開かれた外務省のための10の改革
平成14年2月12日
外務大臣 川口順子
外交は、国民の皆様に理解され、支持されなくては機能しません。一連の不祥事により失われた国民の皆様の信頼を一刻も早く取り戻せるよう、改めるべき点は改め、国民全体の奉仕者としての意識を外務省職員に徹底させ、国益を守る強靱な外交ができる体制を整えていきます。
I.「透明性」、「スピード」、「実効性」をキーワードに、以下の改革を行っていきます。
1. 不当な圧力の排除
外務省は幅広く謙虚に外交や外務省に関する意見を拝聴しますが、不適切なものは排除します。特に国会議員との間には新しい関係を築く必要があります。また、この問題は、外務省以外の官庁にも関係する、広く国会議員と官僚の関係の問題です。合わせてより広い枠組みで検討する必要があると考えます。
【例示】
- 国会議員より職員に対して伝えられる問題については、書面で、大臣を含む政治指導層に報告し、省としての対応を決定します。
- 上記書面を、情報公開の対象にすることを検討します。
- 以上の点を含めて、国会議員との関係のガイドラインを作ります。
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2. 誤ったエリート意識の排除とお客様志向
誤ったエリート意識を取り除き、国民全体の奉仕者としての意識を徹底します。また、時代の流れに敏感な感覚を養います。
【例示】
- 在外公館の領事業務サービスや大使館の日本企業への支援状況などの活動をモニターするため、アンケート調査を実施し、意見を反映します。結果は公開します。
- 若手職員が領事事務を経験するようにします。また、若手職員が地方自治体、民間企業、青年海外協力隊、NGOなどで実務に携わる機会を設けます。
- 海外での研修中に、様々な機関・団体の活動を体験させます。
- 現在の規則・慣行が時代の要請や民間の基準に合うよう改善します。(着任や帰国のための準備期間を含む待遇、福利厚生措置など)
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3.人事制度の再構築
職員の士気を高め、組織としての活力を最大限引き出すために、競争原理を積極的に取り入れます。同時に、地道な努力がきちんと評価され報われる人事を行います。
【例示】
- 主要国の大使を始め本省・在外幹部ポストに民間を含む各界の優れた人材を積極的に起用します。
- 課長・室長以上のポストに、I種職員以外の職員を一層幅広く配置します。次回定例人事で実現します。
- I種職員の大半が大使ポストに就いていたこれまでの人事のあり方を改め、能力と適性に基づいた配置を行います。
- 適材適所を実現するため、必ずしも入省年次にとらわれない幹部人事を行います。
- ハイレベルを含む各界の幅広い分野との双方向の人事交流を進めていきます。
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4.秘密保持の徹底
外交では、信頼が基本です。そのために、秘密保持を更に徹底し、それに反した場合には厳しく対応します。
【例示】
- 現在の文書管理規則を見直します。
- 秘密を漏洩した場合の処分を厳格にし、人事に反映させます。
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5.ODAの効率化・透明化
国民の税金を無駄にしないよう、ODAを透明性を持った形で実施します。
【例示】
- 外部の方の参加によりODAの透明性を高めるための新たな仕組みを設けます。在外公館は、現地で活動するNGOの意見を聞いた上で、判断します。本省では、選択肢の一つとして、第三者の参加を得た委員会で援助の分野やプロジェクトの優先順位を議論し、決定することを考えます。
- 経済協力局幹部(評価担当)に外部の人材を起用します。
- ODAの実施に当たり、適切な監査手法の導入について検討します。
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6.外務省予算の効率的使用・透明性の確保
調達などの会計手続の見直しや監察・査察制度の活用により、不正の再発防止を確かなものとします。また、行政経費は、競争手続に従って一層効率的に使用します。
【例示】
- 新年度に検事を監察査察官に任命する予定です。
- 全公館に公認会計士の参加を得て査察を実施します。
- 調達全般にわたって一元化を実現します。
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7.NGOとの新しい関係
NGOとの対話や連携を強めます。
【例示】
- NGOに対する助成は、透明性が確保できる客観的な基準に基づき実施していきます。
- NGOとの協力関係を考える懇談会を立ち上げます。
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8.広報・広聴体制の再構築
職員に国民全体の奉仕者としての意識と時代の流れに敏感な感覚を浸透させるため、国民の皆様のご意見を拝聴し、国民の皆様との対話を深めます。
【例示】
- 「外務省タウンミーティング」の開催
国民の皆様の意見を積極的に反映させるため、外務省タウンミーティングを開催します。当初のテーマは、「外務省改革」とします。タウンミーティングには大臣をはじめとする政治指導層と職員が参加します。
- 「外交広聴室」の新設
国民の皆様から寄せられる意見に耳を傾け、改善に努めます。
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9.大使館などの業務・人員の見直し
海外渡航者や在留邦人の方からの様々な要望にきめ細かく対応します。このため、領事業務サービスを拡充します。
【例示】
- 旅券申請事務のインターネット化を進めます。
- ニーズの多い在外公館では、週末や夜間でも素早く丁寧に対応する体制を強化します。
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10.政策立案過程などの透明化
政策立案の過程をできるだけ透明にします。
【例示】
- 国民の皆様にわかりやすい言葉で外交の理念や政策の目的を説明します。
- 「外交政策評価パネル」の設置
各界からの意見を外交政策へ反映させるため、本省で「外交政策評価パネル」を創設します。同パネルは、定期的に政策をレビューします。
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II. 改革は、次のようなアクション・プログラムで進めます。
- 第三者からなる「変える会」を設置し、上記1.から10.の改革について、例示した点も含め、幅広く具体的措置を検討して頂きます。
- その過程で、公聴会を開きます。
- 「変える会」は、結論が早く出せるものから取り組み、発足後3ヶ月を目標に「中間報告」を、その後、遅くとも夏までには「最終報告」を作成し、大臣に提言として提出頂きます。それぞれの報告の中には、各措置の実施期限と、できる限り具体的な目標を盛り込んで頂きます。報告書は公表します。
- 中間報告や最終報告を待たないで、できることは直ぐに実施します。
- 「変える会」には、最終報告作成後も、改革の実施状況を定期的に見直して頂きます。その結果は公表します。
「開かれた外務省のための10の改革」について 皆様の建設的なご意見をお待ちしております。
ご意見はこちらまでお寄せ下さい。
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