ASEM移民管理大臣会合(概要と評価)
平成14年4月9日
- 概要
(1)4月4日~5日、スペイン・ランサローテ島において、ASEM移民管理大臣会合が開催された。ASEM参加の25カ国及び欧州委員会が参加し、スペイン・ラホイ第一副首相兼内務大臣が議長をつとめた。日本からは下村博文法務大臣政務官が代表として出席した(外務省からは、新美(しんみ)経経一長兼ASEM室長他が同行)。
(2)本会合は、スペインのイニシアティブにより、2000年10月の第3回ASEM首脳会合(於:ソウル)において開催が承認されたもので、移民管理問題につき、アジア・欧州間の現状を分析し、当該問題への対応に関する協力関係の強化、政治的意思を確認する目的で開催された。
(3)会合においては、(イ)移民の流れの現状分析、(ロ)合法移民、(ハ)不法移民の3つの議題の下で意見交換が行われ、最後に宣言が採択された。
(4)日本からは、不法移民の議題の下で、日本における不法移民問題の現状、人の密輸乃至人身の不正取引に関する取り組みや偽変造文書対策等、日本における施策を紹介するステートメントを行った。
- 評価
(1)本件会合は、グローバル化の進展する中で近年多くの国で社会問題となっている移民管理に関し、ASEMの枠組みの中でアジアと欧州の閣僚レベルが一堂に会して意見交換を行う初めての機会となった。10カ国以上から閣僚レベルの参加があるなど、各国における本問題に対する関心の高さが窺えた。
(2)意見交換や宣言の協議に際しては、送出国と目的国との対立構造になったり、いわゆる犯人探し(finger pointing)となることがないよう各国が留意し、全般を通じ、関連するすべての国が情報を共有し、協調することが問題解決に最も重要であることが再確認されるに留まった。
(3)他方、今後の専門家レベル、局長レベルの会合の調整・準備を念頭にコンタクト・ポイントを適当な時期に設置することが合意されるなど、ASEM参加国における今後の更なる情報交換や協議のための筋道が整備されたといえる。
宣言(Declaration) <骨 子>
- アジア・欧州間の移民管理に関し、協力を進めていくことを確認。
- 特に、不法移民の増加がASEM参加国共通の問題となっていることを認識。
- 合法移民と不法移民は別々にとらえるべきではなく、全体につきASEM参加国間で戦略的な協力を進めていくことに合意(情報交換、トレーニングや技術支援。専門家会合及び局長クラス会合の開催を念頭にコンタクト・ポイントの設置等)。
- 不法移民に関与する国際組織犯罪と闘うために協力していくことに合意。
- 不法移民の帰還及び再入国に関する協力の重要性を確認。
- 不法移民に関する偽造文書対策の協力をすすめる等、ASEM参加国間でネットワークを構築する可能性を研究することで合意。
- 外国人の差別と労働的・性的搾取の更なる対策に取り組むことに合意。
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