2月19日午前8時30分までの主な動き。
主な動き
●17日、アナン国連事務総長はP5国連大使と協議し、20日にバクダッド入りすることを決定した。同事務総長は、19日朝イラクへ向かう。現地滞在は2日程度の見込み(19日報道)。
●17日及び18日、リチャードソン米国連大使は、米国は事務総長のイラク訪問を完全に支持するが、「訪問結果が安保理決議や米国の国益に一致しなければ同意しない権利を留保する」と述べた。
●17日、革命評議会とバース党地域指導部の合同会議後、イラク政府は、アナン事務総長の訪問を歓迎し、平和的解決を目指し最大限の努力をする、同事務総長がバランスの取れた政治的解決へと導くことができる環境下でイラクを訪問することを希望する旨の声明を発表。
●米航空専門誌Aviation Weekand Space Technology最新号は、サウディ政府が武力行使に際して国内からの米軍機出撃拒否に加え、事前の近隣諸国への移動も当面は認めない方針を決定した、空軍関係者はこのような制約を受けた状況での攻撃を行う準備は出来ていない旨発言した、その結果3月中旬前には攻撃を行わないと予想する向きもある、と報じている。
●イラク駐在の国連人道調整官事務所スポークスマンは18日、イラク国内で働く国連職員の内31名が米国の武力行使への予備的措置として19日国外に退去する旨述べた(カイロ発時事)
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1.我が国
○18日午前、加藤総政局長は与党政策調整会議で、武力行使には安保理による新しい武力行使容認決議は必要ないとの考えを表明。これに対し社民党の秋葉忠利政審会長は反発した旨報道(18日夕刊、毎日)。
○18日午後の衆院本会議で、橋本総理は新たな国連決議がなくとも米国の武力行使を容認する考えを示した(報道)。
○18日、カラシン・ロシア外務次官は、タス通信に対して、21日から訪露する小渕外務大臣とロシア首脳がイラク問題の平和的解決につき協議を行う旨述べた。
2.米国
○17日、クリントン大統領は国防総省における演説の中で、湾岸地域に於ける兵力の増強を行う上でサウディ、クウェイト、バハレーン、その他GCC諸国及びトルコの支援があったこと、英、独、西、葡、デンマーク、蘭、ハンガリー、ポーランド、チェッコ、アイスランド、豪、NZ、加が兵力、基地、後方支援を提供する用意を表明しており、支援国は増えつつある旨発言。
○ホワイトハウスは、イラクの大量破壊兵器計画と題するCIAその他の情報による報告書を公表。
○16日、国防省記者発表資料は、5000~6000人の陸上部隊追加配備の内訳を次の通りとしている。
- クウェイトへの1個大隊及び旅団司令部の配備
- AHー64等からなる1個ヘリコプター大隊等
- サウディのプリンス・スルタン航空基地に展開しているパトリオット部隊への要員派遣
○18日付けニュー・ヨーク・タイムズによれば、UNSCOMのバトラー委員長は、ロシアからイラクへの生物兵器開発に転用可能な装置の売却交渉を記述したイラクの文書を押収したとロシアのラブロフ大使に宛てた書簡で指摘。
○17日付けディフェンスニュース最新号は、大量破壊兵器施設の大半は場所を特定できておらず、米英は攻撃目標を殆ど絞り切れていない旨言及。(ワシントン発時事18日)
○18日、オハイオ州コロンバスにて対イラク武力行使の是非を問う市民集会が開催され、オルブライト国務長官、コーエン国防長官、バーガー大統領補佐官が出席した。19日にはテネシー州にて市民集会が開かれオルブライト国務長官が出席する予定(19日報道)。
3.イラク
○17日、ハムドゥーン国連大使は、イラクはあらゆる問題をアナン事務総長と協議する用意がある旨発言。
○(イラクは生物兵器開発目的で穀物散布装置を購入しようとしていたとする報道に対して)17日、イラク外務省は、「英国はUNSCOM及びIAEAの安保理への報告に反して、イラクが大量破壊兵器を製造しようと主張している」とする声明を発表。
○18日、INA(イラク国営通信)は、国連専門家チームは8箇所のの大統領施設の調査を完了した旨報道。
○16日、ワシントンを訪問中の反体制派「イラク国民議会」のアハマド・チャラビー議長は、クリントン政権当局者と会談する旨述べた。
○17日、UNHCR報道官はイラク北部のアイン・スフニー収容所にいたトルコ系クルド人約6800人が(トルコの軍事的なプレゼンスを恐れて)14日頃からクルド自治区地域南部へ移動・避難を開始している旨述べた。
○18日、サッハーフ外相がイランを訪問し、ハラジ外相と会談。
4.各国の動向
(英)17日、英国下院は武力行使の準備を支持する動議を493対25で可決した。クック外相及びブレア首相は、14日、15日、それぞれインディペンデント紙、ガーディアン紙へ投稿を行った。
(露)エリツィン大統領は、17日、訪露中の李鵬中国首相と会談し、対イラク武力行使に反対する共同声明を発表。また、シラク仏大統領と電話会談を実施。同日、プリマコフ外相はギリシャを訪問。16日、ジリノフスキー自民党党首等露下院代表団はイラクを出国したが、6人が武力行使に対抗する「人間の盾」として現地に残ることになった(インタファックス)。
(仏)17日、シラク大統領は、サッハーフ・イラク外相との会談後、外交的解決のための時間的余裕はないとして、イラクに査察受入を求めつつ、アナン国連事務総長のイラク訪問の必要性を強調した。
(独)17日、キンケル外相は、向こう8日から10日までに決定的な局面が来ると思う、と述べた。
(豪州)17日、ダウナー外相は外交的解決はありそうにない旨ラジオで発言。また、同外相はテレビにて97年10月のUNSCOM報告書を分析した結果としてイラクの大量破壊兵器製造能力につき懸念を表明。豪州部隊(要員190名と給油機2機)は17日、パース近郊の基地よりクウェイトに向け出発。給油機と空軍要員はオマーンで待機予定。医療担当要員60名も来週末までに出発予定。(いずれも報道)
(NZ)18日、ブラッドフォード国防相は、後方支援部隊計70人と哨戒機P3オライオン1機が19日に湾岸地域に向け出発予定だと語った。
(デンマーク)17日、政府はCー130輸送機1機及び33名の兵員の派遣を決定。18日以降国会の投票に付される見込み。
(ベルギー)17日、クリントン米大統領はデハーネ首相と電話会談。 18日、ベルギー外務省は、フリゲート艦1隻を派遣する旨閣議決定したと発表。但し、実際の派遣は外交解決が失敗した後であり、現状ではイラクに圧力をかけるのが狙いの由。
(ハンガリー)17日、ハンガリー国会は以下の軍事協力を承認
- 領空の通過許可
- 必要に応じて国内の三つの軍用飛行場の使用許可
- 護身用武器を携帯した最大50名の医療部隊のイラク周辺国への派遣
(バルト三国)バルト三国の大統領は、最後まで外交的努力を尽くさなければならないが、必要な国際的共同行動を支持し、その能力の範囲内で国際的共同行動を支援する旨の16日付け共同声明を発表。
(カタル)17日、イラクから帰国したハマド外相は、イラクは柔軟性を見せており事態に楽観的である旨語った。また、ハマド外相は、米国に対してカタル国内からイラクを攻撃することを許さないとの保証をイラクに与えていることはない旨述べた。
(シリア)18日、ハッダーム副大統領とシャラ外相はエジプト訪問の上ムバラク・エジプト大統領等と会談。シャラ外相はエジプト到着後、シリアは武力行使に反対する旨発言。
(エジプト)18日、ムバラク大統領はイラクへの武力行使に反対する旨述べると共に、アナン国連事務総長のイラク訪問が最後のチャンスである旨発言。また、カイロからの報道によると、18日、ムバラク大統領は、「フセイン・イラク大統領から前向きな点を含むメッセージを受け取った」と言明。
(イスラエル)17日付けハアレツ紙は、イスラエル政府筋を引用し、イラク、イスラエル両国がロシアを通じて他方を攻撃、報復しない旨メッセージを伝えたと報道。
5.軍事情勢
○17日付ワシントン・ポスト紙は、武力行使の際にはイラク情報機関やバース党施設、共和国防衛隊などを空爆の対象にすると報道。
○17日報道によれば、米軍のF117Aステルス戦闘機6機がクウェイトに到着し、クウェイトに配備されたステルス機は12機となった。
○17日付クウェイト紙報道によれば、クウェイト・米国合同軍事演習(Intrinsi cAction)の一環として、米兵150名と戦車等によるクウェイト駐留米軍の実弾小演習が同国北西部で行われた。
6.国連関係の動き
○17日、アナン事務総長は、同事務総長とイラク関係者の協議準備のため先遣隊が17日夜イラクに向かって出発する旨述べた。
7.邦人保護関係
○17日、米国のシェブロン社、英国のBP社はクウェイトの職員を避難させる計画はない旨述べた。
○バクダッドからの報道によると、イラク駐在の国連スポークスマンは18日、同国内にいる国連職員31人が19日、国外へ退去すると語った。米軍がイラクを攻撃する場合への「スタッフ保護の予備的措置」としている。退去する職員の大半は陸路ジョルダンへ向かう。
○複数の西側外交官が、在クウェイト独大は在留独人に防毒マスクの配布を検討している旨述べた(18日共同)。
○タイ外務省は在イラク同国大使館が在イラク在住タイ人43名の脱出計画を立案を開始した旨発表。