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米国経済の成長が緩やかとなる中、2001年となったが、年間を通じて米国経済は減速し続けた。2000年第2四半期にGDPが年率5.7%を記録した後、2000年後半から景気は減速し始め、2001年を通じて景気は弱かった。いくつかの部門では完全な減速に陥った。例えば、工業生産は2000年6月にピークに達し、その後長期にわたって低迷した。全米経済研究所(NBER)は、米国経済が2001年3月から10年ぶりに景気後退入りしたと公表したが、9月11日の米同時多発テロ事件は、米国経済に対してさらなる打撃を与えた。
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政府は、実質GDP成長率が2002年の早期に回復することを期待している。初期における回復のペースはゆっくりしたものとなるが、その後好転し、2002年の実質GDP成長率は、4つの四半期を通じて2.7%(第4四半期前年同期比)になると期待される。失業率は現在5.6%(2002年1月)であるが、2002年半ばにかけて6.0%近くまで上昇する見通しである。
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2001年を通じた需要の減少は、在庫投資、企業の設備投資と輸出に集中していた。このような下方圧力による在庫の減少は、2002年第1四半期に在庫整理から在庫蓄積へに向けて、近いうちに急速に反転すると予測されている。従って、景気回復の初期の源泉は、在庫循環における在庫蓄積局面である。企業の設備投資と輸出の回復には時間がかかりそうである。民間設備投資は2001年に急落し、依然として下方圧力は残っている。しかしながら、引き続き設備投資を行いやすい金融情勢である。短期の実質金利は比較的低く、コンピューターの価格は下落しており、株価は2001年第4四半期にかけて上昇している。おそらくこれらの要因により、2001年第4四半期の非防衛資本財に対する新規の注文は増加しており、これは企業の設備投資の見通しに対する有望な兆候である。
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2001年第4四半期、個人消費支出の大部分は自動車購入に支えられ、かなり急速(5.4%)に伸びた。自動車購入の急増は、ゼロ金利ローン等の特殊な金融情勢によるものであるかもしれないが、2001年第4四半期における家計消費の全体的な力強さは、2001年成立した減税による強い効果を示している。2002年における消費支出は、2001年第4四半期の急速なペースに比べれば減速するものの、堅調に推移する見通しである。しかしながら、テロに対する戦いによる影響のひとつは、国土防衛と安全保障に対する支出を増強しなければならないことである。例えば、2001年第4四半期に政府支出が9.0%まで上昇したように、テロ戦争のための消費支出は、短期的には需要を刺激する効果がある。しかし、一般的に政府支出の急速な増加は、経済成長に対する確固たる処方箋ではない。実際、財政規律の歪みは持続的成長に対する脅威である。テロの脅威を注意喚起することは実際必要であるが、財政規律を歪めることに対しては慎重でなければならず、支出の優先順位を見直すことに専心し、政府支出の拡大をコントロールすべきである。
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インフレは抑制され、物価は安定する見通しである。GDPデフレーターによると、2001年の物価上昇率は約2.2%と安定していた。政府の見通しによると、2002年の物価上昇率は1.9%に下落する。現在、失業率は政府がインフレと整合的であると考えている水準よりも高く、産業部門における資本の利用度は過去の平均よりも著しく低い水準である。 |