全面禁止条約に署名するとともに、我が国の対人地雷問題への積極的取組みを紹介し、各国への協力を呼びかける演説を行った。また、小渕大臣は、この機会に、アックスワージー加外相や、オーストラリア、南アフリカ、カンボディアの外務大臣と会談したほか、内外のNGO等との懇談を行った。
2.成果
- (1)対人地雷問題の解決には、使用の禁止等の規制面と、地雷の除去及び被害者に対する人道支援の両面において対応の必要がある。特に、今回の署名式を含むオタワ会議では、条約署名後の国際社会の取り組みに関心が移りつつある中、対人地雷問題に包括的に取り組む我が国の姿勢をアピールできた。
- (2)対人地雷の規制
我が国は対人地雷の規制面において、これまでジュネーヴ軍縮会議、及び昨年10月のオタワ宣言により開始されたいわゆる「オタワ・プロセス」の双方の場に参加し、対人地雷を禁止するための条約の早期作成に努力してきている他、本年6月には特定通常兵器使用禁止制限条約の地雷等に関する議定書を率先して締結するなど、積極的に取り組んできた。
「オタワ・プロセス」によって作成された対人地雷全面禁止条約への我が国の署名は、人道的な配慮とともに安全保障の確保の観点も考慮しつつ検討した結果、大局的見地から決定したものである。今般、この条約に原署名国として小渕外務大臣自らが署名したことは、対人地雷廃絶に積極的に取り組む我が国の姿勢を内外に示しえた点で大きな意義を有するものである。
- (3)地雷除去及び犠牲者支援
今回の署名の機会をとらえて本年3月の東京会議の成果を踏まえた対人地雷除去及び被害者支援への積極的取り組み、特に今後5年間を目途とする100億円規模の支援を公表したことは、署名と相まって我が国の対人地雷問題に対する前向きな姿勢をアピールする上で有意義であった。また、アックスワージー加外相主催で行われた円卓会議では、各国から東京会議について言及される等、我が国が地雷除去及び犠牲者支援の分野でイニシアチブをとっていることについて共通の認識が得られていることが確認された。
- (4)今後の取組み
今後は、今回の署名を契機に高まった我が国に対する評価と期待に応えるべく、この条約の詳細の検討と併せて我が国の安全保障の確保や国内法制の整備等につき検討した上でできるだけ早期にこの条約を締結すべく準備を進め、(イ)普遍的かつ実効的な対人地雷禁止の実現のための努力、具体的にはこの条約に可能な限り多くの国が署名するよう幅広く呼びかけるとともにジュネーヴ軍縮会議での早期交渉開始のための努力を継続し、さらに(ロ)地雷除去及び被害者支援のための具体策を検討して積極的に推進すること等を通じて、小渕大臣が表明した「犠牲者ゼロ・プログラム」に包括的に取り組んでいくことが重要と考えられる。
(参考)
1.対人地雷全面禁止条約の経緯
対人地雷全面禁止条約は、昨年10月、カナダ政府がオタワにおいて開催した対人地雷に関する国際会議を契機として開始されたいわゆるオタワ・プロセスを通じて作成された。本年2月のウイーン会議、6月のブラッセル会議等一連の国際的な会合を経て、本年9月ノルウェーのオスロで89ヶ国の正式参加を得て開催された外交会議において条約案が採択された(アックスワージー加外相は、98年中の発効を目指すと言明している。)。
2.対人地雷全面禁止条約の署名に際しての小渕外務大臣演説(概要)
- (1)21世紀に私たちの子孫が地雷の脅威に晒されない世界に住めるよう、普遍的かつ実効的な条約の作成と地雷除去活動・犠牲者支援を車の両輪とする、包括的アプローチによる取り組みの必要性を訴えた。
- (2)オタワ条約へのできるだけ多くの国の署名への期待を表明すると同時に、ジュネーヴ軍縮会議における対人地雷禁止に係る条約交渉を早期に開始すべき旨訴えた。
- (3)対人地雷同様の取り組みが求められる小火器問題に引き続き積極的に取り組んでいく旨述べた。
- (4)今後5年間を目途とした100億円規模の支援により、地雷除去関連機材・技術の供与、被害者支援、カンボディアの地雷被埋設国間会議への積極的支援等を実施することを表明した。また、対人地雷除去活動の支援のために行う貨物等の輸出についてはこれを武器輸出3原則によらないこととした。
- (5)以上のような我が国の対人地雷問題への取り組みを「犠牲者ゼロ・プログラム」とし、各国に協力を呼びかけた。
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