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「変えよう!変わろう!外務省」提言と報告
-「内からの改革」スタート-


平成14年7月12日


1.はじめに

(1) 「変えよう!変わろう!外務省」の活動について

 「変えよう!変わろう!外務省」は、2002年3月以来、外務省職員自らが、外務省を変えよう、強くしよう、良くしようとの考えの下に活動を行なってきた。当初は、「変える会」の議論を省内に紹介するために設置されたが、参加メンバーより、「『変える会』が打ち出す改革案を待つことなく、職員自らが、外務省を改革していこう。」との声が相次ぎ、制度改革、事務合理化、意識改革・マナー向上、政策立案強化、広報の5つのテーマ毎にグループを立ち上げ、自主的かつ具体的な活動を行なうこととした。
 「変えよう!変わろう!外務省」は、外務省職員の有志による開かれた集まりであり、採用試験区分、年次、職位等の枠を越え、また省外からの出向者の参画も得ており、在外の職員も電子メールなどを通じて参加している。活動に参加した職員の数は、221名に及ぶ。5つのグループはそれぞれテーマを設定し、毎週会合を行ってきたほか、「変えよう!変わろう!外務省」全体としても、7月5日までに、合計14回の全体会合を開催した。このほか、ITの積極的活用について、全職員に参加を呼びかけた「オープン・フォーラム」も実施した。
 外務省の使命は、国民の付託に応え、日本の国益を増進し世界に貢献する外交を行っていくことである。「変えよう!変わろう!外務省」が目指しているのは、強い外交を行っていくための外務省に変革していくことである。幅広い層の国民から理解と支持を得られる外交を行っていくためには、国民から信頼される外務省であることが必要である。我々は、こうした観点を踏まえ、外務省の外交能力を強化するための改革の実現を目指して活動してきた。

(2) この報告書について

 「変えよう!変わろう!外務省」の活動は、1)制度的な取り組みを要するものについて提言を行なうこと、2)外務省職員自らが実施できる改善・改革を直ちに実行に移すこと、の二種類に分かれる。この報告書は、2002年3月以降、現在までの討議を踏まえて提言・活動を取りまとめたものである。

(3) 改革を実施し、これを継続していくために

 外務省改革については、月末にも予定されている「変える会」の最終報告をも踏まえ、外務省自身が取り組みを検討することになる。「変えよう!変わろう!外務省」としては、我々の提言が、外務省の今後の検討の中で活用・採用されるよう期待する。

(イ) 今後の「変えよう!変わろう!外務省」の活動

 改革は不断のプロセスであり、長い道程に一歩を踏み出したに過ぎない。我々は、この報告書の提出とともに活動を終了するものではない。「政」と「官」との関係、更なる制度改革、公聴制度の拡充、在外公館の新たな役割などにつき議論を継続し、省内の改革実施に参画していく。
 我々の目的は、提言のためのペーパーを作成すること自体にあるのではない。我々は、改革が実現されることこそを目指してきているのであって、今後ともこれに向けた外務省内の作業に関わっていく考えである。

(ロ) 改革の継続性を維持するために

 真の改革を不断に実行していくためには、しっかりとした実施・評価体制の構築が不可欠であり、このための常設的な内部機構が必要と考える。この機構については、官房に設置し、大臣及び次官の直接の指揮の下、官房長を補佐し、改革推進に関する官房各課及び省内各局課の取り組みを統括するための高位のポスト(官房審議官クラス)を置き、能力の高い人材を起用することが考えられる。また、このポストを支えるための然るべき規模のスタッフの配置も必要である。
 改革推進のための内部機構は、単に当面の改革を推進するのみならず、外部環境の変化に適応し、省内の資源を優先度の高い課題に振り向けていくための業務管理を不断に改善・改革していくための組織と位置づけるべきである。
 また、改革を継続していくためには外務省職員の改革意識の維持が必要であり、外部・内部アンケートの実施等、アイディアの公募及び改革の効果を測る仕組みを構築する必要がある。


2 外務省改革のための提言

 「変えよう!変わろう!外務省」においては、外務省を変え、強くし、良くするための改革の方途について検討を行ってきた。以下は、外務省全体として、外部環境の変化を踏まえ、その時々の優先度の高い課題に最も的確に対応できるよう、組織と政策の両面において、自らの在り方を変えていくための提言である。
 以下に詳述するように、今、取り組むべき改革は、「人事等の制度に関わるもの」、「政策立案に関わるもの」、「職員の意識に関わるもの」と三つの側面がある。これらは、それぞれ重なり合い、相互に関連しあっており、改革は、こうした有機的関連を踏まえながら、これらの全ての側面において、いわば「三位一体」で進めていく必要がある。

(1) 制度の改革

(イ) 基本認識―なぜ制度改革か
  • 人事、会計などの制度は、組織の信頼基盤である。「一種、専門職の垣根を越え、能力本位で人を活用しよう」「III種職員のキャリアパスをきちんと考えよう」「領事という重要業務を見なおそう」など、積年の問題に思い切って切り込んでみた。
  • 「意識、風土を変える」、「日々の‘対応’でなく‘政策策定’に力を注ぐ」ためには、かけ声だけでなく、制度的担保が必要である。意識を変えるためには、「評価」のあり方を変えなければならない。「保身や事なかれ主義で日本外交を損なえば、厳しい評価を受ける」「前例踏襲がよいわけではない」ことが制度化されてこそ、組織風土は変わる。また、全職員が日本と外国との狭間で難易度の高い仕事を担う十分な力をつけ、職員の専門能力を育て活用する制度を作ることは、組織の責務である。
  • 器を整えるだけでは足りない。制度の利用者である各職員が、外務省を担う当事者として、「組織を変え自分を変えよう」という意識を持ってこそ、改革の実があがる。


(ロ) 提言

(i)競争原理の徹底

  • I種職員のほぼ自動的な昇級を見直す。一定の等級に上がる際、包括的な審査を行う。
  • 大使を含め、I種、専門職の区別を問わず、能力・人物本位の人事配置を行う。大使人事は、能力・人物本位であり、その相当数は、「外務一種採用」以外(民間、専門職、中途採用等)をあてる。ただし、これはいかなる組織、勢力の「既得権益」ともしない。適当な人材がいないときに数合わせの外部採用は取るべき道でなく、比率は固定すべきでない。
  • 在外公館長の人事は、能力、識見、専門知識等を厳正に審査する。
  • 早い段階で「外の血」を注入する中途採用を拡大する。公募制を拡充し、透明度を高める。
  • 他省庁出身者の在外公館ポストを、外交ニーズの変化に従って見直す。
  • 担当局課や語学、職能別「スクール」にこだわらない、自由な議論と批判を確保する。

(ii)専門能力の強化と活用

  • 専門職、III種職員の力量を十分に引き出すことなしに、外務省改革の成功はない。
  • 能力ある専門職職員を大使館の政治部長、広報文化部長等にあてる。大使ポスト積極任用をはかり、専門とした国の大使任用例が増えるよう、長期的なビジョンで人事配置を行う。
  • 本省の地域課及び在外公館において、経験ある地域専門家の知見が十分に活用されていない。課長は、地域調整官等とよく協議の上、その力量を十分に発揮させる。
  • 人事評価で「地域研究会」「省外専門家との意見交換」などの自己研鑽を重視する。能力向上についての自己評価も勘案する。
    (III種職員のキャリアパスなどについて)
  • 職員の半数近くを占めるIII種職員につき、能力・適性等の把握と人材活用が十分行われていない。
  • 入省数年後、例えば会計・情報管理・領事・渉外(儀典、秘書等)・広報文化等の分野の中から、二つの専門分野を選択し、各自プロフェッショナルを目指す。十分かつ実践的な研修を行う。
  • 「頑張れば、更に高度な仕事をできる」という専門分野別のキャリアパスを設定し、長期的な能力育成と士気向上をはかる。努力と成果に報いる人事を行う。
  • 入省5年までの各職員に先輩III種職員の「指導官」をあてる。課長・首席は課員たるIII種職員とのコミュニケーション、育成に努める。各課庶務班や幹部秘書のあり方につき見直しを行う。

(iii)人事評価の充実

  • 各人に目が行き届いた、きめ細かく公平な人事を実現する。人事担当者を大幅増員し、予算措置等を講じる。
  • 省全体として、人事評価を重視する。部下の人事評価は、管理職として非常に重要な職務の一つであり、多忙等を理由に怠ってはならない。若い首席事務官も、人を評価し育てる知見、手法を身につける必要がある。
  • 「上司と部下との面談」「部下から上司への評価」の制度導入に続き、更に各人の情報を正確かつ多角的に把握するため、以下を実現する。1) 自己目標と自己評価の提出、2) 上司評価(例:局幹部)の拡充と、「横」からの評価(関係課、場合により関係省庁等外部も)、3) 人事当局による直接の面談。なお評価者の性向(例:従来の手法を選好、新しい発想を忌避)を勘案する。
  • 「求められる人材、高く評価される人物像」を見直す。「正確な前例把握」、「間違いのない文書作成」では足りない。「前例を破る政策論議」、「外部への発信」、「業務合理化」等も重視する。
  • 人事の予測可能性(一定した任期、定期異動等)を高める。生活環境の厳しい公館勤務のローテーションを徹底する。
  • 勤務評定は、職階などに応じ異なる様式を導入する。

(iv)研修の強化(職務をになう訓練と人材開発)

  • 外務省職員は、各種交渉でも領事でも在外経理でも、日本を背負って外国との間で難易度の高い職務を行う。その力を職員に付けさせることは、組織の責任である。「研修」は、職務上必要な知識・技術を体得するための厳しい「訓練」かつ長期的な「人材開発」に脱皮すべきである。全職員が、研修の重要性を認識する。
  • 地域専門家として求められる資質は、「語学のみ」では不十分である。若い頃から「人の心に入り込む」深い理解や人脈開拓の姿勢、幅広い視野や組織規律を身につけるため、在外公館配属後2年は「指導官」を付ける。
  • 組織運営に携わる若手中堅職員に対し、「部下の能力を最大に発揮する」「人の評価と育て方」など「組織マネジメント」の手法を体得させる。国民への説明責任の意識を強化する(役所無謬論は誤りである)。日常の事務の洪水に流されず、確固たる使命感を持ち、外部と意見交換しつつ政策立案する姿勢を強化する。
  • 以上につき、企業等の人事・総務担当者や組織改革に知見のある外部専門家からも詳しく学ぶ。館長、次席への研修も大幅強化する。いずれも実践的研修とする。
  • 職員が自ら行う研鑽、能力向上は、人材開発の重要な一環である。これを奨励し、評価する。
  • 会計、領事、緊急事態対処等、実例を豊富に記載した実践的テキストを作成する。
  • とくに在外公館では、担当を問わず、外交官としての資質や、緊急事態に対応する力が全員に必要である。

(v)経理、待遇、その他

  • 不正な経理に気付いた者は、これを監察査察官ないし官房課長に報告することを義務付ける(悪意の誹謗中傷でない限り、いかなる不利益も与えない)。官房は直ちに調査し、公私混同や公務への信頼毀損があれば、厳しく処分し、事実を明らかにする。曖昧な対処は許さない。
  • 本省・在外の会計の基本体制、在勤手当、本省超勤手当の過小払い等につき、外部専門家(公認会計士、コンサルテイング会社等)を活用し、詳細調査の上、制度の見直しを含む改革案を提出してもらう。人事制度(試験、研修や評価の手法等)についても、外部専門家の知見を得て更なる改善を進める。
  • すべての館員が、外交活動に必要な経費は国民の税金でまかなわれているとの明確な意識を持ち、公私を厳正に区別して業務を行うよう、公邸、公邸料理人、公用車、在留邦人との交際等について、わかりやすいガイドラインを作成する。
  • 夫人会の組織、役割を見直す。

(vi)領事

 領事は、海外で活動する国民の安全と利益を守り、国民と直結する重要な業務である。また多くの場合外国人にとって日本の顔である。領事の機能強化と国民サービス向上に向け、以下3分野で抜本的な改革を行う。

 1)職員の意識改革とそれを支える体制改革

  • 研修直後の一種、専門職職員の領事事務従事。
  • 総領事館のあり方の徹底的見直し:現場を重視するよう、総領事の意識・行動改革。現地日本人社会の評価重視。各館が、領事に集中するか、政務・経済を併せ重視するかの基本的検討。
  • 領事事務として「できること、できないこと」の明確化。
  • 緊急事態、大規模事故・事件における在外公館危機管理体制の強化(研修、体制、訓練等)。
 2)質、量両面での人の手当
  • 総領事館内の人的配置の抜本的見直し。
  • プロとしての領事専門家の育成、研修(窓口対応を含む)強化、実務に役立つ実例集整備、キャリアパスの確立。
  • 領事担当派遣員制度の導入。
 3)財政面での手当
  • 在外での24時間窓口対応の外注拡大、東京での「なんでも領事相談センター」設置、インターネット等ITを利用した領事サービスの向上・効率化。
  • 邦人援護に必要な領事資金の充実。


(2) 政策立案の強化

(イ) 省全体の方向性と優先度設定

(i)基本認識
  • 外務省においては、業務の内容自体が、その時々の国際情勢の動向に大きく左右されることもあり、業務の方向性や優先度の設定を計画的に行う作業が行いにくい面がある。それぞれの部局で各種の取り組みはなされているが、省全体として更に拡充の余地がある。

(ii)具体策

  • 省全体として、「受け身」ではなく、自らが指向する方向性と優先順位につき明確な目的意識を持って仕事をしていくために、省、局及び課の各レベルにおいて、政策目標・業務目標を毎年度度、作成・改訂する作業を制度化して組織的に行っていくこととする。(また、これと関連し、職員個人のレベルにおける業務目標の設定についても、制度化し、組織的に行っていく。)


(ロ) 政策と情勢分析における代替案の提示と検討

(i)基本認識

 政策立案の中身について、次のような問題点の指摘がある。

  • 冷戦が終了し、外部環境が変化した後も、それ以前の定型化した外交方針をその有効性を再点検することなくとってきているのではないか。(外交方針の定型化、硬直化)
  • 重要政策分野での外交上の取り組みが、専門家集団の内部でしかわからない「密教」化し、硬直化しているのではないか。「なわばり意識」があり、特定国・地域に対する外交政策の在り方について、主管課以外が議論を提起することを歓迎しない雰囲気があるため、政策論議の不在の状況が生じているのではないか。外務省職員にも共有されない外交では、国民の理解は得られないのではないか。(外交方針の密教化。省内における「政策の市場」の不在)
(ii)対応策

  • 個々の政策の中身について責任を持つのは、それぞれの主管局課であるが、省全体としてバランス機能を働かせ、主管局課による政策立案を補うための措置を講ずる。具体的な方法としては、次の通り。

    (a) 総合外交政策局による政策面における代替案の提示
    ・総合外交政策局が、重要政策分野について、主管局(地域局・機能局)の提示する外交方針に対して「世論の立場からこれでよいのか」「時代の変化に対応できているのか」等の観点から批判的に問題提起を行う機能を果たす。
    ・具体的には、総政局において、上記を担当する部署を抜本的に強化(テコ入れ、刷新、再編)し、従来の発想にとらわれることなく、政策面における代替案を提示し、省内で議論を行う。
    (b) 国際情報局による情勢分析の活用
    ・国情局における情勢分析の「テーマ設定」を、大臣、次官及び総政局長の関心事項を踏まえ、また、地域局(及び総政局)と討議しつつ組織的に行うようにし、また、地域局と国情局のそれぞれの分析をつきあわせる機会を増やす。
    (c) 上記以外にも、主管局課の外交方針に対し、異なった意見を提出することを奨励し、その仕組みを整備する。


(ハ) 意思決定メカニズムの改善

(i)基本認識

  • 外務省においては、日々生起する様々な事案に対し、意思決定を行っているが、様々な事案に対し、重要性に応じた十分な議論・討議を踏まえて意思決定がなされているかとの問題がある。


(ii)具体策

(a) 省の事務方中枢部の意思決定メカニズムへの支援体制
・外務省における事務方の意思決定メカニズムとしては、事実上、次官に大事な判断が集中している。重要な意志決定が集中する次官への支援体制を整備する観点から、単一の課の案件であれ、複数局に関わる案件であれ、日本の外交のあり方に関わるような重い問題の場合、総政局長(及び出張で不在でない限り両外務審議官)を加えた「インフォーマルな協議」を経て事務方としての方針を策定することとする。
・総政局総務課は、省としての重要な意思決定・対応を求められる事案について、各主管局課の相談に乗り、かつ、主管局課をサポートする省内の意思決定の司令塔の役割を果たすようにする。これを実行するため、課長の下に複数の企画官を配置し、これら企画官が各局を分担して、その任に当たる体制を整備する。
(b) 意思決定における時間管理の改善
・各局課において、重要な事案につき十分な時間的余裕を持って議論・討議の場を持ちつつ意思決定を行うことができるよう、どのタイミングでどのような要処理事項があるのかの「時間管理」を従来以上に意識して業務を行うようにする。


(ニ) 本省と在外公館との有機的連携

(i)基本認識

  • 政策決定に当たって代替案の検討や議論のプロセスを重視する上で、在外公館の知見を十分活用すべきである。

(ii)具体策

  • 在外公館からの政策提言の意見具申、とりまとめ分析などの発出を奨励し、本省との間で、お互いの意思の伝達が好循環を作るようにする。


(ホ) 外部との「対話と競争」

(i)基本認識

  • 外務省において、政策立案に関し、外部と対話をしつつこれを進めることについては、従来、極めて慎重であった。
  • 一方、外交について関心を持っている幅広い層に対し外務省の考え方を提示し、これに対する意見を踏まえて、政策を立案していくという「対話と競争」のプロセスは、その結果として生み出される政策を強いものにする。外務省が、どのような認識の下、どのような要素を考慮して政策を選択したのか、また、その成果をどう評価しているのかを国民の側に向けてきちんと示すことは、「透明性」「説明責任」の観点から求められるのみならず、幅広い層の国民から理解と支持を受けた外交を行っていく上で必要不可欠なことである。

(ii)具体策

 「懇談会」「研究会」の活用、「トラック2」アプローチ、「パブリックコメント」など、これまで政策立案に際し各局各課で意欲的な取り組みが行われているが、それぞれバラバラに実施されることが多かった。今後こうした外部との議論の機会を省内で共有するとともに、各局各課において意識的かつ体系的にこのような仕組みを活用することによって外部の「政策の市場」との「対話・競争」を強化する。更に、同様の目的意識から、下記の事項を実施する。

  • 研究機関、学界、言論界などの有識者及び政府関係者などの間で自由に政策論議を行う手弁当による意見交換会の実施(国際問題研究所の活用も一案)。
  • 職員に対する中間研修の拡充、研究機関への短期派遣の推進。


(へ) 政策評価の積極的活用

(i)基本認識

 政策評価は、「企画立案」→「実施」→「評価」の一連のサイクルによって、行政の在り方を適切ならしめる手法であるが、外交は政策評価の既存の方法論が適用しにくい分野であるだけに、省内においても政策評価の導入準備作業は遅れ気味の現状にある。

(ii)具体策

 下記の事項によって、政策評価についての省内の取り組みを抜本的に改善する。

  • 外交政策評価パネルの開催。(有識者のパネルにおいて、外務省側からの特定の外交上のテーマについての評価の文書につき、討議・検討を行ってもらう。)
  • 政策評価のための省内の体制整備。
  • 政策評価についての職員の意識改革のための講習会・セミナーの実施。
  • 外交政策評価の手法開発のための第三者諮問委員会の活用。


(ト) 政策論議を促す意識改革、人事評価・人材開発

(i)基本認識

  • このような政策立案強化のための環境整備のためには、意識改革、人事評価、人材育成、キャリアパスなどの取り組みが必要。


(ii)具体策

 (上記(1)の「制度の改革」の項を参照) 


(3) 意識改革

(イ) 基本認識

 意識改革は、他の課題以上に外務省職員自身の主体性が求められる。意識は全ての言動の根底にあり、その発現形態の一部が組織体制、制度であると考えるからである。よって、これらの問題に対しては、自らの問題意識として、自らの発案による改革を進めなければ実効性は期待できない。外務省職員は、「公務員は国民全体への奉仕者である」との原点に今一度立ち返り、日本国及び日本国民の利益を守り、かつ増進するため、本務である外交業務に着実、かつ積極的、主体的に取り組んでいくことが求められている。

(ロ) 具体策

(i)職業意識の向上

  • 研修制度の充実(組織管理研修、窓口管理研修等)
  • 保秘、セクハラ防止等遵法意識改革
  • ことなかれ主義からの脱却
  • 違反者にペナルティ付与(悪い事例の公表等)
  • 担当ー副担当体制の徹底

(ii)「お上」意識・エリート意識の改善

  • 人事交流の増加
  • 在外研修制度の改善
  • 敬称使用の改善(閣下等)

(iii)階級意識の改善・職種間競争の徹底

  • 競争原理の徹底
  • 能力主義による評定
  • I種職員以外の職員に対する中間研修の実施
  • III種職員等への在外研修機会の制度化
  • 在外研修終了後早期に、I種・専門職職員を官房業務に従事させる
  • 人事等の苦情処理体制の強化

(iv)業務への取り組み意識の改善

  • 政策議論を重視する文化の再構築、「なわばり意識」からの脱却
  • 外部との対話、外部への発信の重視
  • 事務合理化の推進、勤務時間管理の徹底
  • 業務管理(目標設定、優先順位付け、時間管理、人事評価、政策評価など)の重視

(v)意識改革のフォローアップ

  • 各課室長に対する課室内でのフォローアップの義務化
  • 意識改革の人事評価への反映
  • 制度・ルールの定期的見直しの制度化


3 外務省職員自らが直ちに実施する行動・活動

(1) 「変えよう!変わろう!外務省」における取り組み

(イ) 「変えよう!変わろう!外務省」では、以下の改善・改革を外務省職員に呼びかけ、また、自ら実践してきた。

(i) 電話交換台への協力の呼びかけ(5月31日付回章)
 外部から外務省にかけられる電話の交換業務がより円滑に行なわれるとともに、電話交換に当たる職員の負担を軽減するために、外務省職員に対し、追加ダイヤルインの積極的な使用等を呼びかけたもの

(ii) 庁舎近辺における喫煙マナーの呼びかけ(5月31日付回章)
 庁舎周辺に迷惑をかけないとの観点及び安全問題への配慮から、歩きタバコ及びポイ捨てをしないよう外務省職員に呼びかけたもの

(iii) 会議の際の時間厳守の呼びかけ(6月27日付回章)
 外部の会議参加者に迷惑をかけないとともに、会議の効率的な実施の観点から、会議の際の時間の厳守を外務省職員に呼びかけたもの

(iv) 小中学校への訪問ボランティア(7月4日第1回実施)
 外国についての知識を提供するとともに、国際社会の中で日本がどのような役割を担っているかについての認識や外務省の活動が国民一人一人とどのように結びついているかについての認識を深めてもらうために、また、外務省職員が国民の視点に立った活動を心がけることができるように、外国での勤務経験を持つ外務省職員が小中学校を訪問し、経験した事柄を紹介するボランティア活動を行うよう呼びかけるもの
 なお、この種のボランティア活動を行うに当たっては、いわゆる「ボランティア休暇制度」は活用できないこととされているが、このように地域社会に貢献する意義を有する活動についても同制度を活用できるよう、関連の制度を修正していくことが期待される。


(ロ) 我々が、上記の諸項目に着目したのは、これらが、外部の方々に関連する問題であるとともに、職員の意識に関わる問題であると考えたからである。我々は、幅広い国民から理解と支持を得られるような外交政策の立案と実施に参画していきたいと思う。それと同時に、我々の意識と行動が、国民の視点から遊離したものとならないよう、一人一人の意識改革が重要であると考えている。そのためには、上記「外務省改革のための提言」の諸項目を実施するとともに、このような行動の改革を行うことによって、意識改革を実践していくことが重要である。


(2) 事務の合理化

 我々は、上記の諸項目を実践するとともに、速やかに「事務の合理化」を進める必要がある。特に、外務省を強くしていくための上記「外務省改革のための提言」を進めるに当たっては、限られた人的資源の有効活用の観点から、「事務の合理化」は不可欠である。

(イ) 基本認識

 国際関係の急速な緊密化に伴い外務省の処理すべき案件が激増しているのに対し、それに見合ったスピードで外務省の定員が増加することは今後とも期待しえない。従って、外務省として外交政策の企画・立案及び遂行能力を強化して行くためには、限られた人的資源を有効に活用することが不可欠であり、このためには、ITの活用を推進するとともに、優先度の低い業務については大胆に削減・簡素化を図り、また、慣行となってきた仕事の仕方も改めていく必要がある。

(ロ) 具体案

 我々は冒頭、改革を継続していくために常設の機構の創設を提言した(1.(3)(ロ)参照)。事務合理化は、仕事の仕方についての組織の惰性を打破することであり、また、不断に職員からの有益な提案をくみあげ実行する作業であり、強力な実施機関を必要とする。改革のための常設機構が、事務合理化についても以下の実現に向けた検討を行うことを提言する。

(i) 一般業務
(a)大使会議の合理化
(b)「管内情勢報告」の廃止
(c)訓達、訓達式の廃止
(d)大型国際会議への一元的対応
(e)幹部への電話、eメールによる連絡
(f)局議内容に関する情報の共有

(ii) 要人の外国訪問
(a)ロジブック簡素化
(b)在外ロジ準備の簡素・標準化
(c)現地公館に対する応援出張の削減
(d)同行者の削減
(e)個別業務の簡素化

(iii) 国会質問対応
(a)国会情報のLAN掲載
(b)国会待機体制の見直し
(c)48時間ルールの徹底

(iv) 情報通信関係
(a) 省内LANシステムの恒常的アップデート・改善のための省内プロジェクトチームの発足及び省内ヒアリング開催
(b) (当面の対策として)BBS、メールシステムの有効利用のための項目分類、文言の見直し(情報発信者、受信者が迷わないような言葉遣い等)。
(c) 公電の効率化のためのルール設定


(v) 文書関係
(a) 幹部に対する発言要領作成の廃止
(b) 公文書のフォーマット、起案要領の見直し
(c) 決裁システムの簡素化
(d) 「極秘」・「秘」指定の削減、「取扱注意」の廃止


(vi) 会計関係
(a) 会計法令集の充実、各種内規の集約・マニュアル化、会計手続きの簡素化
(b) 在外公館への送金を要する案件で決裁書と送金電報は同時決裁手続きとする
(c) 会計課内の決裁時間短縮
(d) 会計関係支出決裁書の件名定型化
(e) 出張旅費の適切な支給
(f) 外務省関係団体等と業務委託契約等を行う場合も厳正に検討を行う


(vii) 勤務環境
(a)休暇制度(代休、育児休暇、介護休暇等)の周知
(b)公正かつ合理的な勤務時間管理
(c)実態に見合った残業手当の支給

(viii) 庶務・その他
(a)深夜タクシー運用制度の見直し
(b)オペレーションルーム宿直の見直し
(c)新聞切り抜きの外注


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