(イ) |
省全体の方向性と優先度設定
(i)基本認識
- 外務省においては、業務の内容自体が、その時々の国際情勢の動向に大きく左右されることもあり、業務の方向性や優先度の設定を計画的に行う作業が行いにくい面がある。それぞれの部局で各種の取り組みはなされているが、省全体として更に拡充の余地がある。
(ii)具体策
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省全体として、「受け身」ではなく、自らが指向する方向性と優先順位につき明確な目的意識を持って仕事をしていくために、省、局及び課の各レベルにおいて、政策目標・業務目標を毎年度度、作成・改訂する作業を制度化して組織的に行っていくこととする。(また、これと関連し、職員個人のレベルにおける業務目標の設定についても、制度化し、組織的に行っていく。)
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(ロ) |
政策と情勢分析における代替案の提示と検討
(i)基本認識
政策立案の中身について、次のような問題点の指摘がある。
- 冷戦が終了し、外部環境が変化した後も、それ以前の定型化した外交方針をその有効性を再点検することなくとってきているのではないか。(外交方針の定型化、硬直化)
- 重要政策分野での外交上の取り組みが、専門家集団の内部でしかわからない「密教」化し、硬直化しているのではないか。「なわばり意識」があり、特定国・地域に対する外交政策の在り方について、主管課以外が議論を提起することを歓迎しない雰囲気があるため、政策論議の不在の状況が生じているのではないか。外務省職員にも共有されない外交では、国民の理解は得られないのではないか。(外交方針の密教化。省内における「政策の市場」の不在)
(ii)対応策
- 個々の政策の中身について責任を持つのは、それぞれの主管局課であるが、省全体としてバランス機能を働かせ、主管局課による政策立案を補うための措置を講ずる。具体的な方法としては、次の通り。
(a) |
総合外交政策局による政策面における代替案の提示
・総合外交政策局が、重要政策分野について、主管局(地域局・機能局)の提示する外交方針に対して「世論の立場からこれでよいのか」「時代の変化に対応できているのか」等の観点から批判的に問題提起を行う機能を果たす。
・具体的には、総政局において、上記を担当する部署を抜本的に強化(テコ入れ、刷新、再編)し、従来の発想にとらわれることなく、政策面における代替案を提示し、省内で議論を行う。 |
(b) |
国際情報局による情勢分析の活用
・国情局における情勢分析の「テーマ設定」を、大臣、次官及び総政局長の関心事項を踏まえ、また、地域局(及び総政局)と討議しつつ組織的に行うようにし、また、地域局と国情局のそれぞれの分析をつきあわせる機会を増やす。 |
(c) |
上記以外にも、主管局課の外交方針に対し、異なった意見を提出することを奨励し、その仕組みを整備する。 |
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(ハ) |
意思決定メカニズムの改善
(i)基本認識
- 外務省においては、日々生起する様々な事案に対し、意思決定を行っているが、様々な事案に対し、重要性に応じた十分な議論・討議を踏まえて意思決定がなされているかとの問題がある。
(ii)具体策
(a) |
省の事務方中枢部の意思決定メカニズムへの支援体制
・外務省における事務方の意思決定メカニズムとしては、事実上、次官に大事な判断が集中している。重要な意志決定が集中する次官への支援体制を整備する観点から、単一の課の案件であれ、複数局に関わる案件であれ、日本の外交のあり方に関わるような重い問題の場合、総政局長(及び出張で不在でない限り両外務審議官)を加えた「インフォーマルな協議」を経て事務方としての方針を策定することとする。
・総政局総務課は、省としての重要な意思決定・対応を求められる事案について、各主管局課の相談に乗り、かつ、主管局課をサポートする省内の意思決定の司令塔の役割を果たすようにする。これを実行するため、課長の下に複数の企画官を配置し、これら企画官が各局を分担して、その任に当たる体制を整備する。 |
(b) |
意思決定における時間管理の改善
・各局課において、重要な事案につき十分な時間的余裕を持って議論・討議の場を持ちつつ意思決定を行うことができるよう、どのタイミングでどのような要処理事項があるのかの「時間管理」を従来以上に意識して業務を行うようにする。
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(ニ) |
本省と在外公館との有機的連携
(i)基本認識
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政策決定に当たって代替案の検討や議論のプロセスを重視する上で、在外公館の知見を十分活用すべきである。
(ii)具体策
- 在外公館からの政策提言の意見具申、とりまとめ分析などの発出を奨励し、本省との間で、お互いの意思の伝達が好循環を作るようにする。
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(ホ) |
外部との「対話と競争」
(i)基本認識
- 外務省において、政策立案に関し、外部と対話をしつつこれを進めることについては、従来、極めて慎重であった。
- 一方、外交について関心を持っている幅広い層に対し外務省の考え方を提示し、これに対する意見を踏まえて、政策を立案していくという「対話と競争」のプロセスは、その結果として生み出される政策を強いものにする。外務省が、どのような認識の下、どのような要素を考慮して政策を選択したのか、また、その成果をどう評価しているのかを国民の側に向けてきちんと示すことは、「透明性」「説明責任」の観点から求められるのみならず、幅広い層の国民から理解と支持を受けた外交を行っていく上で必要不可欠なことである。
(ii)具体策
「懇談会」「研究会」の活用、「トラック2」アプローチ、「パブリックコメント」など、これまで政策立案に際し各局各課で意欲的な取り組みが行われているが、それぞれバラバラに実施されることが多かった。今後こうした外部との議論の機会を省内で共有するとともに、各局各課において意識的かつ体系的にこのような仕組みを活用することによって外部の「政策の市場」との「対話・競争」を強化する。更に、同様の目的意識から、下記の事項を実施する。
- 研究機関、学界、言論界などの有識者及び政府関係者などの間で自由に政策論議を行う手弁当による意見交換会の実施(国際問題研究所の活用も一案)。
- 職員に対する中間研修の拡充、研究機関への短期派遣の推進。
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(へ) |
政策評価の積極的活用
(i)基本認識
政策評価は、「企画立案」→「実施」→「評価」の一連のサイクルによって、行政の在り方を適切ならしめる手法であるが、外交は政策評価の既存の方法論が適用しにくい分野であるだけに、省内においても政策評価の導入準備作業は遅れ気味の現状にある。
(ii)具体策
下記の事項によって、政策評価についての省内の取り組みを抜本的に改善する。
- 外交政策評価パネルの開催。(有識者のパネルにおいて、外務省側からの特定の外交上のテーマについての評価の文書につき、討議・検討を行ってもらう。)
- 政策評価のための省内の体制整備。
- 政策評価についての職員の意識改革のための講習会・セミナーの実施。
- 外交政策評価の手法開発のための第三者諮問委員会の活用。
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(ト) |
政策論議を促す意識改革、人事評価・人材開発
(i)基本認識
- このような政策立案強化のための環境整備のためには、意識改革、人事評価、人材育成、キャリアパスなどの取り組みが必要。
(ii)具体策
(上記(1)の「制度の改革」の項を参照) |