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創造的パートナーシップのための日豪会議
共同議長ステートメント
(仮訳)


2002年11月7~8日
於:東京

(英語版はこちら)


I.背景

1. 日豪関係はアジア太平洋地域において最も成功している二国間関係の一つである。第二次世界大戦の灰燼の中から、両国は共通の価値観と原則を基礎として同地域における強固なパートナーシップを築きあげた。しかしながら近年、両国首相の指示により、両国は21世紀初頭の問題に対応するため、両国関係を更に強化するプロセスに着手した。

2. この目的に沿って、日豪21世紀会議が2001年4月にシドニーで開催された。この会議には、様々な分野の指導者が参加し、戦略的・政治的関係、貿易・経済関係、文化、社会問題及び科学技術等の分野における今後の二国間関係について積極的かつ実りある議論が行われた。これらの議論の結果、「日豪の創造的パートナーシップのためのシドニー宣言」が発表された。同宣言は新たな協力イニシアティブ及びその基礎となる相互理解に関する提言を含んでいる。

3. その後、シドニー宣言の提言の幾つかが、2002年5月の小泉総理訪豪時の両国首脳間の共同プレスステートメント「日豪の創造的パートナーシップ」に盛り込まれた。

4. 同ステートメントを受けて、シドニー宣言の提言が次のような形で実現した。

(1) 両国政府間の協力強化
両国政府は、互いの政策に関する相互理解を促進し、テロリズム、東チモールにおけるPKO活動、国連問題及び国境を越えた問題等に関する活動を調整するため、政治・安全保障分野の協議 を増大させた。

(2) 1.5トラック安全保障対話(9月2~3日、キャンベラ)
政府関係者と研究者が合同で対話を開催し、地域安全保障、対テロ対策及びアジア太平洋地域の個別の問題につき意見交換を行った。

(3) 政府間経済協議(9月2~3日、東京)
シドニー宣言は、貿易投資円滑化協定(TIFA)を提案していたが、この結果として、5月に両国首脳により合意されたとおり、両国間のより深い経済的つながりのためのあらゆる選択肢を模索するためのハイレベル経済協議が設立された。第一回課長級協議は、このプロセスの第一歩であり、9月初めに東京で開催された。

(4) 社会・文化交流
両国は引き続き教育、文化、社会、科学技術関係を強化している。このイニシアティブの中には、第一回日豪高等教育フォーラム(2002年5月)、2003年2月に豪州で開催予定の日豪生体医学シンポジウム、日本のナノテクノロジー・フォーラム(2003年2月)への豪州の相当規模での参加、豪州の観光関係拡大のための「観光客百万人」戦略及び積極的な文化・人物交流プログラムが含まれる。

5. 小泉総理は、豪州訪問の際、1月にシンガポールにおける政策スピーチで最初に提案した「共に歩み共に進む」豪州を含む地域コミュニティーの構想を再度説明した。このようなコミュニティを形成するため、小泉総理は、例えば東チモールにおけるPKO活動、人の密輸やマネーロンダリングなどの国境を越えた問題及び地域経済関係などの分野において、幅広い地域諸国を巻き込んだイニシアティブの推進などの機能的協力の経験を積み重ねることの必要性を強調した。

6. 豪州は小泉総理の構想を支持し、最近の両国間の協力活動の多くはこの精神に沿ったものである。豪州はまた小泉総理の目的を補完するような方法で独自の地域イニシアティブを推進した。豪州は東チモールの平和維持活動において主要な役割を果たしており、インドネシアと国境を越えた問題に関するハイレベルの地域会合を共催し、またテロリズムに関する了解覚書を締結するなど、インドネシアとの協力を強化した。豪州は同様の了解覚書をマレイシア及びタイとの間で署名し、またフィリピンとは了解覚書締結に向け協議を開始した。

7. その一方で、シドニー宣言後に新たな重要な国際問題が発生した。特に関連するのは次の2つの側面である。

(1) 安全保障問題
2001年9月11日のテロ攻撃以来、対テロ対策強化の必要性の認識が高まり、この認識は10月12日のバリ島における爆弾テロ行為以後更に高まった。日豪間及び域内の協力の方法及び形態が模索されているところである。特に地域安全保障の観点から関係のあるもう一つの注目すべき展開は、朝鮮民主主義人民共和国の最近の動向である。

(2) 東アジアにおける経済連携のためのイニシアティブ
日本はASEAN諸国及び韓国との経済的連携の促進に向けた研究・協議を行ってきており、豪州はシンガポールとFTA交渉を終え、タイと協議を開始し、ASEAN自由貿易協定諸国と豪州・ニュージーランドとの間の経済緊密化協定に署名した。更に、中国もASEANとの自由貿易協定を提案している。このようにこの地域での経済連携強化へ向けた動きが活発化してきたため、日豪両国間の経済的繋がりの強化のためのあらゆる選択肢を模索する必要が生じている。


II.会議の構成

8. 「創造的パートナーシップのための日豪会議」は、2002年11月7、8日の両日、東京の三田会議所において開催された。上記のような背景を踏まえて、同会議の目的は、地域的文脈における協力をも含む、日豪二国間の協力を模索することであり、政治・安全保障、経済、社会・文化問題が話し合われた。同会議は、日豪両国が地域に関与していくことの必要性及び意義についての一般の認識を両国において高めることに貢献した。

9. 会議の共同議長を務めたのは、室伏稔伊藤忠商事会長及びジェレミー・エリス豪日交流基金理事長であった。この他、両国の経済界、学界及び政府の代表等が参加し、アレクサンダー・ダウナー豪外務大臣及び矢野哲朗外務副大臣が開会セッションにおいて基調講演を行った。

10. 全体会合では、最近の国際情勢の変動が、「東アジア拡大コミュニティ」地域に与えた影響、日本と豪州がこの地域のパートナーとして果たすべき役割、及びこの地域におけるコミュニティ形成のための方法や方式が議論された。

11. 分科会では、二国間関係の重要な四分野に焦点を当てた。第一分科会は、政治安全保障問題を取扱い、テロとの闘いのイニシアティブを含む新たな安全保障環境の下での日豪協力のあり方を議論した。第二分科会は、東アジア地域における経済連携及び金融協力の可能性と、日豪間の経済連携にむけたイニシアティブにつき議論を行った。第三分科会は、教育及びコミュニケーションの手段としてのe-ラーニングにつき意見交換を行った。第四分科会は、高齢化社会のための科学・技術の役割につき議論した。


III.会議の提言

12. 会議は、二国間関係を強化し、地域的な貢献を行うため日豪両国が如何なる協力ができるかについて一連の提言を行った。

13. 議論の結果、次のような点について概ねコンセンサスを得た。

(1) 幅広い環境問題に関する協力及び意見交換を官民双方で進めるべきである。

(2) 現在の状況においては、政治、安全保障、経済、社会又は文化問題はますます相互に関連しているため、地域の現状分析を行うには分野横断的なアプローチをとることが明らかに必要である。

(3) 小泉総理の地域コミュニティ構想を推進するため、両国が共同して推進する様々な地域的イニシアティブを作り、実施することが必要である。この観点から、官民両セクターからの参加を得て、こうしたイニシアティブに関する議論が更に行われるべきである。

(4) 二国間のイニシアティブ及び交流により多くの人々の関与を得るため、適当なタイミングで「日豪交流年」を宣言する可能性を検討すべきである。

14. 個々の分科会は、それぞれ与えられた問題につき深く議論を行い、有意義な提言を作成した。

(第一分科会)

15. 第一分科会(政治・安全保障)は、日豪両国が、共通の利益を単に認識する段階を越えて、これらの共有する政治・安全保障上の利益を実現するため現実的な協力行動をとる方法を検討する段階に移りつつあることで一致した。同分科会は、この現実的な協力は、最近の地域的・国際的安全保障環境、特に9月11日のテロ攻撃及びバリ島の爆弾テロ事件の結果、一層緊急のものとなっていることで一致した。また、同分科会は、この環境は幅広い二国間協力活動を可能にすることでも一致した。

16. この関連で、同分科会は、日豪両国が二国間関係及びより広くは地域のためになる協力を行っていく優先分野を特定した。これらの分野は次のとおり。

(1) 幅広い地域安全保障問題、例えば:
アジア太平洋地域において変化しつつある戦略的関係
日豪の対米同盟関係の永続的な価値と重要性

(2) 国境を越えた安全保障上の脅威、特にテロリズム
二国間協力の緊密化の重要性に留意。
国境を越えた問題についてのより幅広い地域協力を促進するため日豪両国に何ができるかを検討。

(3) 過渡期にある域内近隣国に対する具体的支援活動
特に域内の安定と安全保障の促進に関したもの、及び
制度強化及びキャパシティビルディング

(4) PKO分野を含む防衛協力の促進
2002年8月の中谷防衛庁長官訪豪時に提案された「アクションプラン」案を含むこの分野において既に行われている進展に留意。

17. 同分科会は、両国政府の要請に基づき焦点を絞り込んだ1.5トラック対話の開催を含む協力の具体的な提言を推進するための更なる努力を行うことを目的として、上記の提言を両国政府に提案した。この関連で、同分科会は、9月2、3日にキャンベラで開催された1.5トラック安保対話を歓迎し、このプロセスの継続を求めた。

(第二分科会)

18. 第二分科会(経済)は日豪経済関係の地域及び二国間の側面につき議論を行った。この議論からは3つの提言が出された。

(A)二国間経済統合の促進

19. 同分科会は、両国の経済成長を促進する両国経済間の幅広い基盤の統合を強く支持する。

分科会は、二国間経済関係の深化・発展のための選択肢を探求している現在の政府間対話を支持する。また、野心的でバランスの取れた貿易・経済協定を支持する。

分科会は、例えば相互承認制度の促進、規制の連携強化、新たな分野における協力活動等を通じた両国に商業的利益をもたらす新たな枠組みの重要性を強調する。その枠組みはまた、地域の経済統合プロセスにおける自然な要素となる。先進経済国として、日豪両国は協力して地域全体の協力活動のモデルや基準を開発することができる。このような取極はまた、強固で効果的な多国間貿易体制に対する両国の支持を強化するものであり、APECの目標と原則に合致する。

(B)東アジアの安定を促進するパートナー

20. 日豪両国は、東アジアの経済・金融の安定を促進するため協力するのに良い位置にある。

安定促進のための新たな地域的メカニズムを検討すべき時がきた。この地域の他のパートナーとともに、日豪両国は、アジア通貨基金のような、この地域の金融危機の防止・解決のための政策対話、監視、及び金融協力を促進するメカニズムの設立に向けて努力すべきである。

また、日豪両国が地域金融市場の基準と慣行の向上・調和に協力する実質的な余地がある。

(C)商業的機会の拡大

21. 日豪両国はダイナミックな経済であり、刺激的な商業的機会が出現している。

これらの中には、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、情報通信技術、製造並びに教育、保健その他のサービスが含まれる。これらの企業の多くは、中小企業であり、そのため我々は、既存の企業及び金融・ビジネス仲介者(ベンチャー投資資本家を含む)が、R&D及び商業化を含めてこうした企業への支援について再検討することを提言する。両国政府はこのような中小企業に対し現実的な支援を提供するべきである。分科会参加者は、二国間及び地域の商業活動において、サービス業がますます重要となると考えた。豪州は訓練・教育の提供に特別の知見を有している。

農業へのビジネス投資を促進するための変化が日本において話し合われており、豪州の食糧生産への日本の投資に新たな機会が生まれている。個人の資格で農業関係者、ビジネス関係者、学者及び政府関係者を集めた非公式な対話を行うことは、これらの問題を話し合うのに有効な方法かもしれない。

(第三分科会)

22. 第三分科会(教育と交流の手段としてのe-ラーニング)は、学校、高等教育及び生涯学習におけるマルチメディア放送とオンライン技術を用いた教育内容の開発と提供に関する経験についての情報を共有した。国内及び国際的な機関間の教材の共同製作及び交流が拡大していることが留意された。

23. 同分科会は、教育の国際化の拡大、学習の質の向上、高等教育のコストに対する圧力及び変化する学習者の横顔に対応する柔軟なコースの提供の必要性の増大という文脈でE-ラーニングを検討した。E-ラーニングの一連の利点が確認された。分科会参加者は、対面・領域内体験の重要性を認識し、E-ラーニングをこれに付加価値を付す手段としてとらえた。

24. 参加者は、オンライン・コースの内容に関する需要の拡大について議論し、オンライン提供により可能となる教育へのアクセス拡大の可能性に留意した。これは、日豪両国相互の、またアジア太平洋地域の開発途上国の教育ニーズに貢献するため両国がより緊密に協力する可能性を含んでいる。教師がオンライン・コースの内容を開発し、最大限に活用できるようにするための専門的な開発の機会を提供することの重要性が留意された。

25. 分科会により提言された今後の二国間協力の分野は次のとおり。

(1) 2004年までに、既存の日本語及び英語のE-ラーニングの言語プログラムについて、会話技能を特に重視し、オンライン及びその他の方法と合わせた提供の最も効果的なアプローチとモデルを築くとの観点から、共同でレビューを行うこと。例えば、日本の学校で強調されている新たな英語会話技能を支援するE-ラーニング製品の必要性に対処すること。

(2) 2004年末までに、日豪協力の強味を引き出し、共通の関心事項(例えば環境や保健)についての理解を共有するようなアジア太平洋地域の途上国における教育機会の促進に資するイニシアティブを共同で研究、策定すること。

(3) 内容及び形式が国際化されたE-ラーニングの機会を開発することにより、両国間の文化に対する意識向上の重要性を認識すること。この例としては、互いの国のケーススタディの利用を含む内容を開発したり、同時性及び非同時性の手段によるオンライン活動への参加がふくまれよう。

(4) 2003年末までに、特に上記の活動に焦点を当てて、共同作業を行うことにより両国が別々に作業するよりも効果的な成果が得られるe-ラーニングの機会を特定すること。

(第四分科会)

26. 第四分科会(高齢化社会のための科学技術)は、人口の高齢化に関連して両国が直面している共通の問題、特に革新的技術の利用を通じて高齢者の生活の質を改善する必要性について議論した。日豪両国民は、世界で最も長く健康な寿命を享受している。21世紀における課題は、こうした高齢期に達するまで伸びた人生をできるかぎり健康で生産的なものにすることである。勤労生活期間の延長、社会参加の継続及び保健・社会ケアの提供に関する問題が優先課題として確認された。

27. 分科会は、学際的なアプローチと両国政府の支援・助成を必要とする協力のための一連の選択肢を検討した。技術の進歩、特にe-ヘルス、遠隔医療、電子カルテ及び独立した生活を支援する技術は、議論された分野の一部である。分科会は、高齢化問題、特に健康な高齢者の生活を促進する方法についての共同研究・開発の機会を模索するため、「高齢化に関する日豪パネル」を設置することを提言した。

28. 分科会は、次のような提言を行った。

(1) 本分科会は、日豪両国における高齢化問題についての研究開発のたえの二国間関係の機会を模索するための学際的な「高齢化に関する日豪パネル」の設置を提言する。また、次回の日豪科学技術合同委員会の会合において、分野横断的なトピックとして人口の高齢化が含まれるよう提案する。

(2) 日豪両国民は、世界で最も長く健康な寿命を享受している。本分科会は、両国政府が、両国社会における健康的で生産的な高齢者の生活を維持・促進するための選択肢を探求することを目的として、二国間の交流及び研究活動を強化するよう提言する。

(3) 更に本分科会は、上記パネルが、高齢者のための支援技術、サービス提供モデル、生涯学習プログラム及びe-ヘルスの開発・評価のための二国間のイニシアティブを模索するよう提言する。



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