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外交最前線  インタビュー

環太平洋を結ぶ絆・APEC
メキシコ・プロセスの焦点を探る

三輪 昭 外務省経済局参事官に聞く
[中央公論新社発行「中央公論」2002年11月号より転載]


―21の国・地域が参加し、世界経済の6割を占める地域協力・APEC。 アジア・太平洋地域の経済面だけでなく政治的な安定にも重要な役割をもつAPECの、メキシコ・プロセスの焦点と日本の取り組みを探る。―


〈アジア・太平洋地域の持続可能な発展を目指す〉
Q:この10月にアジア太平洋経済協力(APEC)の首脳・閣僚会議がメキシコのロス・カボスで開かれますが、まずAPECについて基本的な情報をお聞かせください。
三輪●APECは1989年、オーストラリアのホーク首相の提案により、アジア・太平洋地域の持続可能な発展を目指す地域的な組織としてスタートしました。そして貿易・投資の自由化、貿易・投資の円滑化、それに経済・技術協力という三本の柱を掲げて、その目的の達成に取り組んでいます。また、APECには他の国際機関と違う大きな特徴があります。その一つは開かれた地域協力ということです。例えば、APECの中で、何か具体的な自由化の合意ができた場合、その成果は、域外諸国にもあまねく及ぶという原則があります。もう一つの原則は「協調的・自主的」ということで、目的を打ち上げた後は各国が自発的な行動によって進展させていくという方式で、法的強制力をもった合意をもとに、事を進めていくものとは大きな違いがあります。
Q:東アジア全体の利益を考えてわが国にとって、APECはどんな意味があるのでしょうか。
三輪●戦後、国連、WTO(GATT:関税と貿易に関する一般協定)といったグローバルな国際機関が種々できる一方、例えばヨーロッパでは、二つの大戦の経験に学んで欧州連合(EU)を創設するという地域協力が同時平行的に進んできました。このようにグローバルな国際機関に加えて地域協力を進めるということの意義が、この十年くらい評価されてきています。今後、東アジアでも種々の地域協力が進んでいくと思いますが、その一方で東アジアと太平洋で結ばれた米州との絆も同時に発展させていくことが重要だと思います。そういう東アジアの経済面だけでなく政治的な安定も含めた全体の利益を考えて、日本もAPECという地域協力を積極的に盛り上げていく必要があるのではないかと思います。
Q:APECがこれまで果たしてきた役割、成果はどういうものでしたか。
三輪●今のAPECの基本的な枠組は、94年のインドネシアにおける首脳会議で定められました。すなわち自由で開かれた貿易・投資という目標を、先進国については2010年までに、その他の国・地域については2020年までに達成しようというボゴール宣言が合意されたのです。翌95年の大阪会合でその目標達成に至る長期的な道筋を示す大阪行動指針が採択され、これが今日のAPECの活動の基本となっています。

〈貿易の円滑化で具体的な成果を〉
Q:今回開かれるロス・カボス会合のポイントはどんなことでしょうか。
三輪●今回はメキシコがホスト国としてAPECの議論をリードしています。現時点での主要な議題は、貿易円滑化の行動計画、それから貿易・投資面における透明性にかかわる合意、テロ対策についての合意、それとメキシコが新たに打ち出した「繁栄の共有」というテーマがあります。これはグローバリゼーションの利益を社会に広く行き渡るようにしようという提言です。
 そうした中で、わが国がAPEC独自の役割を果たすものとして今年強く推進している案件は、貿易の円滑化です。これは昨年の上海での首脳会議で合意されたもので、APECとして2006年までに、貿易取引にかかるコストを5%下げるということです。これを実現するために貿易関連の手続きを大幅に簡素化する。例えばペーパーレスにしてしまうとかインターネットを活用する、そういうことを通じて港における貨物の滞留時間を大幅に削減しよう、というような種々の事項をまとめた行動計画を、ぜひとも今年の首脳・閣僚会議の具体的な成果にしたいと思っています。
 一方で、今のAPECの活動の基本は94、95年につくられたということや、その後の社会の変化ということもあって、メキシコが提案しているような社会的側面も含めて、今後のAPECのあり方をもっと掘り下げて冷静に見直す時期にきているのではないかと思っています。


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