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在サマーワ連絡事務所より

平成16年11月

 我々サマーワ事務所員3名は航空自衛隊の空色に塗られたC-130輸送機の中で小さな窓からイラクの大地が離れていく姿を見ていた。皆、クウェートに向けて飛んでいる間、無言で各々の考えに耽っていたが、私は体中から吹き出している汗を拭きつつ、心地よい疲労感とこれまでサマーワでやってきたことを走馬燈に思い出していた。

「どうして、サマーワの地に来てしまったのか?」
 イラク復興支援を通じて短い1ヶ月()の間であるが、何か残るものを自分の手で残したい。また、イラクで犠牲になった外務省員の1人が私の友人に残したという言葉、「青年よ、荒野を目指せ!」が、この出張の話が来た際になぜか心の底に残っていたからだ。もう青年でなくなってしまったが、私は今確かに荒野で仕事をしている。そしてウィーンでの平和で文化的な生活から一時離れて希望してこの地にきたことを自分に納得させる毎日だ。
:同書記官は、サマーワにて7月上旬~8月上旬の約1ヶ月間勤務した

 サマーワの陸上自衛隊宿営地では陸上自衛隊員と5名の外務省員が共に灼熱の太陽と砂塵に悪戦苦闘しながら復興支援活動を行っている。外務省としては主に経済協力を進めていくことだ。私の主な仕事は経理、通信、事務所の管理だが、発電機が壊れたり、機材が壊れたりすると電気工や修理工に変身することになる。もちろん、直せないものはサマーワ市内からイラク人の修理人を呼んで修理してもらうが、機材が適切に修理されるか確認もしなければならず、現場監督もやることになる。

 ここでの生活はコンテナハウス(陸上自衛隊員は主にテント)内の事務所、日中50度を超える気温、風が吹くと体全体をドライヤーで乾かされているかのようだ。また、砂塵の影響でよく壊れるエアコン、発電機の故障で停電する電気、くみ取り式トイレ、タンクの水が冷めるまで浴びることのできないシャワー、ベットマットを数日おきに天日干しをしないと発生するダニ・・・私もダニに刺され、手と足にかゆみ止めを体中につけていたら、「涼しそうな香水つけているね?」と言われ、「ムヒです」と答えたものだった。サマーワは非常に厳しい環境だ。

 ここにいる所員の唯一の楽しみというと(おそらく?)食事だけだ。日々の食事は陸上自衛隊の食堂で用意してくれるが、毎日の食事に行く度に献立を見て次の食事を想像して楽しみにする日々だ。そんなすばらしい食堂も週に一日はお休みになる。このお休みの日は配給されるレトルトパックを各自暖めて食べることになる。それでもサマーワでは和食が毎日食べられたので、海外に居住している我々にとっては贅沢な生活かもしれない。

 私がイラクでできたことはほんの僅かな事でしかなく、これで帰っていいのか?と心残りであったが、サマーワから帰る際に道ばたで子供達が我々の車に手を振り続けてくれたことが唯一の慰めになった。今もあの灼熱の太陽の下、復興支援活動を続けている陸上自衛隊員と外務省員、またこれからイラクの地に派遣される方々の無事の帰還を祈るばかり。
最後に皆さんにとっての「荒野」はどこですか?

在オーストリア日本国大使館
坂本 篤司



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