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経済

大阪行動指針
ボゴール宣言の実施
(仮訳)

1995年11月19日

 われわれAPEC閣僚は、ボゴール宣言を実施することに献身し、経済首脳に対し以下のとおり提案することに合意する。


第一部 自由化及び円滑化 (注1)


A節:一般原則

 以下の一般原則は、先進工業メンバーについては遅くとも2010年までに、開発途上メンバーについては2020年までに、自由で開かれた貿易及び投資という長期的目標を達成するための行動指針に基づくAPECの自由化及び円滑化の過程全体に適用される。

  1. 包括性
     APECの自由化及び円滑化の過程は、包括的であり、自由で開かれた貿易及び投資という長期的目標を達成するに当たってのすべての障壁を対象とする。

  2. WTO整合性
     APECの行動指針に関連してとられる自由化及び円滑化の措置は、WTO整合的である。

  3. 同等性
     APECメンバーは、それぞれのメンバーがすでに達成した自由化及び円滑化の全般的な水準を勘案し、貿易及び投資の自由化及び円滑化の全体としての同等性を確保するよう努める。

  4. 無差別
     APECメンバーは、貿易及び投資の自由化及び円滑化の過程において、無差別の原則を二国間及び多国間のメンバー間で適用し又は適用するよう努める。
     アジア太平洋地域における貿易及び投資の自由化の成果は、APECメンバー間の障壁のみならず、APECメンバーと非APECメンバーとの間の障壁をも実際に削減することである。

  5. 透明性
     各APECメンバーは、アジア太平洋地域における開かれた、かつ、予見可能な貿易及び投資環境を創出し維持するため、APECメンバー間の物品、サービス及び資本の流れに影響を与えるそれぞれの法律、規則及び行政手続の透明性を確保する。

  6. スタンドスティル
     各APECメンバーは、保護の水準を高める効果を持ち得る措置をとることを控えるよう努力することにより、着実かつ漸進的な貿易及び投資の自由化及び円滑化の過程を確保する。

  7. 同時開始、継続的過程及び異なるタイムテーブル
     APECメンバーは、自由化、円滑化及び協力の過程を同時にかつ遅滞なく開始し、自由で開かれた貿易及び投資という長期的目標を達成するため、各メンバーが継続的かつ実質的に貢献する。

  8. 柔軟性
     APECメンバー間の異なる経済発展段階及びそれぞれのAPECメンバーにおける多様な状況を考慮し、かかる状況より生ずる諸問題を取り扱うに当たり、自由化及び円滑化の過程において柔軟性が認められる。

  9. 協力
     自由化及び円滑化に貢献する経済・技術協力は、積極的に追求される。


B節:自由化及び円滑化のための枠組み

 ボゴール宣言に謳われている目標の達成に向けたAPECの自由化及び円滑化の過程は、
  1. 個別のAPECメンバーによる行動、
  2. APECのフォーラムによる行動、
  3. 多角的なフォーラムに関連するAPECの行動
 より成り、用意ができているAPECメンバーが協力のための措置を開始し、実施していくとともに、未だ用意のできていないメンバーが後日これに参加することを認める。この過程は、一般原則に従って取り進められ、C節に列挙されている分野を対象とする。

行動の過程
準備
 各APECメンバーは、大阪経済首脳会議の後、直ちに行動計画の策定を開始する。この行動計画は、C節に示された目的の達成に向けた措置を具体的に示すものであり、分野毎のガイドラインに沿ってとられる協調的自主的行動及び共同行動の双方を含む。行動計画には、短・中期的措置については個別的かつ具体的な詳細が時間的枠組みとともに記載され、先進工業メンバーについては2010年、開発途上メンバーについては2020年に向けての基本的方向性を示す。

協議
 APECメンバーは、大阪経済首脳会議の後、直ちに行動計画の策定についての非公式協議を開始する。この協議の過程は、行動計画の準備の進捗状況に関する情報交換を促進するための、信頼醸成的性質を持つ継続的な共同努力であり、透明性を確保し、各行動計画の同等性の達成に向けて貢献するものである。この過程は、意義のある実質的な行動計画を結果として策定することに資する。

提出
 各APECメンバーは、1996年のフィリピンでの閣僚会議に行動計画を評価のために提出する。

実施
 行動計画の全体としての実施は、1997年1月より開始される。

レビュー
 行動指針の原則、目的及びガイドラインに従った行動計画の実施の進捗状況を評価するため、レビューが行われる。関連する各APECフォーラムは、それぞれの分野についてレビューを実施し、それについての報告書を高級事務レベル会合(SOM)に提出する。高級事務レベル会合は、APECメンバーの行動の全体的な進捗状況をレビューし、毎年開催される閣僚会議にレビューのため報告を提出する。これらのレビューの結果は、行動計画の更なる策定に貢献するため、継続的な協議の過程にフィードバックされ、APECのフォーラムの活動に反映される。

改訂
 行動計画は継続的に更新される性質のものであるので、これらの改訂は、協議の過程及びレビューにより確立される漸進的かつ動的な仕組みを通じて行われ、その結果は、行動計画の継続的で自主的な改善に反映される。また、行動計画は、ガイドライン及び共同行動の拡大及び改善に従って、適切な場合には改訂される。

並行的な活動
 APECのフォーラムは、APECの自由化及び円滑化の過程の進展に従って、各分野におけるガイドライン及び共同行動の拡大及び改善を提案する。その際、他の国際的なフォーラム、特に世界貿易機関(WTO)における進展が考慮され、適切な場合には、活用される。C節に当初より規定されている分野に追加的な分野を含めることを検討することができる。以上についての提案は、閣僚会議に提出される。
 貿易投資委員会(CTI)、経済委員会(EC)、作業部会を含むAPECのフォーラムは、APECの活動の効率性を高めるため相互に協力しつつ、大阪経済首脳会議の後、直ちにC節に概要が記述されている作業を開始する。追加的な下部部会の設置を必要に応じ検討することができる。上記の過程において、APECのフォーラム間の作業の重複は避けられるべきである。
 APECの各フォーラムは、進捗状況に関する年次報告を高級事務レベル会合に提出する。高級事務レベル会合は、この進捗状況をレビューし、年次閣僚会議にレビューのために報告を提出する。他の関連するAPECの大臣会合による作業は、然るべく認識されるべきである。

多角的行動
 APECメンバーは、多角的な交渉に積極的かつ前向きに参加すること、及びシンガポールにおける第1回WTO閣僚会議に向けたイニシアティブを含め、WTOの下で共同のイニシアティブをとる可能性を探求することによって、率先して開かれた多角的貿易体制を強化し、世界的な自由化への勢いを高めていく。APECメンバーは、かかる多角的活動の成果を十分に考慮する。

全体のレビュー
 行動指針は、他の国際的なフォーラム、特にWTOにおける進展を考慮しつつ、APECにおける自由化、円滑化及び協力の全体的な進捗に基づき、必要に応じ改訂及び改善され得るものである。


C節:個別分野の行動

 APECメンバーは、一般原則に従って、個別分野において設定された目的を達成するため、個別分野において以下の行動をとる。自由化及び円滑化の過程において、前進のためのパートナー(PFP)を含む様々な手段を通じて、経済・技術協力が積極的に追求される。

1.関税(注2)

目的

 APECメンバーは、以下により、アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易を達成する。
  1. 漸進的に関税を引き下げること。
  2. APECメンバーの各々の関税制度の透明性を確保すること。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 関税の漸進的引下げの過程において、APEC域内の貿易動向、経済的関心、並びにこの過程がアジア太平洋地域の貿易及び経済成長に好影響を与え得る産業に関連する部門又は産品を考慮に入れる。
  2. 関税の漸進的引下げが、不当な措置の適用により損なわれないことを確保する。
  3. サブ・リージョナルな取決めの結果生じる関税の引下げ及び撤廃による利益を、すべてのAPECメンバーに対し自主的に供与することを検討する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. コンピュータ化された関税データベース(APEC関税データベース)を開発し、最新のデータを保持する。その際、この分野におけるWTOでの作業との重複を避け、むしろ右作業を支援する形で、データベース・ネットワークの構築に向けて作業を行う。
  2. 関税の漸進的な引下げがアジア太平洋地域における貿易及び経済成長に好影響を与え得る産業、又は早期の自由化に関し域内産業による支持が存在する産業を特定する。

2.非関税措置 (注3)

目的

 APECメンバーは、以下により、アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易を達成する。

  1. 漸進的に非関税措置を削減すること。
  2. APECメンバーの各々の非関税措置の透明性を確保すること。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 非関税措置の漸進的削減の過程において、APEC域内の貿易動向、経済的関心、並びにこの過程がアジア太平洋地域の貿易及び経済成長に好影響を与え得る産業に関連する部門又は産品を考慮する。
  2. 非関税措置の漸進的削減が、不当な措置の適用により損なわれないことを確保する。
  3. サブ・リージョナルな取決めの結果生じる非関税措置の削減及び撤廃による利益を、すべてのAPECメンバーに対し自主的に供与することを検討する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 非関税措置に関する情報を、将来のAPEC関税データベースに盛り込むことを追求し、非関税障壁として認識されている措置のリスト及びこれらの障壁の影響を受ける産品のリストを作成する。
  2. 非関税措置の漸進的削減がアジア太平洋地域における貿易及び経済成長に好影響を与え得る産業、又は早期の自由化に関し、域内産業による支持が存在する産業を特定する。
  3. 輸出補助金を、廃止するとの観点から漸進的に削減する。
  4. 不当な輸出の禁止及び制限を廃止し、いかなるそのような新規の措置もとらないよう努める。

3.サービス

目的

 APECメンバーは、以下により、アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易及び投資を達成する。

  1. サービスの貿易の市場アクセスに対する制限を漸進的に削減すること。
  2. サービスの貿易について、漸進的に、とりわけ最恵国待遇(MFN)及び内国民待遇を供与すること。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. サービスの貿易に関するWTOの交渉に積極的に貢献する。
  2. サービスの貿易に関する一般協定(GATS)の下における市場アクセス及び内国民待遇に関する約束を拡大し、適切な場合には最恵国待遇の免除を撤廃する。
  3. サービスの提供を円滑化するための更なる行動をとることを検討する。

共同行動/対話

 APECメンバーは、電気通信、運輸、エネルギー及び観光部門におけるサービスに関し以下の共同行動(注4)をとるとともに、その他の部門における共同行動を引き続き模索する。

電気通信

 APECメンバーは、

  1. 適切な場合には、1998年までに国際VANサービス(IVANS)の貿易に関するガイドラインに従う。
  2. 適切な場合には、短期的に機器認証の調和に関するガイドラインに一般的に従う。
  3. 利用者電気通信端末機器の認証に関する行政手続を調和させるための共同作業を継続する。
  4. 1997年末までに、適合性評価に関するモデル相互承認取決めを策定し、選択的に実施を開始する。

運輸

 APECメンバーは、

  1. 国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)の基準、規則及び安全措置の実施を促進する。
  2. 道路輸送調和(TRTH)プロジェクトを完成し、自動車についての相互承認取決めの策定を奨励する。
  3. 国連欧州経済委員会(UN/ECE)との対話への関与を奨励し、適切な国際的フォーラムの下で自動車に係る規制の調和に向けて尽力する。
  4. 運輸インフラストラクチャーに係るプロジェクトの民営化又は企業化を促進するための適切な措置をとる可能性を検討する。
  5. 電子データ交換を運輸産業で利用する際の障壁を特定する運輸電子データ交換に関する研究の第2段階を1995年に完了した後、電子データ交換に関するパイロット試験プログラムを開始し、域内の運輸部門における可能な限り広範な電子データ交換採用に当たっての将来の方向性を決定する。
  6. 国際輸送及び貿易に関連する重要情報のための(規制面及び制度面の双方に係る)書類提出要件を、今後10年以内の実行可能な限り早期に撤廃するよう努める。

エネルギー

 APECメンバーは、

  1. 以下により、エネルギー部門への投資を円滑化する。
    (i) 1996年末までに、電力インフラストラクチャーに対する投資に影響を与える制度面、規制面及び手続面の障壁を特定すること。
    (ii) 投資を円滑化するための指針となる枠組みを1996年末までに策定すること。
    (iii) 上記の活動の成果に基づき、1999年末までに、より複雑な問題に対する調整された解決策を策定し、適切な場合には、これらの活動をエネルギー供給連鎖の他の側面に拡大すること。
    (iv) 長期的に、国境に跨るインフラストラクチャーの促進及びそのための資金調達に関連する問題につき検討すること。
  2. 以下により、認定の同等性を受け入れ、エネルギー基準の調和を増進する。
    (i) 1996年末までに、試験の実施方法、及び試験機関の認定に係る相互承認、並びにそれから生ずる試験結果の受入れの基礎を確立すること。
    (ii) 1999年末までに、試験の実施方法、及び試験機関の認定に係る相互承認、並びにそれから生ずる試験結果の受入れに関する合意に到達すること。
    (iii) 長期的に、エネルギー基準についての作業を特定の産品に拡大する。その際、家庭用電化製品から開始し、選ばれた産業用及び商業用機器の品目に拡大すること。

観光

 APECメンバーは、観光の成長に対する障壁を特定するとともに、アジア太平洋地域における観光に係る移動及び投資を改善するための戦略を策定する。

4.投資

目的

 APECメンバーは、以下により、アジア太平洋地域における自由で開かれた投資を達成する。

  1. とりわけ、最恵国待遇及び内国民待遇の漸進的な供与並びに透明性の確保により、それぞれの投資制度及びAPEC全体の投資環境を自由化すること。
  2. とりわけ、技術支援及び協力を通じ、投資活動を円滑化すること。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 上記の目的を達成するため、当初の枠組みとしてWTO協定、APECの非拘束的な投資原則、各APECメンバーが関係する他のいかなる国際協定及びAPECにおいて策定され共通に合意されたいかなるガイドラインをも利用し、例外及び制限を漸進的に削減又は撤廃する。
  2. APECの二国間投資協定のネットワークの拡大を探求する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 以下により、短期的に、APECの投資制度の透明性を向上させる。
    (i) 制度の変更を反映させるため、適切な場合には、「APEC投資制度ガイドブック」を更新すること。
    (ii) 投資規制や投資機会に関するソフトウェアのネットワークを構築すること。
    (iii) 統計報告及びデータ収集の状況を改善すること。
  2. 短期的に、APECの投資環境を改善する方法に関するAPECのビジネス・コミュニティとの対話の継続的なメカニズムを促進する。
  3. 短期的に、アジア太平洋地域における技術協力の継続的な需要を特定し、APECの投資に関する目的の達成につきAPECメンバーを支援する訓練プログラムを編成する。
  4. 短期的に、経済協力開発機構(OECD)、及び他の世界的及び地域的な投資問題に関与する国際的なフォーラムとの対話の過程を構築する。
  5. 短期的に、ウルグァイ・ラウンド実施セミナーを引き継ぐ訓練の内容を確定し、実施する。
  6. アジア太平洋地域における経済発展に対する投資自由化の役割の評価を行う。
  7. 中期的に、投資に関連した既存のサブ・リージョナルな取決めの間にありうる共通の要素につき研究する。
  8. 中期的に、「自由で開かれた投資」についてのAPECの理解を精緻化する。
  9. 長期的に、APEC全体に及ぶ投資に関する規律を策定することの利点を、中期的なAPEC自体における進展及び他の国際的なフォーラムにおける動向に照らし評価する。


5.基準 (注5) 及び適合性

目的

 APECメンバーは、APECの基準及び適合性の枠組みに関する宣言、WTO協定に含まれる貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)及び衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に従い、以下のことを行う。
  1. APECメンバーの基準及び適合性評価の透明性の確保。
  2. APECメンバーの強制規格及び任意規格の国際規格への整合化。
  3. APECメンバー間の、強制分野及び任意分野における適合性評価に関する相互承認を達成すること。
  4. 強制分野及び任意分野の双方における相互承認取決めへの広範な参加を促進するため、技術インフラストラクチャーの整備・拡充に関する協力を推進すること。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 1997年末までに、優先4分野(電気及び電子製品、食品表示、プラスチック製品並びにゴム製品)に係る事例研究の結果及び1996年に追加が検討される優先分野での進展を考慮し、その行動計画の国際規格への整合化に関する部分を策定する。
  2. 国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、食品規格委員会(Codex)等の国際標準化機関が行う国際標準化活動に、これらの機関の規則及び手続に従い、積極的に参加する。
  3. 以下のことを通じ、強制分野における相互承認取決めを追求する。
    (i) 後の段階で複数国間取決めの基礎を提供し得る多数の部門に関する二国間相互承認取決めを策定すること。
    (ii) 特定の部門に関する複数国間相互承認取決めを策定すること。その際1997年に食品についてのパイロット・プロジェクトを完了し、1996年に玩具の安全性についての情報交換に関する取決めを策定するよう努める。
  4. 2005年までに、メートル条約及び国際法定計量機関(OIML)条約に、これらの条約の規則及び手続に従い、参加することを検討する。

共同行動

 APECメンバーは、基準及び適合性に関し、以下の4分野において共同行動をとる。

国際規格への整合化

 APECメンバーは、

  1. 1996年に、国際規格への整合化のための更なる優先分野を検討する。
  2. 国際規格への整合化の進捗状況に関する包括的なレビューを2000年及び2005年に行う。

適合性評価の相互承認

 APECメンバーは、アジア太平洋試験所認定協力(APLAC)、アジア太平洋法定計量フォーラム(APLMF)、アジア太平洋計量プログラム(APMP)、太平洋認定協力(PAC)、太平洋地域標準会議(PASC)等の関連の地域専門機関と協力し、以下のことを行う。

  1. 強制分野において相互承認取決めを策定するための追加的な優先分野を1996年に特定すること。
  2. 先進工業メンバーについては2000年までに、開発途上メンバーについては2005年までに、任意分野における相互承認取決めのネットワークの構築及び同ネットワークへの参加を奨励すること。
  3. ほとんどの強制分野において、分野毎の相互承認取決めのネットワークの構築に尽力すること。その際には、試験結果の相互受入れから開始し、続いて他の可能な適合性評価の形態の相互承認を確立していくこと。
  4. 相互承認取決めの信頼性を維持するため、監視及びレビュー・メカニズムの適切性につき研究すること。

技術インフラストラクチャーの整備・拡充に関する協力

 APECメンバーは、

  1. 2000年までに技術インフラストラクチャーを改善するための中期計画を1996年に策定し、技術向上のための定期的なレビュー及びフォローアップを行う。
  2. 2000年以降に、上記の計画の実施に関する包括的なレビューを行う。

透明性

 APECメンバーは、

  1. 1996年に、各APECメンバーにおける基準及び適合性に関する情報の入手可能性及びそれへのアクセス、並びにかかる情報の交換のためのシステムに関する調査を実施する。
  2. 以下の情報を掲載・伝達するためのデータベース及びネットワーク・システムを、先進工業メンバーについては2005年まで、開発途上メンバーについては2010年までに構築する。
    (i) APECメンバーの基準及び適合性システム
    (ii) 認定試験実施機関、認定調査機関、品質システム認証機関、品質システム登録機関及び認定機関
    (iii) 相互承認取決めの状況
    (iv) APECメンバーの規格の国際規格への整合化の状況

6.税関手続

目的

 APECメンバーは、税関手続を簡素化し及び調和させることにより、アジア太平洋地域における貿易を円滑化する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、上記の目的の達成に向けた行動をとる。その際、

  1. 税関手続小委員会の行動プログラムの戦略的方向性に沿う。
  2. 上記の行動プログラムの指導原則(FACTS:円滑化、責任、一貫性、透明性、簡素化)を十分に考慮する。

共同行動

 APECメンバーは、税関手続に関し、以下の分野において共同行動をとる。

関税分類の調和

 APECメンバーは、1996年までに、商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)の原則を採用し又は遵守することにより、関税分類を調和させる。

情報の一般的入手可能性

 APECメンバーは、1998年までに、税関に関する法令及び規則に加え、行政上のガイドライン、手続及び決定に関する情報を一般に入手可能とする。

京都規約に基づく簡素化及び調和

 APECメンバーは、1998年を目途として、税関手続の簡素化及び調和に関する国際規約(京都規約)の原則を採用し又は遵守することにより、税関手続を簡素化し及び調和させる。併せて、関税協力理事会(WCO)で行われている京都規約の見直し作業に、同理事会の規則及び手続に従ってAPECメンバーが積極的に参加するよう奨励する。

UN/EDIFACTを通じたコンピュータ化

 APECメンバーは、1999年までに、行政、商業及び運輸のための電子データ交換(UN/EDIFACT)を採用しかつ支持することにより、税関手続のコンピュータ化を推進する。

WTO協定との整合化

 APECメンバーは、

  1. 1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定(WTO関税評価協定)の原則を2000年までに採用し又は遵守することにより関税評価制度を調和させるとともに、可能な場合には技術支援を通じ更なる前倒しを奨励する。
  2. 国境取締りに関し、知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定(TRIPS協定)の原則を2000年までに採用し又は遵守することにより知的所有権を保護するとともに、可能な場合には、技術支援を通じ更なる前倒しを奨励する。

不服申立規定

 各APECメンバーは、2000年までに明確な不服申立規定を導入する。

事前教示制度

 APECメンバーは、2000年までに関税分類に関する事前教示制度を導入する。

一時輸入

 APECメンバーは、適切な場合には、物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)に加入する等の行動をとることにより、2000年までに貨物の一時輸入のための便宜を供与する。

リスクマネジメント手法及び電子商取引システム

 APECメンバーは、貨物の通関を円滑化するため、リスクマネジメント手法の導入及び近代的電子商取引システムの適用の可能性を探求する。

共通のデータ要素

 APECメンバーは、国際貿易を円滑化するため、貨物の通関処理のための共通のデータ要素をAPECメンバー間で調和させることの実現可能性を探求する。

共通の実地調査

 APECメンバーは、共通の尺度の必要性を認識しつつ、貨物の通関の所要時間に関する共通の実地調査の実施に向けて作業する。

実施、技術協力及び人材養成

 APECメンバーは、上記の共同行動を支援するため、WTO関税評価協定及びTRIPS協定等の税関手続に関連する協定の実施に特に重点を置きつつ、実施計画並びに技術支援及び人材養成を調整するための枠組みを策定する。

ビジネス/民間部門との対話の促進

 APECメンバーは、税関に関連する貿易慣行の改善を支援するため、各メンバー内のビジネス/民間部門(輸入業者、輸出業者、通関業者、運送業者等)との対話を促進する。



7.知的所有権

目的

 APECメンバーは、TRIPS協定及び他の関連する協定に定められている最恵国待遇、内国民待遇及び透明性の原則に基づき、アジア太平洋地域における知的所有権に係る、立法、行政及び行使を含む適切かつ効果的な保護を確保する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、
  1. 知的所有権の迅速な付与を確保する。
  2. 知的所有権の侵害に対し、適切かつ効果的な民事上及び行政上の手続及び救済措置が利用可能であることを確保する。
  3. TRIPS協定の実施及びその前倒しのための特許調査及び審査、コンピュータ化並びに人材養成等の分野との関連において二国間技術協力を供与し拡大する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 知的所有権に関する政策についてのAPECメンバー間の対話を深化させる。
  2. 各APECメンバーにおける関連する法令及び対応する法制、行政上のガイドライン及び関連機関の活動を含む知的所有権保護の現状を調査する。
  3. 公共部門及びビジネス/民間部門における知的所有権の専門家のコンタクト・ポイントのリスト、及び法執行官のリストを作成する。後者のリストは模造品の越境流通を防止するためのネットワークの構築を目的とする。
  4. APEC全体に及ぶ商標制度を創設する可能性の検討の第一歩として、周知商標に関する情報交換を行う。
  5. 地域全体における知的所有権に係る行政制度の現状に関し、その簡素化及び標準化の観点から情報交換を行う。
  6. 知的所有権に係る効果的な行使のため、原則の策定を含む措置を研究する。
  7. 遅くとも2000年1月1日までにTRIPS協定を完全に実施し、そのための技術協力を促進する方法を検討する。


8.競争政策

目的

 APECメンバーは、効果的かつ適切な競争政策及び/又は競争法並びに関連した執行政策の導入又は維持、これらの透明性の確保及びAPECメンバー間の協力の促進により、アジア太平洋地域における競争的環境を向上させる。これにより、とりわけ、市場の効率的な機能、生産者及び貿易業者の中での競争並びに消費者利益が最大化される。

ガイドライン

 各APECメンバーは、
  1. それぞれの競争政策及び/又は競争法並びにこれらの執行につき、透明性の観点からレビューを行う。
  2. 適切な場合には、政策の策定、法令の立案並びに適切な執行機関の構成、権限及び機能に関し技術支援を行う。
  3. APECメンバー間の適切な協力取決めを確立する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 1996年から、以下につき、情報を収集し、対話を促進し研究する。
    (i) 各メンバーの競争政策及び/又は競争法並びに行政手続の目的、必要性、役割及び運用。これにより、競争政策に関するデータベースを構築する。
    (ii) アジア太平洋地域における貿易及び投資の流れに影響を与える競争政策問題。
    (iii) 競争政策担当者に関する交換及び訓練プログラムを含む技術支援を行う分野及びその方法。資源の利用可能性を考慮しつつ行う。
    (iv) 競争政策及び/又は競争法と、貿易及び投資に関連する他の政策との間の相互関係。
  2. APECメンバーと関連する国際機関との間の競争政策対話を深化させる。
  3. APECのビジネス・コミュニティにおいて競争政策及び/又は競争法並びに行政手続についての理解を引き続き発展させる。
  4. 情報交換、通報及び協議に関するAPECメンバーの競争当局間の協力を奨励する。
  5. 自由で開かれた貿易、投資及び競争を促進する貿易及び競争に関する法令、政策及び措置の利用に貢献する。
  6. APECにおいて競争政策及び/又は競争法に関する非拘束的な基本原則の策定を検討する。


9.政府調達

目的

 APECメンバーは、
  1. 政府調達政策及び制度並びに各APECメンバーの政府調達慣行についての共通理解を発展させる。
  2. ボゴール宣言の原則と目的に従って、アジア太平洋地域全体において政府調達市場の自由化を達成するとともに、その過程において他の多角的フォーラムにおける政府調達に関する作業の進展に貢献する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 政府調達制度及び政府調達情報の透明性を向上させる。
  2. 可能な場合には、政府調達情報データベースを構築し、共通のエントリー・ポイントを通じて情報を提供する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. APECメンバーの既存の政府調達制度、及び政府調達情報の出版に関する情報交換を行うため、1996年にアンケート調査を行う。
  2. 継続中の上記情報交換を促進するため、1996年にコンタクト・ポイントを設置する。
  3. 政府調達に係る手続、法律、規則並びに地域協定及び複数国間協定に関するワークショップ、セミナー、訓練コースの開催を1996年より開始する。これらの地域協定及び複数国間協定には、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)モデル法、北米自由貿易協定(NAFTA)、豪州・ニュージーランド経済関係緊密化協定(ANZCERTA)及びWTO協定の附属書四の政府調達に関する協定が含まれる。
  4. 調達機会に関する情報、及びメンバーの自主的参加のための共通のエントリー・ポイント(インターネットにおけるワールド・ワイド・ウェッブ(WWW)ホームページ等)の提供を含む、APEC政府調達情報データベースを1996年に構築することを奨励する。
  5. 2000年までに政府調達に関する一連の非拘束的な原則を策定する。

10.規制緩和

目的

 APECメンバーは、

  1. それぞれの規制制度の透明性を高める。
  2. アジア太平洋地域における、自由で開かれた貿易及び投資を阻害するのみならず、正当な目的の達成のために必要である以上に貿易及び/又は投資に対して制限的である国内規制から生じる貿易及び投資の歪みを撤廃する。

共同行動

 APECメンバーは、APECの活動の他の分野において行われた作業を考慮し、

  1. APECメンバーの国内の規制制度の緩和のための措置の詳細を盛り込んだ年次報告を出版する。
  2. 上記報告を勘案し、以下のことを含む更なる行動を策定する。
    (i) 規制緩和措置の策定及び実施を支援するための個々の事例研究の利用を含む、規制緩和に当たっての最善の慣行に関するAPECメンバーの経験についての政策対話、及び、以下を含めた作業計画の更なる選択肢の検討。
    規制緩和のための共通の優先分野及び部門の特定
    規制緩和措置の策定及び実施に際しての技術支援の供与
    国内規制緩和に関するAPECのガイドライン策定の可能性の検討
    (ii) シンポジウムの可能性を含むビジネス・コミュニティとの定期的な対話


11.原産地規則

目的

 APECメンバーは、
  1. 関連する国際フォーラムにおいて採択される国際的に調和された原産地規則の完全な遵守を確保する。
  2. それぞれの原産地規則が、公平、透明及び中立的な方法で作成及び適用されることを確保する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. それぞれの原産地規則を、WTO及びWCOにおける作業過程の結果採用される国際的に調和された原産地規則に整合化させる。
  2. 原産地規則の、予見可能で一貫した適用を確保する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. WTOにおけるこの分野の作業との重複を避けつつ、APECメンバーの各々の非特恵及び特恵原産地規則並びにその運用に関する情報を収集し、意見交換を行い、ビジネス/民間部門による利用のために原産地規則の概説書を作成する。
  2. 短期的に、非特恵原産地規則の調和に関するWTO及びWCOの作業を促進し、補完し、かつ加速化する。
  3. 原産地規則に関する慣行の積極的及び消極的な側面及び効果をより長期的に特定するとの観点から、然るべき時期に、貿易及び投資の自由な流れに対し原産地規則が持つ影響について研究する。

12.紛争仲介

目的

 APECメンバーは、

  1. WTO協定及び他の国際協定に基づく権利及び義務に影響を及ぼすことなく、また、WTOの紛争解決手続との重複を避けるとともに、当該手続を損なうことなく、対立及び紛争拡大の回避に資する方法により相互の違いを解決するとの観点から、メンバーが早期に、かつ協調的に紛争に対処するよう奨励する。
  2. アジア太平洋地域における民間の主体と政府との間、及び民間当事者間の紛争を時宜を得た形で効果的に解決するための手続の利用を促進しかつ奨励する。
  3. 安定的でかつ予測可能なビジネス環境を促進するため、貿易及び投資に係る紛争を減少させ、回避するとの観点から、政府の法律、規則及び行政手続の透明性の向上を確保する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、

  1. 仲裁協定の相互的かつ効果的な執行並びに仲裁判断の認定及び執行を図る。
  2. 貿易及び投資に関連するすべての法律、規則、行政ガイドライン及び政策を、迅速、透明かつ容易にアクセス可能な方法で一般に利用可能とするため、適切な措置を講じる。
  3. 貿易及び投資に関連する行政措置のレビュー、及び正当とされる場合にはこれらの措置の訂正を迅速に行うための、適切かつ独立したレビュー又は異議申立手続を策定し及び/又は維持することにより、国内における透明性を向上させる。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. APECメンバー間の紛争の解決に関し、
    (i) 紛争につながり得るあらゆる事項についての意見交換を含む対話及び理解の増進を促進するとともに、CTIの「貿易政策対話」等の政策対話を活用し、実際に起きた紛争について、協力的かつ自主的に検討する。
    (ii) 上記の貿易政策対話又は他のフォーラムの同様の機能が、情報交換、対話の強化及び仲介のためにAPECメンバーによっていかに活用され得るかにつき、更に検討する。
    (iii) APECの自由化及び円滑化の過程の進展に応じ、紛争解決手続の将来の発展の可能性について検討する。
  2. 民間当事者間又は民間当事者とAPECメンバーとの間の紛争解決に関し、
    (i) アジア太平洋地域における民間当事者対政府の紛争の解決に有用なモデルを提供し得るようなあらゆるサービスの概要を含め、他のAPECメンバーの民間の主体が利用可能な仲裁、仲介、調停サービスのリストをCTIに提供するとともに、これらの情報がアジア太平洋地域のビジネス/民間部門にとって広く入手可能となるようにする。
    (ii) CTIに対し、上記サービスについての経験に関するコメントを提供する。
    (iii) 適切な場合には、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約等の、政府と民間の主体との間の紛争の解決のための国際協定に、1997年までに加入する。
    (iv) 適当な場合には、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)に、1997年までに加入する。
  3. 透明性に関し、
     例えば各APECメンバーにおいて利用可能な仲裁、仲介及び調停サービスに関するガイドブックの出版を通じ、APEC全体に及ぶ透明性を促進する。
  4. 上記の共同行動に関し、1996年末までに、進捗に関する報告を勧告とともに作成する。

13.ビジネス関係者の移動

目的

 APECメンバーは、アジア太平洋地域における貿易及び投資に従事するビジネス関係者の移動を促進する。

ガイドライン

 各APECメンバーは、関連するWTOのフォーラムで行われているビジネス関係者の移動に関する作業に積極的に貢献する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 域内におけるビジネス関係者の移動に関する規制制度について、情報交換を行う。
  2. 以下のことを合理化及び加速化することを目的として、地域レベルでの協力の範囲を定める可能性を検討する。
    (i) 短期商用旅行のための査証の発給
    (ii) ビジネス関係者が貿易及び投資に従事するために一時滞在するための措置
  3. 移動の問題について、ビジネス・コミュニティとの対話を構築し維持する。


14.ウルグァイ・ラウンドの成果の実施

目的

 APECメンバーは、WTO協定の文言及び精神に完全に整合的な方法で、合意された時間的枠組みの中でウルグァイ・ラウンドの成果の完全かつ効果的な実施を確保する。

ガイドライン

  1. WTOに加盟している各APECメンバーは、それぞれのウルグァイ・ラウンドでの約束を完全かつ誠実に実施する。
  2. WTO協定への加入の過程にある各APECメンバーは、WTO協定に整合的にそれぞれの貿易及び投資制度を自由化する自主的な措置を通じ、APECにおけるウルグァイ・ラウンド合意の実施のための行動に参加することができる。
  3. 各APECメンバーは、ウルグァイ・ラウンドの成果の実施を自主的に前倒しし、これらを深化させ、拡大させる。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. ウルグァイ・ラウンド実施セミナー及び他の適切な手段を継続的に利用することによって、
    (i) WTO協定の規定及びその下での義務についてのAPECメンバーの理解を向上させる。
    (ii) WTO協定の実施に際し遭遇する実務的問題、及びAPECメンバーが技術支援を必要とする可能性のある分野を特定する。
    (iii) 実施においてかかる技術支援を供与するための協調的な努力を探求する。
  2. ウルグァイ・ラウンド実施セミナーを引き継ぐ作業に関する提案の実施を検討する。
  3. 上記セミナーにおける議論に基づく技術支援を実施する。これは実施に当たり広く存在する問題を対象とし、WTO事務局及び他の関連国際機関と協調して行われる協力的な訓練プロジェクトを含む。

15.情報収集及び分析(基礎的作業)

目的

 APECメンバーは、とりわけ部門横断的な作業の実施により、個別分野における行動及びAPECメンバーのそれぞれの行動計画を拡大し改善するための堅固な土台を確保する。

共同行動

 APECメンバーは、

  1. 必要な場合には、貿易及び投資に対する障壁の調査を実施する。
  2. アジア太平洋地域における貿易自由化の影響をレビューし、分析する。
  3. 北米自由貿易協定(NAFTA)、ASEAN自由貿易地域(AFTA)、豪州・ニュージーランド経済関係緊密化協定(ANZCERTA)等のサブ・リージョナルな貿易取決めの影響を研究し、監視する。
  4. 商品の貿易、サービスの貿易及び直接投資に関するデータベースを作成し、定期的にこれらを更新する。
  5. IMFにより開発されたような、サービスの貿易及び国際投資のデータのための国際基準を採用する。


第二部 経済・技術協力


A節:本質的要素

 APECメンバー間の経済格差を縮小させ、また、経済的・社会的福利を改善しつつ、アジア太平洋地域の持続可能な成長及び衡平な開発を達成するため、APECメンバーは経済・技術協力を遂行する。このような努力は、また、域内の貿易及び投資の成長を促進する。(注6)
 APECメンバーは、相互の尊敬及び平等、互恵及び相互支援、建設的で真のパートナーシップ並びにコンセンサスの形成という原則を基礎として、経済・技術協力を実施する。APECメンバーは、その能力に応じた自主的な貢献を行うとともに、協力の利益は、広く共有される。
 経済・技術協力を遂行するに際し、APECメンバーは、市場メカニズムの効果的な機能にとって好ましい環境を整備するとともに、ビジネス/民間部門を協力の過程に統合し、可能であればその他の適切な機関を関与させる。
 持続可能な開発に対する責任の共有を認識しつつ、APECメンバーは、APECのすべての関連する活動に環境への配慮を盛り込む。
 各APECメンバーの政策に対する自律性を尊重しつつ、APECメンバーは、共通政策理念、共同行動及び政策対話が、APECの経済・技術協力の各個別分野において考慮される三つの本質的要素であることを認識する。

1.共通政策理念

 APECメンバーは、APECの経済・技術協力の各個別分野において、目標、基本原則及び優先順位を含む共通政策理念を構築する。APECメンバーは、アジア太平洋地域の多様性に鑑み、共通政策理念が以下のことに資することを認識する。

  1. 共同行動を導くこと
  2. 各APECメンバーの政策/活動の進展を方向付けること

2.共同行動

 共通政策理念に照らし、APECメンバーは、データ及び情報の編集及び共有、調査、訓練、セミナー、研究、技術デモンストレーション等の共同行動に取り組む。これらの活動を強化するため、前進のためのパートナー(PFP)を含む様々な手段が利用される。APECメンバーは、APECの活動にとって有益な参考となるアジア太平洋地域の経済見通しを作成する。共同行動は以下のことに資する。

  1. 現在及び将来の経済動向を分析するAPECメンバーの能力を向上させ、政策措置を策定及び実施すること
  2. 域内の資源をより効果的に利用すること
  3. 政策措置の有効性を増大させること

3.政策対話

 APECメンバーは、経済問題に関する政策対話を行う。

  1. 共通政策理念及び共同行動に関する対話は以下のことに資する。
    共通政策理念を発展させ、レビューすること
    共同行動の効果を評価すること
    共同行動を更に発展させること
    APECメンバー間の政策の相違に照らし、協力の実施のための最善の方法を特定すること
  2. 各APECメンバーの政策/活動に関する対話は、APECメンバーが以下のことを行うことを可能にする。
    専門的知識及び経験を共有すること
    共通政策理念に照らし、それぞれの政策/活動に関して協議し、意見交換を行うこと

B節:個別分野の経済・技術協力

 APECメンバーは、三つの本質的要素に留意しつつ、経済・技術協力を遂行する。以下は、協力の個別分野における共通政策理念と共同行動/対話を例示的に記述したものである。個別分野における行動プログラムの全文は添付され、この行動指針の不可分の一部を成す。

1.人材養成

共通政策理念

 アジア太平洋地域の人々は、この地域の最も重要な財産である。地域の人材への需要は、地域の成長とダイナミズムに伴い、拡大し多様化している。APECメンバーは、人材養成枠組み宣言に述べられている以下に優先順位を設定することにより、これらに取り組む。すなわち、

  1. 質の高い基礎教育の提供
  2. 人材養成の動向及び需要の適切な予測を可能にする域内労働市場の分析
  3. 管理職、企業家、科学者及び教育者/訓練指導者の供給の増大及び質の向上
  4. 人生の就労可能期間のあらゆる段階に適用される訓練計画の作成による技能不足及び失業の削減
  5. 管理職及びその他の労働者のためのカリキュラム、教育方法及び教材の質の改善
  6. 技能取得を求める人々にとっての機会の増大
  7. 急速な経済的及び技術的変化に直面する中で生産的であり続けるよう組織及び個人を備えさせること

    APECメンバーは、さらに以下のことに取り組む。

  8. 貿易及び投資の自由化及び円滑化に向けた人材養成の促進

共同行動/対話

 APECメンバーは、21のサブ・プログラムから成る人材養成プログラム21を実施する。このプログラムにおいて、APECメンバーは、就中、

  1. 管理技能及び専門技能の交換及び移転のために域内のビジネス/民間団体の間でビジネス専門家の自主的な派遣を促進するメカニズムであるAPECビジネス・ボランティア計画を実施する。
  2. 各APECメンバーにおけるAPEC研究センターの設置及びAPECに関連する問題の共同研究の促進を含む、高等教育における地域協力を強化し、地域の主要な経済問題を研究するための一連の手段であるAPEC首脳の教育イニシアティブを実施する。
  3. 基礎教育における質の高い指導の提供を促進するため、教員養成の実践、科学教育プログラム及び教育における技術の利用に関する研究を実施する。
  4. 経営幹部、管理職、技術者、公務員及びその他の労働者の供給の増大及び質の向上のため、これらの人々の訓練を実施する。
  5. 基準及び適合性並びに知的所有権の分野における効果的な制度を維持するのに必要な専門家を確保するため、これら分野に関する訓練コースを開催する等の方法により、貿易及び投資の自由化及び円滑化に関連する協力を推進する。
  6. 職業資格の相互承認に関心を有するAPECメンバー間の二国間協定を通じて、域内における有資格者の移動を促進する。

    また、このプログラムに加えて、APECメンバーは、

  7. 議論のための土台として、成人識字率、初等・中等教育就学率といった到達指標を策定し、各APECメンバーの人材養成政策及び人材養成状況に関する定期的な対話を実施する。

2.産業技術

共通政策理念

 産業技術の水準の向上は、経済成長、生活水準、環境保護及び均衡のとれた産業構造の発展を強化する。APECメンバーは、効果的な協力のための8つの非拘束的な原則を認識し、以下に優先順位を設定することにより、各メンバーの産業技術に係る能力を改善する。

  1. 研究者交流及び人材養成の改善
  2. 技術情報及び技術の流れの改善
  3. 共同研究プロジェクトの円滑化
  4. 規制枠組みの透明性の改善
  5. 持続可能な開発への寄与

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 1996年末までの完成を目標に、プロジェクト特定、費用分担、知的所有権の保護等の共通の手続を定める競争前段階の産業技術に関するAPEC共同研究促進ガイドラインを策定する。
  2. 防災及び環境に関するプロジェクトを皮切りに、1996年以降共同研究プロジェクトを開始する。
  3. 研究者交流制度及び技術者訓練制度の拡大及び発展に努める。
  4. ビジネス/民間部門が技術情報及び専門的知識によりよくアクセスできるよう、技術見本市であるAPECテクノマートを開催する。
  5. 1997年中頃に完成される、研究所レベルでの情報ネットワークの強化に重点を置いた情報アクセス・メカニズムに関する研究を含む、科学技術情報の流れを改善するためのプロジェクトを実施する。
  6. 議論のための土台として、研究機関の数等の産業技術指標を設定し、各APECメンバーの産業技術政策及び産業技術に係る状況に関する対話を実施する。
  7. 透明性を確保するため、工業標準、知的所有権等の分野における、各APECメンバーの産業技術の規制枠組みをレビューする。

3.中小企業

共通政策理念

 中小企業は、技術的進歩や消費者ニーズの多様化に柔軟に対応しうる、アジア太平洋地域の成長及び革新のための重要な原動力である。APECメンバーは、中小企業がその創造性及び機動性を十分に発揮できるよう経済的環境を改善し、中小企業の優先分野(人材、情報へのアクセス、技術及びその共有、資金調達及び市場アクセス)への取り組みを支援し、また、中小企業政策を改善することにより、中小企業のダイナミズムを維持し発展させるために協力する。
 APECメンバーは、以下のような原則に基づき協力する。

  1. 域内における中小企業政策の改善に資するため、各メンバーの中小企業政策に関する情報の利用可能性及び透明性の確保
  2. 中小企業の市場メカニズムへの対応を最大化し、中小企業の経済活動及び更なる中小企業の発展のために最適な環境を提供するため、無差別かつ市場指向的な中小企業政策の策定及び実施
  3. 中小企業政策が、個別企業のみならず、企業集団及び協同組合も重視すべしとの認識

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 中小企業政策に関するAPEC中小企業指導者ワークショップを含む訓練プログラム、セミナー及びワークショップを開催する。
  2. 経済環境に関し、中小企業政策担当者及び中小企業がよりよい理解を得られるようにするため、域内産業の相互依存に関する包括的及び部門別の研究から成る産業展望研究を行う。
  3. c.APECメンバーの中小企業政策の実践に関する相互理解を深めるため、各メンバーの中小企業政策を調査し、この分野のAPECの最良の実践例をとりまとめる。
  4. 情報ネットワークの運営、訓練機会の開発及び中小企業向け活動の編成のためのリソース・センターとして、APEC中小企業技術交流訓練センターの活動計画を作成する。
  5. 中小企業向け資本市場を調査し、ベンチャー資本への中小企業のアクセスを促進する方法を探るためにベンチャー資本ワークショップを開催する。
  6. 中小企業支援機関の要覧を1996年に編集する。

4.経済インフラストラクチャー

共通政策理念

 アジア太平洋地域における経済成長の速度は、経済インフラストラクチャーの改善にかかっている。APECメンバーは、インフラストラクチャーに対する投資を促進し、ビジネス/民間部門の関与を奨励しつつ、インフラストラクチャーの改善の推進を図る。

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. インフラストラクチャー環境全般に関連する問題についての分析作業を実施する。
  2. インフラストラクチャーの改善の実効性を高める以下のような方法を探求する。
    公的部門及びビジネス/民間部門のそれぞれの役割を検討する基準として利用するため、最良の実践例をとりまとめること。
    ビジネス/民間部門にとってより透明性があり、かつ一貫した環境を確保するため、インフラストラクチャーに対する投資に関するガイドラインを策定すること。
  3. 官民対話を実施し、インフラストラクチャーに関するフォーラムの設置の可能性を検討する。

5.エネルギー

共通政策理念

 アジア太平洋地域の経済の拡大に伴い、域内のエネルギー消費量は、急速に増大しており、その結果、エネルギーが持続可能な経済成長の潜在的隘路となりつつある。APECメンバーは、政策原則を共有し、APECの持続可能なエネルギー共同体としての発展に向けたより緊密な協力を強化することにより、3つのEの同時達成に取り組む。
 APECメンバーは、以下に優先順位を設定する。 

  1. 域内のエネルギー問題に関する共通理解の醸成
  2. 適切な場合には、エネルギー部門における投資の円滑化
  3. エネルギー部門が環境に与える影響の軽減
  4. 認定の同等性の受け入れ及びエネルギー基準の調和の増進

 APECメンバーは、合理的なエネルギー消費のための14の非拘束的な政策原則に基づき、またその原則を拡充しつつ、広範な共有されたエネルギー目標を策定する。

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)に関する予備的作業を直ちに開始し、1996年中頃に同センターを設立する。そして、1997年までの完成を目指して、APEC域内のエネルギー見通しに関する共同作業を開始する。
  2. APECエネルギー・データベースを強化し、そのデータを定期的に普及する。
  3. 1996年末までに、制度面、規制面及び手続面の障壁を除去することにより、電力インフラストラクチャーに対する投資を円滑化するための指針となる枠組みを、ビジネス/民間部門と協力しつつ策定する。
  4. エネルギー需給間の潜在的不均衡によるリスク及び影響への対処に関連する問題を検討する。
  5. クリーン・コール・テクノロジー、再生可能エネルギー源及び最終用途での省エネ措置の分野での計画の拡大を通じて環境パフォーマンスを改善し、それが共同実施につながるデモンストレーション・プロジェクト等の気候変動に係る懸念を減じさせるための多角的協力計画の探求につながる。
  6. 1999年末までに、試験の実施方法及び試験機関の認定に係る相互承認並びに試験結果の受入れに関し意見の一致を見る。
  7. 共通政策理念に沿ってエネルギー政策を相互に検討する。

6.運輸

共通政策理念

 人及び物品の移動を効率的に行う運輸システムの能力は、経済生産性の最大化、貿易の促進及び人の移動に貢献するため重要である。したがって、APECメンバーは、効率的、安全でかつ統合された地域運輸システムの構築を追求する。運輸部門の発展は、すべてのAPECメンバーの人々が経済成長の恩恵を共有することに資するために、衡平な経済開発を促進すべきである。APECメンバーは、以下に優先順位を設定する。

  1. 運輸に係る政策、規制、手続及び基準の調和、調整及び透明性の促進
  2. 運輸インフラストラクチャーに対する時宜を得た合理的な投資の促進
  3. 適切な貿易及び輸送円滑化技術の適用を通じた既存のインフラストラクチャーの効率的利用の奨励
  4. 輸送システムの安全及び保安の促進
  5. 公正かつ衡平な市場アクセスに基づいた、より競争的な運輸事業環境の促進及び運輸サービスの供与に影響する制度的制約に取り組むための協力
  6. 輸送産業における労働及び経営の生産性、技能及び効率性の改善の促進

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 1996年までに、陸上、海上及び空港の主要な隘路を分析する運輸混雑地点調査の第2段階を完了し、また、1996年までに、それぞれの隘路に対するメンバーの取り組み方についての最良の実践例に関するマニュアルを提供する第3段階を完了する。
  2. 適切な時期に、十分に統合された地域運輸インフラストラクチャーの整備・拡充に関する戦略的協議の開始方法について検討を始める。
  3. 1996年に、混雑緩和に役立ち、エネルギー効率的でかつ環境にやさしい運輸システムの発展のためAPEC都市交通フォーラムを設立する。
  4. 1996年に、航空安全問題を特定するための専門家会合を設置する。
  5. 1997年までに、航空安全及び保安問題に関する調査及び分析を完了し、衛星航行及び通信システムに関するパイロット・プロジェクトの経験に基づいた行動計画を策定する。
  6. 航空安全専門家会合の経験に基づき、1997年までに、海上航行安全専門家会合及び保安専門家会合の設立を検討する。
  7. 1996年に、船員訓練のニーズに関する評価を開始する。

7.電気通信及び情報

共通政策理念

 APECメンバー間の経済的相互依存性の深化に伴い、アジア太平洋地域の電気通信及び情報インフラストラクチャーは、市場の結びつきの強化並びに貿易及び投資の自由化及び円滑化の増進にとって重要な役割を有している。したがって、APECメンバーは、以下の10の原則に基づきアジア太平洋情報インフラストラクチャー(APII)の構築に努める。

  1. APECメンバーが、それぞれの現状に基づいて、国内の電気通信及び情報インフラストラクチャーを構築することの奨励
  2. 競争主導的な環境の促進
  3. ビジネス/民間部門の投資及び参加の奨励
  4. 柔軟な政策及び規制枠組みの創出
  5. APECメンバー間の協力の強化
  6. 先進メンバーと開発途上メンバーとの間のインフラストラクチャー格差の縮小
  7. 国内法令に従った、すべての情報提供者及び利用者の公衆電気通信網への開かれたかつ無差別なアクセスの確保
  8. 公衆電気通信サービスのユニバーサルな提供及びユニバーサル・アクセスの確保
  9. 文化的及び言語的多様性を含む内容の多様性の促進
  10. 知的所有権、プライバシー及びデータ保護の確保

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 適切な場合には、1998年までに国際VANサービス(IVANS)の貿易に関するガイドラインに従い、適切な場合には、機器認証手続の調和に関する地域的なガイドラインに一般的に従う。
  2. 利用者通信端末機器の認証に関する行政手続を調和させるための作業を継続する。
  3. 1997年末までに、通信機器の適合性評価に関するモデル相互承認取決めを策定し、選択的に実施を開始する。
  4. 関連する政策、規制その他の情報へのビジネス/民間部門のアクセスを改善するために、各APECメンバーの電気通信規制環境及びインフラストラクチャー整備・拡充の現状に関する報告書を定期的に出版する。
  5. セミナー、電子データ交換のアプリケーションの開発に関する研究、並びにさまざまな電子商取引のネットワークの相互運用性及び適合性に関する実験を通じ、電子商取引を促進する。
  6. APECと他の国際機関及びフォーラムとの間でインフラストラクチャー活動における協力を増進する。
  7. G7諸国と協力して、相互運用性及び相互接続性のためのデモンストレーション・プロジェクトを含むAPIIテストベッド・プロジェクトを実施する。
  8. 電気通信及び情報産業における民営化及び競争に関する訓練コースの開催、この分野における専門家の遠隔教育パイロット・プロジェクトに向けた作業等の手段により人材養成を促進する。

8.観光

共通政策理念

    アジア太平洋地域の経済成長及び社会発展を促進する上で、観光産業はますます重要性を増している。APECメンバーは、以下に優先順位を設定することにより、観光産業の長期的な環境面及び社会面での持続可能性の達成を図る。

  1. 観光に係る移動及び投資に対する障壁の除去並びに観光に関連するサービスの貿易の自由化
  2. 観光開発における環境面及び社会面での持続可能性の理念の策定及び実施
  3. 人材養成の円滑化及び促進
  4. ビジネス/民間部門の役割の拡大
  5. 観光の貿易に関連する情報に基づいたサービスの分野での協力及び計画の発展
  6. APECメンバー間での情報の共有

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 文化遺産及び自然区域を保護及び保全する。
  2. 観光開発における環境面及び社会面での持続可能性のための最良の実践モデルを推進する。
  3. 人材養成の手法を拡大する。
  4. 核となる統計情報のデータベースを開発し、定期的に観光情報を交換するシステムを改善する。
  5. 観光分野における環境プロジェクトを実施する。
  6. 観光の成長に対する障壁を特定するとともに、域内の観光に係る移動及び投資を改善するための戦略を策定する。
  7. 観光開発における民間/ビジネス部門の役割を促進し、拡大するために、APECメンバー間の対話を行う。



9.貿易及び投資のデータ

共通政策理念

 APECメンバー間の国際貿易及び投資に関するデータの向上は、アジア太平洋地域における貿易及び投資活動に対する理解をより深め、更なる市場分析及び政策策定に貢献する。APECメンバーは、国際貿易及び投資のデータの利用可能性及び比較可能性を改善するとともに、これらの統計のデータベースを構築する。

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 国際商品貿易、サービスの貿易及び投資に関するデータを含む貿易投資データベース(TIDDB)を構築する。
  2. 国際サービス貿易及び投資に関するデータのとりまとめのための最新の国際基準を採用することにより、データの一貫性の改善に向けて作業する。
  3. TIDDBシステムの利用並びに国際サービス貿易及び投資に関するデータの収集、とりまとめ及び評価につき訓練を提供する。

10.貿易促進

共通政策理念

 APECメンバーは、貿易見本市の開催、貿易関連情報及び潜在的なビジネス機会に関する情報の普及、貿易に関する手続についての助言提供等の貿易促進措置を通じて、域内貿易の促進を図る。

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. APEC貿易フェアを定期的に開催する。
  2. 貿易促進機関の間の連携及び協力を強化するため、これらの機関の間のネットワークを構築する。
  3. 貿易促進に関連する技能を向上させるための訓練コースを改善及び開催し、貿易促進専門家の交換のためのメカニズムを開発する。
  4. 各APECメンバーの輸出入活動を支援及び促進する措置に関する情報をとりまとめ、これをビジネス/民間部門及び貿易促進機関に普及する。
  5. 貿易金融の分野での情報交換を行う。

11.海洋資源保全

共通政策理念

 海洋環境は、漁業及び養殖に係る水産品、その他水産品の貿易及び観光を通じて、APECメンバーの経済活力に実質的に貢献する。これらは海洋資源及び海洋環境の積極的保全に依存しており、その悪化は重大な社会経済的コストを生じる。APECメンバーは、海産物に係る貿易及び投資を強化しつつ、海洋環境の保護及び継続的な社会経済的利益の確保を目指す。APECメンバーは、以下に優先順位を設定する。

  1. 沿岸地帯の計画及び管理への取り組み
  2. 関連するUNCEDの勧告の実施における調整の強化
  3. 海洋有毒藻類問題の検討及び解決

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 関連の政策、基準、認証、強制要件、適合性保証等の分野に関する提言を行う。
  2. 海洋資源管理及び保全に関する情報の流れを改善する。
  3. 1998年までに、沿岸地帯の重要区域の管理、並びに効果的な通信、情報交換及び計画立案のメカニズムの拡充に関する指針を提供する。
  4. 1999年までに、海洋資源の保全及び持続可能な開発に対する構造的障壁を評価し、行動のための優先順位を設定し、行動枠組みを策定する。
  5. 科学的及び技術的情報の共有、環境問題の特定及び評価並びに海洋環境の質の維持のための実際的かつ行動指向的アプローチの開発のための政策対話を行う。

12.漁業

共通政策理念

 漁業は、その生産ベースが天然資源であり限られている点で独特である。APECメンバーは、漁業資源の長期にわたる最適かつ持続可能な利用の促進により、漁業資源から得られる経済的利益の最大化を図る。したがって、APECメンバーは、以下に優先順位を設定する。

  1. 漁業資源の保全と持続可能な利用、養殖の持続可能な開発及び生息地保全の促進
  2. 共通の漁業資源の管理問題の解決及び養殖魚病の抑制
  3. 魚類及び水産品の食品安全及び品質の向上
  4. 貿易及び投資の自由化及び円滑化に関連する部門特有の作業の促進

共同行動/対話

 APECメンバーは、就中、

  1. 水産品の品質及び安全性に関する会議を開催する。
  2. APEC地域において漁業に関与する機関の概要を編集する。
  3. 水産食品検査体制を改善する。
  4. 漁業貿易についての需給動向に関する情報を収集及び分析する。
  5. HACCP(危険度限界管理点)方式の利用を奨励する。
  6. 資源管理問題解決に係る協力を促進する。
  7. 水産品についての基準の調和を促進する。
  8. 環境及び資源管理に係る課題に取り組むための経済的手法の適用を検討する。
  9. 関税、非関税措置及び行政的障壁を含む部門特有の貿易障壁に関する情報を収集及び分析する。

13.農業技術

共通政策理念

 APECメンバー間のニーズ及び発展段階の相違に鑑み、農業技術協力(ATC)の強化は、均衡のとれた農業の発展、資源の利用及び保全並びに食糧の種類及び品質の改善につながることが期待される。APECメンバーは、経済成長と社会的福利に貢献するための農業及び関連産業の能力の向上を図る。APECメンバーは、以下を含む原則に基づきATCを実施する。

  1. 農業部門の多様性に対する然るべき考慮
  2. 農業部門に生じている急速な変化の認識
  3. 国際機関による活動への寄与

共同行動

 APECメンバーは、就中、

  1. 例えば、1997年までに遺伝資源関連情報のネットワークの構築により、動植物の遺伝資源の交換を促進する。
  2. 例えば、1997年までに専門的知識に関するデータベースの構築により、遺伝子工学の研究開発を強化する。
  3. 例えば、1996年までに技術協力の能力及び必要性に関する情報の収集及び交換により、農産物のマーケティング及び加工を促進する。
  4. 例えば、情報ネットワークの構築を通じ、動植物検疫及び病害虫管理に関する地域協力を強化する。
  5. 例えば、1997年までにAPECメンバー間の情報交換及び専門家交流を通じ、農業金融制度の開発における協力を促進する。
  6. 例えば、1996年までに共通の関心のある分野の特定により、技術移転を促進する。
  7. 例えば、1998年までに電子媒体による普及のための訓練計画及び情報支援の確立により、農業技術訓練を促進する。

C節:経済・技術協力の一層の発展

 APECのフォーラムは、適切な場合には、各分野における共通政策理念、共同行動及び政策対話の拡大及び改善を提案する。B節「個別分野の経済・技術協力」に当初より規定されている分野に追加的な分野を含めることを検討することができる。以上についての提案は、閣僚会議に提出される。
 作業部会、政策担当者会合及び専門家会合を含むAPECのフォーラムは、APECの活動の効率性を高めるため相互に協力しつつ、大阪経済首脳会議の後、直ちにB節「個別分野の経済・技術協力」に記述されている作業を開始する。上記の過程において、APECのフォーラム間の作業の重複は避けられるべきである。
 APECの各フォーラムは、進捗状況に関する年次報告を高級事務レベル会合に提出する。高級事務レベル会合は、この進捗状況をレビューし、年次閣僚会議にレビューのために報告を提出する。関連するAPECの大臣会合による作業は、然るべく認識されるべきである。
 この行動指針は、APECにおける自由化、円滑化及び協力の全体的な進捗に基づき、必要に応じ改訂及び改善され得るものである。


(注1) 自由化及び円滑化は、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資という我々の目標を達成するに当たり不可分な性質を有することにより、この部では一体として取り扱われる。この部で取り扱われる経済・技術協力は、自由化及び円滑化を直接支援するものである。

(注2) ここにいう「関税」とは、輸出入関税及び関税割当を指す。

(注3) これらの非関税措置には、輸出入に係る数量制限及び輸出入の禁止、輸出入に対する課徴金、最低輸入価格、裁量的な輸出入許可、輸出自主規制、及び輸出補助金が含まれる。

(注4) 以下の共同行動は、サービス分野において実質的な進展が既にみられる作業部会の別添の行動プログラムから抽出されているが、これは、これらの部門においてとられる、自由化及び円滑化に関連する活動を示すためである。これらの部門における活動は第二部においても取り扱われている。

(注5) 「基準(規格)」には強制規格及び任意規格が含まれる。この文書において、「基準(規格)」という用語は、TBT協定及びSPS協定において対象とされている事項に一般的に言及する際に用いられる。
(注6) 貿易及び投資の自由化及び円滑化を直接支援する経済・技術協力は、主として第一部で取り扱われる。




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