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グリーンスパン議長の議会証言
(7月16日 米上院銀行住宅都市委員会)

平成14年7月30日

 7月16日、連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は、米上院銀行住宅都市委員会において米国経済及びコーポレート・ガバナンスに関する証言を行ったところ、概要は以下のとおり。

1.米国経済

(1) 米国経済は著しく回復したものの、最近の困難な事件の影響は引き続き残っている。しばらくの間、消費は株式市場の急落に対して調整を続けるであろう。ここ数週間で、明らかに株価の急上昇の間に蓄積されたコーポレート・ガバナンスや企業の透明性に関する諸問題に対する懸念の増大の影響を部分的に受けて、正味の株価は著しく下落した。設備投資の調整や企業収益の回復の進展、さらなる企業の不正行為の発覚、国際政治問題やテロなどの少なからぬ不確実性が依然として存在している。

(2) それにもかかわらず、持続的で健全な経済成長に回帰するためのファンダメンタルズは整っている。在庫や資本財の不均衡は、大部分が解消されたようである。インフレ率は非常に低く、今後も低く推移すると期待されている。生産性は著しく上昇しており、家計や企業の消費を下支えしているのみならず、コストや価格を低く抑えている。今年の金融政策について考えると、連邦公開市場委員会(FOMC)は、経済活動に対する相当な抑制力に対応するために昨年採用した金融緩和政策が、最大限に持続的な経済成長と物価の安定という目標と矛盾していることは認識している。しかし、現在インフレ率は低く抑えられており、近いうちに高まるであろうという兆候は見当たらないため、さらに堅調なファンダメンタルズが現れるほど経済成長を抑制する圧力がなくなったことが明らかになるまで、我々は現在の金融政策を維持することを選択した。

(3) 金融政策は、短期金利を引き下げる役割を果たし、家計の借入コストの引き下げに貢献した。消費を喚起する上で特に重要であったのは、家計の住宅購入、借り換え、借入負担の軽減や住宅から得られた資金が金融商品の購入に回ることを促す低水準のモーゲージ金利である。固定のモーゲージ金利は歴史的に低水準であり、そのことが引き続き住宅に対する旺盛な需要を焚き付け、住宅からの資金抽出を通じて個人消費を支えていくであろう。実際、低水準のモーゲージ金利に対する需要、移民や一部の地域における宅地の不足などの影響から、最近の住宅価格は相当上昇しており、家主が容易に住宅を担保にした借入やモーゲージローンの借り換えを利用できる家計の資産は著しく増加した。

(4) それに対して、設備投資は低迷している。昨年の景気減速の主要因は、売れ残った商品のみならず在庫投資も含めた在庫品が過剰であると企業が突然気づいたことによって、資本財の需要が急落したことである。資本財に対する需要の減少は、特にハイテク分野において顕著であった。全体的にみれば、設備投資の水準は、ピーク時の2000年第4四半期から2002年第1四半期にかけて約11%も急落した。

(5) 資本金の望ましい水準への調整が、明らかに進展したことにより、企業の設備投資は改善し始めるかもしれない。歴史的な水準と比べると、設備投資の回復は緩やかで、産業ごとに一様ではない。全体的に、設備投資は時間の経過とともに回復するであろう。特に、売上高や収益の見通しの改善、低水準の借入コスト、年初に成立した景気刺激策法による設備投資に対するインセンティブの上昇、継続的な技術進歩による生産性の上昇に対して、企業はより一層反応していくであろう。

(6) 要約すれば、米国経済は過去1年あまり厳しい状況に直面してきた。しかし、これらの問題は、近年経済に備わってきた潜在力と回復力の増加を反映して、経済活動を短期間かつ緩やかに減速させたに過ぎない。最近の困難な状況の影響はしばらく続くであろうが、それらが消えて、さらなるマイナスの影響を与える大きな事件がなければ、米国経済は潜在的な成長パターンに回帰する用意ができている。実際、FRBによる2002年の実質GDP成長率(第4四半期前期比年率)の見通しは3.5%~3.75%であり、今年2月の見通しに比べて幾分上方修正されている。

2.コーポレート・ガバナンス

(1) コーポレート・ガバナンスの緩みが顕在化したケースの大部分は、駄目なCEOによるものである。取締役会が効率的に機能するためには、当然のことながら、CEOがその投票行動に影響力を行使できない独立した取締役の存在が不可欠である。しかし、その過程において、企業の効率的な経営を害するような競争的な取締役会や対立する権力の源を創造しないよう注意しなければならない。企業が機能的な経営を行うためには、権力の中心が必要である。

(2) 結局、CEOは経営戦略を実行するための全ての権限が与えられなければならないと同時に、株主や潜在的な投資家に対して企業の状況を正しく報告する責任を負わなければならない。今や多くの者が勧告しているように、不法行為に対する厳しい罰則によって、そういった責任を果たす義務が確保されなければ、会計制度やコーポレート・ガバナンスのその他の要素は、最適には機能しないであろう。

(3) コーポレート・ガバナンスの状況は、CEOの人格に大きく影響を受けるものであり、このことはとても扱いにくい問題である。我々は、経営者の人格を変えることはできないが、インセンティブや罰則を通じて経営者の行動を変えることができる。このことによって、コーポレート・ガバナンスの現状を劇的に改善させることができるであろう。

(4) とりわけ、我々が心に留めておかなければならないことは、自由な資本市場における株主やその他の資産の所有者の財産権といった法律的な基礎を如何に強化するかということである。不正や詐欺は、財産の窃盗である。一般的に、市場や企業の機能を定めている法律が公正なものであると認識されなければ、我々の経済システムは、十分な潜在能力を発揮することはできない。


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