1. |
日豪関係はアジア太平洋地域において最も成功している二国間関係の一つである。第二次世界大戦の灰燼の中から、両国は共通の価値観と原則を基礎として同地域における強固なパートナーシップを築きあげた。しかしながら近年、両国首相の指示により、両国は21世紀初頭の問題に対応するため、両国関係を更に強化するプロセスに着手した。
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2. |
この目的に沿って、日豪21世紀会議が2001年4月にシドニーで開催された。この会議には、様々な分野の指導者が参加し、戦略的・政治的関係、貿易・経済関係、文化、社会問題及び科学技術等の分野における今後の二国間関係について積極的かつ実りある議論が行われた。これらの議論の結果、「日豪の創造的パートナーシップのためのシドニー宣言」が発表された。同宣言は新たな協力イニシアティブ及びその基礎となる相互理解に関する提言を含んでいる。
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3. |
その後、シドニー宣言の提言の幾つかが、2002年5月の小泉総理訪豪時の両国首脳間の共同プレスステートメント「日豪の創造的パートナーシップ」に盛り込まれた。
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4. |
同ステートメントを受けて、シドニー宣言の提言が次のような形で実現した。
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両国政府間の協力強化
両国政府は、互いの政策に関する相互理解を促進し、テロリズム、東チモールにおけるPKO活動、国連問題及び国境を越えた問題等に関する活動を調整するため、政治・安全保障分野の協議 を増大させた。
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(2) |
1.5トラック安全保障対話(9月2~3日、キャンベラ)
政府関係者と研究者が合同で対話を開催し、地域安全保障、対テロ対策及びアジア太平洋地域の個別の問題につき意見交換を行った。
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(3) |
政府間経済協議(9月2~3日、東京)
シドニー宣言は、貿易投資円滑化協定(TIFA)を提案していたが、この結果として、5月に両国首脳により合意されたとおり、両国間のより深い経済的つながりのためのあらゆる選択肢を模索するためのハイレベル経済協議が設立された。第一回課長級協議は、このプロセスの第一歩であり、9月初めに東京で開催された。
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(4) |
社会・文化交流
両国は引き続き教育、文化、社会、科学技術関係を強化している。このイニシアティブの中には、第一回日豪高等教育フォーラム(2002年5月)、2003年2月に豪州で開催予定の日豪生体医学シンポジウム、日本のナノテクノロジー・フォーラム(2003年2月)への豪州の相当規模での参加、豪州の観光関係拡大のための「観光客百万人」戦略及び積極的な文化・人物交流プログラムが含まれる。
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5. |
小泉総理は、豪州訪問の際、1月にシンガポールにおける政策スピーチで最初に提案した「共に歩み共に進む」豪州を含む地域コミュニティーの構想を再度説明した。このようなコミュニティを形成するため、小泉総理は、例えば東チモールにおけるPKO活動、人の密輸やマネーロンダリングなどの国境を越えた問題及び地域経済関係などの分野において、幅広い地域諸国を巻き込んだイニシアティブの推進などの機能的協力の経験を積み重ねることの必要性を強調した。
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6. |
豪州は小泉総理の構想を支持し、最近の両国間の協力活動の多くはこの精神に沿ったものである。豪州はまた小泉総理の目的を補完するような方法で独自の地域イニシアティブを推進した。豪州は東チモールの平和維持活動において主要な役割を果たしており、インドネシアと国境を越えた問題に関するハイレベルの地域会合を共催し、またテロリズムに関する了解覚書を締結するなど、インドネシアとの協力を強化した。豪州は同様の了解覚書をマレイシア及びタイとの間で署名し、またフィリピンとは了解覚書締結に向け協議を開始した。
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7. |
その一方で、シドニー宣言後に新たな重要な国際問題が発生した。特に関連するのは次の2つの側面である。
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安全保障問題
2001年9月11日のテロ攻撃以来、対テロ対策強化の必要性の認識が高まり、この認識は10月12日のバリ島における爆弾テロ行為以後更に高まった。日豪間及び域内の協力の方法及び形態が模索されているところである。特に地域安全保障の観点から関係のあるもう一つの注目すべき展開は、朝鮮民主主義人民共和国の最近の動向である。
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東アジアにおける経済連携のためのイニシアティブ
日本はASEAN諸国及び韓国との経済的連携の促進に向けた研究・協議を行ってきており、豪州はシンガポールとFTA交渉を終え、タイと協議を開始し、ASEAN自由貿易協定諸国と豪州・ニュージーランドとの間の経済緊密化協定に署名した。更に、中国もASEANとの自由貿易協定を提案している。このようにこの地域での経済連携強化へ向けた動きが活発化してきたため、日豪両国間の経済的繋がりの強化のためのあらゆる選択肢を模索する必要が生じている。
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