TICADアジア・アフリカ貿易投資会議
(議長総括:仮訳)
平成16年11月2日
Introduction
- 2004年11月1日、2日に、TICAD III のフォローアップの一環として、TICADアジア・アフリカ貿易投資会議を開催。TICADが93年に政策フォーラムとして誕生してから10年を経て、TICADプロセスが具体的に制度化されてきていることを示すもの。
- 本会議は、TICAD III で発表した日本の対アフリカ協力の3本柱のうち「経済成長を通じた貧困削減」とTICADの特徴である「アジア・アフリカ協力」に焦点を当てた。
- 本会議には、オバサンジョ・ナイジェリア大統領、キバキ・ケニア大統領を始めとするアフリカ48ヶ国、アジア13ヶ国を含む102の国・機関及び90を超える民間セクターの企業・団体から約700人の出席を得た。ホスト国である日本からも小泉総理大臣が出席し、開会演説を行った。
- 二日間に亘る議論の結果として、出席者の間で下記の認識が共有されたと理解する。
Overview
(経済成長を通じた貧困削減)
- アフリカの自立的、持続可能な開発のためには、ODAの拡大のみならず、貿易・投資の拡大を通じた民間セクター開発およびそれを原動力とする経済成長が必須。
- 一方、貿易・投資の拡大を経済成長と貧困削減につなげるためには、適切な産業政策の実施と利益の再分配が必要。
- このような「経済成長を通じた貧困削減」の考え方はTICADの基本哲学であり、全ての出席者に共有された。
(アジア・アフリカ間の貿易・投資)
- アジア・アフリカ間の貿易・投資をはじめとする経済関係での協力は、両地域の相互利益につながる協力。そのような認識を両地域が明確に共有することにより、双方のアジア・アフリカ協力に対するインセンティブを増大することができる。
- アジア・アフリカ間の貿易・投資には、他地域に比べ、顕著な伸びが見られる。情報を共有して、そのパターンや有望なセクターを把握し、より一層の貿易の拡大を図ることが重要。参加国からは、そのために両地域の貿易・投資を促進する機関や金融制度を設立することも提案された。
- 貿易・投資を通じた経済成長の成功例であるアジアの経験を学ぶという観点からも、アジア・アフリカ間の貿易・投資を促進することがアフリカにとって有益。アジアの経験が必ずしも、環境の異なるアフリカに適用できるわけではないが、アジアのオーナーシップは参考とすべき。
- バンドン50周年記念のアジア・アフリカ首脳会議に向けて、TICADでも政治、経済、文化の幅広い交流と協力に基づくアジア・アフリカ間の「新しい戦略パートナーシップ」を後押しする。
(問題の所在)
- アフリカにおけるビジネスの障害としてコストが高いことと、コストの予測ができないことの両側面がある。
- たとえば、一つの国の政府部内で、担当によって対応や方針が大きく異なるなど、予測不可能性に関する問題の多くはガバナンスに起因している。開発のリソースが限られている中でも、強い政治的意思を持てば、これらは今すぐにでも克服することが可能である。
- 一方で、インフラ・人材・法制度の不備・煩雑さなど、実際のコストの高さもアフリカにおけるビジネスの妨げとなっている。これらの問題の解決には、資源も時間も必要ではあるが、アフリカ側が、オーナーシップを持ち、これらの諸問題の解決にあたると共に、開発パートナーが、それを支援することが有効。
- ビジネスの促進を妨げている種々の問題は、産業によって様々。ビジネスの促進のためには、マクロ政策のみならず、実際にビジネスを行っている民間企業からの声を基に、ミクロ・レベルでの対応も必要となる。特にアフリカにおいては、中小企業が多く、このような企業の要望に応えられていない。
(政府の役割)
- 貿易・投資は本来民間の活動。政府の役割はfacilitation。民間が効率的に経済活動を行える外部環境を整備する。長期的観点に立脚したロードマップを持って、限られたリソースを効率的に活用していくため、アジアの経験に学ぶことが有効。
- アフリカが自国の比較優位を戦略的に「造りだす」ためには、産業政策を立案し、それに基づき政府主導で限られたリソースを特定分野に集中させていくことが有効。また、民間の経済活動が当該政策の実施に資するよう、戦略的観点からインセンティブを付与して誘導する。特に自国の経済を客観的に分析して、自ら戦略的に産業を選択的に育成したり、その産業のプロモーションにおける官民の協力など、アジアの経験には参考となるものがある。
- 本会議では、農村地域振興や中小企業振興など、アジアの平等な開発(equitable growth)の取り組みが紹介され、アジアの国から経験の共有への協力が表明された。特にアジアの国から、一村一品型の地域振興政策はアフリカにおいても有効であり、経験を移転するとの積極的な姿勢が見られた。
- アフリカにおける不可逆的な改革努力と着実な進歩は、民間の信頼を得るために不可欠。
- 適切な政策が所期の効果を得るためには、ガバナンスとキャパシティ・ビルディングが重要。特に資源もない中で人材育成に力を注いだアジア各国の努力を参考とすべき。
- 民間企業の誘致は、他の市場(国・地域)との競争。どのようなコスト軽減策やインセンティブを付与できるかが鍵。またアフリカの政府が自ら積極的に情報発信(プロモーション)をすることが必要。このためにTICADを通じて、アジア・アフリカ間の官民のネットワークを強化することが提案された。
Way Forward
(会議の成果:TICADにおける取り組み)
- 会議においては、 各参加者からアジア・アフリカ間の貿易・投資を推進するための様々な提案がなされた。ホスト国である日本からも上記の議論を踏まえて「産業政策」、「商品開発」、「中小企業育成」、「民間企業による社会貢献」を4つを柱として、アフリカの貿易・投資の促進のための提案がなされた。
- 既存の取り組みであるアフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF)などの貿易・投資促進(facilitation)策を統合して、ビジネスを発展させるための包括的ネットワークをTICADとして構築していくことが発表された。その一翼を担うテレビ会議システム(GDLN)を通じ、コナレAU委員長の会議への参加も得た。
- アフリカにおけるビジネス促進のために相互に協力するための指針を謳った政策的文書をNEPADとTICADの間で発出し、両者は本会議の結果も踏まえ、アジア・アフリカ間の貿易・投資の促進のため努力していくことが確認された。
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