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イラクにおける大量破壊兵器問題
(参考)


平成15年10月


1.大量破壊兵器に関するイラクの「実績」

 イラクは湾岸戦争までに、以下のとおり大量破壊兵器を開発・保有し、使用した。

イラン・イラク戦争でマスタードガスおよび神経ガスをイランに使用。
イラン・イラク戦争中に自国内のクルド人に対して化学兵器を使用。
湾岸戦争前までにマスタードガス、神経剤のサリン及びタブンを含む大量の化学兵器を保有。
湾岸戦争以前に高度な生物兵器戦計画を有し、炭疸菌やボツリヌス毒素等の生物剤を保有。また、ミラージュF1戦闘機からの生物剤散布実験等を実施。
核兵器開発の緊急計画を秘密裏に推進。湾岸戦争後にIAEAは、イラクが複数のウラン濃縮技術の実験を行っていたと結論づけた。
湾岸戦争前までにスカッドミサイルを含む有力なミサイル戦力を保有。また、大量破壊兵器の運搬が可能な、広範かつ高度なミサイル開発を推進。
湾岸戦争中、化学兵器・生物兵器を実戦用に準備。(米国の報復警告で使用を断念。)

2.湾岸戦争の停戦条件(1991年4月)

 米国等の多国籍軍に惨敗したイラクは、クウェートの不可侵などとともに停戦条件として、以下のとおり大量破壊兵器の完全廃棄を受け入れた。(→安保理決議687)

核、化学、生物兵器及び弾道ミサイル(射程150km超)の廃棄
このための研究・開発・生産設備等の廃棄
将来にわたってもこれらを開発しない約束

3.国連査察に対するイラクの欺瞞と査察回避行動

 91年以降実施された国連査察に対し、イラクは以下のとおり偽証・妨害等を続けた。

数百の化学器具を平和目的と主張 化学兵器生産用と判明
生物剤の存在否定 1995年(元イラク軍中将フセイン・カメルの亡命で)発覚
アル・ハカム工場(飼料工場と主張) 生物兵器工場と判明
NPT加盟国として核兵器開発を否定 核兵器開発計画が(フセイン・カメルの亡命で)発覚
弾道ミサイル 1995年、ヨルダンでイラク向けのミサイル制御部品の密輸発覚
1996年、初めてUNSCOMに資料提出
査察団のヘリ奪取を策し、墜落の危機
査察団の立入を拒む間に証拠物件をトラックで持ち出す等、証拠隠滅工作
1997年、「機微な」場所、特に「大統領サイト」への立入拒否・・・「大統領サイト」は全国に60~80ヶ所(ゴルフ場サイズのものも存在)
1998年10月、UNSCOMへの全面協力停止を決定し、その結果、国連査察団は国外退去(2002年11月のUNMOVICによる査察再開まで、4年間にわたり査察活動は中断)

4.UNSCOM/UNMOVIC報告による主なイラクの大量破壊兵器疑惑

 UNSCOMによる査察活動(1991~1998年)を取りまとめた報告で指摘された多数の疑惑は、UNMOVICによる査察活動(2002年11月~2003年3月)においてもほとんど解明されなかった。更に、イラクが安保理決議違反ではないと主張していたアルサムード2ミサイルの射程距離が、安保理決議に違反していると認定された。

(1)化学兵器

品目  UNSCOM報告 UNMOVIC報告
イラクの自己申告した生産(取得)量等 廃棄実績等 評価(残る主要な疑惑) 評価
化学兵器弾薬
(砲弾等)
約56000発
(湾岸戦争以後にUNSCOMにより確認された保有量)
約40000発
(UNSCOM監視下で廃棄)
 
約900発
(約15000発が通常兵器に転用されたことは確認)
300個~350個のR-400爆弾、550発のマスタード砲弾が行方不明
化学剤:
マスタード、
サリン、タブン等
約3860トン 411トン
(UNSCOM監視下で廃棄)
イラクは、大量の化学兵器(化学剤や弾薬)を一方的に廃棄したと主張しているが、根拠文書等がなく、検証されていない。 ・6526発の空中投下爆弾(化学剤約1000トンに相当)に関する行方が不明。(主にマスタード、更にサリン、タブン)
・湾岸戦争中破壊されたとする160個の空中投下爆弾(サリン)については疑問が残る。また、イラクがサリン類の生産能力を有する可能性あり。
・イラクはタブン30トンを廃棄したと申告したが、残っている可能性あり。
VX
 
3.9トン
 
1.5トン
(イラク申告量)
2.4トン以上が未確認 ・廃棄量については検証が出来ていない。
化学剤前駆物質
(※前駆物質とは、化学反応において目的とする生成物の前段階にある一連の物質)
約3920トン 2610トン
(UNSCOM監視下で廃棄)
約1300トン以下
(イラクが湾岸戦争で破壊、または一方的に廃棄したと申告したものの量は未確認)
・VXの主要な前駆物質の計量に重大な不一致が存在。
・タブン、ソマン等の前駆物質の申告、説明が不十分


(2)生物兵器

品目 UNSCOM報告 UNMOVIC報告
イラクの自己申告した
生産(取得)量等
評価(残る主要な疑惑) 評価
ボツリヌス毒素 約19000リットル 約19000リットル以上
(申告の裏付けがなく、申告量の2倍は生産されたと考えられる。また、イラクが一方的に廃棄したとする数量は確認できない。)
・イラクは、生産されたボツリヌス毒素の合計は、19000リットルと申告しているが、UNSCOMは量が確認出来ず少なくともその2倍を生産することも可能であったとしている。
・アル・フセインミサイルの弾頭及びR-400爆弾に充填されたことに疑問はないが、実際の数値は不明。
炭疸菌 約8400リットル 約8400リットル以上
(申告の裏付けがなく、申告量の3倍は生産されたと考えられる。また、イラクが一方的に廃棄したとする数量は確認できない。)
・イラクは炭疽菌の合計生産量を8445リットルと申告しているが、更に湾岸戦争中に7000リットル生産したとの情報がある。
・約10000リットルの炭疽菌が廃棄されず残っていると考えられる。
アフラトキシン 2200リットル 2200リットル以下
(申告の裏付けがなく、申告量は生産できなかったと考えられる。また、イラクが一方的に廃棄したとする数量は確認できない。)
・イラクの申告によれば、2200~2390リットルのアフラトキシンを製造したとされるが、記録が無く確認できない。
生物兵器弾薬(爆弾等) 225発 157発以上
(イラクが一方的に廃棄したとする数量は確認できない。)
・検証可能な情報不足のため、イラクの申告を検証できない。


(3)弾道ミサイル

品目 UNSCOM報告 UNMOVIC報告
イラク申告量
(湾岸戦争以後の保有量)
廃棄実績等 評価(残る主要な疑惑) 評価と廃棄実績
スカッドミサイル 819基 817基
(UNSCOMにより使用・廃棄を確認)
2基所在不明 ・UNSCOMは819基のうち2基を除き、使用・廃棄が確認出来たと報告したが、14基の使用について確認出来ていない。
・弾頭約50発についても廃棄が確認出来ていない。
その他のミサイル イラクのミサイル計画は、湾岸戦争とその後の査察で打撃を受けたが、ミサイルの製造計画をあきらめていないと見られる。 ・アル・サムード2ミサイルについては、評価の結果、射程距離が150Kmを超え安保理決議違反と認定。保有91基のうち66基を廃棄。(その他、ミサイルエンジン、発射台等も廃棄)
生物・化学兵器用特殊弾頭 75発 30発
(UNSCOM監視下で廃棄)
45発
(イラクが一方的に廃棄したと申告した数量が未確認)
・申告数が何度も変わっており、信頼性に疑問あり。
ミサイル推進剤(燃料等) 約4120トン 約3170トン以下(UNSCOMにより使用・廃棄を確認) 500トン以上
(イラクが一方的に廃棄したと申告した数量が未確認)
・スカッドミサイルの液体燃料の廃棄等について確認できない。


UNSCOM及びUNMOVIC報告によるイラクの大量破壊兵器疑惑(主なもの)(PDF)


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