日本海呼称問題
(仏国立図書館の地図に関する調査)概要
平成16年3月11日
1.外務省は、昨年10月から本年1月にかけて、仏国立図書館が所蔵する地図のうち、16世紀から19世紀の間に主にヨーロッパで発行された地図において、日本海域の名称がどのように記載されているかについて調査を行った。この調査は、「『日本海』という名称は19世紀初頭からヨーロッパの地図において定着してきた」という我が国の主張を確認するためのものであった。
2.これに対し、韓国側は「『日本海』の名称が支配的になったのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果である」(注1)及び「17世紀から19世紀まで、西洋人は、この海域について様々な名称を使用したが、韓国に言及した名称を使用した地図が最も多い」と主張し(注2)、その根拠として独自に行った仏国立図書館が所蔵する古地図の調査を挙げている。同調査によれば、16世紀から19世紀の間に発行された地図515枚を調査した結果、日本海海域に海の名称の記載のあるものは115枚であり、このうち62%に当たる71枚が、「朝鮮海(Mer de Coree)」又は「東海(Mer Orientale)」と表記しており、「日本海(Mer du Japon)」と表記した古地図は19%に当たる22枚であることとなっていた(注3)。
注1: |
Lee Ki-suk, Kim Shin, Soh Jung-chul, "East Sea in World Maps", The Society for East Sea,(Seoul:2002)pp95-112 |
注2: |
The Ministry of Foreign Affairs and Trade, The Ministry of Maritime Affairs and Fisheries, The Korean Overseas Information Service of the Government Information Agency, "EAST SEA The Name EAST SEA Used for Two Millennia",(Republic of Korea:April 2003)pp4-11 |
注3: |
朝鮮日報2003年3月11日、中央日報2003年3月11日 |
3.外務省が今回実施した仏国立図書館所蔵地図に関する調査結果は以下のとおりである。
(1) |
仏国立図書館が所蔵する地図のうち16世紀から19世紀の間に発行された地図1,495枚を調査した結果、日本海海域に海の名称の記載のあるものは407枚あり、そのうち「日本海」と表記されているものは249枚、「朝鮮海」と表記されているものは60枚であることが判明した。なお、「東海」と記載された地図は発見されなかった(注1)。(リスト別添(PDF))
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(2) |
19世紀前半に発行された地図では、全体の90.0%に当たる99枚が、19世紀後半に発行された地図では、100%に当たる105枚が、「日本海」と表記していた。
注1: |
韓国は、「East Sea」はユーラシア大陸から見て「東にある海」を意味すると主張している。しかし、「Oriental」は「Occidental」の反意語であって、単なる方位である「East」と同列に扱うべきではない。したがって、韓国側調査では、「Mer du Orientale」を「東海」と分類しているが、今回、外務省が行った調査では「東洋海」と分類した。
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(表)仏国立図書館所蔵地図調査結果(注)
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1550-
1600 |
1601-
1650 |
1651-
1700 |
1701-
1750 |
1751-
1800 |
1801-
1850 |
1851-
1900 |
不明 |
17C |
18C |
19C |
合計 |
割合 |
日本海 |
0 |
2 |
12 |
9 |
10 |
99 |
105 |
10 |
0 |
5 |
2 |
254 |
62.0% |
東洋海 |
0 |
6 |
8 |
3 |
0 |
0 |
0 |
8 |
6 |
1 |
0 |
32 |
7.8% |
朝鮮海 |
2 |
0 |
1 |
12 |
36 |
6 |
0 |
7 |
3 |
1 |
0 |
68 |
16.6% |
その他 |
5 |
19 |
6 |
3 |
2 |
5 |
0 |
4 |
11 |
1 |
0 |
56 |
13.7% |
合計 |
7 |
27 |
27 |
27 |
48 |
110 |
105 |
29 |
20 |
8 |
2 |
410 |
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(グラフ)仏国立図書館所蔵地図に関する調査結果(日本側調査と韓国側調査の比較)
注: |
仏国立図書館所蔵地図のうち、発行時期が完全に特定できないものが4枚あった。これらは便宜上、1650年代となっているものを17世紀前半に、1737-1772年となっているもの及び18世紀後半となっているものを18世紀後半に、1880年代となっているものを19世紀後半として計算した。
なお、「日本海・東洋海」と表記された地図2枚についてはこれを日本海に含めることとし、「東洋海・朝鮮海」と表記された地図5枚についてはこれを朝鮮海に含めることとした。また、「日本海・朝鮮海」と表記された地図3枚については、日本海と朝鮮海それぞれに3枚ずつ含めることとした。その結果、表及びグラフでは、日本海と表記された地図の枚数が254枚(249+2+3)、朝鮮海と表記された地図の枚数が68枚(60+5+3)、全体の地図の枚数が410枚(407+3)となっている。
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4.今回の日本側調査の結論は、以下のとおりである。
(1) |
18世紀までのヨーロッパの地図では、日本海海域の名称として、「日本海」、「朝鮮海」、「東洋海」、「中国海」等様々な名称が使用されていた。
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(2) |
19世紀以降に主にヨーロッパで発行された地図においては、「日本海」という名称が圧倒的に多く使用されていることが確認され、「『日本海』という名称は、我が国が鎖国下にあって国際的影響力を行使できなかった19世紀からヨーロッパにおいて定着してきたものである」という日本側の主張が改めて確認された。
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(3) |
なお、仏国立図書館所蔵地図に関する韓国側の調査は、同図書館が所蔵する地図の一部についてのみ行った不十分なものであり、かつ、これを根拠とした「『日本海』の名称が支配的になったのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果である」、「17世紀から19世紀まで、西洋人は、この海域について、様々な名称を使用したが、韓国に言及した名称を使用した地図が最も多い」という韓国側の主張には根拠がないことが明らかとなった。
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