イラク復興信託基金(IRFFI)ドナー委員会拡大会合
(議長総括・仮訳)
- 10月13日、日本政府は、第3回イラク復興信託基金ドナー委員会拡大会合を主催した。町村信孝外務大臣が冒頭スピーチを行い、城田安紀夫イラク復興支援等調整担当大使が議長を務めた。
- 今次会合には、6月28日の統治権限委譲後に初めて開催されたドナー会合である。イラク暫定政府の代表団を含め、57カ国・機関が参加した。この幅広い参加により、国際社会とイラクの人々が長きにわたり団結するとのメッセージが改めて確認された。
- バルハム・サーレハ・イラク副首相が基調演説を行った。イラクは完全に責任を有する政府を備え、平和で民主的な、市場経済を基本とする国家になるというイラク暫定政府の展望が示された。この展望によれば、イラクは国際社会に完全に統合され、また、将来、支援を必要とする国を助ける役割を果たすことを目指している。イラク人自ら復興のために描いた、今後3年間(2005~2007年)の戦略及び具体的施策を記述している国家開発戦略(NDS)が、今次会合において配布された。
- 13日午後、サーレハ副首相は、イラク暫定政府が治安改善のためあらゆる努力を行い、また、2005年1月までに完全に全国規模で選挙を実施することを含めて政治プロセスを予定通り進めるとの強固なコミットメントを表明した。この目標を達成するため、また、イラク独立選挙委員会及び国連の呼びかけに応え、いくつかの国が選挙プロセスを支援する旨表明し、また、いくつかの国は選挙支援の可能性を示唆した。選挙に関する議論において、独立選挙委員会委員長は選挙を公正かつ透明性をもって実施するとのコミットメントを再確認し、これまでの準備状況を説明し、引き続き国際社会による支援をお願いしたい旨述べた。国連事務総長イラク特別代表代行は国連による支援につき説明を行った。
- サーレハ副首相は、イラクの人々の大部分は幾多の障害があるにも拘わらず平和で繁栄したとイラクの建設を行いたいと願っていると述べ、国際社会による完全、即時かつ団結した支援を求めた。更に、同副首相は、財政における説明責任と透明性という原則、ダイナミックな民間セクターを基礎とした経済の多様性及び活性化の促進、医療・教育・住宅へのアクセスを通じて人的資源の開発といった暫定政府のコミットメントを強調した。
- マフディー・アル・ハーフェズ計画開発協力大臣(戦略レビュー評議会議長)は、「マドリッド1周年」と題するスピーチを行い、長い道のりではあるもイラク人はこれまで相当な成果を上げてきたと発言した。これらの成果には、GDPの増加、健全な経済法制度の導入、信頼できる新通貨の導入、石油生産能力の向上、人権・男女平等の包括的な法制度整備、保健医療及び教育関連インフラの改善が含まれる。同大臣は、ドナーによる支援を効率的に実施する旨約束する一方、ドナーが現地のプロジェクト実施を加速化し、また、電力及び水分野を含む優先分野において追加的な支援を行うよう呼びかけた。
- イラク側のスピーチに対して、今次会合は、復興プロセスにおけるオーナーシップに基づくイラク暫定政府の決意と方途を歓迎した。NDSはイラク復興という将来にわたる仕事の礎となる。今次会合は、イラク復興のために強い国際協力が極めて重要であることを確認した。
- 今次会合は、治安を含む政治プロセス及び経済開発プロセスが不可分であるとのサーレハ副首相の考えを確認した。今次会合は、11月にエジプトで国際会議を開催し、近隣諸国及び他の国際社会のメンバーが参加するとのイラク暫定政府の考えを歓迎した。
- これに対して、イラク側は国際社会によるこれまでの寛大な支援を多大な謝意を表明した。イラクの緊急ニーズに鑑み、イラク側は既にプレッジ済みの支援の早急なディスバースメント、及び、ドナーに対し、イラク戦略レビュー評議会と緊密に連絡しつつ信託基金経由又は二国間支援の形で支援を行うよう再度呼びかけを行った。その関連で、今次会合は、イランによる1000万ドルのコミットメント表明を歓迎した。
- これらイラク側のスピーチに引き続き、国連、世銀及びIMFによるスピーチが行われた。マロック=ブラウン国連開発グループ(UNDG)議長は、来る選挙の運営を行っている独立選挙委員会に対してあらゆる支援を惜しまない旨述べた。クリスチャン・ポートマン世銀副総裁は、世銀の復興・改革支援プログラムの進捗状況を説明した。加藤隆俊IMF副理事は、緊急ポスト・コンフリクト支援(EPCA)の承認を含むマドリッド会議以降の活動状況を説明し、今次会合はECPAの承認を歓迎した。
- 出席した各国及び機関の代表は、イラク復興支援の現状を報告した。欧州委員会は、2005年の信託基金に対する追加拠出を含めて更なる支援を行う意図を表明し、韓国も2005年にIRFFIに追加拠出を行う意図を表明した。また、クウェートは相当額の支援を実施している旨表明し、日本は新たな直接支援案件の発表(注:12日発表の通信案件及び病院案件)について報告した。こうした報告から、マドリードでのプレッジが実際に現地で動いており、イラク人の能力構築も実施されていることが確認された。拡大会合はまた、債務問題の解決がイラク経済の将来にとって不可欠であることを確認した。
- 世銀及びUNDGは、信託基金の進捗報告を行った。既にドナーが支援を表明した額の殆どが払い込まれ、拠出金は特定のプロジェクトに貼り付けられ、多くのプロジェクトの実施が開始されたと報告され、必要とされているプロジェクトの実施には追加拠出が必要なことが示された。拡大会合は、治安状況の制約にも拘わらず、重要な進展が見られると結論付けた。
- 閣僚を含むイラク暫定政府高官は、経済改革、社会保障、インフラ整備、ガバナンス・市民社会といったテーマを扱う分科会において説明を行った。分科会ではNDSで示された復興ニーズが確認された。
- 今次会合は、ヨルダン政府が次回会合をホストする用意があると発言したことを歓迎した。次回会合の開催地については、10月14日のドナー委員会会合で話し合われる。
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