米国2002年農業法の成立について
平成14年9月
米国では、現在の96年連邦農業改良改革法(96年農業法)に見られるように、いわゆる「農業法」によって、一定期間の生産者対策、農産物貿易政策、環境保全政策等、具体的な農業政策の内容が総合的に規定されている。5月13日、米国ブッシュ大統領は米国2002年農業法案に署名し、本農業法は正式に成立した。本法のポイントは以下のとおりであるが、価格支持政策が強化された他、現行法で廃止された不足払い制度が事実上復活するなど、国内農業の保護が強化されているとも捉えうる内容であり、農業貿易の自由化を提唱してきた米国の今後の貿易交渉に影響を与えることも考えられる。
1.名称
The Farm Security and Rural Investment Act of 2002
2.適用期間
2002年~2007年(6年間)
3.予算額
約520億ドル(6年間の追加総予算額)
4.主な特徴
(1) |
価格変動対応型支払い(counter cyclical payments)の導入
主要作物(小麦、トウモロコシ、コメ、大豆等)に関し、現在の価格支持融資・直接固定支払いを継続しつつ(それぞれの単価は引き上げ)、96年農業法で廃止された不足払い制度(新法では価格変動対応型支払い)を事実上再導入した(参考参照)。
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(2) |
環境保全に対する予算の拡充(現行の80%増)
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(参考)価格変動対応型支払い
作物ごとに目標価格を設定し、市場価格(単価)または、融資単価(ローンレート(注1))の高い方に直接固定支払い分(注2)を加えた額が目標価格を下回った場合、その差額を補填。(直接固定支払いと同様、過去の生産面積等を基に支払い)
(注1) |
ローンレート:生産者は、収穫した穀物等を担保として、このローンレートの価格で期限9ヶ月の融資を受けられる。市場価格がローンレートを上回るようになれば、生産者は担保作物を市場で売却し、融資を返済する。一方、市場価格が融資単価を下回っていれば(1)融資単価より低い単価で返済するか、(2)担保穀物を政府に引き渡すことにより、実質上、市場価格とローンレートの差額が生産者に補填される。 |
(注2) |
直接固定支払い:市況に関係なく、一定額の補助金が毎年生産者に支払われる。
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