TICADIII 議長サマリーのポイント
1. 概観
- TICADプロセスの10周年を記念し、2003年9月29日~10月1日、50ヶ国のアフリカ諸国を含む89ヶ国(23名の国家元首・首相)、47の地域機関及び国際機関の代表の参加を得て、アフリカ開発のための最も重要な枠組みの一つである第3回アフリカ開発会議(TICADIII)が東京にて開催された。
- 小泉総理が、「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」、「平和の定着」を三本柱とする日本の対アフリカ支援方針を表明した。さらに、国連事務総長からのメッセージが読み上げられ、TICAD共催者が開会挨拶を行った。またAU議長であるチサノ・モザンビーク大統領がアフリカを代表して、TICADプロセスの貢献について発言し、TICADIIIのフォローアップメカニズムの設立が提案された。
- NEPAD運営委員会メンバー国の首脳より、TICADプロセスを通じたNEPADへの協力の枠組みが紹介された。さらにアフリカの首脳のスピーチでは、貧困削減のための持続的な経済成長の重要性が強調され、TICADへの期待が表明された。
- TICADIIIは、アフリカ開発、特にアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)に対する国際社会の支援を結集すると共に、国際社会のパートナーシップを拡大させることに成功した。更にTICADIIIでは様々な開発分野における優先課題が特定され、今後のアフリカ開発へ向けた新たなイニシアティヴが採用された。
- 会議では、「TICAD10周年宣言(仮訳(PDF)・英文)」が採択され、平和の定着や人間の安全保障の考え方に基づく開発のアプローチなどが確認された。 TICADプロセスは更に制度化された形で進められ、その成果は定期的にフォローアップされることが決定された。
2. 開発課題
様々な開発分野の中で、以下の分野が特に重要なものとして確認され、これらの分野におけるアフリカの更なる努力と国際社会の支援が求められた。
(1) 平和の定着
- 平和支援活動、紛争予防、紛争原因の特定及び除去のための地域機関やアフリカ諸国のキャパシティ・ビルディング
- 元戦闘員の武装解除、動員解除及び市民社会への復帰(DDR)、難民・避難民支援等の平和の定着のための活動において、コミュニティの再生や人間の安全保障確保といった概念を強調する包括的アプローチを支持。
(2)キャパシティ・ビルディング
- アフリカン・ピア・レヴュー・メカニズム(APRM)への国際的支援の拡大
- ガバナンス向上のための制度構築、行政府及び立法府のキャパシティ・ビルディング
- アフリカ諸国における初等教育の完全普及のための予算配分の増加、及び、教育インフラ及び教育の質の向上に向けた国際的支援の継続
(3) 人間中心の開発
- エイズ、結核、マラリア、ポリオ対策に向けた様々なアプローチ、特にプライマリーヘルスケアへの支援、地域保健システムの構築、保健教育
- コミュニティ・レベルでのオーナーシップと責任を重視した水資源開発・管理、主要流域河川での水資源管理、等
(4)インフラ
- 十分な資金と実施に際しての優先化、NEPAD及びアフリカ開発銀行によるNEPADインフラプロジェクトへの支援
- 地域・準地域案件、官民パートナーシップ(PPP)、情報通信技術(ICT)活用の優先化、等
(5)農業開発
- 生産性向上のための技術支援、ネリカ米の開発・普及の促進等
- 金融、土地、技術など資本へのアクセスの確保、農業生産変動幅の最小化、砂漠化対策
(6)民間セクター開発
- 国内市場の諸制度等、経済環境面でのガバナンス改善
- アジアの経験の移転、中小企業の育成を通じた国内産業基盤の育成
- アフリカとアジアの貿易に関する調査を歓迎
(7)パートナーシップの拡大
- アジア諸国によるめざましい経済成長を可能にしたノウハウと経験の共有
- 農業、キャパシティ・ビルディング、技術移転、貿易・投資におけるアジア・アフリカ間協力のネットワークの構築
- 地域協力強化に向けた地域統合過程を支援するためのキャパシティ・ビルディング
(8)市民社会との対話
- 多様な市民社会は民主主義が機能する上で重要
- 国家・公的機関の取組と市民社会の取組の間の相互補完的関係を認識
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