激変する世界経済とASEMに関するセミナー (概要)
平成14年3月
- 全体の模様
- 激変する世界経済とASEMに関するセミナー」は、2002年3月15日-16日に東京において開催された。
- 同セミナーには、ほとんどのASEM参加国から出席があった。冒頭、植竹繁雄外務副大臣が歓迎スピーチを行い、三輪昭外務省経済局参事官が総合司会を務めた。
- 同セミナーでは、全体で13のASEM参加国・機関からの参加者による15のプレゼンテーションが行われ、渡邊頼純大妻女子大学教授をモデレーターとして、参加者は、アジアと欧州の経済情勢及び両地域間の関連について自由な意見交換を行った。
- 議論の内容
- セミナーを通して発言は個人の立場からなされたところ、概要以下のとおり。
(1)欧州経済
(a)EUの経済戦略について、欧州の参加者より、バルセロナ欧州理事会において、競争力強化、雇用、構造改革等について進展が見られることへの期待が示された。他方、欧州理事会等における議論が実際の行動に結びついていない面がある旨の指摘もなされた。
(b)ユーロが価格の透明性(特に労働市場)を高め競争を激化させる効果に期待が示された。他方、ユーロ各国間の物価格差解消、ユーロの国際機軸通貨としての役割を十分に果たしていないとする意見もあった。
(c)その他、これまでの独統合に対処するためのEUの取り組みの効果、安定成長協定等について議論がなされた。
(2)アジア経済
(a)特に欧州側の参加者より、金融システムの現状等を中心に日本経済の現状に対する高い関心が示されるとともに、現在進行中の構造改革について、日本にとって必要な政策であり、加速する必要があるとの認識が示された。これに対し、日本の参加者より、日本の取り組みについて詳細な説明がなされた。
(b)中国経済に関しては、WTO加入の影響、元の切り下げの可能性等について議論された。後者については、輸入原材料の価格が高騰し中国としてメリットが少ないとの指摘がなされた。
(c)アジアにおける地域経済連携の現状及び今後の方向性について欧州側より高い関心が示された。これに対し、日中韓それぞれの参加者から説明があり、その中で、地域経済連携はオープンな形で進められるべきであるとの認識が示された。
(d)その他、コーポレート・ガバナンス、アジアにおける為替相場制、製造業投資先としての中国とASEANの比較等について議論が行われた。
(3)両地域共通の事項、両地域の関連
(a)構造改革の進展度とGDP成長率とは高い相関関係にあること、アジアと欧州の双方において構造改革が重要であることが指摘された。
(b)アジアと欧州の双方の参加者より、情報通信技術の普及が重要であるとの指摘がなされた。
(c)アジアと欧州の歴史的関係や地理的近接性、米国を含めた3極構造の変化等を踏まえ、両地域間の協力を進展する余地があるとの指摘が相次いだ。特に、アジア側の参加者より、中国のWTO加入及び構造改革を経た今後のアジア経済の将来性に鑑みアジア地域は欧州の政策において再びより大きな関心に値する地域となっている旨の指摘がなされた。
(d)WTOに関連し、アンチダンピング、セーフガード、投資、競争等の分野でアジアと欧州は共通の利益を有しており、協力を強化する余地がある旨の指摘がなされた。
(e)ASEM首脳会合の関連では、ビジネス・リーダーとの接触の機会を設けることによって、ビジネス界との関係強化を図るべきである旨指摘がなされた。
(f)特にアジア側の参加者より、ASEMをより行動指向なものとすべきであるとの意見が出された。APECを参考にしつつ改善すべきであるとの考えも示され、また、取り上げるべきテーマに関する具体的な提案も行われた。他方、欧州側の参加者を中心とし、政治問題の扱いに関するAPECとASEMの性格の違いを指摘する意見が出されたほか、既にASEMにおいても貿易円滑化行動計画(TFAP)、投資促進行動計画(IPAP)等において活動が進展しているとの指摘もあった。
(g)その他、欧州におけるアジア言語の学習の促進の必要性や若者の交換プログラムの重要性といった教育問題の重要性等についても指摘がなされた。
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