日本・シンガポール新時代経済連携協定(概要)
平成15年1月
1.協定の目的・効果
- (1)目的
- →両国間の国境を越えた物品・人・サービス・資本・情報のより自由な移動を促進し、経済活動の連携を強化する
- =「経済の国境」を引き下げる
- →貿易・投資のみならず、金融、情報通信技術、人材養成といった分野を含む包括的な二国間の経済連携を目指す
- (2)効果
- →両国の経済市場の緊密化が図られ、一層魅力的な市場が創出される
- →両国の経済が一層活性化され、双方の経済改革に刺激を与える
- →多角的貿易体制を補完・補強する
- →両国の政治外交関係を緊密化し、両国民の相互理解を一層促進する
2.物品の貿易の促進
- (1)関税
- 両国間の貿易量の98%以上に相当する品目の関税を撤廃(2000年、金額ベース)
- ○日本からシンガポールへの輸出にかかる関税は全て撤廃
- ○シンガポールから日本への輸入も約94%は関税率ゼロとなる
- (2)原産地規則
- 第三国からの迂回輸入を防止する
- (3)税関手続
- 税関手続の簡素化、国際的調和のための協力
- (4)貿易取引文書の電子化
- 貿易取引文書の電子的処理を促進する
- (5)相互承認
- 輸入国において必要な電気通信機器及び電気製品に関する適合性評価手続を輸出国において実施することを可能にすることを通じ、貿易の円滑化を図る
3.人の移動の促進
- (1)人の移動
- 商用目的の人々の移動の容易化、職業上の技能の相互承認
- (例)商用目的の人々の入国及び滞在を双方で容易なものにする技術者資格等の職業上の技能を相互に認める
- (2)人材養成
- 学生・教授・公務員等の交流を促進する
- (3)観光
- 双方の観光客の増大を促進する
- (4)科学技術
- 研究者等の交流を促進する
4.サービス貿易の促進
- (1)サービス
- 両国間において、WTOでの約束水準を越えた自由化を行う
(WTOでの約束分野数) |
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(日シンガポール間の約束分野数) |
102 |
日本 |
134 |
62 |
シンガポール |
139 |
- ただし、受益者の範囲を定め、迂回が生じないようにする。
5.資本・情報の移動の促進
- (1)投資
- 投資家・投資財産の保護、投資に係る内国民待遇の原則供与、収用の際の補償の適正化、送金の自由
- →両国の投資家が相互に投資を行いやすい環境を整備
- (2)知的所有権
- 日本国特許庁における特許審査情報をシンガポール知的所有権庁に提出することでシンガポールでの特許付与手続を円滑化
- (3)金融サービスに関する協覧
- 両国及びアジアの金融資本市場の発展並びに市場インフラの整備の促進のための協力
- (4)情報通信技術
- 情報通信技術及び関連サービスの発展の促進(認証事業者の認定・承認手続の円滑化等)
- (5)貿易及び投資の促進
- 両国企業間の貿易及び投資の促進に関する協力(使節団派遣・セミナーの共同実施、第三国調査団の共同派遣、データベース共有等)
- (6)中小企業
- 両国の中小企業間の協力(ビジネス・サポート・センターの設立等)
(参考)従来の経緯
(1)1999年12月、小渕総理(当時)とゴー・チョクトン・シンガポール首相の首脳会談で、産学官の専門家による検討会合の設立に合意。
(2)これを受け両国の産学官からの参加者を得て計5回の検討会合を開催。最終会合でまとめられた報告書は2000年9月29日に総理に提出された。
(3)2000年10月22日、森総理(当時)及びゴー首相が東京において会談を行い、本協定の交渉を開始することに合意。両首相は、協定締結のための正式な交渉を2001年1月に開始し、モメンタムを失わないために合理的に短い期間内、遅くとも2001年12月31日までに終了すべきことを決定。
(4)2001年1月より政府間協議を開始、同年中に本交渉を4回、非公式協議を12回にわたり開催、両国政府の間で精力的に交渉が行われた。その結果、2001年10月の上海APECの際に行われた日シンガポール首脳会談の際、交渉を成功裡に終えた旨、及び署名のため2001年末までに本協定を完成させるべきである旨の共同発表を行った。
(5)2002年1月小泉総理の東南アジア諸国訪問の際、シンガポールにおいて、ゴー・チョクトン首相との間で、協定に署名を行った。
(6)2002年5月8日に国会の承認を得て、同年11月30日に発効した。
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