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在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウム


平成16年3月


1.シンポジウム概要

 2004年、3月10日、外務省国際会議場において、在日ブラジル人の教育問題に関するシンポジウムが開催された。シンポジウム開催の背景、シンポジウムの概要は以下の通りである。

(1) 背景

 我が国に滞在する在日ブラジル人の数は2002年現在約27万人に上っており、そのほとんどは主に就労を目的として来日している日系ブラジル人である。日系ブラジル人のいわゆる出稼ぎ現象は1980年代後半に始まったが、1990年6月に「出入国管理及び難民認定法」が改正され、日系人が日本に入国するための法的関係が明確化された(日系三世までの者に日本への定住が認められた)ことを要因として滞在者の数が急激に増加した。その数は、現在、在日外国人コミュニティーの中では在日韓国・朝鮮人、中国人に次ぐ第3位となっている。(在日ブラジル人数の推移は別添参照)。

 在日ブラジル人の数の増加と共に滞在期間が年々長期化している。2002年、産業雇用安定センターが実施した在日ブラジル人就労者を対象にしたアンケート調査では、就労者の65%以上が5年以上の滞在となっており、10年以上滞在する人も約28%に上っている。滞在の長期化に伴い、日本の文化・習慣への適応、子弟教育、青少年の犯罪増加、就労環境(就労をめぐるトラブルや医療保険、年金未加入の問題など)など様々な分野で問題が表面化し、在日ブラジル人が日本社会にいかに適応し地域社会と共生していくかが大きな課題となっている。

 これらの様々な問題の中で、教育問題が大きくクローズ・アップされている。在日ブラジル人27万人のうち就学年齢にあるブラジル人子弟の数は約5万人にも達し、日本の公立学校教育においては日本語学習や適応などの問題、ブラジル人学校においては学校認可問題、教育方針などの課題を抱えている。また、学校への不適応などを要因とする不就学児童の増加(推定約1万5千人)は最も深刻な問題となっている。不就学に伴う青少年犯罪の急増も深刻である(青少年犯罪では在日外国人の中でブラジル人が一位)。

 外務省では、平成12年度より、毎年、在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウムを行ってきた。昨年は、就労問題、教育問題および出入国管理・登録という3つのテーマに亘り議論を行ったが、前述の通り、教育問題の重要性に鑑み、本年は、この問題にテーマを絞り、文部科学省、ブラジル政府など関係者の協力を得てシンポジウムを開催する事となった。

(2) (2) シンポジウムの概要

 シンポジウムは、1)開会式、2)基調講演、3)報告、4)パネル・ディスカッションの4部構成で行われ(プログラムは末尾参考)、会場は終日満員となり、この問題に対する関心の高さが伺われた(出席の事前登録の段階で定員を大幅にオーバーしたため、数十名の希望者にはやむを得ず出席をお断りするほどであった)。都内のみならず、地方からも多くの参加者があったこともこの問題に対する関心の高さを示している。

 冒頭開会式においては主催者を代表し松宮勲外務大臣政務官が、また、ブラジル側を代表しイヴァン・カナブラバ在京ブラジル大使が挨拶を行った。続いて、昨年のシンポジウムの座長を務め、また、海外交流審議会の外国人問題部会の会長である手塚和彰千葉大教授及びブラジル教育省のヴィトリア・クリーヴェル国際問題担当局長が基調講演を行った。なお、ブラジル連邦政府からのシンポジウム参加は今回が初めてであったが、基調講演では、ブラジル政府としてこの問題に真剣取り組んでいくとの考えが表明された。

 今回のシンポジウムにおける大きな特徴は、現場からの報告が多く行われたことである。地方自治体や公立学校、ブラジル人学校などの教育の現場や、これらを支援している関係団体・NPO組織など地域社会において教育問題に直接携わっている様々な関係者から現場の生の報告を聞くことにより、抱える問題、取組状況、要望などにつきより理解を深める貴重な機会となった。また、当事者同士がお互いの活動や問題点につき情報を共有し合うためにも有益な場となったとの声も聞かれた。

 静岡県浜松市からは、児童学習サポート協議会佐藤邦子事務局長より、不就学・不登校状態の解消のため支援活動(カナリーニョ教室事業)を中心とした、自治体、学校、ボランティア、企業などが一体となった取り組みにつき報告され、これらの支援の結果多くの不就学・不登校児童が学校に復帰したというポジティブな例も紹介された。群馬県大泉町大泉南中学校井上千恵実教諭よりは、大泉町で実施した2年がかりでの不就学実態調査の結果報告や今後の不就学支援のあり方について報告が行われた。不就学実態調査では、小学校より中学校(特に高学年)に不就学が多く見られることや、不就学の主な理由として、帰国予定、言葉の問題、経費の問題などが挙げられた。愛知県豊田市からは、正木健之専門監より、豊田市における国際化の状況、外国人との共生に関する官民が一体となった施策につき、また、現在豊田市が事務局を務めている「外国人集住都市会議」(注)としての取り組みにつき報告が行われた。

(注)外国人集住都市会議参加都市:静岡県浜松市、磐田市、湖西市、富士市、愛知県豊橋市、豊田市、三重県四日市市、鈴鹿市、上野市、群馬県太田市、大泉町、岐阜県大垣市、可児市、美濃加茂市、長野県飯田市(15都市)

 NPO「在日ブラジル人組織(CB-SABJA)」のモウリ・ヨシコ代表からは、不就学児童への様々な支援活動が報告されるとともに、地域と共同で行っている子供たちの交流プログラムの結果、青少年犯罪率の大幅な減少に繋がったという希望的な話題も提供され、この分野におけるボランティア活動の重要性が改めて認識された。

 サンパウロの日伯文化協会吉岡黎明第一副会長からは、ブラジル日系社会においても在日ブラジル人子弟の教育の問題が極めて深刻に受け止められており、日系団体が中心となった支援組織の設立を決定した旨紹介された。また、父兄が教育の重要性を充分認識することが不可欠であるという問題提起があった。

 これまでのシンポジウムになかった試みとして、初めて、教育を受ける側の立場からの報告が行われた。ペルー人のペドロ・エマニュエル君(埼玉大学2年生)が、自らの体験(日本の公立中学・高校から正規の試験で国立大学に合格した体験など)を交え、日本社会に早く溶け込む事の重要性や、日本の大学で学ぶ外国人学生への支援の必要性を訴えた。

 昨年に続き在日ブラジル人学校協会の会長としての参加となったペドロ・メンデス・ ピタゴラス校校長は、日本における教育を受ける事の重要性につき訴えるとともに、ブ ラジル人学校に学ぶ生徒(約3600人)の95%は中学生までであり、在日ブラジル 人のほとんどは高等教育を受けるに至っていないという実態を改善することが望まれる との報告などがあった。これに関して、本年1月に、文部科学省の決定により、在日ブ ラジル人学校のうち19校に対して、大学受験資格が付与されたことによりどのような 改善がみられるかが今後注目される。

 最後のパネル・ディスカッションにおいては、これまでのような学識経験者、政府関 係者に加え、昨今経済界の関与・支援も益々期待されてくるとの観点から、経団連からの参加も得た。「教育における問題点とその対応策について」をテーマにした議論は予定を超えて約3時間に及び、目標を絞り、具体的成果をめざした討論が行われた。その結果、行政、学校、関連企業、地域社会、NPOが連携し、例えば以下の事項につき、すぐにできる身近な支援から着手し、これを積み上げていくことが重要であるとの認識で一致した。

  • 日本語指導の充実(専門家の育成)。ブラジル人学校でも日本語教育が必要。
  • 日本の学校制度など教育に関する十分かつ効果的な情報提供(在外公館の関与としては、これから日本に行く人への情報提供、日本語教育支援が可能)
  • 高校、大学の特別選抜、奨学金の検討
  • NGO、NPO支援
  • ブラジル人学校支援(空き教室、企業のスポーツ施設等の提供等)
  • 不就学実態の総合的把握(不就学の率、理由、展望など)を行った上で、適切な対処法を検討
  • 通信教育の活用、夜間中学の検討
  • JETプログラムの活用
  • 両国政府が引き続き緊密に協力することが重要

 最後に、小野埼玉大学教授(モデレーター)より、本日提起された具体的提言が、今後の海外交流審議会においてもとりあげられ、その速やかな実現を見ることを要望するとの発言があり締めくくられた。

2.在日ブラジル人に関する諸問題への取り組みの重要性

 在日ブラジル人にかかる諸問題については、その重要性に鑑み、これまで、以下のように関係省庁、地方自治体、民間、ブラジル政府等による様々取り組みが行われてきている。3月末に行われたアモリン・ブラジル外相の訪日においても、アモリン外相より小泉総理、川口外相、河村文部科学大臣などに対してブラジル政府としてこの問題を極めて重視していることが改めて指摘された。日伯外相会談では、両国外相の間で、日伯両国政府が協力してこの問題に取り組んでいく事が確認された。

【諸問題に対する様々な対応例】

【全般】
  • 外国人労働者問題関係省庁連絡会議の開催(内閣官房)
  • 在日ブラジル人に関する諸問題のシンポジウム開催(平成12年~)(外務省)
  • 海外交流審議会(外国人問題部会)の開催(外務省)
  • 「外国人受け入れ問題に関する提言」(経団連、2004年4月)

【就労】
  • 日系人への職業紹介・相談、求人情報の提供等(ハローワーク、日系人雇用サービスセンター(CIATE))
  • ポルトガル語パンフレットの作成
  • 日系人失業者、不就労日系人若者に対するキャリア形成支援

【教育】
  • 「取り出し授業」(特別授業)の実施
  • ブラジル人学校への大学受験資格認可(平成16年1月)(文科省)
  • 義務教育におけるポルトガル語要員配置(地方自治体)
  • 不就学児童の実態調査(文科省、地方自治体)
  • 義務教育終了認定試験の実施(ブラジル教育省、1999年より毎年実施)
  • ブラジル人学校に対する教育省の認定(ブラジル教育省)
  • ブラジル人学校の認可基準緩和(浜松市、平成16年4月)
  • 「教育問題に関するシンポジウム」の開催(外務省、平成16年3月)
  • 不就学児童支援・対策(浜松市「カナリーニョ教室」、NPO等)

【地域社会】
  • 「外国人集住都市会議」の発足(2001年)(浜松市、大泉町など15都市)
  • 市役所等にポルトガル語相談要員配置(浜松市、豊田市他)
  • その他様々な多文化共生、国際化推進事業の実施(日本語講座、ポルトガル語ガイドブック、ニュースレターなどの情報提供、通訳派遣、外国人相談など)

【在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウムプログラム】

開会式(9:30-9:50)

主催者挨拶(松宮勲外務大臣政務官)
イヴァン・カナブラバ在京ブラジル大使


基調講演(9:50―10:20)

日伯関係と在日ブラジル人子弟の教育問題
ブラジル教育省 国際問題担当 ヴィトリア・クリーヴェル局長
在日外国人にかかる諸問題
手塚和彰千葉大教授(海外交流審外国人問題部会長)


報告(10:30―12:10、13:40―14:20)

「地域社会における外国人教育の取り組み」(10:30―11:30)
1)浜松市: 外国人学習サポート協議会佐藤邦子事務局長「外国人児童学習サポート教室事業について」
2)群馬県大泉町: 大泉町立南中学校井上千恵実教諭 「不就学外国籍児童生徒の実態把握と就学支援のあり方」
3)豊田市: 社会部 正木健之専門監 「豊田市及び集住都市会議の取組」


「在日ブラジル人子弟への学習支援)(11:30―12:10)
1) Sabja在日ブラジル人支援組織モウリ・ヨシコ代表「不就学児童支援活動」
2) 吉岡黎明ブラジル日本文化協会第一副会長「ブラジルでの取り組み」
(休憩)


「日本における教育体験談」(13:40―14:00)
埼玉大学経済学部2年 ペラエス・トミダ・エマニエル


「ブラジル人学校の実態、抱える諸問題」(14:00―14:20)
ペドロ・メンデス在日ブラジル人学校協会会長(ピタゴラス日本校校長)


パネル・ディスカッション「教育における問題点とその対応策について」
(14:30―17:00)コーヒーブレイク 15:30-15:45)

モデレーター: 小野五郎埼玉大学教授
パネリスト : 佐藤郡衛東京学芸大学教授
渡辺雅子明治学院大学教授
池上重弘静岡文化芸術大学助教授
吉岡黎明ブラジル日本文化協会第一副会長
井上洋経団連社会本部総合企画グループ長
山脇良雄文部科学省国際教育課長
藤村和広外務省中南米局中南米第一課長

目次

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