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このコーナーではアジア各地の様子をお伝えしてまいります。今回は外務省サマーワ連絡事務所長小林弘裕さんと国際電話をつないでお送りします。小林さん聞こえますか?
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はい聞こえます。サマーワ事務所長の小林です。
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橋爪です。宜しくお願い申し上げます。
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宜しくお願いします。
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いま現地は季節的にはどんな感じなんですか?
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夏がまさに始まろうとしているところでして、最近も気温が40度後半になった日もあります。だいたい毎日40度以上の気温が続いています。
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夜もですか?
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日が暮れると凌ぎやすくなって、夕涼みをするには丁度良いくらいにはなります。
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イラク全土がそんな感じなんですか? サマーワがそうなんですか?
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イラク全土がだいたこういう状況だと思います。もちろん南の方に行くと若干暑くなると思いますし、真夏では50度を超える日が多いようです。
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それはご苦労様です。イラクについて日本国民は関心があると思うのですが、なかなかフレッシュな情報が入って来ないので、お分かりになる範囲でいろいろとお教え願いたいと思います。そちらでは自由に出歩いたりできる状況なんでしょうか?
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サマーワに限って言えば、他の地域に比べて比較的安全で治安は良好のようですが、それでも我々が行動する時は自衛隊の列に加わったり、あるいは事務所の防弾車に乗って行動しております。
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仕事でサマーワ市内や近郊などに出かけることもあるのでしょうか?
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はいございます。なるべく事前に安全を確認した上で、先程申し上げたような形で行きますし、常に防弾チョッキを着用しヘルメットをかぶって行動しております。
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サマーワの住民と接触する機会はありますか?
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街に出たり地方に行ったりした時は、住民の皆さんと話し合ったり、意見を聞いたりすることはございます。
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サマーワやイラクの皆さんの日本人や自衛隊に対する態度はどうですか?
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自衛隊の活動はここでは非常に感謝されておりますので、どこに行っても日本人は大歓迎で、我々も地元の皆さんといつも歓談しております。
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特に自衛隊のどういう活動が評価されているのでしょうか?
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自衛隊の活動は、水の供給や医療とか、他には道路の補修等を進めているのですが、特に水の供給につきましては、いまちょうど夏に入りかけまして、水が足りなくなってきましたので、本当に皆さん感謝しているようです。
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そうしますと外務省サマーワ事務所というのはどういう役目なんでしょうか?
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様々な活動をしていますが、主に二つあります。一つは自衛隊の人道復興支援活動が円滑に行えるように外務省の持っている専門知識で支援すること。例えばイラク全般の動向に関する説明や、地元の有力者との付き合い、他には通訳などがあります。もう一つは自衛隊の活動に加えて、外務省としても経済協力を進めていくということです。
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外務省の皆さんの普段の生活はどのような状況なんですか? 水は十分使用できますか?
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宿営地の中では自衛隊の給水活動の一部を利用したお風呂があり、我々はサマーワ温泉と呼んでいますが、時々水が足りなくなったり、あるいは電気がつかなくなって使用できない場合もあります。
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なるほど水は貴重なんですね。ところで経済協力ということなんですけれども、日本の企業や一般の人々も協力したいと思っていると思うのですが、どういう点への協力が望まれているのでしょうか?
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特にイラクの南部は長い間経済発展から取り残されておりまして、おおよそ全ての分野で協力が必要です。まず我々は手始めにいわゆる人道支援ということで、水の供給や医療協力を始めているのですが、文化の面への協力としてサッカーボールの供与も行いました。今後、治安が安定してくれば、発電所等を建設したり、いずれ通信面での協力も必要になってくるでしょう。
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そうしますとインフラ整備ということでしょうか?
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はい。インフラが不十分なので、これから長い時間をかけて整備していく必要があると思います。
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一つ心配な点は、せっかく良かった治安がもし悪くなるようなことがあると経済協力もなかなか進めにくいと思うのですが。新聞などによりますと、シーア派の中にもアメリカに反対して過激な路線を打ち出しているグループもあるとのことですが、サマーワの状況はどうでしょうか?
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サマーワの人たちは非常に平和を愛好していまして、アメリカの支配に反対する一派がサマーワに入ってくると、これを止めたり、みんなで説得して攻撃をやめさせたりしています。それでも時々銃撃事件がおきていますので、今後はどういう状況になるのか見極めていく必要があると思います。
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サマーワにはオランダの部隊も駐留していますね。サマーワ事務所の皆さんはオランダ部隊との接触はあるのでしょうか?
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非常に頻繁に接触しております。彼らはこの辺りの治安の維持をイラク警察と共同して担当しておりますので、毎日様々な情報を交換しています。また、オランダ部隊の一部は人道支援もやっておりますので、そのための協力・調整業務もしております。
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協力関係は上手く進んでいるということですね。
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はい、非常に上手くいっております。
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小林所長の個人的な体験などもお話いただきたいと思うのですが。小林所長はサマーワに行かれてどれくらい経ちますか?
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4月の中頃に来ましたので、約1ヶ月の滞在になります。
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これまでにも中東には何回もいらしていますか?
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はい。わたくしは外務省に入ってからアラビア語を専門にしましたので、中東地域での勤務経験はありますし、現在はエジプトの日本大使館からサマーワに派遣されております。
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中東や他のアラブ諸国と比べて、サマーワやイラクでは何か違った感じを受けますか?それとも共通点が多いのでしょうか?
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もちろんアラビア語であるとかイスラム教であるとか、アラブの一般的な風習には共通するものがあります。ただ、イラク人全般に非常に優秀な人たちが多いという感じを受けますし、川もあり国土も肥沃なのでこれから発展の可能性は非常に大きなものがあると感じております。
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自衛隊の隊長さんが髭を生やしていて、現地にとけ込んでいるというような報道があったのですが、サマーワ事務所の皆さんもやはり髭を生やしているのでしょうか?
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サマーワ事務所員でも髭を生やしている者がおります。私も以前は髭を生やしていたことがあります。
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お仕事以外で、息抜きとか余暇はどうしていますか?
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毎日、夜遅くまで打合せをしていますので、息抜きする暇はあまりないんです。それでも最近になって自衛隊の運動施設ができましたので、ときどき利用させてもらっています。休日の夜などはDVDで映画を観ております。
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こ最近は何を観ましたか?
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「レッド・ドラゴン」を観ました。
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お隣のサウジアラビアではアルコールが禁止されていますが、イラクではどうでしょうか?
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イラクではアルコールを飲もうと思えば飲めると思います。ただ、宿営地の中では飲まないことにしております。
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飲みたいと思う時はありますか?
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ありますけれど、サマーワで勤務している期間は我慢したいと思っております。
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いまこれが食べたいと思う物はありますか?
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ここの食堂は非常に美味しいのですが、やはり生ものが少ないので、お寿司とか新鮮なお魚類が食べたいと思います。
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そちらでは主にどんな物を食べているのですか?
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和食が中心です。日替わりメニューで色々な物が出てきます。非常に良く考えられたメニューだと思います。
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一般の日本人には「イラクは危険」というイメージがあると思うのですが、イラクに赴任するに際してご家族や友人・知人の皆さんから心配されませんでしたか?
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非常に心配されました。しかし、ここではE-mailが通じますので、ほぼ毎日連絡を取り合っていますし、衛星電話も通じますので週に数回、家族や実家に連絡しております。
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最後に、小林所長のお立場で日本の皆さんに何かメッセージがございましたらお願いしたいのですが。
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日本から見ますと中東方面は非常に縁遠いような印象があると思いますが、地理的にはヨーロッパやアメリカよりずっと近いんです。それから今や中東地域は日本にとって非常に重要な地域になっておりますので、最初から理解し難い地域と敬遠されずに、世界の中でどこにでもある普通の場所という理解の上で、もう少し中東のことを身近に接してもらうような機会をつくってもらえればありがたいと思っています。
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本当にそうですね。私も関心を深めていきたいと思っています。大変に厳しいお仕事だと思いますけれど、どうぞお気を付けて無事に任務を全うされますように。
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ありがとうございます。頑張りたいと思います。
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どうもありがとうございました。
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はい、ありがとうございます。失礼いたします。
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失礼いたします。今回は外務省サマーワ事務所長小林弘裕さんと国際電話をつないでお話を伺いました。
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