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大英図書館及び
ケンブリッジ大学所蔵の地図に関する調査


平成15年9月

1.調査目的

(1) 我が国は、「日本海」という呼称が正当なものであることを一貫して主張しており、その主要な論拠として以下の3点を挙げている。

(イ) 「日本海」という呼称が、現在、国際的に確立していること。

(ロ) 歴史的に見ても、「日本海」という名称は19世紀初頭からヨーロッパの地図において定着してきたものであること。

(ハ) 地理的命名法からも、「日本海」という名称は妥当であること。

(2) このうち、上記(ロ)の歴史的観点については、国土地理院の研究者2名がヨーロッパで発行された200枚以上の古地図を調査した結果、18世紀末頃まで、この海域には「中国海」、「東洋海」、「朝鮮海」、「日本海」など多様な名称が使われていたが、19世紀初頭から、ヨーロッパの地図を中心に、「日本海」の名称が他を圧倒して使われるようになった事実が確認されている(注1)。これは、18世紀末から19世紀初頭にかけて、仏、英、露等の探検家が日本海周辺を探検し、日本海が日本列島によって太平洋から切り離されているという地理的形状が明らかとなったためであると考えられており、この考え方は、多くの研究者によって支持されている。

注1 外務省作成の「日本海」パンフレット参照。

(3) 外務省は、この主張の正当性を更に検証するため、豊富な地図資料を所蔵する大英図書館及びケンブリッジ大学において、特に19世紀初頭から中期に発行されたヨーロッパの地図の中で「日本海」という呼称が定着しているかどうかについて調査を行うこととした。

(4) なお、この調査の背景には、韓国側が「『日本海』の名称が支配的になったのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果である」及び「19世紀の中期から末期までは『東海』と『日本海』の双方の名称が世界地図の中で普通に使われていた」と主張していることがある。韓国側は、その根拠として独自に行った大英図書館及びケンブリッジ大学所蔵古地図調査をあげており、その調査によれば、1801年から1861年の間に発行された地図については、大英図書館には日本海周辺を含むものが1枚も所蔵されておらず(注2)、また、ケンブリッジ大学には、6枚のみ(うち5枚が「朝鮮海」、1枚が「日本海」)である(注3)こととなっていた。

注2 Lee Ki-suk, Kim Shin, Soh Jung-chul, “East Sea in World Maps”, The Society for East Sea, (Seoul:2002)pp.95-112

注3 ibid.pp.113-126


2.調査概要及び結果

(1) 調査概要

 外務省は、大英図書館が所蔵する地図について2002年10月から12月にかけて、また、ケンブリッジ大学が所蔵する地図について2002年12月から2003年6月にかけて、以下のような調査を行った。

(イ) 我が国の在英国大使館から調査員を大英図書館及びケンブリッジ大学に派遣し、所蔵品目録等を活用して、1801年から1861年の間に発行された地図で日本海周辺が掲載されている可能性のあるものを調査した。

(ロ) 条件に該当した地図を実際に閲覧して、日本海の記載状況を確認した。

(ハ) 閲覧した地図のリストを作成するとともに、それぞれの地図の写真を入手した。

(2) 調査結果

 調査結果は、以下のとおりである。

(イ) 大英図書館が所蔵する地図に関する調査結果

(i) 大英図書館が所蔵する1801年から1861年にかけて発行された古地図のうち日本海周辺を含むものが37枚あることが確認された(注4)これは、大英図書館が所蔵する同時期に発行された古地図は0枚であるとする韓国側の調査結果を完全に覆すものであった。

(ii) この37枚のうち、32枚において発行国の言語で「日本海」(Sea of Japan、Mer du Japon等)と記載され、5枚において「朝鮮海」(Gulf of Corea 、Mer de Coree等)と記載されていた(リスト別添1)。なお、「東海」(East Sea)と記載された地図は存在しなかった。

(iii) この37枚の発行国は、イギリス15枚、フランス10枚、ドイツ7枚、イタリア2枚、オーストリア、オランダ、日本各1枚であった。

(ロ) ケンブリッジ大学が所蔵する地図に関する調査結果

(i) ケンブリッジ大学が所蔵する1801年から1861年にかけて発行された古地図のうち日本海周辺を含むものが21枚あることが確認された(注5)。これも、ケンブリッジ大学が所蔵する同時期に発行された古地図は6枚のみとする韓国側の調査結果と大きく食い違うものとなった。

(ii) この21枚のうち、18枚において発行国の言語で「日本海」と記載され、3枚において「朝鮮海」と記載されていた(リスト別添2)。なお、「東海」(East Sea)と記載された地図は存在しなかった。

(iii) この21枚の発行国は、イギリス10枚、フランス4枚、ドイツ3枚、イタリア2枚、オランダ1枚、日本1枚であった。

(ハ) 調査結果を地図の発行年代別に示せば、表1のとおりである。これによって、19世紀初頭から中ごろに発行されたヨーロッパ各国の地図において、「朝鮮海」の名称が多く使われているのは、一部例外を除いて、19世紀の最初の10年間であり、その後は「日本海」の呼称が圧倒的に多くなっていることは明らかである。また、韓国側調査と日本側調査の相違を図示すれば表2のとおりである。

表1

表2

注4 図書館の目録上は、該当する地図又は地図帳は36枚/冊であったが、重複する地図が1枚あったのでこれを除外した。また、日本海周辺の地図を2枚掲載する地図帳が2冊あったが、地図帳それぞれを1枚の地図として数えたため、計37枚となった。

注5 ケンブリッジ大学の目録上は、該当する地図又は地図帳は25枚/冊であったが、重複する地図が4枚あったのでこれを除外した。

注6 発行年代が1833-1853年の間としか特定できない2枚の地図は、便宜上1831~1840年の欄に入れた

注7 発行年代が1830年と思われる1枚の地図は、便宜上1821~1830年の欄に入れた。


3.結論

 今回の日本側調査を踏まえた結論は、以下のとおりである。

(1) 今回の調査では検証しなかったが、18世紀末以前のヨーロッパの地図では、日本海海域の名称として、「日本海」、「朝鮮海」、「東洋(オリエント)海」(注8)など様々な名称が使用されていた模様である。これは日本側学者が日本国内に所在するヨーロッパ地域で発行された古地図に対して行った研究からも明らかである(外務省作成のパンフレット「Sea of Japan」参照)。

(2) 今回の日本側調査により、18世紀末以降のヨーロッパで作成された地図においては、「日本海」という名称が圧倒的に多く使用されていることが確認された(大英図書館所蔵古地図では86.5%に当たる32枚が、ケンブリッジ大学所蔵古地図では同じく85.7%に当たる18枚が「日本海」と記載していた)。

(3) したがって、大英図書館及びケンブリッジ大学の所蔵するヨーロッパで発行された古地図に対する調査においては、「『日本海』という名称は、我が国が鎖国下にあって国際的影響力を行使できなかった18世紀末から19世紀初めにかけてヨーロッパにおいて定着したものである」という日本側の主張が確認された。また、「『日本海』の名称が支配的になったのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果である」、「19世紀の中期から末期までは『東海』と『日本海』の双方の名称が世界地図の中で普通に使われていた」とする韓国側の主張には根拠がないことが明らかとなった。

注8 ただし、18世紀以前の古地図に使用されている「東洋(オリエント)海」という名称は、「西洋の海」に対する「東洋の海」という意味であって、これを「東海」と同義とする韓国側の主張は合理的でない。



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