外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 各国・地域情勢 アフリカ
アフリカ
世界地図
アジア 北米 中南米 欧州(NIS諸国を含む) 大洋州 中東 アフリカ

「アフリカ開発のための新パートナーシップ」
(抄訳)


平成15年3月


1.はじめに

「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」は、アフリカにおける貧困撲滅、持続可能な成長と開発、世界の政治経済への統合を目指す、アフリカ人自身の決意を原動力とするアフリカ指導者達の誓約である。アフリカの更なる周縁化と孤立は、世界の安定に深刻な脅威を与えるものである。アフリカの開発は、借款若しくは援助という二者択一であったが、アフリカは援助従属を望まず、ドナー諸国との関係の変革を求める。現在、アフリカは開発の好機を得ているが、その実現には人材育成と貧困撲滅に向けた真のリーダーシップと、共同責任と相互利益に基づく新しいグローバル・パートナーシップを必要である。アフリカは、アフリカ人の運命はアフリカ人自身が決めることを宣言し、国際社会にはその努力を補完して欲しい。近年アフリカでは望ましい兆候が見られる。人権保護、人間中心の開発政策、市場重視の経済を志向する民主的体制が増加し、レベルの低い指導層は拒絶されている。NEPADは、これらの望ましい兆候を加速させるとともに、先進国と新しい関係を構築することにより、数世紀にわたり進行した開発矛盾の克服を目指す。

:「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」は、2001年10月23日にアブジャで行われたアフリカ元首による実行委員会発足会合において「新アフリカ・イニシアティヴ(NAI)」が改称されたもの。)


2.今日の国際社会におけるアフリカ

貧困と繁栄

 国際社会におけるアフリカを考える上で、アフリカには(1)鉱物等の天然資源のみならず、(2)熱帯雨林の存在や排気ガスや排水が少ないという地球環境保全への貢献、(3)古生物学的・考古学的な遺産、(4)文化的豊かさにおいて貢献していることに留意すべし。

アフリカ大陸の貧困化の歴史
 アフリカにおける貧困の主要因は、植民地主義、冷戦の負の遺産、独立後の政策的失敗。指導者の見識の低さや腐敗の進行が状況を悪化させ、構造調整にも限界があった。NEPADはこうした過去の経験を活かし、開発における自助努力を促す。アフリカは「善意の後見人達の保護」に甘んずるのではなく、「自らの運命の開拓者」たらねばならない。

アフリカとグローバル革命

 グローバル化により南北の格差と亀裂は拡大し、アフリカは更なる周縁化の危機に直面。グローバル化の恩恵を幅広い人々へ拡大するには政府と民間の連携が重要。政府、民間、市民社会の全てが、アフリカの世界経済への統合に取り組む必要がある。


3.アフリカ指導者の政治的意思

アフリカ指導者が共同責任を負うべき事項

 民主主義やアフリカのアフリカの世界経済への統合にコミットした新しいアフリカ指導層が登場し、開発を可能とする新たな環境が創出されつつある。NEPADは、アフリカが自らの未来のために自ら設定した開発アジェンダに基づくものであり、アフリカのオーナーシップとマネイジメントを中心としている。住民に代わってNEPADを実施するアフリカ指導層は、以下について共同責任を負う。(1)アフリカの紛争予防・管理・解決メカニズムの強化、(2)民主主義と人権の保護と促進、(3)マクロ経済の安定(特に財政・通貨政策)、(4)金融・監査部門における透明な法制度構築、(5)教育、訓練、保健(特にHIV/AIDS等感染症)への取り組み強化、(6)女性の地位向上、(4)法執行・法秩序維持の能力の強化、(7)インフラ整備、製造業の振興や農産物多角化等を通じた国内市場及び輸出市場の振興。


4.アフリカの人々への呼びかけ

 NEPADは、アフリカの人々が差違を乗り越えて一体となった時に初めて成功する。アフリカは奴隷制、汚職、及び経済政策の失敗により困難な状況にある。しかし、その豊富な資源が活用されたならば、持続的成長及び世界経済への統合が達成されうる。NEPADは、アフリカの人々の意志を行動へ移すことをアフリカの指導者たちが表明したものであり、その担い手はアフリカの人々でなければならない。それゆえアフリカの指導者たちは、アフリカ大陸の更なる周縁化を防ぐために、状況の深刻さを自覚し、状況を打開すべく自ら行動を起こすことをアフリカの人々へ呼びかける。


5.行動計画:21世紀において持続可能な開発を達成するための戦略

A.持続可能な開発の前提条件

(1) 平和・安全・政治ガバナンス・イニシアティブ

(i) 平和・安全イニシアティブ

 既存のアフリカ機関、地域機関を強化する必要があり、特に(イ)紛争予防・管理、解決、(ロ)平和創造・平和維持・平和強制、(ハ)紛争後の和解・リハビリ・復興、(ニ)小型武器や地雷の不拡散を重視する。今後設置される「アフリカ元首フォーラム」は、加盟国がアフリカ大陸の平和の安全を促進するよう指導する。

(ii) 民主主義とガバナンス・イニシアティヴ

 NEPADの参加国は、グッド・ガバナンスを育むために主導的役割を果たし、ガバナンス強化への取り組みを制度化する。制度化においては(イ)行政改革、(ロ)議会の監視機能の強化、(ハ)参加型意思決定プロセスの促進、(ニ)汚職対策、(ホ)司法改革を重視する。

(2) 経済ガバナンス及びコーポレートガバナンス・イニシアティヴ

 参加国の経済・財政運営、組織運営の質を向上させる。財務大臣及び中央銀行により構成されるタスク・チームが、アフリカ各国及び地域の経済政策及びコーポレートガバナンスを調査し、望ましい経済運営・組織運営の基準を提言する。

(3) 地域統合

 市場規模が限られているアフリカにおいては、国際競争力を強化するために、資源を集積し、地域開発を促進し、経済を統合することが必要。既存の地域機関の効率性を高めるため、NEPADは人材開発に優先的に取り組む。

B.優先分野

(1) インフラ整備

(i) 全てのインフラ部門
 インフラ不足は成長と貧困削減の足枷。国境を越えたインフラの接続を通じた地域協力の促進。AfDBなどアフリカの開発金融機関を通じて、無償資金や譲許的借款を確保。民間投資の誘致。

(ii) 情報技術(ICT)
 2005年までに電話接続率の倍増(100人中2人)を目指す。人材育成と法制度整備。G8ドットフォース等多国間イニシアティヴやバイのドナーと協力して資金調達を追求。

(iii) エネルギー
 20年以内に商業用エネルギーを利用できる人口を全体の10%から35%以上に伸ばす。生産的経済分野へのエネルギー安定供給とコストの低下。発電所、送電線、パイプラインを含む地域プロジェクト促進。バイオマス・エネルギーの保全を進める。

(iv) 流通
 人・モノ・サービスの国境を越えた流通を円滑化。運輸の円滑化・効率化による経済活動の促進。

(v) 水・保健衛生
 安全な水と衛生環境を持続的に提供。貧困層への安全で清潔な水の確保。水をめぐる地域協力の強化。気候変動への配慮。灌漑措置と農業生産。

(2) 人材開発

(i) 貧困削減
 貧困削減をNEPADの全ての計画において優先させる。世銀、IMF等と協力し「包括的開発フレームワーク」及びHIPC債務削減と連携した「貧困削減戦略」を加速。

(ii) 教育環境の格差是正
 ドナー国・機関と協力して、初等教育の普遍化という国際開発目標を2015年までに達成。中等教育を拡充し、さらに開発と中等教育との結びつきを強化する。研究機関・高等教育機関のネットワーク形成を促進。

(iii) 人材流出の防止
 アフリカの開発に不可欠な人的資源を育成・保持。

(iv) 保健
 感染症対策の強化。廉価な薬品の流通を追求。アフリカに年間100億ドルの増額を確保。参加国に保健分野への優先的予算配分を促す。保健行政の強化と人材育成。

(3) 農業

 農業生産力の向上はアフリカの経済発展に不可欠。アフリカにおける農業生産を制約する主な要因は不安定な天候である。アフリカの貧困層の70%以上の人が農業に従事しているにもかかわらず、これまで、ドナー国や国際機関は農業部門に関心を十分に払っていない。

(4) 環境イニシアティブ

 健全で且つ生産的な環境はNEPADの前提条件。雇用、貧困削減にも資する。
(a)砂漠化対策、(b)湿地保全、(c)外来種による被害の防止、(d)海岸地帯の資源保全・利用、(e)温暖化対策、(f)国境を越えた自然保護区における取り組み、(g)環境ガバナンス、(h)資金調達、の諸問題を提起する。

(5) 文化

 固有の知識の保護と育成。

(6) 科学・技術

 既存の知識を活用してアフリカ大陸内の協力を推進。潜在的成長力をもつ分野において科学・技術を育成。既存の技術を活用して生産の多角化を図る。

C.資源の動員

(1) キャピタル・フロー・イニシアティブ

(i) 国内の資源(貯蓄など)の国内利用(海外逃避の防止)
 年間7%の経済成長を達成し、2015年までに貧困層を半減させるためには、アフリカに年間GDPの12%、640億ドルもの資本を呼び込まねばならない。短・中期的には、債務削減及びODA、長期的には民間資本によらねばならない。重要なことは、外国からの資本フローはアフリカのガバナンスの改善に伴って増大するという基本原則。

(ii) 債務救済
 既存の枠組みを越えた債務救済を追求。債権国からの最大限の妥協を引き出す交渉を行う。アフリカ側は、新枠組みを考える前に、先ずは既存のHIPCs及びパリクラブの枠組みを活用する。各国の経験を共有するフォーラムを設置する。

(iii) ODA改革
 ODA絶対額の増額と効果的に活用を追求。ODA改革に関するアフリカの共通の立場を構築するODAフォーラムを設置し、OECDのDACとの間で、開発パートナーシップに関する憲章を策定。被援助国とドナーのパフォーマンスを評価する独立メカニズムを設置。また、IMFや世銀とともにPRSPに取り組む。

(iv) 民間資金の流通量増大
 ハイリスク(特に財産権、制度、市場が不安定)のイメージ克服。アフリカ開発銀行を通じた官民の協力した人材育成。「金融市場統合タスク・フォース」を設立し、競争力の強化とアフリカ金融市場の統合を目指す。

(2) 市場アクセス・イニシアティブ

(i) 生産の多角化
<アフリカ側の取り組み>:灌漑施設の整備による水供給、地域レベル及び国家レベルにおける食糧安全保障の確保、都市整備のための公共支出を増やす。
<国際社会の取り組み>:アフリカの農産物へのアクセスを促進、農業技術伝達のためのネットワーク作り、多国間貿易交渉の能力を高めるための協力。

(ii) 鉱業
<アフリカ側の取り組み>:ビジネスの機会に関する情報ソースを統合。知識の共有と資源の付加価値を高めるための協力を促進。

(iii) 製造業
<アフリカ側の取り組み>:農業及び鉱業に立脚した産業を含め、アフリカが比較優位を有する産業の新規開拓と既存の産業の競争力強化。
<国際社会の取り組み>:産業発展を担う人材の育成、国際レベル・地域レベル国家レベルの規格に関する情報を提供し、市場アクセルを促進させるための規格当局を設置。

(iv) 観光業
<アフリカ側の取り組み>:地域レベルでの観光プロジェクトに参画する人々の能力育成。観光客の安全確保を優先させる。

(v) サービス業
サービスはアフリカ諸国にとって重要な活動を構成する

(vi) 民間セクターの育成
<アフリカ側の取り組み>:技術の修得、生産性の改善及び人材育成制度の発達を支えることにより、民間セクターの起業力、管理能力及び技術力を高める。官民対話強化、中小企業に対する小規模融資スキームへの支援。
<国際社会の取り組み>:起業能力育成プログラムの開催を支援

(vii) 輸出の増大
<アフリカ側の取り組み>:関税手続の改善、域内貿易自由化の促進、マーケティング・コスト削減・広報の努力
<国際社会の取り組み>:アフリカ産品の世界市場アクセス改善、アフリカの貿易交渉能力・新たな機会を発掘する能力向上の支援に努力。

(viii) 非関税障壁の撤廃
アフリカが比較優位を有する商品へ先進工業国がアクセスしやすくなることは不可欠。


6.新しいグローバル・パートナーシップ

 アフリカと開発パートナーは、責任と利益を共有している。アフリカは先進諸国に対し資源、市場、投資機会を提供し、創造的な官民パートナーシップの可能性を示し、かつ豊かな生態系という貴重な環境を有している。人類発祥の地として文化的遺産を有するアフリカが民主主義と人権を尊重し安定・発展することは国際社会全体の安定に資する。またアフリカは、南南協力の発展に取り組む。

先進諸国や国際機関との新たな関係の構築

 開発パートナーとの新たな関係を構築。カントリー・プログラムの形成が出発点。ドナーと被援助国が合意した目標を設定するべき。これまでのアフリカと先進諸国との各種のパートナーシップは維持され、アフリカに真の利益が得られるように整理する。

先進諸国と国際機関が果たすべき責任の列挙

(1)紛争予防・解決のアフリカの努力に対する支援、(2)重債務貧困国に対する債務削減の加速、(3)中所得国に対する債務削減戦略の改善、(4)ODA減少の流れを逆転し、各国のODAをGNP比0.7%とする、(5)教育と保健分野において採択された国際戦略を具体的行動に移す、(6)感染症の薬へのアクセスを改善、(7)WTOの枠組みにおいて途上国へのより公正な貿易条件を確保、(8)アフリカのリスクを低下させるための保険・金融サービスの参入を含め、先進国民間企業による対アフリカ投資を呼び掛ける、(9)輸入品に対する国内保護の水準を先進国並みにする、(10)世銀等の国際金融機関が主要な経済インフラ・プロジェクトに参加出来るようにする、(11)行動計画の実施を加速する技術支援(企画、開発運営、財政、会計、監査等)、(12)国際金融機関の改革を支援してアフリカ問題への取り組みを強化させる、 (13)アフリカの汚職に対抗するメカニズムの設置。


7.NEPADの実施

 開発パートナーと協力し、感染症(HIV、マラリア、結核)、ICT、債務削減、市場アクセスの優先分野における計画を早期に実施する。

(1) プロジェクト

(i) 農業
 資源の保全と状況改善を促すべく、土地と水の管理に関する行動計画を拡大させる。

(ii) 民間セクターの育成
 ビジネス・インキュベーターを設置し、企業を促す。

(iii) インフラ整備と地域統合
 NEPADプロセスは、エネルギー、運輸、通信、水の諸分野における計画がアフリカ開発に不可欠であることを指摘した。次に必要なのは、アフリカ開発銀行、世界銀行、及び他の国際機関と協力して右の計画の実施を促進させることである。実施にあたっては、地域統合の実施と歩調を会わせることが重要。

(2) ニーズ・アセスメント

 上述の優先分野において、組織構造とスタッフに関するニーズを評価する。評価は、国家レベル・地域レベル・地区レベルで実行される。地区固有のニーズに着目する。

(3) NEPADの統括機構(アフリカ首脳実施委員会の役割)

 アフリカ首脳実施委員会は、NEPAD実施における適切なメカニズムについてアフリカ連合に助言する。同委員会の役割は、(イ)アフリカ全体として調査の必要な戦略的領域の認定、(ロ)レビュー・メカニズムの設定、(ハ)問題や遅延が認められる場合の対応。


8.結語

 NEPADの目的は、民主主義と安定した経済運営をアフリカ大陸に実現することである。アフリカの指導者たちは、NEPADを通じ、大陸を再建するために、市民及び国際社会と協力することを誓約する。誓約は、平和と安定、民主主義、安定した経済運営、そして人間中心の開発を促進するため、及び参画者が互いにNEPADでなされた合意に責任を持つためになされた。アフリカ開発の鍵はアフリカ自身が握っている。NEPADは、国際社会との間で、互利益と共同責任に基づく真のパートナーシップ追求する。NEPADを通じ、アフリカのやせ衰えた子供達に対し、「21世紀は本当にアフリカ再生の世紀である」という希望を与えよう。

目次

外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省